買った森からダンジョンへ

ちぇのあ

第11話 遥かな高みを臨んだら一万年の空へ(脚本)

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ちぇのあ

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〇おしゃれなキッチン
  良い匂いがして僕は目を覚ます。陽が昇り始めている。朝方まで起きていたから寝過ごしてしまったのだろうか。
  キッチンから良い匂いがする、何かを焼いているようだ。
真樹「おはよう~」
想里愛「あ、真樹さん、おはようございます♪」
咲桜里「おにーちゃん、おはよ♪」
  姉妹が朝食と昼食を作ってくれている。サオリがご飯を炊いてソリアがおかずを作ってくれた。
真樹「ありがとう、サオリやソリアの手作り料理楽しみだな♪」
想里愛「たまにはあたしも頑張らないと♪」
咲桜里「サオリも頑張ったよー!」
  お礼を言いながら二人の頭を撫でる。どんな料理ができるのか楽しみだ。
想里愛「実はこの前、真樹さんに教えてもらったスマホの検索を利用して料理の作り方を調べたんです♪」
真樹「そうだったんだ、スマホが役に立って良かったよ♪」
想里愛「カメラも教えてもらったので、起きた時に1枚撮らせてもらいました♪」
真樹「そうなんだ、昼食の時にでも一緒に見たいな♪」
咲桜里「サオリもお姉ちゃんと一緒に検索したよ♪」
真樹「二人とも検索使えて偉いね♪」
  なるほど、作り方を見ているならきっと良い料理ができるだろう。飲み物だけ僕が用意することにした。
  今日は葡萄の100%ジュースにする。濃縮還元だが美味しいと思う。果物の切り身も用意した。
咲桜里「サオリはおにぎりを作るよ!」
  容器にごはんを盛り中心の窪みに梅や銀鮭を具にしている。
  サランラップにご飯を乗せて丸めて形を整えたら塩で揉んだ手で直接おにぎりを握っている。
  塩が付いたら海苔を巻いて完成したようだ。
想里愛「上手におにぎりできたね♪」
咲桜里「お昼に食べようね♪」
  サオリは楽しそうに2つめのおにぎりを握っている。ソリアはおにぎりの具に銀鮭を焼いている。脂が乗っていてとても美味しい。
  ミニトマトとキャベツも弁当箱に入れているようだ。ミニトマトの配置を細かく調整している、昼食で見るのが楽しみだ。
  行きで桃の樹に寄ってからダンジョンに向かう事にした。
想里愛「お弁当作れたし、少し休んだら朝食を食べて出発しましょう♪」
真樹「そうだね、天気も晴れててよかった♪」
咲桜里「精霊さんを助けて4人で暮らそうね♪」
  もしかしたら近い内に4人暮らしになるのかもしれない。朝食はご飯・銀鮭・なめこと豆腐の味噌汁・林檎・蜜柑ジュースを食べた。
  ちなみに食後の配置は僕が腕を広げてソリアとサオリが枕にして横になっている。両サイドから熱い視線を感じる、だがそれがいい。
真樹「そろっと出掛けようか?」
想里愛「もう少し甘えても良いですか?♪」
咲桜里「サオリもー♪」
  ダブルギューを10分程満喫する。さーて、良い匂い吸えたし出発するか!精霊の人形に祈ってソリアの家に転移する。
真樹「今度コスプ・・・服見に行かない?」
想里愛「良いですよ♪」
咲桜里「精霊さんを助けたらね!」
  三人で外に出る。今日も春らしい天候で陽が温かい。
想里愛「桃を食べに行きましょう♪」
真樹「いいね♪」
咲桜里「うん!」

〇森の中
  桃の樹に近づくだけで果実の良い匂いがしてくる。1年中収穫できるのはすごいと思う。僕も魔法覚えたいな。
想里愛「美味しいですね♪」
真樹「皮ごと食べられるのは有難いね♪」
咲桜里「美味しいー♪」
  やはり桃は美味しい。苺も好きだが甘さは桃の方が高いだろう。実はサクランボ・蜜柑・グレープフルーツの切り身も用意している。
  お昼に食べても良いし、おやつの時間に食べても美味しいだろう。
真樹「心地良い風だね♪」
想里愛「そうですね♪」
咲桜里「風気持ちい~♪」
  ソリアの髪が空中を優雅に泳いでいる。サオリも同じぐらい髪が長い。
  ずっと陽に当たって過ごす日があっても良い。精霊を助けたら4人でこうして過ごしたい・・・そう思った。
真樹「二人共髪サラサラだね♪」
想里愛「えへへ♪」
咲桜里「ずっと撫ででてもいいんだよ?♪」
  お言葉に甘えてしばらく二人を撫でてから万年樹の元へ向かう。遠くに居ても高い位置から散っている為か桜の花びらが景色を彩る。
  行く時にキノコを採集するのを忘れない。夜の味噌汁に使おう。
真樹「この辺は安全で良いね♪」
想里愛「そうですね♪景色が綺麗で癒されますね♪」
咲桜里「良い所だね♪」
  魔物に遭遇したことは無いが本当にこの辺には魔物や動物は出現しないのだろうか?ダンジョンとは違うのかどうかも気になる。
真樹「着いたね。持ってきた武器や防具を渡すね」
想里愛「はい、これで準備万端ですね♪」
咲桜里「一安心だね♪」
  万年樹に辿り着く。ソリアには軍手とヘルメットと革のジャンパーと竹刀をサオリには軍手とヘルメットと革のジャンパーを渡した。
  僕は軍手とヘルメットと革のジャンパーと竹刀とナイフを用意している。これ以上モノを着ると重くて疲れてしまうだろう。
真樹「さっそく樹の中に入る?」
想里愛「そうですね、明るいうちに行きましょう!」
咲桜里「そうだね、行こう!」
  さぁ精霊を助けに行くぞ!ダンジョンの入口から見た限り魔物は居ない。
真樹「まずは1階を探索しよう、安全かどうか調べたいからね」
想里愛「そうですね、まずは1階から調べましょう」

〇洞窟の入口(看板無し)

〇洞窟の深部
  林檎の樹の間を進んで行く。1階は平地なので見渡しが良い。ただ樹の影にモンスターがいないか警戒して進む。
想里愛「1階はここで行き止まりですね」
真樹「うん、かなり広いね」
咲桜里「それじゃ階段まで戻って2階行こ?」
  入口を離れても一定の明るさがある。樹の中に一定の間隔で小さい球状の光が埋まっている。・・・原理がわからない。
真樹「ここ・・・ちょっと掘ってみるよ」
想里愛「光のあるところですね」
咲桜里「おにーちゃん、気を付けてね」
  ナイフで樹を削る、10分程削ったら何か見えてきた。
真樹「木の実・・・かな?」
想里愛「これは・・・街で見た事があります」
咲桜里「お兄ちゃん、この実食べれるのー?」
  ソリアに話を聞くと粉末にして飲むか水に付けて飲むと、魔力が高まったり新しく魔法を覚えやすくなるそうだ。
  街で1つ買うだけでも1箇月分の給料に相当するらしい。
真樹「家に帰ったら、みんなで水に付けて飲んでみよう」
想里愛「そうですね、魔法を覚えられるかもしれませんね♪」
咲桜里「夕食に使えるといいね♪」
  良いものが手に入った。手に届く範囲の木の実はどんどん採る事にしよう。階段まで戻った所で1度外へ出て昼食を食べる事にする。

〇桜並木
真樹「二人共疲れてない?」
想里愛「大丈夫ですよ♪」
咲桜里「サオリ疲れた~!」
  確かにヘルメットは普段被らないからな。レジャーシートを広げる。前回と違い大きいサイズを用意した。これなら3人座れる。
真樹「おにぎり美味しそうだね♪」
想里愛「「さっそく食べましょう♪」
咲桜里「サオリはこれ食べる!」
  弁当を広げて皆で食べる。弁当箱を開けるとキャベツの隙間にミニトマトをハートの形にして入れてある。まるで新婚夫婦のようだ。
真樹「僕のには梅が入ってたよ」
想里愛「あたしは銀鮭ですね♪」
咲桜里「サオリのは焼きタラコだ~」
  塩がよく効いて美味しい。米と海苔は相性が良い。葡萄のジュースも好評のようだ。果物は洋梨を切ってきた。柔らかく甘い触感だ。
想里愛「美味しかったですね♪」
真樹「そうだね、二人の手料理美味しかったよ♪」
咲桜里「ごちそうさま♪」
  食後に少し雑談する。実はこの前懸賞サイトで応募していた1泊2日で都内の高級旅館の無料券が当たっていた。
  大人2名又は大人1名と子供2名が無料になる。明日ソリアもサオリも一緒に行ってくれる事になった。明日が楽しみだ。
真樹「そろそろ・・・行く?」
想里愛「はい、行きましょう♪」
咲桜里「サオリに任せて!」
  サオリが頼もしい。一番張り切っているようだ。さっそくスロープ状の階段まで移動する。

〇神社の石段
真樹「最初は僕だけ登ってみるよ、2階は危ないかもしれないし・・・」
  ソリアに手を握られる。サオリは心配そうに見つめている。
想里愛「真樹さんだけ危険な目に合わせたくないです、一緒に行きましょう!」
咲桜里「そうだよ!サオリが守ってあげるから、ね?」
真樹「ありがとう・・・みんなで行こう!」
  螺旋状の緩やかな坂を上がっていく。2周グルリと回って登り2階に着いた。

〇薄暗い谷底
  一階と同じ光が明滅する。地面は山地のようで歩きにくい。視界は白く覆われているが薄い霧のおかげで薄っすらと奥まで見える。
真樹「見た限り何もいない・・・かな?」
想里愛「真樹さん・・・!樹の影に・・・!」
  樹のふもとで何かが動いた。アレは・・・!?
咲桜里「キノコさんが歩いてる」
翠「♪」
  サオリが呟く。キノコのモンスターなのか?リュックから双眼鏡を取り出す。緑色のキノコが歩いている。
  木の葉が保護色になっていて言われなければ気付かなかった。傘は黒色の斑点の模様になっている。
真樹「あのキノコは・・・襲ってくるタイプか気になるね」
想里愛「そうですね・・・遠くからこちらの姿を見せて様子を見ますか?」
真樹「そうだね、いつでも階段を降りれるようにしておこう」
咲桜里「きっと優しいキノコさんだよ!」
  サオリの言うように優しいキノコなら良いのだが・・・。ゆっくりキノコのいる樹に近づく。
真樹「近くにはあのキノコしかいないね」
想里愛「そうですね、群れるモンスターではないのかもしれません」
咲桜里「キノコさん、樹の周りで何してるんだろう?」
  30メートル程の距離に近づく。キノコは樹の周りを回っているだけで襲ってくる気配は無い。
真樹「襲ってくるモンスターじゃないみたいだね」
想里愛「そうですね、危険なモンスターじゃなくて良かったです」
咲桜里「やっぱり優しいキノコさんだったんだね」
真樹「僕思ったんだけど・・・いつかは戦う必要が出てくると思うから、あのキノコと戦ってみようと思うんだ」
想里愛「そうですよね・・・倒して素材として道具屋さんに売ればお金も貯まりますし・・・あたしも一緒に戦います」
咲桜里「ダメだよ、キノコさんは悪くないよ!」
  意見が割れてしまい少し話し合いが続く。今すぐ戦う必要は無いし、危険が伴うので攻撃するのは止める事にした。
  気が付くとサオリがキノコに近づいて頭を撫でている。僕は慌ててサオリの元へ行くがキノコも満更でも無い顔をしている気がする。
  ソリアや僕も頭を撫でるが攻撃はされない。本当に優しいモンスターのようだ。
真樹「キノコって胞子飛ばしてくるかと思ったけど・・・そうでもないんだね」
想里愛「優しいキノコさんなんですね♪」
咲桜里「お家に連れて帰りたいね♪」
  先程から僕達の後ろをキノコさんが付いて来ている。まさか懐かれてしまったのだろうか。どこまでも付いてくる。
  一応僕が一番後ろになって、モンスターへの殿を務める。キノコさんには悪いがまだ100%信用するのは危ない。
想里愛「あの大きい樹で少し休みます?」
真樹「そうだね、随分歩いたしこの樹で休もう」
咲桜里「サオリ疲れたー!」
  小高い丘の樹で休憩する。キノコも側に座っている。手や足は無いけど、座っているように見えた。
  キノコはサオリに一番懐いていて、サオリは膝の上にキノコを乗せている。まさかダンジョンでこんな展開になるとは思わなかった。
  ガサッ!!

〇丘の上
真樹「うわっ!」
想里愛「きゃっ!」
  樹から何かが落ち・・・降りてきた!?これは・・・栗鼠?丸々と太った体つきでソフトボール程の大きさはある。
栗鼠「キーーッッ!!」
  栗鼠が僕に襲い掛かりヘルメットに体当たりを受ける。
真樹「ぐっ・・・」
  栗鼠が動かない・・・どうしたんだ?いや、動けないみたいだ。まるで魔法で止められてるみたいに・・・。
咲桜里「キノコさん?」
  サオリが話かけている、バッと見るとキノコの口元が少し動いている。
  つぶらな瞳はジッと栗鼠を捉えて離さない。金縛りでもかけているのか・・・?
想里愛「真樹さん、今が好機です!栗鼠さんには悪いけど・・・!」
真樹「そうだね、また襲われたら大変だし・・・僕が攻撃するよ!」
  竹刀で何回か叩くがあまり効いていない気がする。やるしかない・・・!
  僕は小手を付けて動けないように抑え込んでからナイフで栗鼠の首筋を刺して掻き切る。血が上着にかかってしまったが仕方ない。
想里愛「動かなくなりましたね・・・」
咲桜里「おにーちゃん、やっつけれたね!」
真樹「うん・・・なんとかなったよ」
  チラリとキノコを見ると、もう口元は動いていない。瞳も栗鼠を見ていなかった。
  さっきのが金縛りの魔法だとしたら・・・このキノコに助けられた事になる。
真樹「ありがとな・・・」
  僕はキノコを撫でる。心なしかキノコの瞳が大きくなってプルプル震えている気がする・・・喜んでいるのか?
真樹「この栗鼠は血を抜いて肉にして、皮も剥いでソリアの街で売ろう。初めての戦利品だよ」
想里愛「そうですね、お金も貯まるしそうしましょう♪」
咲桜里「お金が貯まったら街の宿屋さんに泊まりに行こう?♪」
  みんなで和気藹々(わきあいあい)と話す。キノコも喋れれば意思疎通できるのに・・・。
真樹「僕思ったんだけど・・・キノコさんが家まで付いてくるとしたらさ・・・」
想里愛「あたしも思いました、虹色の花にお願いしてキノコさんと話せるようになりたいです」
咲桜里「キノコさんと話せるの?やったー♪」
真樹「月も変わったし、帰る時にお願いしてみよう♪」
  月末にお願いしたから日数が経っていないがうまくいくだろうか?そう考えながら小手と軍手を外してソリアの頭を撫でる。
  サオリがキノコを抱えて隣に来たのでサオリとキノコの頭も撫でる。
想里愛「目印のおかげで帰り道も迷わず帰れますね♪」
咲桜里「さすが真樹おにーちゃん♪」
  ソリアやサオリの尊敬の眼差しを受ける。僕も鼻が高い。木の実を回収しながら来た道を戻っていく。

〇神社の石段
真樹「階段が見えてきたね」
想里愛「はい、無事帰れて一安心です♪」
咲桜里「楽しい冒険だったね♪」
  魔物や動物に遭遇することなく階段に辿り着く。よく見たら階段のすぐ側に丸い穴が空いている。外を覗いでみる。
真樹「なっ・・・!」
  高い。ここは階段を少しあがっただけで普通の建物の2~3階の高さのはず。体感では大学の時に登った15階の高さは優に超える。
想里愛「「あれ・・・あたし達の家じゃないですか?」
咲桜里「ほんとだー、すごくちっちゃいね!」
  なんと僕達の家が見えた。本当にものすごく小さい・・・米粒程の大きさだ。一体どれ程の高さなんだ。
真樹「ビックリしたけど・・・降りて虹色の花にお願いしよう♪」
想里愛「はい♪」
  1階に降りて林檎の樹の中を歩く。
真樹「ここだね、誰がお願いしようか?」
想里愛「真樹さんにお願いします♪」
  サオリは疲れ気味なのか少し眠たそうだ。
真樹「僕達が動物や魔物や植物などの人間以外の気持ちや言葉を理解できるようになりますように」
  言葉にしてお願いした。お願いは叶ったのだろうか・・・キノコを見る。
翠「おなか・・・すいた」
  ソリアとサオリを見る。二人にも聞こえたようだ。
真樹「お家に帰ったら何か食べさせてあげよう」
想里愛「果物・・・あげてみます?」
  試しにもぎたての林檎をあげてみる。そのままだと大きいのでナイフを水で洗って拭いてから切る。
翠「おい・・・しい」
真樹「おお・・・食べてる」
想里愛「可愛いキノコさんですね♪」
咲桜里「キノコさん良かったね♪」
  シャーペン芯ちゃん(略してシャー芯)のポーちゃんのような口調だな。名前はキーちゃんで決まりか?
  ダンジョンから出る、もう夕方だ。時間が経つのが早い。

〇薄暗い谷底

〇洞窟の入口(看板無し)

〇桜並木
真樹「今日は帰ろう、この調子で頑張ればきっと精霊さんも助けられるよ」
想里愛「そうですね、充実した1日でした♪」
咲桜里「キノコさん、一緒にお家帰ろうね♪」
翠「みんなと・・・おうち・・・かえる」
  サオリは疲れてるので僕がキノコを持って歩く。
  あの山地を歩けるのだから持たなくても付いてこれそうだが・・・僕もだいぶ心を許してるのだろう。
想里愛「着きましたね♪」
咲桜里「ただいまー♪」
  さっそくソリアの家でみんなくつろぐ。キノコだけ少し水洗いして拭いてから家に入れた。
  靴が無いからどうしても土が残ってしまっているのだ。
翠「つぎからは・・・おゆで・・・あらって」
真樹「あ・・・ごめん、そうするよ」
  あのダンジョンの中には秘湯でもあるのか・・・?
想里愛「疲れてしまいましたね、今日は早めに寝たいですね」
咲桜里「サオリ疲れたよー」
翠「ぼく・・・やすむ」
真樹「皆お疲れ様、今日はゆっくり休もう」

〇実家の居間
  二人とキノコには僕が夕食を作るまで休んでもらう事にした。とはいえ僕も疲れているので今日の料理は簡略化する。

〇おしゃれなキッチン
  さっとごはんを炊いて豚肉と玉葱と人参を焼いてる間にレトルトのカレールーを温める。あとは平皿に盛ればカレーの完成だ。
  カルビとキムチを焼肉のタレで焼いてキムカル丼も作った。キムチは少しだけ焼くと温かくて美味しい。
  さらに血抜きした栗鼠の肉を捌いて焼いてみた。味付けは塩コショウにした。味見をしたが毒は無いようだ。毛皮も売れるといいな。
真樹「さてと、みんなを起こそうかな」

〇古いアパートの一室
  3人共スヤスヤ寝ている。僕はソリアの隣に座り可愛い寝顔を見ながら頭を撫でる。みんなが起きるまで待ったほうが良いかな。
真樹「そうだ、スマホの写真見ようかな」
  写真を開く。ソリアが僕に愛情を注いでいる写真だった。
  いつもは僕から肌を重なるのだが、ソリアから来てくれるのは嬉しい。待ち受け画面にしようかな?
想里愛「ふわあ・・・すみませんぐっすり眠ってしまいました」
真樹「おはよ♪」
咲桜里「良い匂いするー」
  サオリも起きたな。キノコは半目になっていて寝てるか起きてるかわからない。
  ダンジョンで初めてみた時より怖い気がする。あ・・・起きた。
真樹「夕食できてるよ、食べよう♪」
想里愛「どちらの料理も美味しそうですね♪」
咲桜里「わーキムカル丼だー♪」
翠「ぼくも・・・たべる」
  飲み物は脂の消化に良いウーロン茶が良いかな。ちゃんと4人分用意した。キノコはどうやって食べるのか気になる。
「いただきまーす♪」
  キムカル丼は待屋でたまに食べていたけど、自作も美味しい。
想里愛「キムチの白菜が歯ごたえがあって美味しいです♪」
咲桜里「カレーも美味しいよ♪」
翠「はじめての・・・あじ」
  簡単に作ったけど好評で良かった。4人でカレーとキムカル丼を一口ずつ食べ合いっこする。
咲桜里「キノコさんすごーい!」
想里愛「ま、魔法ですか!?」
真樹「えっ!」
  なんと1口分空中に浮いている。それがみんなの口元へゆっくり移動する。しばらく戸惑うが3人共食べる。
翠「みんなも・・・きっと・・・できる」
  今度魔法を教わりたいなと思った。ちなみに栗鼠の肉も普通に美味しかった。
真樹「じゃ・・・食器片づけてくるね」
咲桜里「おにーちゃんごちそうさま♪」
想里愛「明日は旅館で温泉ですね♪」
翠「ぼくは・・・しんりんよく・・・する」
真樹「はーい、楽しみだね♪」
  皆明日を楽しみにしているようだ。さっと食器を洗い食卓に戻る。

〇実家の居間
真樹「そういえばさ、キノコさんの名前なんて呼べば良いかな?」
翠「ぼくなまえ・・・ないから・・・みんなが・・・きめて」
想里愛「キノコさんの名前どうしましょうか?」
咲桜里「緑色だからミドリ!」
  ストレートだなぁ・・・と言いつつ僕もそう考えたことがある。
真樹「キノコだからキーちゃんはどうかな?」
  しばらく相談した結果、名前はミドリに決定した。
翠「みんな・・・なまえきめてくれて・・・ありがとう」
真樹「よろしくね、ミドリ」
想里愛「よろしくお願いしますね♪」
咲桜里「ミドリちゃん仲良くしてね♪」
  呼びやすくなってよかった。
真樹「今日はお風呂どうしよっか?」
翠「このちかく・・・ひとう・・・ある」
想里愛「秘湯ですか?知らなかったです、ミドリちゃんは物知りですね♪」
咲桜里「秘湯いこー♪」
翠「あのおかの・・・うえ」

〇露天風呂
  確かにあの道は通った事が無い。家の近くには湧き水があり、その上を登っていき割とすぐ着いたがなるほど・・これは気付かない。
  山沿いに進むと岩の隙間に水が流れている。いやこれは・・・源泉!?
  源泉の先に進むと岩で囲った秘湯に着いた。
翠「ぼく・・・つくってはいった」
真樹「4人皆で入れそうだね♪」
想里愛「そうですね♪わくわくしますー♪」
咲桜里「早くはいろー♪」
  さっそくみんなで湯船に入る。少し距離を取って着替えれば湯気で見えずに済みそうだ。おや、手を握られる。
想里愛「今日も・・・お願いします♪」
咲桜里「おにーちゃん、サオリもお願いね♪」
  おお、今日もナイス果実!・・・さて、丁寧に服も畳んだし秘湯に入ろうかな。
想里愛「良い湯加減ですね~♪」
真樹「そうだね、湯は透き通ってるけど湯気がすごいから隠さなくていいね♪」
咲桜里「秘湯気持ちい~♪」
翠「いいゆ・・・ひゃくてん」
  確かに100点満点のお風呂だ、毎日ここの秘湯に入りたいぐらいだ。
真樹「明日の旅館もこのぐらい気持ち良い湯だといいね♪」
想里愛「そうですね、楽しみです♪」
咲桜里「旅館~♪」
  明日の話を楽しくする。旅館にはテナントがあり、ロンリ・キーテもありそこで服を見る事になった。みんなの試着姿を早く見たい。
真樹「良い星空だね」
想里愛「曇ってなくてよく見えますね♪」
翠「まんてんの・・・そら」
咲桜里「キラキラしてるね♪」
  夜空を眺めてる内に皆温まったようだ。これだけ温まれば湯冷めしないだろう。
想里愛「そうですね・・・あれ?あそこに流れ星が!」
  ソリアが指差し皆が空を見上げる。
真樹「んっ・・・」
想里愛「・・・えへへ♪」
  皆の隙を付いてソリアが僕に唇を重ねてくれる。なかなか2人きりになれないから甘い空気になれなかったのでとても嬉しい。
真樹「ありがとっ」
想里愛「えへへ、こちらこそ♪」
咲桜里「お姉ちゃん、流れ星見えないよ~?」
翠「どこにも・・・みつからない」
想里愛「もう流れてしまったのかもしれませんね」
真樹「そ、そうだね・・・残念だなぁ」
  僕も話を合わせる。ありがとうソリアと流れ星様。充分湯船に浸かったので皆で家に帰る事にする。
真樹「暗いから足元に気を付けてね」
咲桜里「だいじょーぶだよ♪」
翠「ぼくも・・・きをつける」

〇古いアパートの一室
  無事家に着いたのでさっそく布団を敷く。寝る前に桃のストレートジュースをみんなで飲む。
  いつ飲んでも美味しい。やっぱり桃は最高だね、いろいろな意味で。
咲桜里「このぬいぐるみかわいいね♪」
  サオリが苺を持った兎さんを抱きかかえている。サオリの抱っこ枠を奪われた為か、ミドリのつぶらな瞳は兎さんを捉えて離さない。
真樹「ふわあ・・・眠くなってきたなぁ」
  僕はさっそく布団に入る。
想里愛「あたしも眠たくなってきました♪」
咲桜里「サオリも~」
翠「ぼくも・・・」
  皆それぞれの布団に入る。冒険の疲れが出てきたようで僕はすぐに眠りに落ちる。

〇古いアパートの一室
想里愛「・・・さん、真樹さん・・・」
  耳元で声が聴こえる。目を開けたらソリアが僕をジッと見つめている。
想里愛「一人だとなかなか眠れなくて・・・♪」
  甘えにきてくれたようだ、とても嬉しい。
真樹「僕もソリアと一緒じゃないと眠れないよ、来てくれてありがとね♪」
想里愛「えへへ・・・♪」
  都合良くサオリもミドリも眠っているようだ・・・貴重な二人きりの時間を大切に育んでいきたい。
真樹「ふふふ・・・ソリアおいで♪」
想里愛「はーい♪」
  ギュっと抱きしめて気付いたがいつのまにか僕もソリアも服を着ていない。あれ、寝る時は着ていたような・・・。
想里愛「あ・・・布団から出ると寒いかもしれないので・・・お手伝い・・・しちゃいました」
真樹「そ・・・そうだよね、ソリアのおかげで手間が省けて助かるよ~」
  ということは・・・ソリアの積極さがしゅごい。これは嬉しい誤算だね。
  ちょっと過程を想像しそうになるけど・・・顔が赤くなりそうなので考えないようにした。
想里愛「真樹さん・・・♪」
真樹「ソリア・・・♪」
  ソリアが目を閉じて可愛い顔を近づけてくれる。僕も目を閉じて唇を重ねる。
  明日の運転に影響が心配だけど、朝まで寝ないでこうしていたい。
想里愛「さっきの秘湯より、今が一番温かいです♪」
  上から強く抱きしめられながら言われる。とても幸せだ。全身を甘い匂いと柔らかい感触が包みこむ。
真樹「そうだね、今が一番温かくて幸せだよ♪」
想里愛「あたしも幸せです♪」
  息が止まるほどのキスを受ける。今日のソリアは本当に積極的だ。深い愛情を感じる。
想里愛「今日はほとんど甘えられなかったから・・・いっぱい甘えちゃいますね♪」
真樹「嬉しいな♪いっぱいソリアに甘えられたいよ♪」
想里愛「まーさきさんっ♪」
  ソリアが寄り添って僕の鼓動を聴いている。実際にされる側になると理解るけどこれは恥ずかしい。
想里愛「すごくドキドキしてます・・・よ?♪」
  上目遣いで見つめられる。ますますドキドキしてきた。
真樹「うん・・・ソリアが可愛くて大好きだからドキドキするよ♪」
想里愛「えへへ・・・♪真樹さん大好き♪」
想里愛「真樹さんもあたしのドキドキ聴いてください♪」
真樹「うん、いっぱい聴いちゃうぞ♪」
  えへへと照れながら話す。山脈に耳を当てて聴くとき、頬に柔らかい感触が伝わる。
真樹「ソリアもすごくドキドキしてるね・・・♪」
想里愛「はい・・・♪ぁっ・・・♪」
  愛しい彼女の鼓動を聴きながら、もう片方の雄大な大地を僕の指先が探検する。
真樹「ダンジョンを探検している時よりもドキドキさせちゃうね♪」
想里愛「ドキドキが止まらないです~♪」
  僕の指先は一歩一歩大地を踏みしめる。その雄大な大地は僕の旅の疲れを癒し受け入れるように、足元が深く沈み込んでいく。
真樹「また朝までずっとこうしてたいね♪」
想里愛「あたしもそう想ってました、ずーっとあたしを離さないでください♪」
真樹「うん、何十年先もずーっと抱きしめて離さないよ♪」
想里愛「ぁ、ぁぅぅ・・・」
  ふふふ、照れ顔のソリアが見れて満足だ。頭を撫でて耳元で囁く。
想里愛「そんな・・・照れ顔も可愛いだなんて・・・」
  手で顔を隠すソリア。相当恥ずかしいようだ。僕はゆっくりその手の指の隙間を広げていく。
真樹「ふふ、照れ顔のソリアも笑顔のソリアも僕だけが堪能しちゃうね♪」
想里愛「はい・・・あたしを堪能していいのは真樹さんだけです・・・♪」
  指の間で瞳を僕に向けて話してくれる、すごく愛しくて可愛い。
真樹「今日もすごく綺麗だね・・・♪」
  僕はソリアの全身をしっかり見る。
想里愛「ぁぅぅ・・・そ、そうですか?♪」
真樹「うん、毎日見ていたい♪」
想里愛「えへへ・・・いっぱい見てください♪」
  とびきりの笑顔を見せてくれる。頬の赤さは愛情の印だと思う。
  君を想いながらギュっと抱きしめてキスする。桜色の山の頂きもとても綺麗だ。
想里愛「あたし・・・完全に真樹さんの色に染まってるかな?」
真樹「完全に僕の色に染めたよ」
  僕が上になってソリアが身動きできないぐらいしっかり抱きしめる。
想里愛「こうしてるとまるであたし達がひとつになってるみたいですね♪」
真樹「そうだね、こうやって全身でくっついてると僕達がひとつになってるみたいだね♪」

〇古いアパートの一室
想里愛「もっと・・・つに・・・なりたい・・・」
  ソリアが俯きながら小声でポツリと言う。
想里愛「・・・あっ!今の・・・聞こえちゃいました?」
真樹「ごめん、よく聞こえてなかったよ」
想里愛「そうですか・・・、なんでもないので気にしないでください♪」
想里愛「想里愛の心の声「聞いて欲しかったような、そうじゃないような・・・この寂しい気持ちは・・・やっぱり聞いて欲しい!」」
想里愛「ま、真樹さん・・・!あの・・・ぁぅぅ・・・」
  僕はソリアが言おうとしている事を考える。もっと・・・なりたい・・・何か言いかけたんだ。思うにたぶん・・いやきっと・・・!
真樹「もしかしてだけど・・・あの・・・その・・・」
  ソリアと同じように口籠ってしまう。しっかりしろ僕。
真樹「もっと・・・ひとつになりたい・・・って事で・・・あ、合ってるかな?」
想里愛「・・・・・・・・・うん」
  ソリアが頷く。自然と抱きしめる力が強くなる。
真樹「・・・僕もソリアとひとつになりたいよ」
想里愛「真樹さんがあたしの事を大切にしてくれてすごく幸せで、真樹さんの微笑みを見る度にそう強く想うようになっていきました」
想里愛「あたし・・・」
真樹「僕も・・・ソリアの色々な表情を見て今どんな事を考えているのかなってソリアの事を考える度に」
真樹「大切にしたい想いと同じぐらいソリアとひとつになって壊したいぐらい愛したいって想いも強くなっていったんだ・・・」
想里愛「えへへ・・・あたしが壊れるぐらい・・・・・・愛して・・・」
真樹「ソリア・・・壊れるぐらい・・・愛し・・・」
  ん・・・?こんな大事な時に・・・なんで?眠たくなるんだ・・・?
  急な眠りに落ちた時、外では山のふもとで家の様子を窺う魔物が3体いた。
  そして家の中の様子を知っているかのように、一歩一歩近づいてくるのだった・・・。

次のエピソード:第12話 奇襲を凌いだら観光と旅館で愛を深めて(前編)

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