読切(脚本)
〇大企業のオフィスビル
〝衝撃〟と言う感情を抱いたのは2歳の時だ。
恋愛の大失敗を〝目撃〟してしまった
バチン!と頬が打たれた。
プロポーズ大失敗の一コマだった。
困惑する女性に愛の告白をし、
答えも聞かず一方的にキスを決めた。
そうしたら男性が平手打ちを叩き込まれていた。
周囲にいたのは〝祝福予定〟の同僚の数名
その狼狽たるや、凄かった。
そして、その男性と言えばだ
〝この世の終わり〟を体現するように頭を抱えその場に膝から崩れていった。
その後は知らない。父に手を引かれてその場を去ってしまったんである
今思っても、何故彼は成功するモノ、だと思ってたのか不思議なんである。
キスまでして祝福する予定の同僚も呼んで。
思い返せば、色々な場面を〝目撃〟して来た。
〝目撃する女〟とでもしよう
中学生の時、〝目撃〟して〝失恋〟
河川敷に大きな橋があった
橋の下、人目を盗む場所で片思いの男の子と女の子のキスシーンを見た。
失恋だ。
〝片思い〟故に人に相談も出来ず目撃して終わった恋だった。
他に例を上げる事にする
犬がベンチからずり落ちて、何を思ったのか尻尾を追いかけ回す場面
散歩に通りかかった他の犬にも〝とばっちり〟が行き場はてんやわんやしていた。
犬だけに、てんやわんやである(飼主も)
自分の限界と向き合い、下を向きながら走る自転車乗りがガードレールにぶつかりアクションスター並みの浮遊をした場面(無事)
てんで駄目なバッティングをする一生懸命な爺さん。
王貞治スタイルにフォームを変え、またフォームをかえる。
諦めない姿は、誰よりも格好の良い男だった。
送球の速さも妥協しないらしい。
漢気を見た気がした。
とまあ、他にも色々あるのだが・・・
後で小気味良い思いをする為に記憶の蓋は開けないでおこう。
そして、私自身が当事者になるとは思っても見なかった
休憩室の中では中学生みたいな〝誰がタイプか〟の話が聞こえていた
私は休憩室前の廊下でその話をBGMに飲食自由のコンテンツを選んでいた。
そして私の苗字が聞こえた
コンテンツを選ぶ思考が止まった。
「俺タバコ」と男性が出てきて「俺も」と休憩室から出てくるじゃあないか
目が合った。
私達はお互いを〝認識〟した
友人はニタリと笑った。
こ、こんな事って・・・
ど、どうしよう!?
私は〝当事者〟になった事が無い!
〝目撃〟
この胸のトキメキが、きっと答えだろう。
主人公の過去の”目撃”が短編オムニバスのようにテンポよく語られる展開、まるで彼女が観客席から舞台を見ているような"他人事"でしたね。そんな彼女が観客席から舞台上に引き上げられて……、その様子を観客席から楽しく見させていただきました
過去の目撃談を一度に思い出さずに小出しにして楽しむ彼女の趣味には笑ってしまいました。ラストは「目撃する女」が「当事者」に、「読者」が「目撃する女(男)」になって終了とは、何ともしゃれた展開ですね。