プロローグ(脚本)
〇大広間
この世には
悪役令嬢モノ、という存在がいる。
恋愛モノの漫画や小説に
出てきては主人公達を邪魔する悪役令嬢は
誰しも多少の馴染みがあったせいか
はたまたキャラの作りやすさのおかげか
いろいろと揉めながらも
今や悪役令嬢モノは
一大ジャンルと呼べるほど成長している。
だがしかし、私は思うのだ。
転生前の記憶を取り戻すことなく
改心も反省もせずに
悪役令嬢としての物語が
本来の流れのまま終わっていたら
・・・そして悪役令嬢に
子供が出来たらどうなるのかと
その答えは
私がこの世に生まれてから
私の背後にずっと付きまとっている。
「ねぇ、あの子のお母様って・・・」
「よくパーティーに来られるわね・・・」
「あの子に目をつけられたらおしまいよ・・・」
桜花「・・・・・・・・・」
桜花「・・・はぁ」
悪役令嬢に娘が産まれたら
いったいどうなるのか
その答えは
娘というだけでレッテルを貼られ
遠巻きにされる。だ
もちろん私自身は
なにも悪いことはしていない
そもそも父親以外の男性とは
話すことすらほとんど無い
店員さんに声をかけられただけで
挙動不審になってしまう私が
そんな簡単にパーティーに来ている
他所のご子息に声をかけたり
ましてや手を出したり
身体を求めたりするなんて
そんな大胆なことが
出来るはずがないのだ。
いったいいつまで続くのかも分からない
偏見だらけの人生に
私はもう飽き飽きしていた。
〇華やかな裏庭
桜花「・・・ってことで」
桜花「ちゃんと私のことを見てくれて 世間話以外の会話が出来るような」
桜花「そんな友達が私は欲しい!!」
自分達以外の気配は感じない
裏庭のテラスに
私の声が響くのを
隣のアリスちゃんが横目で見やる
アリス「いや、私だけで満足しときなよ」
桜花「欲を言えば、男子の!!」
アリス「うちの学校、女子校だよ?」
アリス「しかも中高一貫の」
アリス「異性の友達作りするには転校でもしないと」
桜花「うぅ・・・」
桜花「アリスちゃんの知り合いに」
桜花「良さげな男子とか居たりしない?」
桜花「出来ればイケメンで、婚約者が居ない人」
アリス「普通の人には婚約者なんて居ないよ」
アリス「でも、まぁ・・・」
アリス「心当たりが無いわけではない、かな」
桜花「えっ!?」
思わずアリスちゃんの顔を二度見する
アリス「顔は良い方だし、性格もそこまで酷くないし」
アリス「運動神経良いし、礼儀作法はしっかりしてる」
アリス「大人からの評価がかなり高くて」
アリス「今のところ婚約者の居ない男子なら」
アリス「私の知る限り一人、居るかな」
桜花「えっ、それって」
桜花「じ、実在する人物なの!?」
アリス「この流れで嘘つくわけないでしょ」
アリス「ちゃんと現実で生きてる人間だよ」
桜花「うそ、そんな男子が現実に居るなんて」
アリス「会いたいって言うなら連絡するけど」
アリス「どうする?一回だけ会ってみる?」
桜花「会いたい!!」
こんなチャンスは二度と無い
アリスちゃんの知り合いなら信用出来るし
その人と会うしかない!!
アリス「じゃあ連絡しとくよ」
アリス「たぶん大丈夫だと思うから」
桜花「ありがとう、アリスちゃん大好き」
アリス「はいはい、私もだよ」
こうして私は、軽い気持ちで
物語の最初の一歩を
踏み出してしまったのだった
悪役令嬢の世界にも二代目の苦悩や葛藤があるという発想が面白い。アリスちゃんがあまりにも都合の良いことを並べているから、これはこれから始まる悲劇の壮大なフリなんじゃないかと読者は疑ってしまいますが、どうなんでしょう??