(愛する男と)恋する女

山本律磨

(愛する男と)恋する女(脚本)

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〇貴族の部屋
  『いつもすまないね』
  『・・・あの。大変言いにくいんですが』
  『この仕事は、今回限りで』
  『・・・!?』
加賀美「どうしたキョウコ!」
キョウコ「ぶ、不気味な女が窓から覗いて・・・」
加賀美「分かった。使用人達にも用心させよう」
一馬「大丈夫かい?キョウコさん」
キョウコ「・・・?」
キョウコ「ププッ・・・何ですかその髪の色。ヒッピーですか?」
一馬「ヒッピー?」
一馬「ああ、あれね。そんなとこだよ」
一馬「そろそろライブが近いんだ」
キョウコ「らいぶ?」
加賀美「ごほん」
一馬「演奏会さ」
キョウコ「そうなんですか。頑張って下さいね」
加賀美「じゃあ後は二人でゆっくり」
キョウコ「いつも気を使って頂き有難うございます」
キョウコ「叔父様」
加賀美「・・・」
一馬「・・・」
キョウコ「どうしたんです?悲しそうな顔をして」
一馬「いや・・・本当に・・・」
一馬「本当にまだ何も思い出せない?」
一馬「ご両親の事も、あの叔父さんの事も」
キョウコ「・・・」
一馬「・・・ゴメン」
キョウコ「ねえ、また弾いて下さらない?」
キョウコ「今日は私がお願いした曲を」
一馬「勿論!ちゃんと練習して・・・」
一馬「ああいや、ちゃんと思い出したよ」
キョウコ「・・・」
キョウコ「私が覚えてるのはこの写真の中の世界だけ」
キョウコ「そしてあなたがいつも弾いてくれたこの曲だけ」
キョウコ「私にはこれだけなの」
キョウコ「だから、ずっと一緒にいてね。一馬さん」
一馬「・・・」
  『お、おい!何だ君は!』
  『勝手に入るな!警察を呼ぶぞ!』
キョウコ「ひいっ!」
キョウコ「この人よ!部屋を覗いてた人!」
キョウコ「助けて!一馬さん!」
一馬「・・・」
???「何やってるのよ・・・アキラ」
キョウコ「・・・え?」
???「そんな婆さんと何やってるのよ!」
キョウコ「・・・ばあさん?」
鏡子「・・・」
アキラ「エリカ・・・」
エリカ「お金のため?マジ、気持ち悪い」
アキラ「ま、待ってくれ!」
鏡子「気持ち・・・悪い?」
アキラ「・・・」
加賀美「・・・」
アキラ「・・・今日の分、お返しします」
アキラ「すみません」
加賀美「・・・謝るのは私さ」
鏡子「どこに行ったの?」
鏡子「きっと戻って来ますよね」
加賀美「ああ、勿論だ」
加賀美「だから安心してお休み」
鏡子「・・・」
加賀美「どうした?叔父さんの顔に何かついてるかい?」
鏡子「・・・いえ」
鏡子「いつもありがとう」
加賀美「おやすみ」
鏡子「おやすみなさい。あなた」
加賀美「・・・!」
加賀美「・・・」
加賀美「いい夢を見るんだよ」
加賀美「俺のいない夢を・・・」

コメント

  • 私は女なので彼女の立場になってみると、侘びしさと喜びが混じった複雑な感覚をもちます。夫は疲れ果てながらも、まだ彼女を愛しているんでしょうか。

  • キョウコから鏡子になった瞬間、全てが明るみになる展開が凄かった。叙述トリックの種明かしは、文章だけの小説も実写ドラマもなかなか難しいものがありますが、その点TapNovelの画像だとスムーズですよね。すべてを悟った鏡子とそれを悟った夫の加賀美、ラストの余韻がいい感じでした。 

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