読切(脚本)
〇地球
人類は何度も絶滅の危機に立たされ、しかし、それをなんとかくぐり抜け・・・
再び、文明を築き始めていた。
〇ファンタジーの教室
老教授「「人類って奴はしぶといな」、私が地球ならそう呟いたかもしれないね」
老教授が冗談交じりにそう言うと、教室内で笑いが起きた。
教室を埋め尽くした、未来を担うエリートたちは、老教授の知性に全幅の信頼を寄せていることが、その表情から知れた。
老教授「私は兼々、未来を作るために過去に学ばなければならないと、口を酸っぱくして言ってきた」
老教授「それが、先日、発掘された文書からも言えるのだよ」
〇古代文字
老教授の言っているのは、地中深くから見つかった、紙に書かれた文書のことである
ところどころ欠損はしているが、それがかつてあった「日本」という国の言葉であることがわかった。
放射性炭素年代測定法によると、約2000年前のものらしい、ということまで。しかし、当然全てが解読された訳ではない。
そこで天才の誉れ高い老教授に白羽の矢が立てられたわけである。
〇ファンタジーの教室
クリスマス
老教授はおもむろに黒板に書いた。
老教授「これを読める人はいるかな?」
老教授は教室を見回したが、手を上げる者はいない。
老教授「君、どうですか?」
学生1「え、えっと、確か日本語の中のカタカナというものだと思いますが、読み方までは分かりません。すみません」
老教授「あなたはどうですか?」
女学生1「あ、すみません、分かりません」
老教授「これは「クリスマス」と読みます。しかし、そう読めるだけで、意味は分かりません」
教室はため息でつつまれた。この天才にしても分からないことがあるのだ、ということを突きつけられた気がした。
老教授「しかし、ここで諦めたら、進歩はありません」
老教授はキリッと目を見開いた。
老教授「これをどうにか意味の通るものにできないか、と考えるわけです」
老教授「そこで、私はこれは「音位転倒」したものではないか、と考えたのです」
学生1「「音位転倒」とは、語の音素の並び順が入れ替わって定着したもののことですね!」
老教授「その通り。 例えば、「新しい」は普通に読めば「あらたしい」なのに「あたらしい」として定着したみたいなものです」
老教授「「クリスマス」は実は「クスリマス」なのではないか?」
女学生1「クスリマス!?」
老教授「そうです。「薬増す」。薬が増えた、薬を増やせ、そんな意味ではないか」
老教授「同じ文書には、髭もじゃの老人の絵も添えられていました。それには「サンタクロース」と書かれていた」
老教授「そして「サンタクロース」も音位転倒。「タクローさん」のことで「タクロー」とは昔の日本国では男性の名前としてよくありました」
老教授「つまり、この「タクローさん」は教祖のような人で、皆が皆、彼の薬を増やさなくてはならない病状を心配していた、祈りを捧げた」
老教授「そのことではないかと思うのです」
教室は静まりかえった。
エリートたちは皆、老教授の解読の素晴らしさ、その知的興奮に心を躍らせていたのだ
〇名門校の校門(看板の文字無し)
女学生1「今日の授業は素晴らしかったわね」
学生1「いや、ホント、僕はあとどれくらい勉強したら、教授みたいになれるのだろうと思うとため息がでるよ」
女学生1「なら、明日の●●●●●に▲▲▲さんにお願いしたら?「教授みたいな知性をください」って」
学生1「よし、そうしてみるか」
女学生1「ふふ」
学生1「君は何をお願いするんだい?」
女学生1「私は・・・内緒」
学生1「なんだ、ずるいな」
女学生1「願い事が叶ったら教えてあげるね」
学生1「楽しみにしてるよ」
女学生1「うん」
女学生1「じゃあ、メリー●●●●●!」
学生1「うん、メリー●●●●●!」
こんな分析の仕方もあるんだなぁと、なんかめちゃ笑ってしまいました。笑
読んでてすごく楽しかったです!
薬を増やすタクローさんのあたりがツボでした!
「クリスマス」が何を意味するか特定する、という設定も面白かったですが、クリスマスが何か知らなくても結局似たような事をしているというオチも面白かったです
言葉が全然変わってしまって、でも生活は問題なく続いている、その不思議さが楽しかったです。今のサンタクロースも結構自由な想像の結果かも?と考えるとより楽しくなります。
立て直された文明でもこの測定法なんですね。意図したことではないかもしれませんが、まるで過去に学ぶべきだという教授の姿勢を裏付ける描写のようで、面白いポイントでした。