不届き者は成敗してやるわ!(脚本)
〇ヨーロッパの街並み
盗賊「おい、急げ!」
悪者「うっ、待ってくれ・・・!」
盗賊「早いとこずらかるぞ! 騒がれたら大変だぞ」
悪者「わーってるよ! ウィードの旦那は?!」
ウィード「・・・ああ、いるぞ! 待たせたな」
盗賊「──で、どうでした?」
ウィード「捕まえたぜ?」
アン「むーーーっ!」
ウィード「暴れんじゃねーよガキが!」
アン「──!!!」
アン「・・・・・・」
悪者「ひっ・・・ (ガキ相手になんてこと・・・)」
ウィード「・・・アジトに戻るぞ。 脅迫状を送る準備をしろ」
盗賊「わかりやした」
〇貴族の部屋
サイネリア「・・・・・・」
タイクーン「どうしたんだ? なんか元気がないようだが・・・」
サイネリア「あっ、タイクーン・・・ ううん、なんでもないよ」
タイクーン「・・・そうか? いつもなら、お忍びで街に行くわよ! って騒ぐ頃なのに・・・」
サイネリア「あー、そうね・・・ そう言われたら行きたくなって きたかもしれないわ!」
タイクーン「・・・余計なこと言うんじゃ なかったぜ・・・」
タイクーン「でもどうする? 今日はギャラクシーが、会議に 呼ばれてていないぜ?」
サイネリア「別にいいんじゃない? 2人で行きましょう!」
タイクーン「・・・まあ、大丈夫かな。 俺一人でも守れるか・・・」
〇ヨーロッパの街並み
サイネリア「何だか、久しぶりに感じるわ。 先週は勉強ばかりしていたから・・・」
タイクーン「あーそうか、お前も頑張ってたんだな。 んじゃ、たまには俺が 屋台の食い物でも買ってやるか?」
サイネリア「おっ♪ いいねー、タイクーン優しいっ!」
サイネリア「じゃあ、あそこのクレープが 食べたいでーす!」
タイクーン「はいはい、待ってろよ」
タイクーン「すいませーん、クレープを二つ・・・」
アーノルド「ああ、あの!!! おふたりさん!!」
タイクーン「おや、あなたは道具屋の・・・」
アーノルド「アーノルドです! あの、うちのアンを見ませんでしたか?」
サイネリア「アン? 見てないけど・・・どうかしたの?」
アーノルド「実は、朝起きたらいなくなってて・・・ まだ1人で出歩くなと 言っているのですが・・・」
あなたっ!!
アーノルド「アイリーン!どうした!?」
アイリーン「あなた!これを・・・」
アーノルド「・・・なになに・・・ え・・・」
お宅の娘を預かっている。
返して欲しくば、先日納品された
品物の80%をこちらに流せ。
決断は早い方がいい。
可愛い娘が、妙な輩にイタズラなど
されないうちにな・・・
品物は町外れの小屋に持ってこい。
1人で来いよ、でないと
娘は奴隷商人に売る。
サイネリア「な・・・っ!?」
アーノルド「脅迫・・・なぜ! 一体誰が!」
アイリーン「ああ、どうしましょう・・・ 可愛いアン・・・ どうしたら・・・」
サイネリア「あの、あなたはアンのお母様?」
アイリーン「はい・・・ その、あなたのことは夫や娘から 聞いております・・・」
サイネリア「・・・ごめんなさい。 話をしている場合では無いわね! 私に任せてください!」
タイクーン「おい!?」
サイネリア「私が、アンを連れ帰ります! アンは大切な友達なの!」
アイリーン「で、でも危険だわ・・・ 1人で来いって言うし・・・」
タイクーン「そうだぞ! 約束破ったらアンがどうなるか!」
サイネリア「・・・分かってるわ。 ちゃんと考えてる!」
サイネリア「私が荷物を持ってその場所まで行く。 タイクーンは気配を消して、 近くまで尾行してて!」
サイネリア「荷物は本物じゃなくていいわ! 機を見てあたしが攪乱するから、 タイクーンはそこで助太刀して!」
タイクーン「気配消して潜むのはいいが・・・ アンがどこにいるかは わかんないだろ?」
サイネリア「アーノルドさんと奥様にお願いが。 ギャラクシー宛に、伝書鳩を 飛ばして欲しいんです!」
アーノルド「そ、それくらいは出来るが・・・ 内容は?」
サイネリア「アンの居場所を、探って欲しいと。 それだけで大丈夫です!」
アーノルド「・・・わかった! それは任せてくれ。 だが、本当に1人で行くのかい?」
サイネリア「はい。 大丈夫です! あたし、少しだけ勉強したので!」
タイクーン「そこまで言うなら、やるしかないな。 だが本当に気をつけろ。 お前は・・・」
タイクーン(お前は、王女なんだぞ・・・)
サイネリア「・・・荷物を用意しましょう!」
〇荒れた小屋
盗賊「・・・遅いっすねぇ・・・ そろそろ脅迫状に気付いて 向かってきてもいいと思うが」
ウィード「ま、今日中くらいは待つさ。 オレは優しいんでね」
盗賊「そ、そうっすよね!」
悪者「しかし、なんであのガキを 連れ去ることで、荷物が 奪えるんすか?」
ウィード「あの道具屋は、国の息がかかった ラッキーな店なんだ」
ウィード「俺らをこんな目に合わせてる国を、 ちょっと脅かすには ちょうどいいってわけさ」
盗賊「国の息がかかってる?」
ウィード「そうだ。先日あの店に届いた 大量の物資は、どうやら 王女の差し金だったようだ」
ウィード「ついでに言えば、王女とあのガキは オトモダチらしいしな」
ウィード「俺にとっては利益がある話だ」
悪者「なるほど・・・ しかし、あの国は凄腕の騎士も いるって聞きますぜ?」
ウィード「・・・びびってんのか?」
悪者「い、いや! そういうんじゃないっすけど!」
ウィード「1人で来いと言ってある。 娘が大事なら守るだろうよ」
盗賊「──! 来たか?」
〇森の中の小屋
サイネリア「荷物を持ってきたわよ! どこにいるの!」
ウィード「威勢がいいなと思ったら・・・」
ウィード「オマエ、王女だろう?」
サイネリア「な、なぜ・・・」
ウィード「わかるさ。 オレは可愛い女の顔は 忘れないからね」
サイネリア「ふざけないで! アンはどこなの? 無事なんでしょうね!」
ウィード「今のところ無事だ。 それより約束の物を見せろ」
サイネリア「・・・ほら、これよ」
ウィード「・・・・・・ 随分と少ないように見えるが?」
サイネリア「あら!そうかしら?」
ウィード「おい、なんだこれは」
サイネリア「あんたにやる道具なんかないわ!」
ウィード「くっ・・・ めんどくせえな!」
サイネリア「悪者が何言ってんの! おとなしくしなさい!」
ウィード「うっ・・・」
サイネリア「まだやる気!?」
ウィード「なんで、こっちも1人だと思うんだ?」
サイネリア「え・・・」
盗賊「つーかまーえたっ!」
サイネリア「きゃあ! は、離しなさいよ!」
盗賊「離せと言われて離すかよ!」
サイネリア「うるさーい! 離せってばー!!」
盗賊「うおっ!?」
ウィード「ほんとにじゃじゃ馬王女だな・・・」
ウィード「ふん!」
サイネリア「ううっ!」
ウィード「手こずらせんな・・・」
サイネリア「う・・・ タイクーン・・・!」
ウィード「騎士様ならすぐは来ないぞ。 仲間がもう1人居るんでね」
ウィード「おい、王女を運べ。 丁寧にな?」
盗賊「へい♪」
サイネリア「くっ・・・」
〇村に続くトンネル
タイクーン「くそ・・・」
悪者「付けてきてんの、バレてましたぜ♪」
タイクーン「剣のサビにしてやろうか・・・」
悪者「おー、怖いすっね~。 そういや、凄腕の騎士が国には いるって話だったけど・・・」
悪者「もしかしてお前か? なーんてな!!」
タイクーン「そうだが?」
悪者「ええ!?」
タイクーン「御託はいい、そろそろいくが 死ぬ覚悟はできたか?」
悪者「え、ちょっ、ま──」
悪者「うわぁぁ!!」
タイクーン「弱・・・ まあいい、王女が危ない! 急がねば・・・!」
〇荒れた小屋
サイネリア「・・・うっ・・・ ここは・・・」
ウィード「ようこそ、お姫様、 俺たちの城へ」
サイネリア「あんたは・・・悪者!」
ウィード「ウィードって名前があるんだよなぁ」
サイネリア「どうでもいいわ! いいから、縄を解きなさいよ! この、変態っ!」
ウィード「随分と余裕だな? お前はダミーの荷物を持って、 ”2人で”ここに来た・・・ 約束、守れてねぇよな?」
ウィード「可愛いオトモダチが どうなってるか、心配にならないのか?」
サイネリア「くっ・・・アンはどこなの!?」
ウィード「そうだなぁ、 お前が俺のものになるってんなら ガキは解放してやるぞ?」
サイネリア「なんですって? あんたのものになるって、 どういう意味・・・」
ウィード「わかってんだろ? 俺に好き勝手される女になれって 意味だよ・・・」
サイネリア「来ないで! 近寄らないでっ!」
ウィード「強気な女も悪くねぇな・・・ その強情がいつまで持つか、 いっちょ試してやるか」
サイネリア「いやっ!! 触んないでっ!!」
〇城の会議室
ギャラクシー「・・・・・・」
ギャラクシー「・・・・・・・・・」
ギャラクシー(アン・・・どこにいる? サイネリアが向かった場所は・・・ 不届き者の人数は・・・)
ギャラクシー「居た!」
ギャラクシー「待っていろ。 サイネリアに手を出したら・・・ 許さない!」
〇荒れた小屋
サイネリア「なによ・・・ こっち見ないでよ!」
ウィード「遠くで見るより、やっぱ 美人だな、オマエ・・・」
サイネリア「うるさい! 嬉しくないっ! あんたなんかに!!」
ウィード「優しくしてやりたいが、 オレは乱暴にするのも好きでね」
ウィード「ちょっと痛いかもしれないが、 すぐにヨクなるぜ?」
サイネリア「ふざけるなああ! この変態!ばか!あほー!」
ウィード「・・・子供か? はぁ、もっと色気があればな。 遊んでやるのも良かったんだが」
サイネリア「こっちから願い下げよっ!!」
ウィード「なんだ!」
タイクーン「サイネリア!」
サイネリア「たいくーーーーーん!!」
ウィード「おー、騎士様の登場か。 やはり、オレの仲間は簡単に やられたらしいな」
タイクーン「弱いとは言え、仲間を捨て駒に するとは、極悪人だな・・・」
サイネリア「来るのが遅いっ!ばかー! あたし、こいつに・・・ あんなことやこんなことされて!!」
サイネリア「もう身も心もボロボロよ!!」
ウィード「はぁ!? こんな色気のない女を、誰が 抱くか!!!」
タイクーン「・・・おい」
ウィード「あ?」
タイクーン「嘘でも、こいつを・・・」
タイクーン「サイネリアを抱くとか、 ほざいてんじゃねえ!!!」
ウィード「なんだと? ・・・はぁーん、そういうことか」
サイネリア「タイクーン・・・?」
ウィード「お姫様は大人気だなァ・・・ ライバルが多くて困るぜ」
タイクーン「うるせぇ、黙れ」
ウィード「・・・単細胞が! 王女がどうなってもいいのか?」
タイクーン「ふん、そっくりそのまま、 お前に返すぜ。 自分の身がどうなってもいいのか?」
サイネリア「よくもあたしに酷いことしたわね! くらえーっ!!」
ウィード「!? いつの間に縄を・・・!」
ウィード「ぐっ・・・ 至近距離で魔法とか、いかれてんのか!」
「イカレてるのはそっちでしょ(だろ)!」
ウィード「くっ・・・そが・・・」
サイネリア「タイクーン!! 怖かったよーー!」
タイクーン「まったく! ほんとになにもされてないか? 変なこととか!」
サイネリア「縄で縛られて、密着されたけど なーんもされてないよ!」
タイクーン「縄、で・・・ み、密着・・・?」
タイクーン「じょ、除菌しなくては!! 今すぐ風呂に入れ!」
サイネリア「今すぐは無理でしょ! それよりも、アンを探さないと!」
〇村に続くトンネル
サイネリア「伝書鳩は、無事にギャラクシーに 届いてるかな・・・」
タイクーン「あれからだいぶ時間が経ってる。 恐らくはもう居場所を 突き止めてる頃じゃないか?」
サイネリア「だと、いいんだけど・・・」
サイネリア「!」
タイクーン「ギャラクシーの魔法の気配・・・」
サイネリア「戦っているの? 急がなくちゃ!」
〇小さな小屋
盗賊「くそ・・・ もう俺一人じゃ・・・」
ギャラクシー「そうだ、観念しろ」
盗賊「くっ・・・ だが、見たところオマエの 攻撃手段はないようだが?」
ギャラクシー「そう見えるか? なめるなよ」
盗賊「くっ!? ま、眩しい・・・!」
盗賊「──!? ど、どこに! ガキもいねぇ!!」
(ギャラクシーの声)
じゃあな、あの世で達者に暮らせ
盗賊「はあ!?」
盗賊「うわああーーーーー!!」
〇外国の田舎町
「おーい!」
サイネリア「ギャラクシー! 無事でよかった!」
ギャラクシー「サイネリア様こそ! お怪我はありませんか?」
サイネリア「うん、なんとか! タイクーンも助けてくれたし!」
サイネリア「ところで、アンは?」
アン「ぐぅ・・・」
ギャラクシー「軽いかすり傷を負っていましたが、 回復魔法をかけておきました。 あとは疲れて寝てるだけです」
サイネリア「良かった・・・本当に・・・」
タイクーン「アンはどこにいたんだ?」
ギャラクシー「2人が向かった小屋の裏手に、 もう1つ隠れたように小屋があってね。 そこに、見張りと一緒に 隠されていたよ」
サイネリア「そうなんだ・・・ 怖い思い、させちゃったな・・・」
サイネリア「今回のことは、あたしが 悪かったみたいなの。 あたしが納品を手伝ったせいで、 道具屋が狙われて・・・」
ギャラクシー「それに関しては、私も一枚噛んで いますから・・・ サイネリア様だけが悪いんじゃ ありませんよ」
タイクーン「そうだぞ! 悪いのは、歪んだ考えで国を 貶めようとした奴らだ!」
サイネリア「・・・うん。 ありがとう・・・」
サイネリア「とにかく、早く城下町に 戻りましょうか!」
ギャラクシー「そうですね。 アンを、早く自宅で休ませたいし、 ご両親も心配してるだろう」
タイクーン「もうひと踏ん張り、だな!」
〇城の会議室
メロエル王「・・・なぜ、呼び出されたか わかっておるな? サイネリアよ」
サイネリア「はい、お父様・・・」
メロエル王「お前が元気なことは結構だし、 これまではお忍びで街に出るのも 目をつぶってきたつもりだ」
メロエル王「街の人間を助けたいというのも、 私も同じ気持ちで国を治めているから、 わかるつもりだ。 だが・・・」
メロエル王「お前は王女なのだ」
サイネリア「はい・・・」
メロエル王「お前が危険な目に遭うことは、 まかりならん。 例え優秀なお付きがいたとしてもだ」
メロエル王「今後、城下へ下りるのを禁止する」
サイネリア「そ、それは・・・」
メロエル王「異議は認めぬ。 現にお前は危険な目に遭い、 街人すらも危険な目に遭わせた」
サイネリア「っ・・・」
メロエル王「自覚があるのなら、少しは我慢を して欲しい。 城の中では何してても構わん」
メロエル王「・・・勉強もほどほどでいい。 遊んでたっていい。 城下町に、行って欲しくないだけだ」
サイネリア「わかり、ました・・・ ごめんなさい・・・」
メロエル王「王という立場だから言ってるんではなく 私は娘のお前が心配なのだ。 わかってくれるな?」
サイネリア「はい・・・」
〇貴族の部屋
サイネリア「はぁ・・・」
タイクーン「悩ましげだな」
サイネリア「タイクーン・・・」
タイクーン「助けてくれた騎士様に、 労いの言葉はないのか?」
サイネリア「あ、ありがとう・・・ ほんとに、嬉しかったよ」
タイクーン「な、なんだよ、マジで 言うのかよ・・・ 照れるからヤメロ」
サイネリア「言わせといて、なによ、もう!」
タイクーン「とにかく! お前が落ち込んでるのは見たくないから 笑っておけよ!」
サイネリア「タイクーン、ありがとう・・・」
タイクーン「そ、そのドレスも、似合ってるぞ!」
サイネリア「ふえっ!?」
サイネリア「ありがと・・・ タイクーン、その、ドレスを 褒めるなんて出来るんだ・・・」
タイクーン「あ、あのなぁ! 俺だって一応、それくらいは・・・」
タイクーン「・・・慣れないことするもんじゃないな」
サイネリア「・・・でも、ありがとう。 そうよね、城下町にいけないだけで、 別に何しててもいいって 言われたし!」
サイネリア「明日からは、城内探検しましょ!」
タイクーン「・・・そうそう、お前は 笑顔の方が、可愛いよ」
サイネリア「!?」
ギャラクシー「・・・・・・」
ギャラクシー(・・・若夫婦などと 茶化してきたが・・・)
ギャラクシー(・・・負けてられないな)
──こうして事件は、なんとか
収束した。
アンを自宅に送ったあとの、
次の朝の出来事だった。
残念ながらサイネリアが
城下町に出ることを禁止され、
意気消沈した一行だが、
このお話はまだ続くのである。
果たしてこのあとどうなる!?
サイネリアは2人のどっちを
選ぶのか!?
(恋愛要素強いな・・・)
つづく!