堀田探偵シリーズ第二弾『魔法使いと音の無い雨が降る町』

komarinet

第十二話 観察者(脚本)

堀田探偵シリーズ第二弾『魔法使いと音の無い雨が降る町』

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〇屋敷の門

〇旅館の和室
初刷 論(はつずり さとし)「探偵の須藤 真守? 聞いたことないっすね」
堀田 晴臣(ほった はるおみ)「数年前を最後に、 奴は探偵稼業をやめているからね」
初刷 論(はつずり さとし)「何故そいつが関わってると?」
堀田 晴臣(ほった はるおみ)「それは須藤が持っている特技さ」

〇黒
  奴は人間を観察して
  その人物をとことん把握する
  そして見た目のみならず
  中身まで模写してしまうんだ
  よほど親しい人間でなければ、
  見抜けないほどにね
  そしてまた、次の対象を観察して
  次の人間に成り代わるんだ
  探偵時代、奴はこのスキルを生かして
  次々と依頼をこなしていた

〇山の中
  だからロンくんを襲ったのは
  本当の浜くんじゃなく
  奴の変装だったのさ

〇旅館の和室
初刷 論(はつずり さとし)「そうだったんですね」
初刷 論(はつずり さとし)「俺、あいつがムシャクシャして やったんだと思ってました」
堀田 晴臣(ほった はるおみ)「さすがにそこまでしないだろ」
堀田 晴臣(ほった はるおみ)「それに、他に人は居なかったんだろ?」
初刷 論(はつずり さとし)「ええ、そうです」
堀田 晴臣(ほった はるおみ)「ならば、眠らせた浜くんを車内に隠し」
堀田 晴臣(ほった はるおみ)「奴が変装して出てきたと 思う方が自然だ」
堀田 晴臣(ほった はるおみ)「これまでの事件も」
堀田 晴臣(ほった はるおみ)「須藤が関わっているとなれば 説明がつく部分が多い」
堀田 晴臣(ほった はるおみ)「本当に奴なら、 僕を狙ってきてもおかしくないしね」
初刷 論(はつずり さとし)「そいつと過去に何かトラブルが?」
堀田 晴臣(ほった はるおみ)「いや。直接何かあったわけでは ないんだけど」
堀田 晴臣(ほった はるおみ)「僕の方が業績が良くて 気に食わなかったらしい」
初刷 論(はつずり さとし)「八つ当たりじゃないすか」
初刷 論(はつずり さとし)「ん?」
初刷 論(はつずり さとし)「じゃあ、須藤はいつからこの町に?」
堀田 晴臣(ほった はるおみ)(そう、わからないのはそれだ)
堀田 晴臣(ほった はるおみ)(奴は何のためにこの町へやってきた?)
堀田 晴臣(ほった はるおみ)(僕への復讐心で、町ごと巻き込むか?)
旅館の女将「堀田様、お電話です」
「──!」
初刷 論(はつずり さとし)「所長!」
堀田 晴臣(ほった はるおみ)「ああ、行こう!」

〇旅館の受付
旅館の女将「堀田様。お電話はそちらです」
堀田 晴臣(ほった はるおみ)「ありがとうございます」
堀田 晴臣(ほった はるおみ)(出来るだけ情報を引き出そう)
堀田 晴臣(ほった はるおみ)(必ず浜くんを助けるんだ)
堀田 晴臣(ほった はるおみ)「堀田です」
???「所長・・・ですか」
堀田 晴臣(ほった はるおみ)「浜くん、無事なのか?」

〇美術館
浜 伊織(はま いおり)「なんとか。手足は縛られてますが」
浜 伊織(はま いおり)「・・・」
浜 伊織(はま いおり)「所長、すみませんでした」
堀田 晴臣(ほった はるおみ)「何がだい?」
浜 伊織(はま いおり)「空港で車から所長が出てきたとき」
浜 伊織(はま いおり)「偽物だって気付いていたんです」

〇空港前
  だけど──
  それはようやく出てきた
  手がかりのように見えたんです

〇美術館
浜 伊織(はま いおり)「チャンスを目の前に焦ってしまいました」
浜 伊織(はま いおり)「自分なら対応できるなんて 思い上がって──」
浜 伊織(はま いおり)「情けないです」
堀田 晴臣(ほった はるおみ)「そんなこと気にしなくていい 無事でなによりだ」
浜 伊織(はま いおり)「・・・」
浜 伊織(はま いおり)「ありがとう・・・ございます」
堀田 晴臣(ほった はるおみ)「それよりよく連絡できたね」
浜 伊織(はま いおり)「ええ、実は無線通信を妨害 されていたのですが」
浜 伊織(はま いおり)「壁にLANの差込口があったので 有線で接続しました」

〇旅館の受付
堀田 晴臣(ほった はるおみ)「壁・・・ということは、 そこは屋内なんだね?」
浜 伊織(はま いおり)「はい、そうです。 暗くてよくわかりませんが」
浜 伊織(はま いおり)「ショーケースみたいなものに 土器なんかが飾ってあって・・・」
「町内会本部だ!     町内会本部か!」
堀田 晴臣(ほった はるおみ)「わかった、すぐに向かう!」

〇屋敷の門
堀田 晴臣(ほった はるおみ)「──!」
初刷 論(はつずり さとし)「所長! これマズいっすよ!」
初刷 論(はつずり さとし)「この雫を感じない雨・・・」
初刷 論(はつずり さとし)「音無雨じゃないっすか!」
初刷 論(はつずり さとし)「早く宿に戻らないと!」
堀田 晴臣(ほった はるおみ)「雨なんか気にしてる場合か!」
堀田 晴臣(ほった はるおみ)「浜くんを助けなければ」
初刷 論(はつずり さとし)「で、でも!」
堀田 晴臣(ほった はるおみ)「ロンくん、君は宿にいるんだ!」
初刷 論(はつずり さとし)「うわああっ!」
堀田 晴臣(ほった はるおみ)「奴からの連絡がまた来るはずだ」
堀田 晴臣(ほった はるおみ)「僕が助けに出たことがわからないように」
堀田 晴臣(ほった はるおみ)「君が電話で引き延ばすんだ!」
初刷 論(はつずり さとし)「了解です! 所長、ご無事で!」
堀田 晴臣(ほった はるおみ)「さて・・・と」
堀田 晴臣(ほった はるおみ)「待っててくれよ、浜くん!」

〇車内
堀田 晴臣(ほった はるおみ)(音無雨。僕の予想では、 これは映像のトリックだ)
堀田 晴臣(ほった はるおみ)「だとすれば・・・」
堀田 晴臣(ほった はるおみ)「ナビだけを見て 車を動かせばいいはずだ」
堀田 晴臣(ほった はるおみ)(とはいえ・・・)
堀田 晴臣(ほった はるおみ)(ナビとのタイムラグ、 GPSと実際の道路のズレ)
堀田 晴臣(ほった はるおみ)(事故らなければラッキー というところだな)

〇田園風景
堀田 晴臣(ほった はるおみ)(急ぎたいがスピードも出せない)
堀田 晴臣(ほった はるおみ)(なんてもどかしいんだ)

〇空

〇車内
堀田 晴臣(ほった はるおみ)「ええっと、次の十字路を右に・・・」
堀田 晴臣(ほった はるおみ)「えっ!?」
堀田 晴臣(ほった はるおみ)「しまった! 対向車か!」

〇田園風景

〇車内
堀田 晴臣(ほった はるおみ)「う、うわああっ!」
堀田 晴臣(ほった はるおみ)「・・・」
堀田 晴臣(ほった はるおみ)「あれ?」

〇田園風景
堀田 晴臣(ほった はるおみ)(いない・・・今のもトリックか!?)

〇車内
堀田 晴臣(ほった はるおみ)(くっ・・・変に力んだせいで 肋骨の痛みが)
堀田 晴臣(ほった はるおみ)「・・・治まったか」
堀田 晴臣(ほった はるおみ)「あと少しか。 なんとか無事に着けるといいが」

〇田園風景

〇旅館の受付
旅館の女将「はい、旅館「あまつや」でございます」
旅館の女将「堀田さまでございますね。 少々お待ち下さい」
旅館の女将「堀田さまー! お電話が──」
初刷 論(はつずり さとし)「はいっ、居ます!」
旅館の女将「ああ、よかった。お電話です」
初刷 論(はつずり さとし)「ありがとうございます」
初刷 論(はつずり さとし)「も、もしもし?」
???「なんだ、ロンか。所長は?」
初刷 論(はつずり さとし)「なんだ、伊織かよ。驚かすなよ」

〇美術館
浜 伊織(はま いおり)「なんだとは何よ。 こっちは大変なのよ」
浜 伊織(はま いおり)「またいつ奴が来るかわからないし」
浜 伊織(はま いおり)「縛られてる手足は痛いし」
初刷 論(はつずり さとし)「ごめんって」
浜 伊織(はま いおり)「所長はもう出た?」
初刷 論(はつずり さとし)「ああ、とっくにな」
伊織の声「まさか、車?」
初刷 論(はつずり さとし)「ああ、例の雨が降ってるから 止めたんだぜ」
初刷 論(はつずり さとし)「でも所長、急いでるからって 聞かなかったんだ」
伊織の声「止めたって聞く人じゃないでしょ」
初刷 論(はつずり さとし)「まあ、そうなんだけどな」
伊織の声「また事故起こさなきゃいいけど」
伊織の声「あっ、ヤバい。奴が来たかも!」
伊織の声「また連絡する」
初刷 論(はつずり さとし)「ああ、頑張れよ!」
伊織の声「・・・ふふふ」
伊織の声「あっはっはっは」
伊織の声「あれ? どうしたの、私?」
浜 伊織(はま いおり)「気色悪くて吐きそうよ」
浜 伊織(はま いおり)「あんたの声帯どうなってんのよ」
伊織の声「それを答えて私に何のメリットが?」
伊織の声「さて、そろそろフィナーレね」
伊織の声「あなたも行きましょ」
浜 伊織(はま いおり)「痛っ、気安く触らないでくれる?」
堀田の声「僕に触られてると思ってれば?」
浜 伊織(はま いおり)「んの野郎・・・」
浜 伊織(はま いおり)「絶対殴ってやるから。 覚えてなさい」
伊織の声「期待してるわね」

〇寂れたドライブイン

〇桜並木
堀田 晴臣(ほった はるおみ)「これは・・・」
???「驚いたかい?」
???「使い方によっては こんなことだって出来るんだ」
???「まるで本当に花見をしている 気分にならないかい?」
堀田 晴臣(ほった はるおみ)「・・・」
佐々木 哲司(ささき てつじ)「怖いね。 最初に挨拶したときと大違いだ」
堀田 晴臣(ほった はるおみ)「あの時はあなたとは 思いませんでしたからね」
堀田 晴臣(ほった はるおみ)「一体何故、こんなことを?」
佐々木 哲司(ささき てつじ)「一体? 何故?」
佐々木 哲司(ささき てつじ)「くくくく・・・」
佐々木 哲司(ささき てつじ)「あはははははっ」
佐々木 哲司(ささき てつじ)「わからなかったのかい? 業績ナンバーワンの堀田晴臣が?」
佐々木 哲司(ささき てつじ)「こんなに気分のいいことはないね」
佐々木 哲司(ささき てつじ)「昔は先を越されてばかりだったからな」
堀田 晴臣(ほった はるおみ)「・・・須藤」
堀田 晴臣(ほった はるおみ)「思い出話をしにきたわけじゃ ないんだろ?」
堀田 晴臣(ほった はるおみ)「何が目的だ?」
佐々木 哲司(ささき てつじ)「テストだよ」
佐々木 哲司(ささき てつじ)「君がどれくらい僕のしたことを 理解しているか、確認する」
佐々木 哲司(ささき てつじ)「合格すれば、彼女は解放しよう」
浜 伊織(はま いおり)「馬鹿なこと言ってないで 離しなさいよ」
佐々木 哲司(ささき てつじ)「そうはいかない。 君は大事なパーツだからね」
佐々木 哲司(ささき てつじ)「そこで見てるといい」
浜 伊織(はま いおり)(この隙にって、思ったけど)
浜 伊織(はま いおり)(腐っても元探偵・・・か 縄抜け出来ないように縛ってある)
浜 伊織(はま いおり)(でも何とかしないと。 あいつの目的は・・・)
堀田 晴臣(ほった はるおみ)「もし、不合格だったら?」
佐々木 哲司(ささき てつじ)「気になるなら わざと間違えてみるかい?」
堀田 晴臣(ほった はるおみ)「やめておこう。 ロクなことにならなそうだ」
佐々木 哲司(ささき てつじ)「賢明だ」
佐々木 哲司(ささき てつじ)「ではいこうか。まず最初は──」

〇旅館の受付
初刷 論(はつずり さとし)「・・・」
初刷 論(はつずり さとし)「電話、来ないな」
???「やあ、調子はどうだい」
初刷 論(はつずり さとし)「あ、確か警察の」
牧村 廉太郎(まきむら れんたろう)「牧村だ。堀田とは大学の同期でね」
牧村 廉太郎(まきむら れんたろう)「あいつはどこに行った?」
初刷 論(はつずり さとし)「ええ、実は──」

〇屋敷の門
牧村 廉太郎(まきむら れんたろう)「スタッフが誘拐されて 助けに行ったぁ!?」

〇旅館の受付
牧村 廉太郎(まきむら れんたろう)「あいつは・・・全く!」
牧村 廉太郎(まきむら れんたろう)「そういうのは警察に相談しろよ!」
初刷 論(はつずり さとし)「いや、でもいま例の雨も降ってて」
初刷 論(はつずり さとし)「それで所長は警察に 言わなかったんじゃないかと」
牧村 廉太郎(まきむら れんたろう)「ちっ。アレか」
牧村 廉太郎(まきむら れんたろう)「一体あれは何なんだ?」
牧村 廉太郎(まきむら れんたろう)「部下の話じゃあ、雨の中に 幽霊が出たとか」
初刷 論(はつずり さとし)「ええ、俺も見ました」
初刷 論(はつずり さとし)「でも何なのかはさっぱり──」
志田 勘九郎(しだ かんくろう)「はあ、はあ」
初刷 論(はつずり さとし)「町長さん? どうしたんですか!」
初刷 論(はつずり さとし)「外は例の雨が降ってるんですよ?」
初刷 論(はつずり さとし)「よく無事でしたね」
志田 勘九郎(しだ かんくろう)「ええ、まあ」
牧村 廉太郎(まきむら れんたろう)「何か事情がありそうですね」
牧村 廉太郎(まきむら れんたろう)「お話、聞かせて頂いても?」
志田 勘九郎(しだ かんくろう)「ええ、そのつもりで来ました」
旅館の女将「あらぁ! 町長さん?」
旅館の女将「こんな夜中にどうなさいました!?」
志田 勘九郎(しだ かんくろう)「すみません、女将さん。 夜分遅くに・・・」
志田 勘九郎(しだ かんくろう)「ちょっと事情がありまして。 奥の間、お借りして良いですか」
旅館の女将「ええ、ええ。もちろんです どうぞお使いになって下さい」
志田 勘九郎(しだ かんくろう)「ありがとうございます」
志田 勘九郎(しだ かんくろう)「では、行きましょう」
初刷 論(はつずり さとし)「あ、でも。俺、電話が・・・」
旅館の女将「またかかってきたらお知らせしますよ」
初刷 論(はつずり さとし)「ありがとうございます」
志田 勘九郎(しだ かんくろう)「では、こちらへ」
牧村 廉太郎(まきむら れんたろう)「さて、どんな話がでてくるやら」
牧村 廉太郎(まきむら れんたろう)「お前も来るか? 『峠の流星』」
初刷 論(はつずり さとし)「なっ、あんた俺のこと知って──」
牧村 廉太郎(まきむら れんたろう)「置いてくぞ?」
初刷 論(はつずり さとし)「いっ、行きますよ!」

〇広い和室
志田 勘九郎(しだ かんくろう)「ええっと、そちらの若い方は 堀田さんとご一緒されてましたね」
初刷 論(はつずり さとし)「はい、初刷と言います」
志田 勘九郎(しだ かんくろう)「その節は、嘘をついて すみませんでした」
初刷 論(はつずり さとし)「嘘!?」
初刷 論(はつずり さとし)「って、何のことですか?」
志田 勘九郎(しだ かんくろう)「昨日お話した、双葉のことです」
志田 勘九郎(しだ かんくろう)「あなたに「双葉は事故死した」と 嘘をついたんです」
初刷 論(はつずり さとし)「えっ!?」
初刷 論(はつずり さとし)「じゃ、じゃあ双葉さんは 生きてるんですか?」
志田 勘九郎(しだ かんくろう)「いえ。双葉が死んだのは事実です ただ──」
牧村 廉太郎(まきむら れんたろう)「事故死じゃないなら話は単純だ」
牧村 廉太郎(まきむら れんたろう)「自殺か他殺。だがわざわざ 話に来たってことはつまり──」
牧村 廉太郎(まきむら れんたろう)「他殺、だな?」
志田 勘九郎(しだ かんくろう)「その通りです」
志田 勘九郎(しだ かんくろう)「有賀双葉は──」
志田 勘九郎(しだ かんくろう)「僕が、殺したんです」

次のエピソード:第十三話 真実、そして

コメント

  • 少しづつ謎が明かされてきたと思ったら、また最後に衝撃的な謎が増えてしまった…町長は一台何故😨😨😨😨

  • 驚きの事実が怒涛のように判明して目が離せないですね…!!佐々木さん、町長…一体どういうこと😳
    今は混乱してますが、全てが繋がるカタルシスに期待が膨らみます!ラストに向かってますます面白いです😆

  • 更新お疲れ様です✨️
    わー!ホッターが手負いなの忘れてました!😣
    須藤=佐々木というより、成り代わってるのかな。
    謎が少しずつ明らかになってきてわくわくします。あとどれくらい読める?終わらないで~!って進行バーがめっちゃ気になってました😂
    声色シーンはボイスで聞いてみたいですね……!
    町長の衝撃の告白ですが、悪い人には見えないので事情が気になります。

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