読切(脚本)
〇土手
憂鬱、落胆。こんな時になっても、こんな言葉しか出てこない。
・・・今もこんなって言葉繰り返してるし
そりゃ無理だよなあ。
小説家になるなんて。
大学卒業して、親の反対押し切って絶対作家になってやるって、息巻いて出てきたはいいものの。
バイトしながら必死に書いた小説も新人賞に応募しても2次選考どまり。
ネットにあげれば反応なし。批判のコメントすらこない。
批判の言葉が一番怖いと思ってたけど、
反応がないのがこんなに応えるなんて、
しりたくなかったなぁ。
明日には荷物をまとめて実家に帰らなく
ちゃいけない。
僕もなりたかったなぁ、誰かに夢を見せてあげられるような。
現実が辛くて楽しいことが何一つなくても、それがあるから生きていけると。
そう、思わせられるような存在に。
僕が物語にそうしてもらったように。
・・・そうか、無理だったんだ僕は。
頭では分かってたつもりでも、
いや本当は考えないようにしていた。
ネットにあげたやつがいきなりバズるかも、選考に入ってた偉い先生が、僕の才能を拾ってくれるかもしれない。
なんて都合の良いことを考えて。
現実から逃げていたんだ。
最後と決めて送った原稿がダメだった時にも泣けなかったのに
今になって
泣けてくる・・・
無駄だったのかな・・・
夢のためにした努力した時間は、
たとえ叶わなかったとしても決して
無駄じゃない
そんなことを誰かに言われた気がする。
誰が言ってたんだろう、
そんな無責任なこと。
僕の努力は、気持ちは無駄になったのに。
・・・・・・
ああ、そうか僕だ。
僕が書いたんだ
夢と自分の実力の落差に落ち込んでた
拓真に向けて結衣に言わせたんだ。
あの時の僕は分かってなかったんだ。
夢が叶わなかったら終わりなんだ。
僕の物語が誰かを勇気づけることは
もう絶対にないということを。
結衣「キミが夢に向かって努力してた時間で 私とあなたは会えたんだよ。 それも無駄なの?」
別の声も聞こえる
優斗「キミは間違いを犯したかもしれないけど、 仕方がないよ。 やったことは変えられない」
優斗「間違えた人は同じく間違えた人に 優しくできる。これからだよ」
敵キャラを説得する、優斗のセリフ
マリー「こんな世界いらない! 生きるためには誰かを犠牲にしないと いけない」
マリー「毎日誰かが食べられて、 誰かが笑って生きてる。 こんなのおかしいよ!」
トマシュ「だから輝いてるんだ。この世は。 醜いとこもあるが、それに負けない 綺麗なものだってある」
マリー「輝いてなくたって良い! みんなが生きてさえいれば、 それでよかったっ!」
そう言って、マリーはみんな消しちゃって
たっけ。
まあその後、魔法の力でみんな生き返って。
マリーの望んだ世界になるんだけど。
あんな都合のいい話そりゃ読んでもらえないよな。
・・・・・・・・・
小さな月が浮かんでいる。
星はほとんど見えない。
物語の中のような満天の星空なんてものは
僕の頭上にはない。
フーゴ「宇宙に漂う土の塊に、人は見守ってるだのどうのと勝手な思いを抱く。 そこにあるだけの無機物でしかないのに」
フーゴ「人間とは、本当に矮小な生き物だ」
匠「そんな弱い人間だから、助け合えるし 愛し合えるんだよ」
匠「そうしないと生きていけないからね」
フーゴ「難儀だな、つくづく。 でも、だからこそ人は見ていて飽きない」
そうだよな、そんなんだ。
僕が誰かを救いたいと思って書いた
ものは、僕を救う物語だったんだ。
───フフッ、そんな都合よくは思えないけど。
でも頑張ってみようかな。
頑張れる気がするよ、僕。
みんなを、夢に向かって確実に頑張って
いた今の自分を忘れなければ。
明日からの現実も、なんとか目を開けていられそうだ。
その後僕は実家に戻って真面目に働きながら、数年後には作家になる夢も叶えた。
めでたしめでたし
なんてね
起承転結で言えば起き上がることすら
出来なかった僕の人生がどうなるかは
誰も知らない。
ひたすらに苦悩する主人公の心情に共感を覚えて心を打たれました。周囲の声と現実と目標、その狭間での苦悩が伝わってきます。
小説のように自働するキャラクターを生み出せれば、本作のように救われるのかもですね。
夢はやっぱりあきらめたら終わりだから何度挑戦したっていいとおもう。私はあなたの作品をよんで、今目指している目標をかなえるために、がんばってみようと思いましたよ。ありがとう〜!!みんなの願いが叶うといいね。
大きな夢だけでなくても、日常の些細な失敗も後になるとそれが活きてくることってありますよね。簡単に夢を手にするより、少し周り道して辿り着いたほうが何倍の価値があると思います。夢をあきらめなかった【僕】は本当にえらい!