堀田探偵シリーズ第二弾『魔法使いと音の無い雨が降る町』

komarinet

第八話 有賀双葉(脚本)

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〇オフィスの廊下
???「お願いします!」

〇役所のオフィス
志田 勘九郎(しだ かんくろう)「お気持ちは嬉しいのですが」
有賀 双葉(ありが ふたば)「町のため、身を粉にして働きます!」
有賀 双葉(ありが ふたば)「市役所では管理職もやってました!」
志田 勘九郎(しだ かんくろう)「そう、仰いましても」
志田 勘九郎(しだ かんくろう)「えーと、有賀さん」
志田 勘九郎(しだ かんくろう)「町に越されたのはいつでしたっけ?」
有賀 双葉(ありが ふたば)「二日前です!」
志田 勘九郎(しだ かんくろう)「二日で町のために働きたいと 言われましてもね」
志田 勘九郎(しだ かんくろう)「他のお仕事なら斡旋できますが」
有賀 双葉(ありが ふたば)「結構です!  私は町役場で働きたいんです!」
志田 勘九郎(しだ かんくろう)「わかりました」
志田 勘九郎(しだ かんくろう)「では、来期の公務員採用試験を 受けてください」
有賀 双葉(ありが ふたば)「来年の試験なんて待てません!」
有賀 双葉(ありが ふたば)「副町長なら町長さんの 任命で出来ますよね?」
志田 勘九郎(しだ かんくろう)「流石、もと市役所職員ですね」
志田 勘九郎(しだ かんくろう)「確かに副町長は民間から 採用するケースもあります」
志田 勘九郎(しだ かんくろう)「けど、僕はあなたのことを よく知らないですし・・・」
有賀 双葉(ありが ふたば)「なるほど、私のことを知りたいと」
志田 勘九郎(しだ かんくろう)「言ってませんけど?」
有賀 双葉(ありが ふたば)「わかりました!」
有賀 双葉(ありが ふたば)「また来ます!」
志田 勘九郎(しだ かんくろう)「僕の意図、伝わって無さそうだな」
町役場 職員「ありゃあまた来るぞ」
町役場 職員「厄介なのに目ぇ付けられちまったな」
志田 勘九郎(しだ かんくろう)「笑い事じゃないですよ」

〇空
  数日後
有賀 双葉(ありが ふたば)「おはようございます、有賀双葉です!」
有賀 双葉(ありが ふたば)「町長さんはいらっしゃいますかっ!」

〇役所のオフィス
志田 勘九郎(しだ かんくろう)「おはようございます」
有賀 双葉(ありが ふたば)「今日はこちらを持ってきました」
志田 勘九郎(しだ かんくろう)「音無雨町の地図ですか?」
有賀 双葉(ありが ふたば)「防災マップに問題があったので 修正案を持ってきました」
志田 勘九郎(しだ かんくろう)「本当ですか?」
有賀 双葉(ありが ふたば)「私、測量士の資格持ってるんです」
有賀 双葉(ありが ふたば)「それで町中の海抜高度を測ったら」
有賀 双葉(ありが ふたば)「こことここが間違ってました」
志田 勘九郎(しだ かんくろう)「ええ!?」
有賀 双葉(ありが ふたば)「避難場所も変わりますね」
志田 勘九郎(しだ かんくろう)「すぐ再測定の手続きをします」
有賀 双葉(ありが ふたば)「・・・」
有賀 双葉(ありが ふたば)「じーっ」
志田 勘九郎(しだ かんくろう)「いや、採用はしないですからね」
志田 勘九郎(しだ かんくろう)「確かに凄いですし、助かりましたけど」
有賀 双葉(ありが ふたば)「わかりました、また来ます!」
志田 勘九郎(しだ かんくろう)「・・・」
町役場 職員「測量士かあ。町長さん 採用しなくて大丈夫かい?」
志田 勘九郎(しだ かんくろう)「まだ来て一週間ですよ」
志田 勘九郎(しだ かんくろう)「彼女の人となりも知りませんし」
町役場 職員「明るくていいじゃないですか」
志田 勘九郎(しだ かんくろう)「明るいだけで副町長には」
町役場 職員「また来ますって言っとったな」
志田 勘九郎(しだ かんくろう)「・・・」

〇空
  数日後
有賀 双葉(ありが ふたば)「おはようございます、有賀双葉です!」
有賀 双葉(ありが ふたば)「町長さんはいらっしゃいますかっ!」

〇役所のオフィス
志田 勘九郎(しだ かんくろう)「おはようございます」
志田 勘九郎(しだ かんくろう)「毎回指名で呼ばないで下さい」
有賀 双葉(ありが ふたば)「いいじゃありませんか」
有賀 双葉(ありが ふたば)「絶対損はしませんよ!」
志田 勘九郎(しだ かんくろう)「お話は伺いましょう」
有賀 双葉(ありが ふたば)「今日はですね」
有賀 双葉(ありが ふたば)「トラクターやコンバインの サブスクを共同利用して──」

〇空
志田 勘九郎(しだ かんくろう)「寺田さん、聞いていいですか」

〇役所のオフィス
志田 勘九郎(しだ かんくろう)「彼女はなぜ、町役場で仕事を したいのでしょうか?」
町役場 職員「さあ、なんでじゃろうな」
町役場 職員「彼女、DV夫と離婚したんですって」
町役場 職員「役所の仕事もすごく好きだったけど」
町役場 職員「別れた夫と距離を取るために 泣く泣く辞めたそうよ」
町役場 職員「さすが事情通」
志田 勘九郎(しだ かんくろう)「しかし、自治体は無数にあります」
志田 勘九郎(しだ かんくろう)「なぜ音無雨町を選んだのでしょう」
町役場 職員「うーん」
町役場 職員「本人に聞いてみたら?」
町役場 職員「ね、有賀さん」
有賀 双葉(ありが ふたば)「おはようございます、有賀双葉です!!」
志田 勘九郎(しだ かんくろう)「お、おはよう」
有賀 双葉(ありが ふたば)「志望動機ですか? これです!」
町役場 職員「見たことあるような」
志田 勘九郎(しだ かんくろう)「僕が以前、インタビューを 受けた雑誌ですね」
有賀 双葉(ありが ふたば)「はい、この記事を見ました!」
有賀 双葉(ありが ふたば)「記事を見て感銘を受けました」
有賀 双葉(ありが ふたば)「こんな町長さんのところで 働きたいって思ったんです」
志田 勘九郎(しだ かんくろう)「それは、どうも・・・」
有賀 双葉(ありが ふたば)「・・・」
有賀 双葉(ありが ふたば)「じーっ」
志田 勘九郎(しだ かんくろう)「えっ、何ですか?」
有賀 双葉(ありが ふたば)「えっ!?」
有賀 双葉(ありが ふたば)「完全に採用する流れでしたよね?」
志田 勘九郎(しだ かんくろう)「いや、違うと思いますが」
有賀 双葉(ありが ふたば)「そうですか?」
有賀 双葉(ありが ふたば)「じゃあ、仕方ありませんね」
有賀 双葉(ありが ふたば)「では代わりに今日のプレゼン、 聞いてもらってもいいですか」
志田 勘九郎(しだ かんくろう)「何の代わりにかわかりませんが 聞きましょう」
有賀 双葉(ありが ふたば)「はい、今回は害獣対策なんですが──」

〇空
  そんなことが続いたある日
有賀 双葉(ありが ふたば)「おはようございます、有賀双葉です!」
有賀 双葉(ありが ふたば)「町長さんはいらっしゃいますかっ!」

〇役所のオフィス
志田 勘九郎(しだ かんくろう)「そろそろ来ると思ってましたよ」
志田 勘九郎(しだ かんくろう)「今日は何ですか」
有賀 双葉(ありが ふたば)「今日は水路計画のご提案です」
志田 勘九郎(しだ かんくろう)「水路ですか」
志田 勘九郎(しだ かんくろう)「水路!?」
有賀 双葉(ありが ふたば)「音無雨町の収穫にムラがでるのは」
有賀 双葉(ありが ふたば)「乾期と雨期のバランスが悪いからです」
有賀 双葉(ありが ふたば)「だから言問いの滝から水路を作って スプリンクラーを・・・」
志田 勘九郎(しだ かんくろう)「ちょ、ちょっと待って下さい!」
志田 勘九郎(しだ かんくろう)「・・・」
志田 勘九郎(しだ かんくろう)「この図面、あなたが一人で?」
有賀 双葉(ありが ふたば)「ええ、市役所では土木の方も 見てましたので」
志田 勘九郎(しだ かんくろう)(まさかだな)
志田 勘九郎(しだ かんくろう)(僕がずっと探していた答えが まさかこんな形で)
有賀 双葉(ありが ふたば)「町長さん?」
志田 勘九郎(しだ かんくろう)「寺田さん。明日・・・いや今日 緊急で会議を開きたいんですが」
町役場 職員「いいんじゃないですか」
町役場 職員「議題は仰らなくても わかりますけどね」
志田 勘九郎(しだ かんくろう)「有賀さん。先日はすみませんでした」
志田 勘九郎(しだ かんくろう)「──」
志田 勘九郎(しだ かんくろう)「僕は、あなたを副町長に推薦します!」
志田 勘九郎(しだ かんくろう)「是非ともこの町で共に働いて頂きたい!」
有賀 双葉(ありが ふたば)「えっ、本当に!?」
有賀 双葉(ありが ふたば)「くう~~」
有賀 双葉(ありが ふたば)「やったーーーー!」
志田 勘九郎(しだ かんくろう)「喜ぶのは早いですよ。 議会の承認もありますから」
町役場 職員「大丈夫よ。有賀さんの有能さは みーんな知ってるから」
有賀 双葉(ありが ふたば)「はいっ!」
志田 勘九郎(しだ かんくろう)「自己評価高いなぁ」
有賀 双葉(ありが ふたば)「それほどでも」
  そうして、彼女は音無雨町の
  副町長になったのです

〇空
志田 勘九郎(しだ かんくろう)「すみません。 わざわざお越し頂いて」

〇田園風景
佐々木 哲司(ささき てつじ)「いえ。町内会を代表してお礼申し上げます」
佐々木 哲司(ささき てつじ)「まさか町を挙げて水路の敷設に 踏み切って下さるとは」
有賀 双葉(ありが ふたば)「町長さん、この方は?」
志田 勘九郎(しだ かんくろう)「町内会会長の佐々木さんです」
志田 勘九郎(しだ かんくろう)「水路となればそれぞれの農家の 私有地を通ることになりますから」
志田 勘九郎(しだ かんくろう)「話を通しておこうと思いまして」
有賀 双葉(ありが ふたば)「それは助かります」
志田 勘九郎(しだ かんくろう)「佐々木さん、こちら有賀双葉さん」
志田 勘九郎(しだ かんくろう)「先日議会を通って就任した副町長です」
佐々木 哲司(ささき てつじ)「やあ、お噂はかねがね」
有賀 双葉(ありが ふたば)「えっ、私そんなに有名人?」
志田 勘九郎(しだ かんくろう)「そりゃあ目に付くさ」
志田 勘九郎(しだ かんくろう)「測量で町中回ったり、 トラクターの型番聞き回ったのだから」
有賀 双葉(ありが ふたば)「てへっ、それもそっか」
佐々木 哲司(ささき てつじ)「皆楽しそうに話してましたよ」
佐々木 哲司(ささき てつじ)「町に新しい何かが 起ころうとしてるって」
志田 勘九郎(しだ かんくろう)「だったらいいんですがね」
志田 勘九郎(しだ かんくろう)「じゃあ、行きましょうか。 最初は二丁目からですね」
佐々木 哲司(ささき てつじ)「わかりました」
有賀 双葉(ありが ふたば)「・・・」

〇屋敷の門
  忙しくも楽しい日々でした
  三人で町を住み良くするんだと

〇田んぼ
  ただただ走りつづけました

〇田舎道
  観光客が増え始め、
  僕らは町おこしの成功を
  実感していました

〇役場の会議室
「カンパーイ!」
志田 勘九郎(しだ かんくろう)「みなさん、お疲れ様です」
佐々木 哲司(ささき てつじ)「音無雨マルシェ、旅館リニューアル」
有賀 双葉(ありが ふたば)「農業機械のサブスクリプション化 音無雨配送センター」
志田 勘九郎(しだ かんくろう)「そして町の主要部に水路を作りました」
志田 勘九郎(しだ かんくろう)「全てお二人のお陰です」
志田 勘九郎(しだ かんくろう)「僕は・・・本当に嬉しい」
志田 勘九郎(しだ かんくろう)「最初はこんな若造の言うことを町の人たちが聞いてくれるかすごく不安でした。よそ者ということもありますし、なかなか耳を傾けて」
志田 勘九郎(しだ かんくろう)「くれないのではないかと。しかし落語を捨てた今、僕に残っているのはこの町の仕事だけ。だからどうしても良くしていきたいと思っ」
志田 勘九郎(しだ かんくろう)「ていました。有賀さんと佐々木さんという代え難い助力のお陰でこの改革が上手くいったと言っても過言ではありません、次の冬には」
有賀 双葉(ありが ふたば)「ストーップ!」
志田 勘九郎(しだ かんくろう)「えっ、しゃべりすぎました?」
有賀 双葉(ありが ふたば)「それもですけど、 私、ずっと思ってたことがあるんです」
有賀 双葉(ありが ふたば)「町長さんって、よそよそしいですよね」
志田 勘九郎(しだ かんくろう)「えっ、そうですか?」
有賀 双葉(ありが ふたば)「そうですよ!」
有賀 双葉(ありが ふたば)「私たち三人は、いくつも仕事を 共にしたチームなんですよ!」
有賀 双葉(ありが ふたば)「もっと親しみを込めた 呼び方は出来ないんですかっ」
志田 勘九郎(しだ かんくろう)「いや、我々大人ですし」
有賀 双葉(ありが ふたば)「呼称の変更を要求します!」
志田 勘九郎(しだ かんくろう)「ええ!? 具体的にはどうすれば」
有賀 双葉(ありが ふたば)「あなたはこれから勘九郎!」
有賀 双葉(ありが ふたば)「私のことは双葉と!」
佐々木 哲司(ささき てつじ)「佐々木さんは哲司さん!」
志田 勘九郎(しだ かんくろう)「呼称を変えて、 何か意味がありますか?」
有賀 双葉(ありが ふたば)「距離が縮まるはずです」
有賀 双葉(ありが ふたば)「今以上に町おこしが上手くいくはず!」
志田 勘九郎(しだ かんくろう)「ですが・・・」
有賀 双葉(ありが ふたば)「勘九郎!」
志田 勘九郎(しだ かんくろう)「あ、はいっ!?」
有賀 双葉(ありが ふたば)「私の案、これまで失敗したこと ありますか?」
志田 勘九郎(しだ かんくろう)「・・・ない、ですね」
有賀 双葉(ありが ふたば)「じゃあ、これも受け入れて もらえますよね」
志田 勘九郎(しだ かんくろう)「・・・」
志田 勘九郎(しだ かんくろう)「三人で活動するときだけですよ」
有賀 双葉(ありが ふたば)「呼んでみてください!」
志田 勘九郎(しだ かんくろう)「くっ・・・双葉」
有賀 双葉(ありが ふたば)「きゃーー!」
有賀 双葉(ありが ふたば)「哲司さん、哲司さんも!」
佐々木 哲司(ささき てつじ)「勘九郎、双葉。 いつもありがとう・・・」
佐々木 哲司(ささき てつじ)「・・・」
佐々木 哲司(ささき てつじ)「す、すまない。 私に子供がいたらこんな感じかと」
佐々木 哲司(ささき てつじ)「つい目頭が熱くなってしまった」
志田 勘九郎(しだ かんくろう)(僕だってそうだ)
志田 勘九郎(しだ かんくろう)(実の父には勘当同然だと 言い渡された)
志田 勘九郎(しだ かんくろう)(まさか、本物より家族らしい 仲間と出会えるなんて思わなかった)
志田 勘九郎(しだ かんくろう)「うう・・・」

〇寂れたドライブイン
有賀 双葉(ありが ふたば)「勘九郎泣いてるの? 哲司さんまで・・・」
有賀 双葉(ありが ふたば)「まったくうちの男連中は 涙もろくてだめね」
有賀 双葉(ありが ふたば)「さ、もう一杯飲みましょ」
三人「カンパーイ!」
  最高の時間でした
  しかし、良い時期というのは
  長くは続かないものです

〇空
志田 勘九郎(しだ かんくろう)「この町を・・・ダムの底に!?」

〇田舎道
国会議員「ああ、といってもまだ先の話ですよ」
国会議員「もちろん住民の皆様には 新しい住居と仕事をご紹介しますよ」
国会議員「なに、最初は戸惑いますが 一年もすれば慣れますよ」
  僕ら三人の前に大きな試練が
  立ちはだかったのです

次のエピソード:第九話 始まりの雨

コメント

  • ありゃ、双葉さん、そっちの人だったかな…!?
    有能な謎キャラいいですね!

  • わぁーーーーー!!!!!!!!続きがっ!!続きがさらに気になる発言がありましたっ!!!!!!佐々木のあの発言が気になるっ!!!!!ん????どういうことだろう!!!!!気になります!!!!!面白いです!!!!!これから続き読みます!!やっと最新話にもうすぐ追いつきそうです!!凄い面白いです!!!

  • 初登場で強烈な存在感を出してきた双葉さん、ナイスキャラですね!
    現在に登場していないのは…なぜか😨
    そして現在の事件にどう関わってくるのか…ますます目が離せません!

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