星売りのメテオシスター

オカリ

13.オークション開幕(脚本)

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〇研究所の中
  2017.11.01
  早朝
  隕石の解析を始めて───
  何日経っただろうか
  結果は芳しくない
  岩石質と金属質が混じった
  石鉄隕石・・なのは分かった
  だけど、その構造が気持ち悪い
  中心部が複数の合金からなり、
  周囲を岩石質が囲むが‥‥
  電顕レベルの穴が中心まで
  びっしりと空いている
  凹みではなく穴
  植物の気孔みたいだ
  しかも極め付けは年代測定
  この真球の隕石は────
  「100億年以上、宇宙空間にいた」
  ・・・・・という結果だった
粟島研究員「限界だな」
  現代科学では、宇宙誕生は
  138億年前とされている
  太陽誕生が46億年前
  つまりこの隕石は太陽系より古い
  まぁ、この結果が本当なら
  ロマンある話だけれど
  わかってる、大抵が解析ミスだ
粟島研究員「というか、ぜっったい解析ミスだ よくこんな数字出せたな・・」
粟島研究員「やっぱり僕に研究の才能はないな だけど・・」
粟島研究員「最低でも46億年以上前、とは こじつけられるかな」
魚沼准教授「終わったのかい?」
魚沼准教授「やっぱりウチの機器じゃ 限界があったろ?」
粟島研究員「いや、助かった このお礼はいずれ・・」
魚沼准教授「気にするな 楽しませて貰った」
魚沼准教授「ただ・・・くれるものは貰う主義だ 粟島くんのお礼、期待している」
粟島研究員「ハハ・・変わんねぇな」
粟島研究員「・・・・・・っと、そうだ」
粟島研究員「茉莉さんに連絡しないと えーっと・・・・・・」
魚沼准教授「おい待て 電源入れる気か?」
粟島研究員「そうだけど?」
魚沼准教授「糸魚川先生とか血眼になって キミを探してるんだろ?」
魚沼准教授「電源入れたら場所が バレるんじゃないのか?」
粟島研究員「あー・・そうか その可能性もあったか」
魚沼准教授「待て、なんだその 「いま気付きました」の顔は」
魚沼准教授「じゃあなんでずっと 電源切ってたんだ?」
粟島研究員「いや、飛行機乗る時は電源切るだろ?」
粟島研究員「空港着いたらいつも習慣的に 電源切っててさ・・・」
粟島研究員「それにほら、着信ない方が 解析に集中できるし・・・」
魚沼准教授「ははぁ」
魚沼准教授「ある意味、怪我の功名だな・・・」
魚沼准教授「・・・連絡取りたいなら 私の携帯を貸そうか?」
粟島研究員「助かる・・けど 大丈夫だ」

〇おしゃれな大学
  隕石少女・・長岡茉莉の妹ちゃんが
  附属病院に転院したからね
  ウチの大学病院に?
  うん、同じ東能大なだけあって
  この研究室から徒歩圏内だ
  ハナビちゃんの病室で待てば
  すぐ合流できるはず
  茉莉さん、毎日お見舞いに
  来てるだろうから・・

〇田舎の病院の廊下
長岡花陽「はーい!」

〇田舎の病院の病室
長岡花陽「あ!オジちゃんだ!」
長岡花陽「お星の研究どう?イイ感じ?」
粟島研究員「元気そうだねハナビちゃん お星の研究は──・・」
粟島研究員「・・・心地よかったよ 久しぶりに時間を忘れた」
長岡花陽「ゴキゲンだねオジちゃん!? ちょう笑顔だ!」
長岡花陽「ね、ね、どんな研究? 教えてオジちゃん先生!」
粟島研究員「そうだね・・・っと、ん?」
粟島研究員「ハナビちゃんコレ・・ 誰か来たのかい?」
粟島研究員「TNテレビ、佐渡トキ子── 局アナが何の用で・・?」
長岡花陽「うへへ〜〜 オジちゃん気になるぅ?」
長岡花陽「ハナビね、デビューするんだ 画面の向こう側だよぉ〜!」
長岡花陽「サインお願いされたら ど〜しよっかな〜!」
粟島研究員「・・ハナビちゃん、テレビ出るんだ」
長岡花陽「んー、テレビのおねーさんは 「ネット番組」って言ってたよ」
長岡花陽「あ!今の「おねーさん」は ねえちゃのコトじゃないから!」
粟島研究員「ネット番組? ・・・・・・待てよ」

〇車内
  2017年10月27日
長岡茉莉「この隕石を貸し出します 調べて頂いて構いません」
長岡茉莉「ただしっ!」
長岡茉莉「詳細な分析結果を1週間・・・いや、」
長岡茉莉「3日以内に出すことはできますか!?」

〇田舎の病院の病室
粟島研究員「・・・・・って言われたよな、確か」
粟島研究員「言葉通り“時間を忘れて” 解析してたけど・・」
粟島研究員「・・・・・ハナビちゃ〜ん」
長岡花陽「なぁに? サイン欲しいの〜?」
粟島研究員「今日って何月何日だっけ?」
長岡花陽「ん〜?ひづけ?」
長岡花陽「今日はね〜〜・・11月1日だよ!」
粟島研究員「・・・・・・・・・・・・」
粟島研究員「28、29、30、31──」
粟島研究員「・・・・・・・・・・・・ヤベ 今日で5日目突入してた」
粟島研究員「待てよ、じゃあまさか 僕かなりマズい遅刻を───・・」
カメラマン「スンマセン、失礼しまっス」
カメラマン「ホントスンマセン V用の絵ぇ撮り忘れあって・・」
カメラマン「秒で終わるんで、一瞬イイすか? ホント秒で終わる・・」
カメラマン「・・・ん?誰っすか? ハナビさんのご家族で?」
粟島研究員「逆に君は分かりやすいな TNテレビの関係者か」
粟島研究員「だからこそ聞こう キミ、この名刺の人と・・・」
粟島研究員「あと、長岡茉莉さんが今どこで 何をやってるかご存知かな?」
カメラマン「ご存じも何も・・ そりゃウチの本社っスよ」
カメラマン「勝負の日っすからね オークション放送できるか瀬戸際で」
カメラマン「上を説得する証明書?とか用意して・・ よく知らねっスけど」
カメラマン「上が拒否ればこのVもお蔵入り、 やるせな・・・・どうしました?」
粟島研究員「今すぐ・・・」
カメラマン「今すぐ?」
粟島研究員「僕をソコに連れてってくれ!!︎ 今っ!!︎すぐにっ!!︎!!︎」

〇テーブル席
粟島研究員「────と、言うわけで」
粟島研究員「このカメラマンさんに 急ぎ案内して貰ったんだ」
粟島研究員「間に合って良かったよ」
カメラマン「マジ瀬戸際っしたね 報連相徹底して下さい・・」
カメラマン「タクシーのマネ事はもう勘弁っスよ!」
長岡茉莉「────────そんな経緯が」
長岡茉莉「でも・・それならそうと 早く言ってくれれば」
長岡茉莉「(隕石借りパクされたと思って) 私、どれだけ心配したか・・」
粟島研究員「ごめんよ、申し訳ない でも迂闊に連絡もできなくて」
  コイツに電源入れた瞬間、
  場所が割れる可能性もあったから
粟島研究員「・・いや待て、競売番組やる時点で どのみちバレたようなものか」
粟島研究員「ダメだ、色々と段取りが悪い 我ながら嫌になる」
佐渡トキ子「まーまー! 反省会は程々に!」
佐渡トキ子「過ぎたコトより先のコト! まずは放送決定を喜びましょう!!」
佐渡トキ子「やっと大々的に動けますからね ガンガン番宣も仕掛けますよ〜!」
佐渡トキ子「・・・ホント通って良かった 見切り発車で色々集めてたんだから」
佐渡トキ子「それに──・・」
佐渡トキ子「裏で動かしてた経費も コレで正当化されたわ!」
佐渡トキ子「クク・・クキキッ・・・!」
長岡茉莉「トキ子さん・・?」
佐渡トキ子「あら、顔に出ちゃってた? ごめんなさいね」
佐渡トキ子「でも隕石が本物だと証明されて 番組制作に専念できるでしょう?」
佐渡トキ子「キャリアに泥を塗らずに済んだし あとは成功させるだけ」
佐渡トキ子「やるわよ、マツリちゃん 私たちで伝説を作りましょう!」
佐渡トキ子「目指せ3億入札よ!!!!」
長岡茉莉「ハイッ!!」
粟島研究員「・・・・・ガンガン番宣も仕掛ける、か」
粟島研究員「糸魚川先生はどう動くかな?」

〇大きい研究所
  日本地惑研究開発機構
  ──JEPRA(ジェプラ)──

〇個別オフィス
  TNテレビ独占生配信
  「逆転Bidder!」
  あの“隕石少女”が“隕石”を出品!
  家を、家族を、取り戻すため────
  
  ラストディールに挑むッ!!
  世界初!?
  リアルタイムオークションバラエティ!!!!
  2017年11月10日(金)
  夜7時より・・・
糸魚川教授「クソがッ!!ガキがッ!!! クソガキがッッ!!!!」
糸魚川教授「恩知らずがッ!!能無しがッ!!! 科学に殉じる覚悟も無い────」
  +1-XXX-XXX-XXXX
糸魚川教授「ググッ、この番号は・・」
糸魚川教授「ハロー、Prof.ウィラメット?」

〇諜報機関
ウィラメット「元気そうですねイトイガワ 随分と声に張りがある」
ウィラメット「何か面白いことでもありましたか? ・・・・・・いや謝罪は結構です」
ウィラメット「私も詰めが甘かった Mr.妙高に全て任せるべきでした」
  ────!?──・・!
  ──────!!
ウィラメット「・・・・・・言い訳も要りません 共同研究の件も白紙です、博士だけに」
ウィラメット「・・・・・・・ン、失礼 今の“博士”は余計でしたね」
ウィラメット「ピークスキルさんのジョーク癖が 移ったのでしょうか」
  ────!!!!
  ────────────!!!!
ウィラメット「いえ、いくら謝罪されても 此方の結論は変わりませんので」
ウィラメット「汚名返上は勝手になさってください ではサヨウナラ」
ウィラメット「さて、事ここに至っては仕方ありません」
ウィラメット「ピークスキルさん!!︎」
ピークスキル「お呼びとあらば即サンジョウ! Heyボス!!呼んだかィ!?」
ウィラメット「カラ箱つかまされたクセに 随分と元気ですねぇ・・」
ウィラメット「アナタにはもうちょっと反省を 態度で示して欲しいのですが」
ピークスキル「こんな感じか、ボス!? グラスの奥では暗いCry!!」
ピークスキル「溢れるナミダ!滲んだ泣いタ! やらかしたセキニン! 取り戻せジソンシン!」
ウィラメット「・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ・・・・・・・・・・馬鹿にしてんのか?」
ピークスキル「オーダーを、ボス! プライドに賭けて遂行するゼ!!!!」
ウィラメット「よろしい、日本に向かいなさい」
ウィラメット「隕石を競り落とします 代理人を潜り込ませましょう」
ウィラメット「正攻法で、回収しますよ」

〇雑誌編集部
妙高新太「・・・・・・了解致しました ピークスキルさんも日本に」
妙高新太「ご安心ください 急所は押さえていますので・・」
妙高新太「では──・・」
妙高新太「・・・・・・・・・」
妙高新太「・・・タッチの差、か」

〇研究所の中
  東能大学理学部人類科学科
  骨考古学研究室
  通称「魚沼研」
  粟島弥彦の元同期である
  魚沼ひかり准教授
  隕石を持ったまま失踪した後、
  粟島が頼ったのはこの女性研究者だ
  その足取りを掴んだまでは
  良かったが──

〇雑誌編集部
妙高新太「確信を得たタイミングがな・・ 11月では遅かった」
妙高新太「・・・・居ないのはしょうがない 空振りなんてよくあること」
妙高新太「大人しくTNテレビか 病院近くで張って接触を───」
妙高新太「・・・・・・待てよ 何か引っかかるな」

〇研究所の中
  粟島弥彦の同期で
  隕石関連の研究者は6人
  だがその誰でもなく粟島は
  魚沼ひかりを頼った
  隕石でも何でもない
  「骨考古学」専門の彼女を
  なぜだ?

〇雑誌編集部
妙高新太「同じ分野の研究者だと 糸魚川に報告されると恐れたか」
妙高新太「あるいは成果独占のためか」
妙高新太「「魚沼ひかり」と特別親しく 頼み易い間柄だった可能性も・・」
妙高新太「・・・・・・もしくは」
妙高新太「“骨考古学”の専門家にしか頼めない イレギュラーがあった?」
妙高新太「・・・・・・・・・いずれにせよ」
妙高新太「ここで打ち切りってのも もったいない気がしますね」
妙高新太「魚沼ひかり、もう少し探ってみますか!」

〇開けた景色の屋上

〇たこ焼き屋
タコヤキオバチャン「ハイおまちィ! 熱いから気をつけなぁ!!」
運び屋ちゃん「・・・・・・・・・・・・ハラショ♡」
運び屋ちゃん「・・・アフッ・・・・・・アフィッ!! ・・・・・・・・・アツゥイ!!!?」
隕石ハンター「ハッハッハ、フーフーしないと ヤケドしちゃうぞ?」
隕石ハンター「お味は如何かな?」
運び屋ちゃん「・・・・・・・・・・チョベリグ(^^)/」
隕石ハンター「付き合い長いつもりだが・・ キミの語彙力は計り知れないな」
隕石ハンター「心ゆくまで堪能しなさい」
運び屋ちゃん「・・・・・・・・・エウハリスト♡」
隕石ハンター「「ありがとう」・・か? 何語かは知らないが」
隕石ハンター「さて・・」
隕石ハンター「・・共華団のハッカーは優秀だな」
隕石ハンター「天文台を探らせた結果は──・・」
隕石ハンター「「天体U-1に系外惑星の  文明が関与した可能性」・・か」
隕石ハンター「ただの隕石ではないと踏んでいたが──」
隕石ハンター「いや、まだ足りない お偉いさん方を動かすには」
隕石ハンター「・・相手側の反応が欲しい」
隕石ハンター「さて、釣り上げるには・・」
  リアルタイムオークションバラエティ!!
  「逆転Bidder!」
  
  隕石少女のラストディールが・・
隕石ハンター「コレが撒き餌になるかな?」

〇黒背景
  ──9日後──
  2017.11.10
  オークション番組
  「逆転Bidder!」
  配信当日

〇田舎の病院の休憩室
村上主治医「勝負の日、ですか」
長岡茉莉「すみません、お時間頂き・・」
長岡茉莉「・・・そうですね 今晩がオークションです」
長岡茉莉「3億円、期待しといて下さい」
村上主治医「いいですか 仮に治療費が足りなくとも──」
長岡茉莉「大丈夫ですよ、先生」
長岡茉莉「人事は尽くしました きっと天命も微笑んでくれます」
村上主治医「──・・そうですね 全ては終わってから詰めましょう」
村上主治医「予定通り明日、補助人工心臓を 長岡花陽さんに取り付けます」
村上主治医「肝心の心臓移植はドナー不足のため 海外に頼らざるを得ませんが・・」
村上主治医「日本においてできうる範囲の 最善を尽くしましょう」
村上主治医「オークションの成功 ・・期待してますよ」
長岡茉莉「はいっ!」

〇田舎の病院の病室
長岡花陽「はーい!」
長岡茉莉「ハナビ、おはよ」
長岡茉莉「・・・・・・元気?」
長岡花陽「ちょう元気〜〜!!」
長岡茉莉「そっか」
長岡茉莉「・・・・・・じゃあ、行って来ます」
長岡花陽「いってらっしゃ〜い!」
長岡花陽「んっ──・・」
長岡花陽「────ッ、ぐぃ ふ──ッ ふ──ッ」
長岡花陽「元気・・ハナビはちょう元気・・・」
長岡花陽「・・・・・・ちょっと、苦しいけど」
長岡花陽「ねえちゃ、がんばってるし」
長岡花陽「ハナビもがんばるよー!」

〇コンサートホールの全景
  2017.11.10
  18:55

〇コンサート会場
佐渡トキ子「ご来場の皆さま そして、視聴者の皆さま」
佐渡トキ子「お待たせ致しました」
佐渡トキ子「人生崖っぷちの人々が その全てを賭け」
佐渡トキ子「ラストディールに挑む場所──・・」
佐渡トキ子「「逆転Bidder!」の開幕ですッ!!!」
  第13話
  オークション開幕

次のエピソード:14.落ちた天秤

コメント

  • ギリシャ語ーー!運び屋ちゃんの可愛さが主人公超えしてますね。あの半角カタカナには声が付いているような錯覚さえあります。
    いよいよオークション! 楽しみです!

  • ……ハラショ❤️

    いよいよオークション開幕!果たしていくらの値がつくか…。
    いや、そもそも真っ当にオークションは行われるのか…。波乱の展開の予感がします。

  • 再開を待ってました!
    ついにオークション開幕で最終局面!? と思いきや、まだまだ気になる謎がたくさん…続きを気長に待ってます😆

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