チートによる自由?な冒険録

凛10

エピソード1(脚本)

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凛10

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〇朝日
兵士「勝った、勝ったぞ──!! 帝国の、俺達の・・・勝利だ!!」
  とある帝国ととある王国の戦争が始まってから約三ヶ月後。
  戦争は帝国の勝利で終結した。
兵士「六十万の軍だぞ!? 俺達帝国の倍の人数がいる軍に勝てるなんて──!! まさか本当に生きて故郷に帰れるとはなぁ・・・!!」
  帝国側その数約三十万、対する王国側は約六十万の兵や傭兵が集結した。
  そんな大国同士の戦争に近隣国は沈黙を貫いた。
  あまりにも兵の数に差がありすぎた。
  どの国もどうせ王国の勝利で終わると考えていた。
  それは王国も同じ考えだった。
  いくら神に護られる国といっても数で圧倒さえすれば勝てる──そう思っていた。
  だからこそ近隣国からきた何通かの援軍の申し出も全て断っていた。
  これで同盟を組む?
  そんな安請け合いをするものか!!
  馬鹿な王どもが!!
  
  ──あの破り捨てた手紙はどうなっただろうか
  国王グレタザールは首を切り落とされる瞬間、最期にそんなことを思った。
兵士「──なんと!俺らの軍から死人は一人も出なかったらしい!!」
兵士「マジかよ・・・!? やっぱ女神様って俺らのことを護ってくれてんだな。酒呑んだ日でも忘れず祈るようにしねぇと!!」
  開戦時とはまるで違う明るい表情の兵士たちは、勝利し奪い取った王国の土地から望める海を眺めながらそんな会話をしていた。
ディル「戦死者が片方の国にしか出ない・・・ 普通はそんなことありえねぇが、この戦争だけはありえちまうな」
セシル「ええ。 しかし本当に貴族様、それも皇子様があんなにお強いとは・・・噂には聞いていましたが驚きました」
ディル「そりゃあ、あの御方は特別だからなぁ。 何せ『神の使徒』様なんだ。 まあ王国側からすりゃ、悪魔に見えただろうがな」
セシル「いやぁ、本当に。 私の故郷の国にも彼のような御方がいらっしゃればどんなに心強かったことか」
ディル「ははっ!!そりゃ違いねぇ」
  雑談をしている二人の視線の先には一人、海を眺める帝国第一皇子、レクシア・フォン・ヴェールの後ろ姿があった。

〇謁見の間
  今から八年前──
  この国の第一皇子レクシアは十歳にして皇帝よりも高い地位に就いた。
ヴィーゼル・フォン・ヴェール「我、ヴィーゼル・フォン・ヴェールの名のもと、今よりレクシア・フォン・ヴェールを『神の使徒』に命ずる」
レクシア・フォン・ヴェール「・・・はっ! つつしんでおうけいたします」
  謁見の間──
  レーゼフォン帝国第一皇子であるレクシアは十歳にして王命を賜っていた
ヴィーゼル・フォン・ヴェール「今よりレクシアは第一皇子ではなく、『神の使徒レクシア』となった。 よって皇帝である私よりも高い地位に就いたということだ」
  皇帝のその言葉に、その場にいた貴族たちは騒ぎはじめる。
貴族1「・・・・・・!? 皇帝陛下、それはあまりにも・・・」
貴族2「── そこまでされずとも良いのでは? レクシア様は第一皇子。急がなくともいずれ陛下の跡を継がれるお立場に在らせられますし」
  まだ子供のレクシアが皇帝より立場が上になれば他国からどう見られるかと不安に思う貴族たちは口々に言い出す。
ヴィーゼル・フォン・ヴェール「────静まれ !!」
  落ち着いていてされど響き渡るまさしく皇帝といった声音で一言そう言葉を発した。
貴族「・・・・・・」
ヴィーゼル・フォン・ヴェール「そなたらの不安も理解はできよう。 だが女神ルーシャ様は我ら帝国民にとって唯一で絶対の守護神である」
ヴィーゼル・フォン・ヴェール「よって、女神ルーシャ様から『レクシア・フォン・ヴェールを敬え』と神託があった以上、それに従うのが同義。 皆、よいな──」
全員「──はっ!」
  レーゼフォン帝国内の街など人の住む場所には一切魔物が入ってこない。それこそ守護神ルーシャによって張られた結界のおかげだ。
  帝国以外の国では年に一度は必ず魔物の氾濫が起きる。
  氾濫が起きれば街は踏み荒らされ、死者も大勢出る。
  いつ死ぬかも分からないそんな恐怖を感じず安心して暮らせる、本当に神に守られている国。
  だからこそ、その信仰心はとても強い
  そんな帝国で神託が下るのは帝国ができて以来初めてのことだった。
  故に神託の重要性はより増した。

〇巨大な城門
  レクシアが『神の使徒』になってから数日後──ある一人の女性が子供を抱えて城、正確には城門へやって来た。
母親「どうか・・・!どうか、神子(みこ)様! この子を・・・ エーゼをお助けください・・・!!」
  王城へと続く城門。
  そこで一人の女性が小さな少女を抱えて叫んでいた。
騎士「困ります・・・!! 悪いがお引き取りを──」
  城門を守る騎士が申し訳なさそうに顔色の悪い少女を抱えた女性に言った。
母親「──どうか、お願い・・・!! もう神子様にお願いするしか希望がないんです!! お医者様にはもう手遅れだと言われてしまって」
  頑丈なつくりの城門。
  城内まで聴こえているかどうかも分からない中、女性は必死にそう訴えかける。
騎士「立ち去ってください。 このまま続けられると賊として捕らえなければならなくなります・・・!!」
レクシア・フォン・ヴェール「──どうしたの?」
母親「──み、神子様!? む、娘を、どうか娘を助けてください・・・!!」
  女性が抱えている少女に傷は一つも見当たらない。
  しかし少女の肌は青白く、一向に目を覚ます気配はない。
レクシア・フォン・ヴェール「・・・・・・病気?」
母親「・・・はい。お医者様には、もうどうにも出来ないと言われてしまって──」
母親「神子様の── 神子様のお力で! ・・・なんとか治していただけないでしょうか?」
レクシア・フォン・ヴェール「────わかった。 出来るかはわからないけど頑張ってみるよ」
  レクシアは『神の使徒』という役割を与えられた以上、必ず何か成果を上げなければと幼いながらに思っていた。
  そして行き着いたのが『神の使徒』として一人も漏らさず全ての帝国民の願いを叶えることだった。
  そのためにはどうするべきか、と悩んでいた時この女性の声が聴こえてきたのだった。
  必ず、治してみせる──!!
  それが父上から与えられた僕の役割だから。
  強くそう心に決めたレクシアは意識のない少女に手をかざす。
レクシア・フォン・ヴェール(回復術師はたしか、こうやって手を当てて・・・あとは魔力を込めるんだっけ?)
レクシア・フォン・ヴェール「────治れ!!」
ベール「・・・あれ、わたし──」
母親「エーゼ・・・!? エーゼ!よかった、ほんとうによかった・・・!!」
  女性は泣きながら強く少女を抱きしめる。
ベール「お母さん・・・? どうしたの、お母さん。どこか痛いの?」
  少女が自分を抱きしめる母の涙を手で拭う。
母親「いいえ・・・いいえなんでもないわ・・・!! ──よかった、本当によかった」
ベール「ほんとにだいじょうぶ? なんにもないならいいけど・・・」
レクシア・フォン・ヴェール「よかった・・・これで治ったのかな。 でも僕は専門的なことは分からないので、もう一度お医者様に診てもらってくださいね」
母親「はい・・・!! 本当に、本当にありがとうございました・・・ 神子様がいらっしゃらなければこの子は本当に──」
  意図はしてないが必死さのあまりついつい大きな声でやり取りが続いたためか、何事かと人が集まり始めていた。
平民2「見ろ!!あ、あれは、レクシア様!? 神の使徒になられたレクシア様だ・・・。 神子様がお姿を見せられたぞ──!!」
平民3「でもなんでお一人で・・・!! まさか、城内でなにか事件が!?」
平民4「──なっ!? まさか、そんな!? 神子様がおられるお城で事件なんて・・・!!」
  それぞれが思い思いに憶測を話し、どんどん騒がしくなっていく中、なんとかして落ち着かせなければと騎士が口を開いた。
騎士「皆さん、落ち着いてください!! レクシア様はこの少女を助けに来られたのです。 そして見事、少女の病気は治りました!!」
平民2「なっ、それじゃあ神子様は俺らのような平民の病気を治すためだけに城から出てこられたのか!?」
平民4「まぁなんて慈悲深いお方なの・・・!? まさしく、神子様だわ──!?」
母親「神子様のお力で娘の病気は治りました・・・本当に神子様、いえ、レクシア様にはどうやってこのご恩をお返ししていけばいいか──」
レクシア・フォン・ヴェール「なにも要りません、僕は父上から与えられた役目をまっとうしただけですから。 僕自身本当に出来るのかわからなかったですし」
  大勢に褒められ、素直に照れるレクシアの姿はただの子供でしかないが、一度色眼鏡が入った人々には神々しく見えていた。

〇巨大な城門
平民7「おお、腰が・・・ ──ありがとうございます、神子様。 年寄りの儂なんぞの願いまで叶えてくださるとは・・・」

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