読切(脚本)
〇水たまり
私、小夜子は二年前から大学時代の友人の麻美とルームシェアをしている。私は会社員で麻美はアルバイトをしながら就職活動中だ。
小夜子「ただいま」
麻美「なに、またお酒? 今日はデートじゃなかったの?」
小夜子「向こうが五分遅れて来た 男ってみんな時間に悪いのよ」
麻美「その性格だと男の子とお付き合いは難しそうね だけど、あなたのいいところはそこなんだけど」
私は他人に集合時間や予定にとても厳しいと言われる。社会人として基本である時間を守れない奴がいる。私にとって時間はお金だ。
小夜子「大人なのだから時間は守って当たり前 守らない方が悪いわよ」
麻美「五分ならまだ待った方ね。 前までは三十秒で帰ったもんね 四分三十秒の成長ね」
小夜子「人の時間を奪っておいて来たメールがこれよ 「今日は電車が遅れて十分ほど遅れるよ。ごめんね」 十分もでしょ」
麻美「憂さ晴らしに酒をたくさん飲んだわけね 私の美味しい料理よりお酒の方がいいんだ」
普段アルバイトをしている麻美は今日休みだったが、明日が早い事が分かっていたので、ゆっくり休んで欲しかった。
小夜子「いやそのえっと」
麻美「いじわる言ってごめんね 気を使ってくれたのよね ありがとう」
小夜子「風呂に入る」
麻美「シャワーにしなさいよ 酔っぱらっているんだから」
私には友達が麻美しかいない。周りの人はそんな性格が直らないなら、いても窮屈で付き合いきれないと言って去った。
麻美「はやく上がったわね アイス食べる?」
小夜子「煙草だ煙草 赤マルはどこ」
麻美「入ったのにまた、においつけるの? 部屋別だからいいけどさちゃんと外で吸ってね 窓も閉めるのよ」
小夜子「分かった分かった」
お酒を飲んで気持ちよくて、シャワーで気持ちよくて、煙草で気持ちよくて、幸せだ。
だが神よ。願わくば時間に厳しい男を私に。
麻美「今日は満足?」
小夜子「まだ起きてたの? 麻美、バイト」
麻美「いいわよ 小夜子、いい人見つかるといいわね」
小夜子「そう言えば、明日中途採用の社員がうちの部署に来るって言ってた」
麻美「男の人?」
小夜子「やや難ありみたい」
麻美「絶対に時間に鬼厳しい人だよ」
小夜子「絶対ってことは無いでしょう」
次の日、出勤したら麻美が言った通り時間に厳しそうな中途採用社員だった
これからが楽しみだ
小夜子は時間には厳しいのに、家の中では麻美に口うるさく注意されてて子供みたいで、そういうところが人間ぽくて面白い。そのうち彼なんかいなくても麻美だけいればいい、ってなりそうですね。
若い時って白黒はっきりつけてしまいすぎて、自らが恋人選びのストライクゾーンを狭めてしまうことってありますよね。そんな彼女でも本当に好きな人ができれば、今までのことが嘘みたいにかわってしまうかもしれないなあと思います。
ヒロインが時間に厳しい男と出会えると良いですね!!
30秒しか待てなかったのに、5分待てるようになったということは、これからもしかしたら、相手のことを好きになったら、少しずつ柔軟になっていったりするのかなぁ?とか想像させられました!!