ぼくらの就職活動日記

大杉たま

エピソード24(脚本)

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〇シックな玄関
真田紅音「ただい──」
「息子二人が弁護士と公認会計士、悪くない風に育ったわよね」

〇シックなリビング
真田博史「そうだな、正志はまだ帰ってこないが、先に合格祝いのケーキを取ってくるよ」
真田雅美「ええ、お願いします」

〇シックな玄関
真田紅音「・・・・・・」

〇本棚のある部屋
  やってきた紅音が部屋を見回すと、机の上に手紙が置いてある。
  手紙は非常に達筆な文字で書かれている。
  紅音は読み取ろうと何度も読み返した。
真田紅音「市街地へ・・・買い物? に行って参ります」
真田紅音「柿・・・ああ、柿之介か」

〇本棚のある部屋
  紅音は机に座ってうつぶせになり、うとうとしている。
「紅音さ、紅音さ」
真田紅音「・・・ん」
真田紅音「どわっ、え、なにその恰好」
若山柿之介「いえあ、じゃすてぃすだべ」
真田紅音「いや、全然わけわからん」
若山柿之介「梅干し屋のおじーに買ってもらっただ」
若山柿之介「おらが明日田舎さ帰るって言ったら、色々お土産買ってくれてよー」
真田紅音「ああ、そうなん・・・え、明日帰るの!?」
若山柿之介「んだ、エリートピアの選考も終わっちまったし、梅干しの販路っていうんだべか」
若山柿之介「そういうのも考えなきゃいげねみてーだし」
真田紅音「そう、か・・・」
真田紅音「柿之介、ごめん」
若山柿之介「え、どうしただか? これ欲しいだか?」
真田紅音「いや、それは全然いらないんだけど」
真田紅音「百万円、本当はお前が選考通ってるはずだったのに」
若山柿之介「ああ、そのことだべか。 んだども、いま選考を進んでんのは紅音さだ」
真田紅音「だからそれは、お前が僕に譲ってくれたからで──」
若山柿之介「ちげぇよ、それは。 紅音さが通るべきだったから、紅音さが通ってる、それだけだ」
若山柿之介「おらも、このお金は紅音さに渡すべきだど思っだから、紅音さに渡した、それだけだ」
真田紅音「・・・僕が、通るべきだった」
若山柿之介「んだ、おらの師匠が言ってただ」
若山柿之介「どんなに偶然のことに見えても、物事はすべて必然でできてる」
若山柿之介「人が感じる気まぐれみでーなことにも、必ず必然がある」
若山柿之介「だがら、自分の気持ちを殺しちゃいげねー、自分の気持ちに嘘をついちゃいけねーって」
真田紅音「自分の気持ち?」
若山柿之介「そう言っでよく村の娘さくどいてた」
真田紅音「・・・あと少しで感動できたのに」
若山柿之介「おらは、紅音さに受かってほしいと思うだ」
真田紅音「ありがとう、百万円は絶対に返すから」
若山柿之介「それに、ピカピカした建物は他にもたくさんあるだで、おらはそっち受ければいいだ」
真田紅音「え、ん、どういうこと?」
若山柿之介「おらが東京で働きてー理由だ」
若山柿之介「昔、修学旅行で東京さ来た時に見たピカピカの建物が忘れられねぐてよ」
若山柿之介「いつか、ピカピカで働きてーと思っただ」
真田紅音「じゃあ、エリートピアを受けたのは──」
若山柿之介「一番ピカピカだったでよ」
真田紅音「晩飯、買いに行くか」

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