通りすがりの

海辺月

エピソード1(脚本)

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〇空き地
  「いっしょに・・・・・ぼ?」
  声が聞こえる
  「いっしょに・・・・そぼ?」
  ぼくをよぶ声
  「いっしょに・・・あそぼ?」
  さびしげなようすで
  ぼくを求めている
  だから、ぼくは
  「こっちに来て。いっしょに
                あそぼ?」
  そのさそいの言ばに一歩
  ふみだ────

〇空き地
  「痛い!」
  その前に頭を何かでたたかれた
  「いたいじゃないですか!?
   いきなり、なにするんですか!」
お姉さん「おはよう、目は覚めた?」
  ふり向いたらなぜか笑顔の女の人
  しかも目がさめたかなんてきいてくる
  おそらくたたいたのもこの人
  おそらくというかまちがいなく
  「さいっしょからねてませんよ!」
  とりあえずこうぎしてみるのだが
  まったくこちらの言うことを
  気にしているようには見えない
  まだ少しいたいくらいで
  どれだけのバカ力なのか
お姉さん「でも、ボーっとしてたでしょ?さっきまで自分が何しているか覚えているかしら、ぼくちゃん?」
  ひどくバカにされている気のする
  さすがにほんのすう分前のことくらい──
  「・・・あれ?」
  でてこない
お姉さん「覚えてないでしょ?まぁ、こんな昼間っから道端で居眠りしてるくらいだもの、覚えているわけないわよね」
  え?ねてた?本当に?
  いやいや、そんなまさか
  だいいち、立ったまま
  ねるなんてむ理だと思う
お姉さん「とりあえず、目が覚めたみたいだし、こっちについてらっしゃい」
  「いえ、家には自分でかえれます。道だってわかるので。」
お姉さん「いいからついてきなさい。イスのあるところに行くだけだから。たんこぶができてるかも見てあげるわ」
  「はぁ~い。」
  自分でたたいたくせに
  と思うけれどもさからっても
  ダメそうなので
  とりあえずついてくことにした

〇公園のベンチ
お姉さん「とりあえず、たいしたこぶになってないし、大丈夫そうね」
  「それは良かったけどさぁ・・・」
お姉さん「起こしてあげたんだからそう怒らないの。他にいい方法がなかったのよ、だから、ね?」
  「だまされている気がする・・・」
お姉さん「そんなことないわよ。それよりも、よくここら辺は来るの?」
  「ここらへん?いや、あんまりかな。今日はぼうけんのついでだから。」
お姉さん「それなら良かった、ここら辺を冒険するの延期しなさい」
  「どういうこと?」
お姉さん「また、あんな風に道端でボンヤリされても困るからね。だから、しばらく延期」
  「いつぐらいまでさ?」
お姉さん「そうね・・・一週間は最低でも。できれば一か月くらいかな」
  「まぁ、いいけども。どうせふだん、ここらへんは来ないし。」
お姉さん「なら良かった。それじゃ約束よ?」
  「はぁ~い。」
お姉さん「素直でよろしい。ちなみに、もし次また同じことになったら、今度は全力でいくからね?」
  「え゛?わ、分かったよ。」
  あれで全力じゃないなんて
  おそろしいことを聞かされた
  気がするけれども
  今日はたまたま
  こっちの方に来ただけで
  ふだんは用はないから
  とくにこまることもない
  明日からはいつものところで
  あそべばいいだけだから。
お姉さん「それじゃ、気を付けてね」
  「うん、それじゃバイバ~イ。」
  こうしてぼくはお姉さんと
  さよならをして
  何ごともなく なにも変わらず
  そのまま家にかえった──

〇街中の公園
  今なら分かる
  あの時、自分の身に
  何が起こっていたのか
  彼女がなぜ、あんなことをしたのか
  あれが一体どういう意味があったのか
  あの約束の意味も、だ
  そのおかげで、こうして今も
  何事もなく暮らしているし
  あれ以来、ああいったことにも
  出くわしたりしていない
  それもこれも
  彼女が「縁」を切って
  くれたからだろう
  ただの偶然か
  それとも波長があうような
  何か共通点があったのかは
  分からないが
  ただ、そうしたことで
  奇妙な「縁」が生まれて
  結果、ああいった
  状況になったのだろう
  自分が勝手にそう思ってるだけで
  本当にそうなのかは分からない
  結局、何事もなかったがゆえに
  良くも悪くも
  何も分からないまま
  こうしている
  成長するにつれ
  あれは何だったのかと
  調べたりはしたものの
  よくわからないまま
  こうして、過ごしている
  なんて懐かしい昔のことを
  思い返していたからだろうか
  目の前にはポツンとたたずむ
  女の子の姿に注意を引かれた
  後ろからだと分からないが
  制服姿を見る限り
  年はそう変わらなそう
  どこにでもある公園の前で
  ポツンと佇む姿に
  違和感が拭えなかった
  何かをしている雰囲気もなく
  微動だにせずにそこにいる
  まさかな、なんて思いつつ
  さて、どうしたものかとも思う
  とりあえず、表情を見て
  それからどうするかと考え
  確認することにして
  それで、わかったことがある
  なるほど、こういう事か、と。
  あの時の自分もこんな表情を
  していたのだろうか
  ボンヤリしているかのように
  目の焦点があってなく
  虚ろなまま
  どこかを見ているようで
  どこにも焦点があっていない
  不思議な不思議な表情
  目の前で他人がウロチョロして
  表情をうかがっても反応もない
  明らかなおかしさ
  これこそがかつての自分も体験した
  「そういう」ものなのだろう
  「ま、仕方ないよな。」
  そう言い訳するようにして
  バッグから教科書を取り出し構えた──
  「痛゛っい!」
  その声が公園と住宅街に響き渡る
  「あ、やっぱり痛いよなぁ。」
  我ながら酷いセリフだとは思う
  「何するんですか!というか、誰ですか!?」
  「それで、目は覚めたかな?お嬢さん?」
  いつかの自分が言われたセリフを
  言うことになるなんて、と思いながら──

コメント

  • 主人公が経験した魔の時間を色々な観点から想像しました。それが一体何だったのかが解りたいような、そうでないような感じで。負の連鎖から好転していく様子は受け取れました。

  • 日常風景にぽっかりとあいた魔の口に引き込まれそうになる人をあちら側からこちら側に引き戻すための「ぶっ叩き」なのかな。あちら側へ行き損なった「縁」のある人間がたまたまそこにいなければ、どうなるんだろうか。そもそも私たちが今いるここはあちら側なのかこちら側なのか。じわじわくる好みのタイプのホラーです。

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