のっぽのトナカイさん

藤崎 りりす

のっぽのトナカイさん(脚本)

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〇学校の屋上
モブ男子1「おい、あいつだよ、背がでかすぎる女って!!」
モブ男子2「マジデカいじゃん。百六十ぐらいあるんじゃないの?」
モブ男子1「あれで顔もよかったらまだマシなのに、顔がな〜」
  普通より少し背の高いある少女は、小学校でいつも他の生徒に馬鹿にされていました。
  “いつもみんなの わらいもの”そんな歌があるけれど
  まるで自分はトナカイなのに、クリスマスの季節になっても、サンタは現れてくれないな・・・
  少女はそう思って、落ち込んでいました
爽やか男子「でも、背が高いって、それだけで長所だと俺は思うな」
  クラスでも人気者の男子生徒が、そんなことを言って少女をかばいました
  少女は、その言葉にとても励まされました
  “いつも泣いてた トナカイさんは 今宵こそはと よろこびました”

〇コンビニのレジ
主人公「・・・この出来事が、私がモデルを目指すきっかけになったの」
主人公「だから、背が高いからって、それをコンプレックスに思わないで、あなたにも前を向いてほしいな」
  大人になった“トナカイさん”の私は、バイト先のコンビニで
  バイトの後輩で、自分の背の高さに悩む女子大生の子に自分の経験を話していた
後輩「先輩、モデルだったんですか?」
主人公「知らなかったの? 私のSNSとかを見てくれればわかると思うけれど、たまにプロの写真家さんに撮影してもらったりしているのよ」
後輩「先輩のSNS、チェックしてなかったんで」
後輩「雑誌のモデルとかはやってないんですか?」
主人公「そういうのはやっていないけれど・・・別にモデルは、雑誌だけがお仕事じゃないのよ」
後輩「ふーん。で、そのかばってくれた男子生徒とはどうなったんですか?」
主人公「もともと、特別に仲がよかったわけじゃないから」
主人公「SNSを見たら、その人は、もう結婚して子どもがいるみたい」
後輩「じゃ、結局その人、元の歌のとおり」
後輩「トナカイの先輩に夢を見させただけの無責任なサンタだったんですね」
  しかも先輩、当時は背が高かったのかもしれないけれど、今では普通だし・・・
  太ってるから背も低く見えるしね、と後輩が小声で言ったのが聞こえた
主人公「SNSではいいねもコメントも私の写真にはたくさんつくのよ!!」
  そう言いかけて、むなしくなって私はやめた
  後輩は、割り当てられたサンタさんのコスプレを着ている
主人公「私の衣装、これって・・・」
  私に割り当てられたコスプレは、“トナカイさん”だった
後輩「先輩、よかったですね、“トナカイさん”で」
主人公「・・・」
主人公「このコスプレ姿をSNSにアップしたら、いいねがどれぐらいつくか」
主人公「楽しみだわ!!」
後輩「はぁ・・・先輩、ポジティブっすね」
  今年のクリスマスも、クリぼっち
  でも私は、こんな人生も悪くないと思っている
  いつか、本当の“サンタさん”が私の前に現れることを信じて・・・

コメント

  • いいねがいっぱいつくんだから!のところで、今どきの人の言い分だなぁと思いました。笑
    その手の数字にすがって、リアルでの視野の狭さとかをうまく表現してるな、と思いました

  • すごい共感のできるステキな物語ですね。モデルっぽいスタイルなのに身長がコンプレックスで常に猫背になっている友人を思い出しました。何気ない一言が気持ちを救うことありますよね。

  • 私の小学校にも背の高い女の子がいました。当時は背が高いだけであだ名は「ノッポ」でした。それから30年経った今、彼女は有名な女優です。

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