メタバースで書く女

根本桃安(ねもとぴぁ)

ペンであけたウサギ穴にて(脚本)

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〇仮想空間
  何者にもなれるこの世界なら
  自分を見つけられる
  そう思っていた
Suzuri「・・・」
ルビー「アイテムにそんなペンあったっけ?」
Suzuri「オーダーメイドです」
Suzuri「現実世界(あちら)で失くしたもののレプリカで・・・」
ルビー「ウッ!」
ルビー「ごめん、あれウチが──」
Suzuri「でもいいんです ここならもう失くしませんし」
ルビー「え?あ、そう?だよね~、ハハ!」
ルビー「ここは長いの?」
Suzuri「一ヶ月ほど前から」
ルビー「普段何してんの?」
Suzuri「特に何も」
ルビー「仮想現実でまでお一人様気取ってんなよ、お前!」
Suzuri「な!何ですかあなた!」
ルビー「瑠美愛(ルビア)だよ!クラスメイトの!」
ルビー「ちな、あんたのペン捨てたのウチね」
Suzuri「月岡さん、だったんですね」
Suzuri「嫌われてる自覚はありましたが、アカウント特定してまで嫌がらせとは──」
ルビー「謝りに来たんだって!反省してる!本当にごめん!」
ルビー「学校戻ってきてよ〜!弁償するから〜!」
Suzuri「結構です!学校も、来月引っ越すからやめただけですから!」
ルビー「何それ聞いてない!」
Suzuri「誰も気にしないでしょ?数ヶ月しかいなかった転入生の転校なんて」
ルビー「いや、言い方!自分でスルーしまくってたんじゃん!!」
ルビー「皆の気持ち考えたことあんのかよ!」
Suzuri「私の気持ちも知らないクセに!」
ルビー「全ッ然分かんねぇよ!!」
ルビー「何が楽しいんだよ!こんなトコでこんな──」
Suzuri「あっ!」
ルビー「えーと?『仮面の異世界流浪人』──」
ルビー「まさかの小説!?」
ルビー「そっか、こういうのが好きなんだ?」
Suzuri「た、試しに書いてみただけよ!」
Suzuri「返して!」
ルビー「や〜だよ」
Suzuri「待って!!」
  分かっていた。
  終の棲家など存在しないと。
  仮に永住の地があったとして
  そこで私に何ができるのだ。
  転生の度リセットされ
  失い続けたこの私に──
おばあちゃん「親の都合で振り回されて、可愛そうに」
おばあちゃん「おばあちゃん、何もできないけど」
おばあちゃん「迷ったときのお守り」
Suzuri(ダメだよ、おばあちゃん。何を書いても、いくら書いても堂々巡り)
Suzuri(私は空っぽだ)
ルビー「ざっと読んだ」
ルビー「主人公が、なんかな〜」
Suzuri「人に見せるために書いてませんから!」
ルビー「観光客っぽいっつーの? 遠巻きなんだよな〜」
Suzuri「え?」
ルビー「そりゃ、やさぐれちゃう気持ちも分かるよ?毎回リスタートとか辛すぎッ!」
Suzuri「・・・」
ルビー「でもどうせリセットされんならいっそ、やりたい放題ハッチャケちゃえばいいのに!」
Suzuri「なるほど、それは新しい視点ですね」
  拡散希望
ルビー「ど、どしたん? 人に読まれたくなかったんじゃ──」
Suzuri「試しにハッチャケてみました」
Suzuri「結構有りかも」
Suzuri「あの、私、ここで小説家目指してみるから・・・」
Suzuri「良かったら、その──続きも読んでよ」
ルビー「言われなくとも!」
ルビー「ずっと知りたかったんだ あんたのこと」
  書くことで
  私は自分を確かめる
  自分を伝え、
  自分を再発見する
  何者にもなれなくても
  私の物語の主人公は私だ

コメント

  • これは作家や表現をする方々に対しての強いメッセージ性のある作品ですね
    涙出ました
    小さい頃自分の描いた漫画を顔を真っ赤にしながらでも友達に読んでもらっていたのを思い出しました

    ほんとに忘れていた記憶でした😂👍

  • ワンシーンとは思えないステキな内容が詰め込まれていて、心が温かくなります。涼李さんの成長のキッカケのシーンでもあり、涼李さんと瑠美愛さんとの友情の始まりでもシーンでもありますし。読後晴れやかに気持ちになります!

  • ワンシーンとは思えない幸福感に浸っています。
    メタバースの世界観とカノジョたちのアオハルが、絶妙にマッチしていて眩しかったです。リアルじゃないからこそ、本音が言いあえたのかなとも思います。
    ルビーちゃんもsuzuriちゃんも、一生付き合える親友になれそうですね。

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