読切(脚本)
〇渋谷のスクランブル交差点
私は野村帆花中学3年生。受験勉強の真っ只中・・・なのだけれど
今日はクリスマス。
今日ぐらい息抜きをしたいが、毎日、夜遅くまで塾があって、今日だって例外ではない。
浮かれムードな街を横目に塾への道を急いでいると、細い脇道に、小さな白いツリーが無造作に捨てられているのが目に入った。
〇ビルの裏
野村帆花(ノムラホノカ)「こんなところにツリーを捨てるなんて!」
私は思わず駆け寄った。
授業の開始時刻は迫っていたけれど、無惨な形で倒れているツリーがどうしても気になった。ツリーはかなり汚れていた。
野村帆花(ノムラホノカ)「ハンカチでふいたら・・・うん、綺麗になった。真っ白なツリーって珍しいな」
ツリーを立ててみると思ったより大きくて、私の身長と同じぐらいある。
野村帆花(ノムラホノカ)「飾りが無いと寂しいけど・・・残念ながらこれしか手元に無いなぁ」
私は、自分の首にまいていたモフモフのマフラーをふわりと巻き付けた。
野村帆花(ノムラホノカ)「よし、素敵!」
野村帆花(ノムラホノカ)「いけない・・・もうこんな時間!」
急ごうと立ち上がった瞬間。
「ウググググ・・・グググ」
野村帆花(ノムラホノカ)「なに?誰かいるの?」
「ウググググ・・・グググ」
野村帆花(ノムラホノカ)「ツリーが・・・動いてる・・・」
野村帆花(ノムラホノカ)「いやああ!来ないで!」
私は一目散に駆け出した。奇声をあげる不気味なツリーはピョンピョン跳び跳ねながらついてくる。怖い、怖すぎる。
私は無我夢中で走った。
〇怪しいロッジ
野村帆花(ノムラホノカ)「・・・ってことがあって、 気が付いたらここに来ていたの」
ハーキマー「ツリーに襲われるって・・・ 夢でも見ていたんじゃないのか?」
私が逃げ込んだ先は、とある森の中にある小屋。ここには先月知り合った魔法使いの女の子が住んでいる。
知り合いに魔法使いがいて良かった。親や塾の先生に、こんなこと言えるわけない。
野村帆花(ノムラホノカ)「夢じゃないもん! 本当に追い掛けてきたんだもん!」
アベンチュリ「えーっと・・・そのツリーというのは・・・ もしかしてこの方ですか・・・?」
魔法使いの女の子・ハーキマーと共に住んでいる白い大きな犬・アベンチュリが窓の方へ歩き、口でくわえカーテンを開いた。
窓の外には、先程の白いツリーが中を覗き込むように立っていた。
野村帆花(ノムラホノカ)「いやいやいやいや怖い怖い怖い なんでついてきてるの!?」
私が叫んだ瞬間。
〇怪しいロッジ
周りの空間がぐにゃりと曲がり、
私たちは狭い部屋に閉じ込められた。
〇牢屋の扉
目の前には大きな扉があり、扉には大きな文字で「塔」と書かれていた。
扉には錠前式の鍵がかけられている。
ハーキマー「何だこれ!?」
アベンチュリ「あのツリーの魔法でしょうか・・・ 鍵はダイヤル式ですね・・・」
アベンチュリ「アルファベットのダイヤルですね。 5文字・・・」
アベンチュリ「あ、これはあれじゃないですか?」
アベンチュリは
前足で器用にダイヤルを合わせた。
アルファベット5文字。
その答えは・・・
TOWER
扉は難なく開いた。
〇地下室
野村帆花(ノムラホノカ)「なーんだ、めちゃくちゃ簡単じゃない! ん?何これ・・・また扉だ」
〇牢屋の扉
扉を開けるとまたすぐに扉があり、
その扉にはまた大きな文字で次は
「閤花城」と書かれていた。
そして更にその下に小さく
「塔とのペアを消せ」と、あった。
先程同様、
ダイヤル式の錠前がかかっている。
野村帆花(ノムラホノカ)「「塔とのペア」って何? 「ペア」をまた英語にするとか?」
ハーキマー「いや、こっちの鍵のダイヤルは アルファベットじゃないみたいだ」
アベンチュリ「ひらがな5文字ですね」
野村帆花(ノムラホノカ)「また5文字かぁ。そもそも、この '閤花城'って何て読むんだろう?」
ハーキマー「コウカジョウ・・・か? 5文字ではないな」
野村帆花(ノムラホノカ)「コウカシロは?ダイヤルを合わせてみる!」
野村帆花(ノムラホノカ)「えっと・・・コウカシロ・・・合った!」
野村帆花(ノムラホノカ)「・・・開かない。違うみたい」
アベンチュリ「読み仮名ではないようですね。塔とのペアを消すことを考えないといけないのでしょう」
ハーキマー「「塔とのペアを消す」・・・か」
ハーキマー「あ!こういうことじゃないのか?」
何やらひらめいた様子のハーキマーは魔法でペンを生み出し、扉に書かれた「閤花城」に書き込みをし出した。
ハーキマー「ほら、「塔」って漢字に含まれる」
ハーキマー「土、草かんむり、合 を「閤花城」から消すと・・・」
野村帆花(ノムラホノカ)「あ!「門・化・成」が残る!」
アベンチュリ「もん・か・せい」
アベンチュリ「ひらがな5文字ですね! ダイヤル・・・合わせてみましょうか!」
アベンチュリがまた器用に前足でダイヤルを合わせると、見事に鍵が開いた!
扉を開けるとそこには
先程の白いツリーが
私たちを待ち構えていた。
〇怪しいロッジ
野村帆花(ノムラホノカ)「ツリーだ!どうしよう・・・」
ハーキマー「仕方ない・・・ 襲われる前に攻撃するしか!」
ハーキマーが魔法を繰り出そうと
右手を構えた瞬間。
アベンチュリ「ちょっと待って下さい! このツリー、何かしゃべってます!」
ハーキマー「はぁ?ツリーが?」
アベンチュリ「ふむふむ・・・えっと・・・ 「お礼が言いたかった」・・・お礼?」
野村帆花(ノムラホノカ)「まさかマフラーの?てかアベンチュリ・・・ ツリーの言葉分かるんだ・・・」
アベンチュリ「子供が、今年は新しいツリーが欲しいと言ったので、このツリーは捨てられたそうです」
アベンチュリ「謎解きが好きな子で、去年まではその子が楽しそうに謎を解くのをリビングでいつも見つめていた・・・と」
アベンチュリ「だから、謎解きがクリスマスプレゼントに・・・お礼になると思ったそうです」
ハーキマー「クリスマスツリーにも色々あるんだな」
野村帆花(ノムラホノカ)「そう・・・だったんだ。 逃げたりして・・・ごめんね?」
それから私たちはツリーと共に
クリスマスパーティーを楽しんだ。
ハーキマー「ツリーがチキン食べてる・・・ ホラー・・・」
謎解きはあまり得意ではありませんが、これは分かりました。上手く読者の探究心を掴んだストーリーでした。それにしてもツリーがチキンを食べることがホラーです。
謎解き楽しく参加させて頂きました。(笑)ストーリーがうまく構成されていて最後まで一気に読ませて頂きました。最後のオチに笑ってしまいました。
謎溶けました。スッキリしました。
ものは大事にしないといけないですね。
鶏肉を食べるツリー、、、どうやって食べるのか木の部分に口があるのかな?気になりました。