突然大ピンチ!!(脚本)
〇女性の部屋
・・・それは突然のことだった。
私――綾川理華が誕生日を
迎えた午前零時。
日付が変わったと同時に
世界がぐにゃりと歪み、
一瞬のうちに溶けてしまった。
〇森の中
再構成された後には、
すでに世界は見知らぬものへと
変わっていた。
都会では見かけない緑の木々。
高く澄んだ青空。
小鳥たちの鳴き声まで
鮮明に聞こえてくる。
理華「ここは・・・どこなの」
混乱を抱えたままで、周囲を見回す。
ペペル「あっれ~、こんなところに誰かいる」
ミトクタシア「あ? こんなとこに誰もいるわけねぇだろ」
二人組の男性が木の陰から現れる。
太陽の光で鈍く輝く灰色の髪と
それと同色の瞳。
まだ幼さを残す顔をしていて、
年若いことが伺い知れる。
もしかしたら私よりも
年下なんじゃ・・・。
もう一人の男性は深紅の髪が
やたらと目に付き、
心の中がざわめく。
そんな風に危険を感じるのは
彼の目つきが決してよいとは
言えないものだからかもしれない。
ミトクタシア「・・・いるのかよ」
ミトクタシア「動くな。動けば燃やす」
第一印象通り・・・ううん、
それよりももっと苛烈。
じわりじわりと距離を詰められる。
まずい。逃げなきゃ。
二人が立っているのとは
反対の方向に、私は走り出す。
「アハッ。逃げる気だ」
ブォンッ
〇森の中
突如強い風が起こり、
足が宙に浮いた。
前から上体に強い風を受けて、
私は呆気なく地面にひっくり返る。
ドテッ
〇森の中
どうなってるの?
風はすでに止んでいた。
まるで風が意思を持って
私を止めたみたい。
理華「あ・・・」
二人は間に挟むように立って
私を見下ろしている。
ずるずると、地面にお尻を
つけたまま後ずさる。
こんなところで死にたくない。
ミトクタシア「チッ。 俺たちは【アロウ】だ。 妙な真似しなけりゃ命は助けてやるよ」
私の表情から考えを読み取ったらしく、
赤い髪の男性がたしなめるような
言葉をくれた。
彼の瞳には苛立ちは感じられても
嘘は感じられない。
ここはたぶん、大人しく
言うことを聞くのが賢明だろう。
ミトクタシア「ペペル」
赤い髪の男性がそう言うと、灰色の
髪の男の子が腰に帯びていた剣を
抜いて私に突き付けてくる。
・・・剣? 本物?
剣なんてフィクションでしか知らない。
けど目の前の剣は金属の輝きを
放っていて、間違いなく人を
傷つけることができる。
ミトクタシア「動くなよ」
「うっ・・・」
顎を掴まれて、強い力で顔を
持ち上げられる。
ミトクタシア「口を開けろ」
口?
意味が分からなくて反応が遅れると、
赤い髪の男性は元々悪い目つきを
さらに鋭くした。
ミトクタシア「口を開けろって言ってんだ」
言う通りに口を開けると、彼は私の
口の中を隅々まで確認するように
覗き込む。
ミトクタシア「牙はないな」
「わっ!」
顔を放されて、地面に倒れこんだ。
ペペル「ってことはヴァンパイアじゃないのか。 つまんないの」
灰色の髪の男の子は退屈そうな様子で
剣を鞘に納めた。
ミトクタシア「まあ上級のヴァンパイアは 吸血時以外は牙を隠せるって言うから、 まだ確定じゃねぇ・・・」
ヴァンパイア。吸血。牙。
馴染みはあるけれど現実味のない
単語ばかりだ。
ペペル「どうしますか、ミトさん」
ミトクタシア「どうするもこうするも、 連れてくしかねぇだろ」
「えっ」
ミトクタシア「なんだその不満そうな顔は。 それとも今ここで死ぬか?」
「い、いえ・・・」
私にはもはや選択肢はなかった。
今すぐに死なないために、
私は彼らに付いて行くことにした。
〇ヨーロッパの街並み
連れていかれた先の街並みは
私の知らないものだった。
中世のヨーロッパみたい。
私たちが大通りを進んでいくと、
ひとりの男性がこちらに走ってきた。
男性「大変だ。 ついさっき向こうの通りで ヴァンパイアが出た」
ミトクタシア「なんだと」
赤い髪の男性のまとう雰囲気が鋭くなる。
ミトクタシア「どこだ?」
男性「案内する。こっちだ」
ミトクタシア「行くぞ、ペペル」
ペペル「うん」
理華「えっ。私は・・・」
ミトクタシア「おまえはそこにいろ。 動くんじゃない」
言い残すと、彼らは去ってしまった。
理華「どうしよう」
これはチャンスかもしれない。
今を逃せばもう彼らに
とらわれたままになってしまう。
私は駆け足でその場から離れた。
〇ヨーロッパの街並み
人目に付かないように建物と
建物の間に身体を滑り込ませる。
でも、どうしよう。
さっきの人たちから逃げられたのは
よかったけど、行く当てはない。
もう一度森に戻ってみたら、
もしかしたら家に帰れる・・・?
とりあえず森に行くしかない。
森の方に向きを変えた時――。
ドンッ
誰かにぶつかった。
顔を上げると、そこには男の人がいた。
理華「え・・・」
男の人の口元は血で汚れていて、
およそ人間のものとは思えない
大きな牙が覗いていた。
続きが気になります!
もしかしてここから逆ハーレムになる予感!笑
お前の口の中…本当に牙がないか確かめる…って…イカンイカン笑
私は疲れているのかもしれません。