第四話 あれ(脚本)
〇美しい草原
ビスケット「チョコレート~愛しいあなたは~チョコレート~ずっと一緒よ~チョコレート~」
リリー・ダンディライオン「マカロンさん、助けて頂いたお礼をしたいのですが」
マカロン「お礼なんていらないわ。ビスケットちゃんもチョコレートを食べて上機嫌だし、気にしなくていいわよ」
リリー・ダンディライオン「そういうわけにはいきません。ビスケット様は命がけで私達を助けて下さいました」
リリー・ダンディライオン「伯爵家の娘として、受けた恩義をきちんと返さなければ家名に泥を塗ることになります」
リリー・ダンディライオン「あ!そうだわ、これを受け取ってください」
リリー・ダンディライオン「これは金で作られた腕輪です。売ればかなりのお金を手にすることができるでしょう」
マカロン「そんな高価な物を受け取ることは出来ません」
と私は口にしたが、本当は喉から手が出るほど欲しいと思った。
ビスケットちゃんに町に着いたら甘いお菓子を作ってあげるといったが、お菓子を作るには材料がいる
材料がいるという事はお金がいるのである
私は受け取りを断って後悔した。
リリー・ダンディライオン「そんなことを言わずに受け取ってください。お願いします」
マカロン「そこまでおっしゃるなら・・・」
ビスケット「その金ぴかのは甘くて美味しいの?」
リリー・ダンディライオン「ビスケット様、これは食べ物ではありません」
ビスケット「助けてあげたのに、食べれないモノを差し出すなんて失礼よ!こんなものあっち行け~」
ビスケットちゃんは金の腕輪を投げ捨てた。
マカロン「あぁぁぁ~」
ビスケット「何か甘い食べ物は持っていないの!」
リリー・ダンディライオン「馬車の中に美味しいバナナならあります」
ビスケット「バナナすき~」
リリー・ダンディライオン「ビスケット様、バナナがお好きでしたら、馬車でバナナをたくさん召し上がってください」
ビスケット「わーい!わーい!バナナ!バナナ!」
マカロン「大事な・・・お金が・・・」
ビスケットちゃんはバナナを食べるために馬車に乗り込んだ
そして、そのまま、アプリコットの町まで連れて行ってもらうことになった。
〇魔王城の部屋
パラキート 「お前ら、ガキ1人も連れ去る事も出来ないのか!」
ここは大盗賊団【蛇龍王】の秘密基地である
蛇龍王の部下「ボス、申し訳ありません。獣人らしき女にコテンパンにされました」
パラキート 「大の大人が20人もいて1人の女にやられたのか!」
蛇龍王の部下「申し訳ありません。護衛の兵士どもを倒したあと、もう少しで、ローレル・ダンディライオンの娘を連れ去る事ができたはずなのに」
パラキート 「言い訳など聞きたくない!」
蛇龍王の部下「申し訳ありません」
パラキート 「ビートル伯爵から、どんな手段を使ってでもバナナを奪うように言われている」
パラキート 「誘拐が失敗したとなると・・・」
パラキート 「次はあれだな!」
蛇龍王の部下「はい。あれですね!」
パラキート 「そうだ!あれだ!」
蛇龍王の部下「わかりました。あれですね」
パラキート 「あれをしてこい!」
蛇龍王の部下「わかりました。あれをしてきます」
蛇龍王の部下「おい!あれってなんだ?」
蛇龍王の部下「あれってあれだろ?」
蛇龍王の部下「いや、あれだけじゃわからないだろ」
蛇龍王の部下「ボスがあれって言えばあれなのだ」
蛇龍王の部下「だから、あれってなんだ??」
蛇龍王の部下「知るかぁ~」
蛇龍王の部下「・・・」
こうしてしばらくは大盗賊団【蛇龍王】は動きを潜めるのであった。
〇巨大な城門
ビスケット「バナナ~愛しいバナナ様~もう離さないわ~バナナ様~」
馬車の中でたくさんのバナナを食べてご満悦のビスケットちゃん
マカロン(お金が・・・お金がないと・・・材料が・・・)
上機嫌のビスケットちゃんとは対照的に、町に近づくにつれて、お金がなくて不安が募る私
リリー・ダンディライオン「マカロンさん、顔色が良くありませんが、馬車酔いでもされたのでしょうか?」
マカロン「大丈夫です。少し考え事をしていまして・・」
リリー・ダンディライオン「マカロンさん、何か悩み事でもあるのでしょうか?もしよかったら私にお話しください」
リリー・ダンディライオン「私に出来る事があれば、何でもご協力致します」
マカロン(どうしようかしら?素直にお金がないことを打ち明けた方が良いかしら)
マカロン(もし、ビスケットちゃんにお金がないから甘い食べ物は作れませんって言ったらとんでもないことになりそうだし・・・)
マカロン「実は、私は遠い町から旅をしているのですが、お金が底をついてしまって、宿に泊まるお金もなくて・・・」
リリー・ダンディライオン「そんなことでしたか。それなら私の屋敷に泊まってください」
マカロン「あ・ありがとうございます。あと・・・ビスケットちゃんに甘いお菓子を作ってあげる約束をしていまして」
マカロン「お菓子を作る材料を買うお金がありません」
リリー・ダンディライオン「あ・ま・い・お・か・し???」
マカロン「はい。甘いお菓子です。ビスケットちゃんにビスケットを作ってあげようと思っています」
リリー・ダンディライオン「ビスケット様にビスケット????」
リリー・ダンディライオン「何の事だかさっぱりわかりません」
マカロン「ビスケットという甘いお菓子をビスケットちゃんに作ってあげたいのです」
リリー・ダンディライオン「ちょっと待ってください。ビスケットとはビスケット様の事でないのですね」
リリー・ダンディライオン「それと甘いお菓子ってなんのことですか?」
マカロン(もしかして、この世界ではお菓子は存在しない食べ物なのかもしれないわ)
マカロン「ビスケットとは小麦粉を主材料に焼いた食べ物です」
マカロン「そして、ビスケットを食べて美味しかったので、ビスケットちゃんはビスケットと名前を変更したです」
リリー・ダンディライオン「甘いお菓子の正体はビスケットいう食べ物であることは理解しました」
リリー・ダンディライオン「しかし、ビスケットが美味しいから名前をビスケットに変更することは理解しがたいことです」
マカロン「え!この国では好きな食べ物を名前にするのが常識ではないのですか?」
リリー・ダンディライオン「非常識です」
マカロン(私はビスケットちゃんに騙されていたのね・・・)
ビスケットちゃんは決して私を騙したわけではない。ケモ耳族だけが好きな食べ物を名前にするのである。
リリー・ダンディライオン「それよりも、ビスケットという食べ物に私も興味があります」
リリー・ダンディライオン「私が材料費を全てお出ししますので、私にもビスケットを作って頂けないでしょうか?」
マカロン「喜んで作らせていただきます」
こうして私は、リリーの屋敷でビスケットを作ることになった
しかし、この後リリーの屋敷で、とんでもない事件に遭遇することになるとは思いもしなかったのである
第五話に続く