勇者と王子のダブルステッチ

星月 光

第11話 国境での再会(脚本)

勇者と王子のダブルステッチ

星月 光

今すぐ読む

勇者と王子のダブルステッチ
この作品をTapNovel形式で読もう!
この作品をTapNovel形式で読もう!

今すぐ読む

〇貴族の応接間
宮廷魔導師リゼット「ミシェル・・・」
第一王子ミシェル「・・・・・・」
宮廷魔導師リゼット「本当にあれでよかったのか?」
第一王子ミシェル「・・・いいんだ」
宮廷魔導師リゼット「でも・・・」
第一王子ミシェル「エクシリオを処刑したって ・・・母上は戻ってこない」
第一王子ミシェル「・・・それに」
第一王子ミシェル「同郷の魔導師を処刑すれば リゼットへの風当たりは強くなる」
宮廷魔導師リゼット「わたしのことはいい!」
宮廷魔導師リゼット「伯母上を侮辱したのは エクシリオだけじゃない!」
宮廷魔導師リゼット「たとえミシェルが許しても わたしは奴らを許せない・・・!」
第一王子ミシェル「僕だって許したわけじゃない!」
第一王子ミシェル「でも・・・」
第一王子ミシェル「憎しみに憎しみを重ねても つらくなるだけだ・・・」
宮廷魔導師リゼット「・・・ミシェルは・・・ 優しいんだな」
宮廷魔導師リゼット「わたしは、そんなふうには思えない・・・」

〇水の中
  ・・・あのとき、リゼットは
  ああ言ってくれたけど
  本当は・・・
  処刑の決断を下すのが怖かっただけだ
  人を殺すのが怖かった
  たとえ相手が、自分の母の仇でも
  あのとき、みんなは僕を
  意気地なしだと笑ったけど
  本当にそのとおりだ・・・
  ・・・・・・
  戦いが始まったら・・・
  せめて足を引っ張らないようにしないと

〇黒背景
第一王子ミシェル「何事ですか!?」
リュテス兵「敵襲です!」
騎士団長ヴァレリー「急ぎ、灯りを用意させます!」
第一王子ミシェル(帝国は召喚魔法に長けてはいるが 自然魔法の使い手には乏しいはず)
第一王子ミシェル(夜間の視界を確保するのも 容易ではないはずだ)
第一王子ミシェル(ましてこの雨だ 松明も使えないだろう)
第一王子ミシェル(なにか策があるのか・・・?)
騎士団長ヴァレリー「決して城門を突破させるな!」
リュテス兵「灯りを準備しました!」
騎士団長ヴァレリー「よし、点火!」

〇要塞の回廊
リュテス兵「・・・!」
騎士団長ヴァレリー「敵は何騎だ!?」
リュテス兵「あ、あ・・・!」
第一王子ミシェル「どうしました!?」

〇流れる血

〇要塞の回廊
リュテス兵「ば・・・化け物・・・!」
騎士団長ヴァレリー「なんだ、あれは・・・!?」
第一王子ミシェル「おそらく、召喚された魔物です」
第一王子ミシェル「弱点を探り、退けましょう!」
騎士団長ヴァレリー「承知!」

〇荒野
勇者マリー「雨・・・」
第二王子クレール「国境が近いということだろう」
第二王子クレール「・・・・・・」
勇者マリー「どうしたの?」
第二王子クレール「ミシェル殿は・・・」
第二王子クレール「わたしが戻らなければいいと 思っているのだろうな」
勇者マリー「どうして?」
第二王子クレール「どうしてって・・・」
勇者マリー「ミシェル様はそんな人じゃないでしょ」
第二王子クレール「・・・出会って間もない相手のことを ずいぶんはっきりと言い切るのだな」
勇者マリー「ずっと一緒にいた相手でも わからないことはたくさんあるもん」
勇者マリー「だから、その逆もあると思うよ」
第二王子クレール「ミシェル殿が貴方に優しいのは 貴方に好意を抱いているからだ」
第二王子クレール「わたしには・・・ 兄に好かれる理由がない」
勇者マリー「嫌われる理由もないでしょ?」
第二王子クレール「いや、それは・・・」
勇者マリー「それに、もし嫌われてたって」
勇者マリー「嫌いな人はいなくなればいいなんて 思うような人じゃないって」
勇者マリー「あたしはそう思うけど」
第二王子クレール「・・・・・・」
勇者マリー「クレールはどう思うの?」
第二王子クレール「・・・ああ、そうだな」
第二王子クレール「わたしも、そう思う」
勇者マリー「でしょ?」
第二王子クレール「つまらないことを言ったな 忘れてほしい」
勇者マリー「不安なんでしょ? しょうがないよ」
勇者マリー「けど、どうにかなるって信じれば 意外とどうにかなるものだよ」
第二王子クレール「・・・ああ、ありがとう」
第二王子クレール「さあ、行くぞ!」

〇荒野の城壁
リュテス兵「こ、この剣で倒せるのか・・・?」
騎士団長ヴァレリー「怯むな! 突撃!」
リュテス兵「効いてるみたいです!」
騎士団長ヴァレリー「よし、このまま蹴散らすぞ!」
巫女マイカ「・・・・・・」
騎士団長ヴァレリー「これが最後の一匹か」
騎士団長ヴァレリー「見た目は不気味だが たいしたことはなかったな」
リュテス兵「団長! あれを・・・!」
騎士団長ヴァレリー「な・・・ なぜ・・・」
騎士団長ヴァレリー「間違いなく倒したはずだ!」
リュテス兵「新たに召喚されたのでしょうか?」
騎士団長ヴァレリー「いや、魔力の波動は感じなかった」
リュテス兵「では・・・倒した魔物が 復活した、と・・・」
騎士団長ヴァレリー「バ、バカな・・・!」
巫女マイカ「動揺しているようだな」
巫女マイカ「城門を突破できるのも時間の問題だ」
皇帝トビアス「・・・あの者たちは不死身なのか?」
巫女マイカ「弱点はある」
巫女マイカ「だが、奴らにそれが見抜けるかな」
巫女マイカ「仮に見抜けたとして・・・ 対処できなければ意味はないが」
皇帝トビアス「それは、いったい・・・」
巫女マイカ「あれらは戦闘力自体はさほど高くはない」
巫女マイカ「だが、弱点を突かない限り 永遠に復活する」
皇帝トビアス「その特性を活かして 王国軍を消耗させればよい・・・と」
巫女マイカ「そのとおり」
巫女マイカ「わたしたちはただ そのときが来るまで待っていればいい」

〇要塞の回廊
第一王子ミシェル「・・・あれは・・・!」
「ミシェル様! どちらへ・・・」
第一王子ミシェル「わたしも戦います!」
「え・・・!? しかし・・・」
第一王子ミシェル「みんなに伝えなければ!」
第一王子ミシェル「やみくもに斬るだけでは あの魔物は倒せない!」
第一王子ミシェル「このままでは、城門を突破されます!」

〇荒野の城壁
騎士団長ヴァレリー「はあ・・・はあ・・・」
騎士団長ヴァレリー「なんてしぶとい奴らだ!」
騎士団長ヴァレリー「このままでは・・・!」
騎士団長ヴァレリー「しまっ・・・!」
「ヴァレリー!」
騎士団長ヴァレリー「殿下・・・!?」
第一王子ミシェル「こいつらの弱点は腰骨だ!」
第一王子ミシェル「復活するとき 腰骨を軸に再構成されていた」
第一王子ミシェル「だからきっと 腰骨を砕けば復活できなくなるはずだ!」
騎士団長ヴァレリー「わ、わかりました!」
騎士団長ヴァレリー「行くぞ、みんな!」
巫女マイカ「・・・これほどすぐに 弱点を看過されるとは」
巫女マイカ「あの男、何者だ?」
皇帝トビアス「第一王子のミシェルだ」
皇帝トビアス「オレと同じ庶子で・・・」
皇帝トビアス「剣術の才に恵まれながら 戦いに向かない性格らしい」
巫女マイカ「・・・ほう」
皇帝トビアス「あの若造・・・ 常に異母弟の影に隠れていたはずなのに」
皇帝トビアス「なぜこの戦いに参加しているのだ?」
巫女マイカ「・・・・・・」
第一王子ミシェル「怯みはしません!」
騎士団長ヴァレリー「殿下に続け!」
皇帝トビアス「まずいぞ、マイカ どんどん数を減らされている」
巫女マイカ「・・・ふ」
巫女マイカ「ふふっ・・・ ふふふ・・・」
皇帝トビアス「・・・マイカ?」

〇荒野
宮廷魔導師ユーグ「なんだ、あれは・・・」
宮廷魔導師ユーグ(あんな不気味な魔物を使役する皇帝に 取り入るのは気が引けるな)
宮廷魔導師ユーグ「・・・仕方がない」
宮廷魔導師ユーグ(かつて王宮を追われた フィロメナの魔導師・・・)
宮廷魔導師ユーグ(名前は確かエクシリオだったか)
宮廷魔導師ユーグ(奴と手を組んで リュテスを乗っ取るという手もある)
宮廷魔導師ユーグ(エクシリオは生きているのだろうか)
宮廷魔導師ユーグ(あのとき、あの庶子が尻込みして 処刑しなかったのが幸いだったな)
宮廷魔導師ユーグ(夜が明けたらフィロメナへ・・・)
宮廷魔導師ユーグ「殿下と・・・勇者!?」
宮廷魔導師ユーグ(なぜ・・・ どうやって戻ってきたんだ!?)
宮廷魔導師ユーグ(いや、それよりも 見つかる前に逃げなければ!)

〇荒野の城壁
第一王子ミシェル「はあッ!」
第一王子ミシェル「近くに術者がいるはずだ!」
騎士団長ヴァレリー「急ぎ、索敵させます!」
巫女マイカ「矮小な者どもがここまであがくとは」
巫女マイカ「笑わせてくれる・・・」
巫女マイカ「・・・よろしい」
巫女マイカ「まもなく夜が明ける」
巫女マイカ「太陽神の力―― その身を以て知るがいい!」
第一王子ミシェル「な・・・なんだ!?」

〇空

〇空

〇空

〇荒野の城壁
第一王子ミシェル「雲が晴れた・・・!?」
騎士団長ヴァレリー「殿下、あれを!」
騎士団長ヴァレリー「皇帝トビアス・・・!」
第一王子ミシェル「・・・マリー様!?」
第一王子ミシェル(いや・・・違う)
第一王子ミシェル(でも、よく似ている)
第一王子ミシェル(彼女はいったい・・・)
「ミシェル様! 団長! ガイコツは全滅させました!」
騎士団長ヴァレリー「よし、突撃!」
第一王子ミシェル「ヴァレリー、危ない!」

〇荒野
騎士団長ヴァレリー「い、今の・・・は 魔法・・・なのか?」
第一王子ミシェル「ぐっ・・・」
騎士団長ヴァレリー「殿下!」
皇帝トビアス「なんてことだ・・・ 要塞が一瞬で半壊とは」
皇帝トビアス「これが・・・太陽神の力」
巫女マイカ「・・・・・・」
騎士団長ヴァレリー「殿下!」
第一王子ミシェル「わたしのことはいい!」
第一王子ミシェル「あの召喚士をどうにかするのが先だ!」
騎士団長ヴァレリー「し、しかし・・・」
巫女マイカ「愚かな・・・」
巫女マイカ「今、とどめを──」
「・・・舞花!」
巫女マイカ「おまえは・・・」
勇者マリー「よかった 無事だったんだ」
勇者マリー「舞花もこの世界に召喚されてたんだね」
巫女マイカ「この身の姉か」
巫女マイカ「ではおまえから──」
勇者マリー「・・・舞花?」
第二王子クレール「下がれ、マリー!」
巫女マイカ「ぐっ・・・!?」
勇者マリー「ま、舞花っ!」
巫女マイカ「お姉ちゃん・・・!」
巫女マイカ「この身体はわたしのものだ!」
巫女マイカ「お姉ちゃん、早く逃げて!」
巫女マイカ「あたしがエグスキを抑えてるあいだに!」
巫女マイカ「無駄なあがきを・・・!」
巫女マイカ「・・・おまえさえ」
巫女マイカ「おまえさえ消せば・・・ この娘の心は完全に消える・・・」
巫女マイカ「死ね!」
第一王子ミシェル「マリー様ッ!」
勇者マリー「あ・・・」
巫女マイカ「忌々しい小僧め・・・!」
巫女マイカ「くそっ・・・」
皇帝トビアス「マイカ、待て!」
勇者マリー「どういうこと・・・?」
勇者マリー「舞花の中にエグスキがいるの・・・?」
勇者マリー「じゃああたし・・・ あたしは・・・」
勇者マリー「舞花と戦わないといけないの・・・」
第二王子クレール「マリー・・・」
第一王子ミシェル「帝国は何度でも リュテスに攻め込もうとするでしょう」
第一王子ミシェル「再び帝国が侵攻してきたら 今度こそリュテスは滅ぼされる」
第一王子ミシェル「そうなる前に、帝国を叩くべきです」
騎士団長ヴァレリー「確かに 国境を守る要塞がこの有様ですからな」
勇者マリー「あ、あの・・・」
第一王子ミシェル「わたしは単騎で皇帝たちを追撃します」
騎士団長ヴァレリー「わたしもお供いたします!」
第一王子ミシェル「いや、ヴァレリーはここに残ってほしい」
第一王子ミシェル「おそらくあの召喚士は 魔力を使い切ったのでしょう」
第一王子ミシェル「魔力を回復される前に 急いで倒さなければ・・・!」
勇者マリー「ま・・・ 待って、ミシェル様!」
第一王子ミシェル「・・・・・・」
第一王子ミシェル「・・・クレール様」
第一王子ミシェル「後のことは、頼みます!」
第二王子クレール「ミシェル殿、まさか・・・」
第二王子クレール「待て、ミシェル殿!」
勇者マリー「・・・ミシェル様・・・」

次のエピソード:第12話 滅びゆく世界の果てで

コメント

  • えっ、ミシェルさま、、、カッコイイ!!過去イチの活躍回ですね!
    単騎行動のミシェルさま、整理できない思いを抱える真理さん、そして舞花さん、、、次回が気になって仕方ないです!

成分キーワード

ページTOPへ