空っぽな時間(脚本)
〇明るいリビング
古城玲菜「ふぅー。 やっと二人ともお昼寝してくれた」
古城玲菜「双子だと、なんでも二倍だから大変! 本当に体力勝負」
古城玲菜「でも・・・」
古城玲菜「その分、天使の寝顔も二倍」
古城玲菜「さーて。今のうちにお掃除して、 夕飯の仕込みをしなくちゃ!」
古城玲菜「・・・」
二人が寝ると、突然。
辺りが静まり返って
ひとりぼっちになったような
取り残されたような錯覚に襲われる。
〇水たまり
──最近、よく見る夢──
〇教室
学校に行っている夢
〇オフィスのフロア
会社で仕事に追われている夢
〇明るいリビング
そして、目覚ましの音で目を開けると
何者でも無い私がいる
古城玲菜「文彦さんは優しいし、義父母とも良い関係を気付けている」
古城玲菜「確かに双子の面倒を見るのは大変だけど、時々母が手伝いに来てくれるし」
古城玲菜「ネットで情報交換したり、コミュニケーションとれてるから、孤独では無い」
古城玲菜「それなのに・・・」
『空っぽ』と感じるのはなぜ?
古城玲菜「あ、文彦さんからだわ」
今、涼太とお茶してきた!
古城玲菜「涼太と!?」
アイツ、良くも悪くも
本当に何にも変わってないよな(笑)
古城玲菜「・・・」
そうなの。
だから、思い出しちゃうのよ
──9年前のこと
〇シックなリビング
足立涼太「・・・」
足立涼太「なんだよ、これ」
足立涼太「目玉焼きは黄身が半熟って言っただろ?」
岩本玲菜「・・・」
足立涼太「本当にオメーはなんも出来ないヤツだなぁ」
岩本玲菜「・・・」
足立涼太「昨日の晩飯も、冷えた飯なんて食えないから捨てといたわー」
岩本玲菜「昨夜は父さんの誕生日だからって、 ずっと前から言っておいたわよね?」
足立涼太「あ?親の誕生日?そんなの知るかよ 俺にはかんけーねー」
足立涼太「俺はお前の親と付き合ってんじゃねーから」
岩本玲菜「・・・」
足立涼太「俺を優先できねーなら、親との縁切れよ。 今すぐ。ほらぁ」
岩本玲菜「・・・」
足立涼太「あー、面倒くせー」
岩本玲菜「・・・」
足立涼太「いてぇっ!」
足立涼太「な、なにすんだよ!」
岩本玲菜「ゴミを捨てようと思って」
足立涼太「ゴミ箱、投げつける事ないだろ!?」
岩本玲菜「涼太も一緒に捨ててやろうと思って」
岩本玲菜「あ、粗大ゴミは一緒に捨てちゃダメか」
足立涼太「俺が・・・ゴミ!?」
岩本玲菜「・・・」
岩本玲菜「あのレストランに行ったの、 怒ってるんでしょ?」
岩本玲菜「『いつか行きたいね』って言っていた 三つ星レストラン」
岩本玲菜「三ヶ月前に姉さんが予約してくれてた事、 知らなかったって、先週説明したよね?」
岩本玲菜「それを知った時、本当に悪いと思ったし、 何回も何回も謝ってた」
岩本玲菜「なのに・・・いつまでもウジウジと・・・」
岩本玲菜「女々しいったらありゃしない!」
岩本玲菜「あー!イライラするっ」
足立涼太「う、うっせー! 先に行くお前が悪い!」
岩本玲菜「ホント、いっつもいっつも感情剥き出しで。 ガキが!」
足立涼太「うるせーな!」
感情をそのままぶつけてくる
涼太につられて
私も感情のまま
言葉をぶつけ返していた
〇明るいリビング
古城玲菜「・・・」
古城玲菜「それまで私は 「自分には感情が無いのでは?」 と、思うほどクールだった」
古城玲菜「今思えば、涼太との付き合いが切っ掛けで」
自分の感情に
気付けるようになったのかもしれない
古城玲菜「ん?また、文彦さんからだ。 連続で、珍しい」
そうそう!今夜、鳴川の誕生祝いを兼ねて、仲間内で呑んで帰る事になった!
だから、夕飯は大丈夫!
古城玲菜「夕飯の心配してくれたんだ! ホント優しいなぁ。文彦さんは」
古城玲菜「『はい!了解!』 ・・・と」
女の子がいるお店に行くけど、ごめん!
古城玲菜「あははっ。 そんなの、大丈夫なのに」
古城玲菜「『お気遣いありがとう!じゃ、お詫びに、コンビニで甘いもの買ってきてね』 ・・・と」
古城玲菜「返事はやっ!」
まかせて!玲菜の好きそうなヤツ、GETしてくるから!
古城玲菜「文彦さんったら!」
古城玲菜「・・・」
涼太とは、こんな穏やかなやり取りは
絶対、出来なかった──
〇シックなリビング
岩本玲菜「ねぇ、涼太」
岩本玲菜「うちの会社の女の子と二人っきりで映画に行ったでしょ」
足立涼太「おう!行ってきたけど?」
岩本玲菜「あれ、「公開されたら見に行こうね」って言っていたヤツだよね?」
足立涼太「あー。でも、その子から 『三ヶ月』以上前から誘われてたんだよな!」
岩本玲菜「その子、わざわざ自慢しに来たけど」
足立涼太「あ、そう言えば、「岩本さんにも誘われてたんだけど君を優先した』って言ったかもー」
岩本玲菜「・・・」
岩本玲菜「それって、この間の仕返し?」
足立涼太「まー、お前もやったんだからいいよな? 俺も「悪気はなかった」んで!」
岩本玲菜「やっぱ、当て付けか・・・」
岩本玲菜「どうして、いっつも、 そういうやり方をするのよ!」
足立涼太「いやぁ、やられたら、倍にしてら返さないと 気がすまないからなー。俺」
岩本玲菜「・・・」
岩本玲菜「ほんっと!バカじゃないの!?」
〇明るいリビング
古城玲菜「・・・」
古城玲菜「いっつもいっつも、一番嫌な方やり方でやり返してくる、あいつのやり方!」
古城玲菜「あー!思い出すだけでイライラする!」
古城玲菜「あんなヤツ、無理無理無理無理!」
古城玲菜「・・・」
だけど・・・
古城玲菜「・・・はい。もしもし」
「あ、玲菜? おれおれ!涼太!」
古城玲菜「涼太・・・さん?」
主婦・玲菜さんの瞬間ごとの感情の切り取りがリアルで、その心情の描写がステキです!言葉選びも本当に繊細で、頷かずにはいられない感じです!
そして、ふとした心の隙間に現れる涼太さんとのエピソード、そして鳴る電話、、、続きが気になります!
昔の思い出が時が経つにつれて美化しちゃうことありますね。ものすご〜く分かる!体験したことある!
特に『空っぽに感じる』という表現にグッときました。
涼太と玲菜、2人の関係は玲菜が手を出してからは玲菜が主導権を握っていた(女王様的な?)イメージだったのですが、わりと五分五分の戦いだったんですね。
涼太はどうして電話をしてきたのか?
ドクン!