Sparking Carats!

西園寺マキア

第2章 桜色の予感(脚本)

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西園寺マキア

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〇まっすぐの廊下
???「アイドルやってるの? 楽しそうじゃん、あたしも入れてよ」
  一緒にダイヤモンドアイドルを目指しませんか、と叫びながら学校中を走り回って数日。
  二人の教室のドアをバンと開けて、ベリーショートの少女が現れた。
はるか「え、アイドルやりたいんですか!?」
  遥香がひどく驚いた様子で椅子から立ち上がった。
  それもそうだ。
  ここ数日の成果といえば、こそこそとしたクラスの陰口だけだったのだから。
???「こっちのクラスの子達がひそひそ話してるのが聞こえたの」
???「『アイドル研究部』っていう変な部活の部員がアイドルやる人募集してるって! だからすっとんできちゃった」
  はるかは『アイドルやるなんて正気? 誰にも勝てっこないよ』と昼間に言われたことを思い出した。
???「それから、敬語じゃなくていいよ! あたしたち、同じ学年だし」
はるか「そうなの!? 大人っぽいね、えっと・・・」
さくら「あたしは長井さくら さくらって呼んでよ!」
はるか「うち、籠池はるかって言います! こっちは大谷ゆづきね」
  はるかに紹介されると、ゆづきは緊張した面持ちで小さく会釈した。
さくら「カゴちゃんに、ゆずゆずね!」
さくら「それで、いつあたしをアイドルに入れてくれる? オーディションする? 今日? それとも明日?」
はるか「ちょっと待って、本当にいいの?」
はるか「ゆづきはそもそもやらないし、うちはアイドルとかやったことないし、それに、歌下手くそだし・・・」
  はるかがちょっと申し訳なさそうに言った。
  実際、はるかの歌声はもはや危険物レベルだ。
さくら「いいよ、やるやる! あたし、高校でもう一回アイドルやりたかったんだ」
はるか「もう一回・・・もしかして、アイドルやってたことあるの!?︎」
さくら「うーん、まあ大会とかはいい結果出たことないし、もう解散しちゃったけどね」
  さくらは懐かしむような、それでいてちょっと悲しそうな複雑な表情をして笑った。
はるか「いや、いや! 経験者ってだけですごいよ!」
はるか「早速入って!」

〇学校の部室
  はるかが部室に招きいれると、さくらは一層わくわくしたような様子で部室を眺め始めた。
ゆづき「いやー、こんなに早くメンバーが来るなんて思ってなかったよ・・・」
さくら「あはは、そうなの? もっとみんな来てると思ったよ」
ゆづき「いやいや、ご覧の通り閑古鳥よ」
さくら「それにしても、こーんな部室学校にあったなんて・・・」
  さくらは辺りを見回すと、テーブルの上のボロの分厚いノートに気が付いた。
さくら「これ、なあに?」
ゆづき「それ、はるかが小さい頃から使ってるノート」
  表紙に、拙い字で『はっぴーのーと』と書かれている。
さくら「カゴちゃん、見てもいいー?」
はるか「いいけど・・・ なんか恥ずかしいなあ」
さくら「すごい・・・ アイドルの研究がみっちり書いてある・・・」
はるか「うん、いつかアイドルをやるときに参考になるかな、って」
さくら「あはは、DIAmondのページだけ何回も出てくる!」
ゆづき「はるかのDIAmond好きだけはもう止められなくてさ・・・」
さくら「あたしもDIAmond好きだよ ・・・まあ、ステージを実際に見たことはないんだけどさ」
  ノートには古今東西のアイドルたちの分析が書かれていた。
  国民的アイドル、地方アイドル、さらには地下アイドルまで、様々なグループが余すことなく研究されている。
  さくらは数ページめくったあと、とあるページで手を止めた。
  見出しの欄には「ジュニアアイドル」と書かれている。
さくら「・・・」
はるか「・・・なんか変なこと書いてあった?」
さくら「ううん、そうじゃないよ」
  さくらはさっきの陽気な様子とはうって変わり、真剣な表情でページを見つめていた。
さくら「・・・」

〇華やかな広場

〇学校の部室
さくら「・・・」
さくら「アイドル、好きなんだね」
はるか「え?」
はるか「ふっふっふ、アイドルへの愛だったら負けないよ〜?」
さくら「・・・」

〇学校の部室
  それからしばらく、さくらはノートを熱心に読み込んでいた。

〇華やかな広場

〇学校の部室
さくら「・・・」
  明るかった空が茜色に染まりだした頃になって、ようやくさくらは口を開いた。
さくら「うん、決めた」
さくら「やっぱりあたし、カゴちゃんとアイドルやりたい」
はるか「えっ、うん?」
さくら「ごめん、あたし本当はちょっとだけ、からかい半分でここに来たの」
さくら「でもこのノートを読んで伝わってきた──」
さくら「アイドルへの憧れ、愛、信念・・・ 並大抵の想いじゃ、こんなに研究なんてできっこない」
さくら「あなたのアイドルへの想いは本物だよ、カゴちゃん」
  真剣な面持ちでさくらはここまで伝えると、さくらは無邪気な笑顔を浮かべた。
さくら「それに、カゴちゃんならきっと輝く存在になれるって、そんな気がするんだ」

〇学校の部室
さくら「だから改めて・・・あたしとチームを組んでくれる?」
  さくらは手を差し出した。
  白い肌に夕焼けが反射している。
はるか「うん! もちろんだよ」
  はるかは手を握り返した。
  さくらの大きな手がはるかの手を包んだ。
  目を合わせた二人の少女は、ちょっと照れ臭そうに微笑んだ。

〇学校の部室
ゆづき「──チーム成立ね」
はるか「えへへ、なんか照れるなあ」
  はるかは嬉しそうに頭の後ろをポリポリと掻いた。
ゆづき「チーム名はどうするの?」
はるか「実はもう決めてあるんだ」

〇コンサート会場
はるか「小さい頃に見たリカさんのステージ・・・」
はるか「ステージを見た人はみんな幸せそうだった」
はるか「ステージからお客さんへ、笑顔の連鎖が広がっていくあの光景をずっとずっと覚えてる」
はるか「幸せのパレードのような、あの光景を──」

〇学校の部室
はるか「そんなステージをやりたいって、ずっと思ってたんだ」
はるか「だからね、チーム名は・・・」

〇空
「「Happy♡Parade」!!」
  思いっきり息を吸って大きく宣言したはるかの声が、ぶわんと廊下に反響した。
  反響した声に誘われて、桜の花びらがひらひらと部室に舞い込んだ。
「いいね、きっとあたし達ならできるよ」
「うん、わたしもそう思う」
「ありがとう、一緒にがんばろうね」
  そう言って三人で笑い合った。
  ここからどんな苦難があっても、乗り越えていけるような気さえした。

〇空

〇まっすぐの廊下
???「幸せの連鎖・・・」
???「それが・・・アイドル?」

次のエピソード:第3章 行き先不安

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