文彦の乱(脚本)
〇豪華な社長室
そう、涼太は僕にも嘘をついていた。
「足立です。失礼します」
足立涼太「社長、お久しぶりです。 海外から戻りましたので、また、よろしくお願いします」
社長「足立部長。 最近N社も海外に力を入れているようで 忙しそうですね」
古城文彦「よっ!久しぶり!」
足立涼太「文彦・・・じゃなくて、古城代表! お久しぶりです」
古城文彦「元同期なんだから、そんなにかしこまらなくてもいいよ」
社長「いやぁ、岩本くんから結婚の話を聞いた時はビックリしましたよ!」
足立涼太「どうして古城代表がここに?」
社長「岩本くんが担当していた業務関係の一部を、古城代表のところに委託しているのですよ」
社長「うちの優秀な社員を取られてしまう! って、最初は焦りましたけどね」
社長「むしろ、いろいろ助けて貰えて。 岩本くん・・・いや、奥さまには頭が上がりませんよ。ありがたい、ありがたい」
古城文彦「はい。うちの妻は大変有能です!」
社長「わはははっ! いやまいった。のろけられたな!」
足立涼太「・・・」
そうなんだよ。
僕と玲菜は昔から優秀なんだよ。
お前も知ってたよな?
──涼太。
〇オフィスのフロア
──9年前
古城文彦「涼太、涼太! S商事との取り引き、上手くいったよ!」
長かった。本当に長かった。
何回も何回も足を運んで
居留守を使われる事は当たり前。
相手にされずに悔しい思いをした。
全て、涼太の為に──
足立涼太「マジかっ!? あの、頭の堅い営業部長が折れたのか!」
古城文彦「うん。 今日、サインもらってきたよ。ほら!」
足立涼太「すげぇ!すげーっ! 絶対無理だと思っていたよ」
足立涼太「文彦!お前はやっぱスゲーよ! ありがとな!」
涼太に褒められたくて、必死に頑張った
それなのに──
〇壁
”結婚したい人がいる”
って・・・
なんだよ。それ
”女なんて面倒くせー”って
いつも言ってたじゃないか
〇オフィスのフロア
古城文彦「涼太。ちょっといいか?」
足立涼太「あ、ああ。 例のプロジェクトのことか?」
足立涼太「わ、悪かったな。すまん」
古城文彦「・・・聞いたよ。 結婚したい人がいるんだって?」
足立涼太「あ、ああ・・・」
古城文彦「官僚の娘さん・・・だっけ? 付き合っている人がいるなんて、知らなかった」
足立涼太「今回のプロジェクトで、彼女のお父さんに認めてもらおうと、必死で・・・」
足立涼太「お、お前なら、わかってくれるよな?」
古城文彦「・・・」
古城文彦「今までも、こうやって手柄を譲った事は何回もあった」
古城文彦「でも、僕は、この会社が、涼太が元気になるなら、自分の手柄なんてどうでも良かったんだ!」
古城文彦「でも、結婚の為だったなんて・・・」
足立涼太「お前は俺の結婚を喜んでくれないのか?」
足立涼太「・・・やっぱり、恨んでいるんだな」
古城文彦「ち、違うよ! 恨んでなんかいない!」
古城文彦「そうじゃなくて、そんなんじゃなくて」
古城文彦「・・・ぼ、僕は」
古城文彦「涼太の事が大好きなんだ!」
古城文彦「ずっと、ずっと。 恋愛対象として見ていたんだ・・・」
足立涼太「・・・」
足立涼太「・・・冗談だろ?」
”──気持ち悪りぃ”
〇商店街の飲食店
古城文彦「いやぁ、本当に久しぶりだな。 ま、元気なのは知っていたけど」
足立涼太「あ・・・ああ」
古城文彦「・・・」
古城文彦「まぁ、あんな辞め方したからな。 連絡しにくいよな」
足立涼太「っていうか、あの後すぐ、俺たちを着拒していただろ。何回も連絡したんだぞ!」
古城文彦「あの時は病んでいたからな。 仕方がないだろ?」
足立涼太「あ、あの時、プロジェクトから外したのは、お前は新規開拓に向いていると思ったからだよ!」
僕が反旗を翻すのが怖かったんだろ?
足立涼太「新規開拓がそんなに大変だとは思わなくて・・・ごめん」
僕がゲイじゃないかって噂を
社内に広めたの、涼太だろ?
古城文彦「ま、もう昔の話しだから! あのタイミングで会社辞められたから、今があるのかもしれないしね」
そう。そのおかげで玲菜とも出会えた──
〇応接スペース
岩本玲菜「はじめまして。 この度、こちらのプロジェクトの担当になりました、S商事の岩本と申します」
古城文彦「あ!あの時の!」
岩本玲菜「部長が言っていた凄腕の営業マンって、代表だったのですね!」
古城文彦「部長さんとは、私がN社にいた時からのご縁で・・・」
岩本玲菜「・・・なるほど」
岩本玲菜「あの時、突然担当が変わったのは、例の件があったからなのですね」
古城文彦「部長さんとは、その後も仲良くさせていただいておりますので、ありがたいです」
岩本玲菜「どうして、駆け出しのベンチャー企業のお手伝いを・・・と思っていたのですが、なるほど」
岩本玲菜「このプロジェクト、絶対成功させましょう。 そして、N社をギャフンと言わせてやりましょう!」
あの時、玲菜と出会わなければ
あのプロジェクトが
大成功していなければ
今の僕はいなかったかもしれない
〇商店街の飲食店
古城文彦「・・・」
足立涼太「・・・と、とにかく良かった! 大成功だもんな!」
古城文彦「そうだよ!会社も順調だし。 可愛い妻と子供にも恵まれたし」
古城文彦「・・・でさ」
古城文彦「いきなりだけど・・・」
古城文彦「そのネクタイリング」
”いつもお前に助けられてる
って事を忘れないように”
あの頃は、そう言っていたよな
古城文彦「今すぐ捨てろよ」
文彦の内面にも般若が居たんですね!(そうは書いていませんが)全主要キャラの外面と中身が複雑になってきましたね。外見には幸せそうな人間関係なのに、蓋を開けるとドロドロ〜!
むしろ涼太は自分に正直に生きている(まとも?)気がしてきました。
早速のヘビーな空気感、たまらないですね!
前話で重く突き付けられた複雑な愛憎関係、今話では解きほぐされていくのか一層複雑化するのか、楽しみで仕方ないです!