白い月の光

ましまる

音楽の基礎(脚本)

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〇テーブル席
美由紀「ふと思ったんだけど、アンタって どうやって音楽理論を学んだの?」
美由紀「クラシックに沼っていったのは 中学生の頃だったよね? その頃から楽典とか読んでいたの?」
わたし「一般的な書籍を色々読み漁ってましたね。 今みたいに安易にネットから情報を拾える 時代でもなかったので」
美由紀「だよねー、今って便利になったよねー」
美由紀「で、ちなみにどんな本を読んでいたの?」
わたし「基礎を学ぶうえで一番有用だったのが、 芥川也寸志の『音楽の基礎』ですね」
  芥川也寸志『音楽の基礎』
   (岩波新書、1971年初版)
美由紀「おー、戦後日本の大作曲家!」
わたし「はい、文豪・芥川龍之介の息子にして、 戦後日本音楽の巨人と評されるアノ人です」
わたし「曲の作風も、その他主義思想も、 かなりソヴィエトに傾倒していたために 距離を置く人もいますが、」
わたし「作品自体は素晴らしいものだと思ってます」
美由紀「しかもイケメンだよね! 年をとってもダンディというか・・・」
わたし「そこは父親譲りってトコでしょうかね あと、文章が魅力的なのも父親譲りかも」
美由紀「それなら、その本も面白そうな感じだね どんな内容が書かれているの?」
わたし「はい、内容的には楽典のように 項目立てて音楽の基礎の説明をしています」
美由紀「じゃあ「音」についての説明から?」
わたし「いえ、「音」の説明の前に、 「静寂」についてページが割かれてますよ」
美由紀「えーっ、静寂って!?」
わたし「そこにこだわりを見せるのが、 あの本の面白いところです」
わたし「そして、記譜法・音階・リズム・形式など 説明していく感じです」
美由紀「そこは一般的な楽典と同じ感じなんだね」
わたし「ただ、その説明の仕方がスゴイものでして」
わたし「和声音楽と多声音楽の説明をする際、」
わたし「「低音という君主と、旋律という王妃の君臨する立憲君主制体」「共和制体」と、 それぞれを形容しています」
美由紀「へっ!?」
わたし「他にも、古典音楽と現代音楽の説明では、 それぞれのことを、」
わたし「「ヨーロッパの名園」と「京都の古い庭」 と喩えたりしていますね」
美由紀「音楽関係の説明では、 まず目にしないワードばっかり・・・」
わたし「ですよね! 芥川也寸志の教養と表現力が垣間見えて 読み物としても面白いんですよ」
美由紀「でもさ、読み手をすっごく選びそう・・・」
わたし「そうなんですよ、高校生のとき、 「音楽の基礎知識を学びたい」って人に この本を貸していたのですけど、」
わたし「大半の人が、冒頭の数ページで 力尽きていましたね・・・」
美由紀「あー、やっぱり・・・」
わたし「でも、音楽についてズブの素人ながら、 最後まで読み切った同級生もいましたよ」
美由紀「さすが、知識欲”だけ”は真っ当なクラス!」
わたし「”だけ”って言わないでください」
美由紀「で、その子の感想はどんな感じだったの?」
わたし「はい、感想やお気に入りの部分について 尋ねたところ、」
わたし「おもむろに、とあるページを開いて・・・」

〇教室
  ヨーロッパ音楽は一八世紀後半になって、 
  ホモフォニーの支配する時代がやってくる。
              (111頁)
クラスメイト「見て、コレコレっ!」
クラスメイト「ホモの支配する時代だって、最高かよっ! FOOOOOOOOO!!」

〇テーブル席
美由紀「あー、ソッチ系のクラスメイトね・・・」
美由紀「ホモフォニーで興奮しちゃうなんて・・・」
  ホモフォニー
  (homophony, Homophonie)
  
  和声音楽。主旋律のもとに他の声部が和声的に伴奏する形態
わたし「でもその子、感心なことに、 件の18世紀後半の音楽を聴き漁るように なりましたよ」
わたし「モーツァルトやベートーヴェンといった 古典派音楽を、それはもう熱心に」
美由紀「んー、キッカケはアレだけど、 結果的には興味持ってくれたんなら・・・」
美由紀「ちょうど古典派の時代なら、 いろんな有名な作曲家がいるからイイよね」
わたし「でも、途中からモーツァルト一辺倒に なっちゃいましたね」
美由紀「へっ、なんで!?」
わたし「私がちょっと余計なことを言ってしまって」
美由紀「何を言ったの?」
わたし「「モーツァルトは男色もイケたみたい」と」
美由紀「もー、アンタはー!!」
美由紀「ちなみに、その子って その後一体どうなったの?」
わたし「はい、彼女の好きそうな情報を 色々と吹き込み続けてみたところ・・・」

〇教室
  ジャン=バティスト・リュリって 
  ルイ14世に寵愛され続けたのに、 
  王様の小姓(♂)に手を出して・・・
クラスメイト「ハァハァ・・・┌(┌^o^)┐・・・ハァハァ」
  モデスト・ムソルグスキーの代表作の 
  『展覧会の絵』って、        
  恋人の画家(♂)の死を悼んでの・・・
クラスメイト「ハァハァ・・・┌(^o^ ┐)┐・・・ハァハァ」
  ルネサンス期のニコラ・ゴンベールって
  聖歌隊長の立場で少年合唱隊員を・・・
  ピョートル・チャイコフスキーって  
  10代の寄宿舎時代から男性と・・・・
  
  しかも、40代の時に10代の甥と・・・
  モーリス・ラヴェルって実は・・・
クラスメイト「ホッ・・・モォ・・・・・・」

〇テーブル席
わたし「といった感じで、 お好きな情報と曲をプレゼントし続けたら パンクしちゃいました・・・」
美由紀「好きなことでダウンしたなら本望じゃない ・・・その内容はさておき」
美由紀「て言うか、そんな作曲家たちの性癖話を アンタはどうやって入手したの?」
美由紀「ネットも普及していない時代、 そのネタを知り得る方法って一体!?」
わたし「た、タマタマデスヨー」
美由紀「んなワケあるかー!」

次のエピソード:伯風巴哈

コメント

  • 今回も楽しく音楽が学べました!
    芥川龍之介の子息が作曲家だったなんて初めて知りました!
    音楽の基礎だったなので、どんな真面目な話が広がるのかと思いきや、まさかの方向へww
    確かにホモフォニーはインパクトすごいw
    ヨーロッパって男色とかに厳しいのかと思っていましたが、いろいろと逸話があるんですねw

  • 音楽の基礎知らなかったなあ。
    そもそも、芥川龍之介の息子さんが音楽家なのも驚きです。読んでみたいなと思いました。
    決して父親譲りの美貌が見たいとか、過激そうな文章に鞭打たれたいとか、ホモフォニーで妄想したいとかではないんだからねッ!(丸出しでスミマセン)

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