読み切りです。(脚本)
〇学校の廊下
・・・・・・・・・・・・。
・・・・・・。
延雄「あー、今日も1日疲れたなー。 こんな時間だし、そろそろ帰るか」
〇教室
延雄「・・・・・・ん? 誰かいる・・・・・・」
少女「・・・・・・」
延雄(誰だろう・・・・・・。 見た事ない顔だけど、こんな子同じクラスにいたかな?)
延雄(ひとりで黒板の方をじっと見つめて・・・・・・ いったい何してるんだろう)
少女「・・・・・・」
延雄「・・・・・・」
少女「・・・・・・6時」
延雄「・・・・・・えっ?」
少女「6時だな、と思って」
延雄「・・・・・・? それが、どうかしたの?」
少女「知ってる? この学校の七不思議のひとつに、『1年2組の幽霊さん』っていうのがあるの」
少女「夕方の6時に、ひとりで1年2組の教室にいると、突然怖い幽霊が現れて、あの世に連れていかれちゃうんだって」
延雄「そんなの、初めて聞いたよ」
延雄「・・・・・・ていうか、『1年2組の教室』ってここじゃないか!」
延雄「まさか、本当に出たりしないよな・・・・・・!?」
少女「・・・・・・見えないの?」
少女「ほら、キミの肩に、真っ赤な手が・・・・・・」
延雄「えええええええ!?」
少女「・・・・・・」
延雄「・・・・・・」
少女「・・・・・・。 ごめん、嘘」
延雄「・・・・・・え? う、うそ?」
少女「うん。嘘」
延雄「なんだよ・・・・・・。 おどかさないでくれよ・・・・・・」
延雄「・・・・・・あ。 ていうか、さっき言ってたもんな。『ひとりで教室にいると幽霊が出る』って」
延雄「ここには俺とキミのふたりいるから、出なくて当然か」
少女「・・・・・・ふうん。 キミって幽霊の事信じるタイプの人なんだ」
延雄「へっ? ・・・・・・い、いや、別にそんな事はないぞ」
延雄「幽霊なんて、いるわけないだろ」
少女「それでも、あんなに驚くんだ」
延雄「う、うるさいなあ」
少女「・・・・・・ふふ」
延雄「・・・・・・」
延雄「・・・・・・」
延雄「本当は、少しだけ信じてるんだ」
延雄「実際に見た事なんて今まで1度もないけどさ。 いてもおかしくはないんじゃないかな、とは思ってる」
少女「幽霊の事、怖い?」
延雄「少しね」
延雄「・・・・・・でもそれ以上に、『悲しい』って思うかな」
延雄「この世に未練があったり、恨みがあったり・・・・・・もしそういう悲しい感情を抱いてこの世にとどまっているのなら・・・・・・」
延雄「ちゃんと成仏して、ちゃんと幸せになってほしい。 俺は、そう思うよ」
少女「・・・・・・」
少女「うん。そうだね」
少女「わたしも、そう思う」
少女「やっぱり幽霊は、いてはいけない存在だと思うし・・・・・・見えてはいけない存在だと思うから」
延雄「・・・・・・」
少女「・・・・・・」
少女「・・・・・・だから。 願わせてくれるかな」
延雄「──え?」
〇黒背景
「・・・・・・キミの、幸せを」
〇教室
・・・・・・ガラッ!
なお「ごっめーん! 遅くなっちゃった!」
なお「委員会が思った以上にかかっちゃってさー」
とも「うん。大丈夫だよ」
なお「・・・・・・それより、どうだった!? 『1年2組の幽霊さん』!」
なお「出た!? いた!?」
とも「・・・・・・」
とも「ううん。なんにも」
なお「そっかー。 ともちん霊感強いから、なんか収穫あると思ったんだけど、やっぱり何もなかったかー」
なお「まあ、学校の七不思議なんて、そんなもんだよねー」
とも「うん。そんなもんだよ」
とも「この教室に、幽霊はいないよ」
とも「・・・・・・これからも、ずっとね」
なお「ばかっ! それじゃ困るの! 今度の特集の記事、どうすんのよ!」
とも「わたしは別に、新聞部じゃないし・・・・・・」
なお「O☆DA☆MA☆RI!! とにかく、こうしちゃいられないわ! 次よ次!」
なお「さあ、ともちん! 次は七不思議の中のひとつ、『理科室の踊るホルマリンづけ』を調べに行くわよー!」
とも「ひえー・・・・・・」
〇黒背景
おしまい。
幽霊が悲しいものって、少しわかる気がします。
未練を残して成仏できてないわけですから。
彼は何の未練があったんでしょうね。
『幽霊って悲しい』っていうセリフが深いですね。私も成仏できない魂がこの世を彷徨っているって思うタイプなので共感しました。霊感の強い女のこならではの配慮がすばらしいです。
男の子が幽霊さんだったんだね!!しかも女の子は幽霊さんの願いをきいて叶えてあげたなんて優しいなぁ。それにしても、幽霊さん自身が幽霊である自覚なく描かれていていたのがおもしろかったです。