似ている女

かわむらけんたろう

似ている女(脚本)

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〇バスの中
  一月くらい前からだろうか
  バスで乗り合わせる、ある女性のことが
  妙に気になるのだ
私(今日も乗ってるな・・・)
  その女性のことが気になってしまうのには
  2つの理由があった
私(うーん、やっぱり)
私(ゲーム動画配信者の「マミ」さんに そっくりなんだよなあ)
私(だけど、芸能人でもない人に)
私(マミさんですか?なんて)
私(突然話しかけたら不審者だよな)
私(いや、芸能人でも迷惑だろうけど)
  その女性はゲーム動画の配信で有名な
  「マミ」さんにそっくりなのだ
  私が好きなゲームばかり扱っているので
  仕事中はいつも「ながら見」をしている
アナウンス「次の停車場は「TN出版前」〜」
  もう一つの理由は
  私が降りたバス停に関係がある
  1週間後
私(今日もいる・・・)
  私の職業は漫画家で
  週に一度、出版社で打ち合わせをするため
  バスに乗って出かけているのだが
私(こないだ描いたミズキの服装に)
私(すごく似てるんだよな・・・)
  ミズキというのは私が連載している
  「心中学園」という作品のヒロインだが
  この女性とバスで乗り合わせるときには
  いつもミズキっぽい格好をしているのだ
私(でもキャラの服装を考えるときには)
私(流行りの服を参考にしてるわけだし)
私(服装も髪型も似ているけど)
私(コスプレ並みと言えるほど そっくりなわけでもない)
私(ま、単なる偶然だよな)
私(ここで勘違いして)
私(もしかして「心中学園」の読者ですか? 私、作者なんですよ)
私(なーんて声をかけたら)
私(来週からこのバスに 乗れなくなっちまうぞ・・・)
アナウンス「次の停車場は「TN出版前」〜」
マミ(今日もずーっと 私のことを気にしてたな)
マミ(やっぱり彼が天王寺先生なのね)
マミ(いつもゲームのことを呟いてるから先生の好きなゲームを死ぬほど練習したんだもん)
マミ(先生が私の動画のことを呟いてくれたときには死んじゃうかと思ったわ)
マミ(いつも打ち合わせの後は外食だから曜日と時間を絞り込んで)
マミ(向こうから話しかけられないように マミを演じてるときとはメイクを変えて)
マミ(ミズキを匂わせる格好してTN出版行きの路線のバスに乗りまくって)
マミ(一番反応してくれたのが彼だったのよね)
マミ(顔出ししてないから天王寺先生だって確信が持てるまで時間がかかっちゃった)
マミ(でもこの後はいつも乗ってくるバス停で張り込んで尾行するだけだから)
マミ(ゲーム嫌いな奥さんから)
マミ(もうすぐ解放してあげられるよ)
マミ「待っててね」

コメント

  • 実際あり得そうなラインなのが怖い…

  • チョッと待って下さい……『心中学園』もなんだか気になるタイトルなんですが🤤
    そっちも面白そうですね

  • 見ている側だったはずなのに、見られている側になった恐怖!
    日常風景がホラーになる瞬間が1番コワイです。

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