メタリアルストーリー

相賀マコト

エピソード4(脚本)

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〇西洋の円卓会議
議長「さて、それでは会議を始めるとしよう」
  毅然とした力強い声が反響する。
  広い室内は薄暗く、中央に円形の卓が設置されていた。
  それを囲んで着席する者たちは全員、濃紺のマントを着用している。
  フードを深くかぶっているため、その表情はうかがえない。
  入口から最も遠くに位置する者が、再び声を発する。
議長「皆も既知(きち)のこととは思うが、まず例のコレクター試験での出来事を報告してもらおう」
議長「アイリ・バーラーシュ上級コレクター、入れ」
  音を立てながら入口の扉が開く。
  差し込む光とともに、ひとりの少女が室内へと足を踏み入れた。
議長「彼女は先のコレクター試験にて、あるグループの試験監督を行った上級コレクターである」
  一礼し、アイリは円卓へと足を進める。
  場の全員の視線が彼女へと注がれた。
  アイリは、静かに報告を始める。

〇西洋の円卓会議
  話が進むにつれ、室内にざわめきが起こり始めた。
アイリ「・・・以上が、私の見たありのままの出来事です」
「そんなバカな話があってたまるか!」

〇西洋の円卓会議
長老A「新人が名持ち(ネームド)を狩った!?」
長老A「しかも片腕が義手で、ギルド支給の鉄剣しか持っていない者だぞ!」
長老B「ただのネームドではありませんよ」
長老B「『黒焔(こくえん)のヴェラグニル』・・・ 上から数えた方が早い序列のネームドです」
長老C「ヴェラグニル・・・だと・・・?」
長老C「ありえん。八王ではないにしろ、神話の中の存在だぞ」
長老C「引退したギルバートならまだしも、特級が相手にしてもまず勝てんだろう」

〇西洋の円卓会議
議長「静粛(せいしゅく)に!」
  すっと、どよめきが止む。
議長「アイリよ、お主の言葉に嘘偽りはないな?」
アイリ「ありません」
議長「発言を撤回し、もしお主が倒したとここで宣言するなら、特級コレクターへ昇級させることもできるのだぞ」
アイリ「身の丈に合わぬ昇級は、身を滅ぼすだけです」
アイリ「本件における私の貢献は微塵(みじん)もないと言えるでしょう」
アイリ「すべては、ニルという名の新人の功績です」

〇西洋の円卓会議
長老B「にわかには信じられませんな」
長老A「それで、その新人の処遇については? 試験には落ちているのだろう?」
長老A「このままメルザムを去ってしまうのでは?」

〇西洋の円卓会議
議長「ふむ、このままというわけにはいかんな」
議長「通例では、ネームドを倒した者は無条件に特級へと進級する権利を得るが、それはすでにコレクターである者の話だ」
議長「この場合、見習いですらないその新人はコレクターとは言えまい」
  フードの下に隠れた瞳がアイリを一瞥(いちべつ)する。
議長「それに、彼女の話をありのまま受け入れることもできん」
アイリ「・・・・・・」
長老C「それでは、その新人は・・・」

〇黒
  ニルの瞼(まぶた)がゆっくりと開く。

〇白
  眼前(がんぜん)には、白い天井が広がっていた。
  少しして、ニルは自分の身体(からだ)がベッドの上に横たわっていることに気づく。

〇城の救護室
ニル「やっぱり、あれを使った後は眠くなっちゃうんだよな・・・」
  身体を起こし、大きく伸びをすると、ギシギシと骨の軋(きし)む音がした。
看護師「あ、ニルさん。 気がつきましたか?」
  廊下を通りかかった看護師が、ニルに気づき駆(か)け寄ってくる。
看護師「具合はどうですか? 特に外傷はないようですが・・・」
ニル「大丈夫です」
ニル「・・・あの、ここは?」
看護師「ギルド=メタリカ内の救護室ですよ」
看護師「ニルさんは試験の最中に倒れて、ここに運び込まれたんです」
ニル(ああ・・・やっぱりあれも試験だったのかな)
ニル「それはどうも、ご迷惑をおかけしました」
看護師「いえいえ、何度でもいらしてくださいね」
ニル(そう言われても、試験には落ちちゃったからなあ・・・)
看護師「ふふっ、ニルさんならもうお世話は必要ないかもしれませんね」
ニル「・・・?」
看護師「もう少し休んでいかれますか?」
ニル「いえ・・・。 もういきます」
看護師「では、少し待っていてください」

〇城の救護室
  しばらくして戻ってきた看護師の腕には、ニルの荷物が抱えられていた。
看護師「はい、どうぞ。 お気をつけて」
ニル「ありがとうございます」
  荷物を受け取り、部屋を出て行こうとするニルの背中に、看護師が声をかける。
看護師「あっ、ギルドを出る前にロビーの掲示板を絶対に見てくださいね!」
ニル「? ・・・はい」

〇西洋風の受付
  ロビーに入った瞬間、人々の目が一斉に自分に向くのを感じ、ニルは少したじろぐ。
  カウンターの横にある掲示板へと向かうと、数人のひそひそとした声が耳に入った。
「おい、あれ・・・」
「ああ、あいつが・・・」
  掲示板の前は人だかりができていたが、皆ニルの存在に気づくと道をあけた。
  微妙な違和感を覚えながらも、ニルは掲示板の目の前まで歩いていく。
ニル「・・・・・・」
  合格者一覧に目を通す。
  そして自分の名前がないことを改めて確認し、納得するように頷(うなず)いた。
ニル(まあ、そうだよね・・・。 ・・・ん?)
  よく見れば、見習いコレクター合格者の欄の上に、初級コレクターへ飛び級した者の名前が連ねてある。
ニル(まさか・・・)
  いくばくかの期待を込めて見てみるも、やはりニルの名はない。
  そのかわりに、見知った名前を見つけた。
ニル「あっ、エドガーだ。 すごいなあ、いきなり初級・・・」
ニル「これが、ブッシュなんとか家の実力ってやつか・・・」
エドガー「ブッシュバウムだ!!!」
ニル「わっ、びっくりした」
  突然張り上げられた声に、ニルは驚いて身をのけぞらせる。
  後ろを見ると、エドガーが仁王立ちしていた。
ニル「お、おめでとう! いきなり初級なんてすごいね」
エドガー「なんだそれは、バカにしてるのか君は?」
ニル「え? そんなつもりは・・・」
ニル「飛び級なんて、すごいことじゃないか」
エドガー「ああ。 ブッシュバウム家の者なら当然のことだ」
エドガー「だが、君がそれを言うか?」
ニル「・・・どういう意味?」
エドガー「まさか、気づいてないとでも?」
  エドガーの指先が掲示板の最上部を指した。

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コメント

  • 応援してます

  • とても興味を引く内容でした。これからの展開が楽しみです!

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