エピソード55(脚本)
〇廃列車
茶村和成(こいつがテケテケ・・・?)
茶村和成(旧校舎に現れたときとはえらい違いだ)
あの男子高生は3mくらいと言っていたが、今目の前にいるテケテケはそれよりもさらに大きくなっている。
その圧迫感に、思わずつばを飲み込んだ。
茶村和成「それになんだ、あれ? ・・・お札?」
テケテケの身体のいたるところに、なにやら難しい言葉が書かれたお札のようなものがベタベタと貼られている。
薬師寺廉太郎「あれは・・・」
茶村和成「どうした? 薬師寺」
薬師寺廉太郎「・・・いや、大丈夫」
茶村和成「・・・?」
ア゛・・・、オマ・・・エラ・・・
茶村和成「!?」
驚いて目を見開く。
テケテケが言葉を発したのだ。
茶村和成「こいつ、しゃべって・・・?」
薬師寺廉太郎「知性が芽生え始めてるんだ。 ・・・もうここまで力をつけてるとはねぇ」
薬師寺廉太郎「こりゃ早く対処しないといけないわけだ」
ウ゛ア゛アアアアッッ!!
ひときわ大きな喚声を上げたかと思うと、テケテケは再び俺たちに向かって襲いかかってきた。
薬師寺廉太郎「よっ、と・・・」
薬師寺廉太郎「俺のこと覚えてるのかな〜。憎悪むき出し」
茶村和成「!」
茶村和成「薬師寺、危ない!」
テケテケが吐き出した酸のような液体が薬師寺のストールをかすめる。
ほんのわずか、数ミリ程度だったが、かすった部分はジュッと音を立てて燃え尽きた。
薬師寺廉太郎「あちゃあ、これくらっちゃうとまずいね。 一瞬でドロドロだよ」
茶村和成「あのカボチャ頭みたいに、か・・・」
薬師寺廉太郎「こっちからも仕掛けてみよう」
薬師寺はストールをしゅるりと首から抜き取ると、テケテケへ向かって飛び上がった。
そのままテケテケにストールを器用に巻き付けて力を込めると、まるで鋭利な刃物かのようにテケテケの身体を切断した。
アアア゛アア゛ア゛ア゛ッ!!
ぐちゃり、と肉塊の一部が地面に落ちる。
茶村和成「うっ・・・ぷ・・・」
薬師寺廉太郎「いやあ、なかなかグロテスクだねぇ」
薬師寺廉太郎「・・・ん?」
茶村和成「な・・・」
ボゴボゴボゴッ
茶村和成(切断された部分が再生した・・・!?)
薬師寺廉太郎「・・・・・・」
数秒のうちに、テケテケの身体はすっかり元通りに戻ってしまった。
薬師寺廉太郎「・・・ふう」
薬師寺は静かに息を吐くと、再びテケテケへと攻撃を仕掛ける。
肉塊の前に薬師寺の両手がかざされた。
薬師寺廉太郎「!」
──キィン
茶村和成(ッ、はじかれた!?)
テケテケの身体に貼られたお札がぼんやりと光を放ったかと思うと、薬師寺をはじき飛ばす。
次の瞬間、テケテケの身体がブクブクと膨らんでいき、薬師寺を頭から飲み込んだ。
茶村和成「や、薬師寺ッ!?」
とっさに身体が動き、ギリギリ出ている薬師寺の腕をつかむ。
そのまま力の限り、思いっきり引っぱった。
薬師寺廉太郎「もごごっ、ふがっ、・・・ぷはあっ」
茶村和成「大丈夫か!? ・・・って、うわ!」
引っ張りだした薬師寺は、なんだかよくわからない赤黒い液体にまみれていた。
薬師寺廉太郎「はー、びっくりしたぁ。ありがと茶村」
茶村和成「そんな呑気なこと言ってる場合か!」
薬師寺廉太郎「大丈夫大丈夫〜」
にやりと笑って、薬師寺が狐面を装着する。
薬師寺廉太郎「・・・でもちょっと、怒ったよ」
茶村和成「あ、おいっ」
距離を詰めていく薬師寺に対し、テケテケは敵意をむき出しに襲いかかった。
それを軽々と避けながら薬師寺はテケテケの死角に回り込む。
その瞬間、無数の火の玉がテケテケを取り囲んだ。
薬師寺廉太郎「『狐火』」
ア゛キ゛ャヴアアア゛ア゛ッッ!?
炎がテケテケの全身に余すところなく絡み付く。
苦しいのだろう、テケテケは苦悶の声を上げながら身もだえている。
火が消えたときにはテケテケの身体は真っ黒に焼け焦げており、力尽きたように地面にその巨体を倒れこませた。
茶村和成「・・・やったか?」
薬師寺廉太郎「いや、まだだよ」
狐面を外した薬師寺がテケテケへと歩み寄る。
それと同時に、焼け焦げたテケテケの身体がボコボコと膨らみ、新たな肉塊を生み出し始めた。
茶村和成「こいつ、また再生・・・!」
薬師寺廉太郎「させないよ」
しかしテケテケが回復するよりも早く、薬師寺がとどめを刺そうと構える。
──そのときだった。
「そこまでだ」
茶村和成「!?」
後方から突如、厳かな声が響き渡った。
振り返った俺の目に映ったのは、10人程の研究員のような格好をした男と、その中心に立つ黒髪の偉丈夫の姿だった。
???「そいつは我々が回収する」
???「ご苦労だったな。・・・廉太郎」
薬師寺廉太郎「なんで、お前が・・・」
???「総員、迅速に回収しろ。事態は一刻を争う」
研究者「はっ!!」
薬師寺廉太郎「っ、待て! なんのつもりだ!? ・・・吾妻(あづま)!!」
茶村和成(吾妻っていったら・・・)
少し前に俺を尾行していた少年のことを思い出す。
あのときに薬師寺が口にしていた名だ。
茶村和成「・・・って、テケテケ(そいつ)に近づくな! 危な・・・」
茶村和成「!?」
吾妻と呼ばれた男に指示された者たちが、お経のようなものを呟きながら新たなお札をテケテケに貼付ける。
するとテケテケは苦しそうな声を上げ、みるみると弱っていった。
茶村和成「薬師寺、あいつら何者なんだ・・・?」
薬師寺廉太郎「・・・・・・」
薬師寺廉太郎「・・・俺の家・・・、薬師寺家の奴らだよ」
薬師寺廉太郎「吾妻は、俺の叔父だ」
茶村和成「叔父ぃ!?」
茶村和成(ということは、薬師寺の家族・・・!?)
薬師寺廉太郎「・・・吾妻。どういうことだ」
薬師寺廉太郎「もともとテケテケの身体に貼られてあった札・・・。 一目見てわかった。あれは、うちのだろう」
薬師寺廉太郎「なにを企んでいる?」
???「・・・・・・」
???「お前は昔から勘が良いからな。 ここまで隠し通すのは苦労した」
薬師寺廉太郎「・・・質問に答えろ」
???「全ては歪みの穴を塞ぐためのことだ」
???「そのために、私の手でテケテケを復活させた」
茶村和成「!」
薬師寺廉太郎「な・・・」
???「怪異を喰わせることでの強化も行った。 今のテケテケの姿を見ればわかるだろう」
???「ただ、予想以上のエネルギーが生まれたことによって想定外の被害は出てしまったが・・・」
薬師寺廉太郎「それがどれほどの禁忌かわかっているのか!?」
茶村和成(・・・薬師寺がここまで感情をあらわにしてるのは、初めて見た)
薬師寺廉太郎「どうして、そんな」
???「言っただろう。歪みの穴を埋めるためと」
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