Sparking Carats!

西園寺マキア

第1章 遥かなる輝き(脚本)

Sparking Carats!

西園寺マキア

今すぐ読む

Sparking Carats!
この作品をTapNovel形式で読もう!
この作品をTapNovel形式で読もう!

今すぐ読む

〇コンサート会場
  割れんばかりの歓声、溢れんばかりの輝き。
  そのステージには全てがあった。
リカ「おめでとう、むつみちゃん。 いいステージだったわ」
むつみ「リカさん、ありがとうございます・・・!」
リカ「こちらこそ、本当にありがとう。 さあ、お客さんにも感謝を伝えなきゃ」
むつみ「はい・・・!」
  紺色の髪のアイドルが前を向く。
  スポットライトに当たって、汗がキラリと光っているのが見えた
むつみ「暗闇の中でもがいていた私が、この名誉ある大会の決勝で歌うことができたのは、外でもない皆様のお陰です──」
むつみ「──本当に、本当にありがとうございました!」
  彼女が震える声でそう言い切ると、観客の声援が一層大きくなった。
リカ「それから最後に、重大発表があります!」
「私たちは、二人組ユニット【DIAmond】を結成します!」
  スポットライトが二人を照らす。
  会場のボルテージは最高潮だ。
「聞いてください、”Sparking Carats”!」

〇学校の部室
  曲のイントロが始まったところで、部室のテレビがブツリと消えた。
はるか「ちょっと、なんで消したの⁈」
ゆづき「ダイヤフェスの決勝ステージでしょ? 昨日も見てたんだからいいじゃん」
はるか「良くない!」
はるか「いいところだったのに・・・」
ゆづき「いやいや、20年前のステージを毎日見てる人、もうはるかくらいしかいないって・・・」
はるか「でも、アイドル黄金時代の頂点にいた二人だよ⁈」
  先ほど画面に映っていたピンクの髪の少女の正体は、かつて一世を風靡したアイドル"華神リカ"。
  その圧倒的カリスマ力で、国内外問わず彼女は大人気だった。
  そんな彼女を夢見て、多くのアイドルが誕生した「アイドル黄金時代」が、かつて日本には栄えていた。

〇コンサート会場
  そんな中リカとその事務所が開催したのが、のちに伝説の大会と呼ばれる「ダイヤモンドアイドルフェス」。
  決勝に上がればリカと同じステージで直接対決ができる、というその大会に、多くの少女たちが目を輝かせた。
  ダイヤフェスの存在と影響力は計り知れず、国民の誰もが決勝のステージを待ち望んでいた。
  決勝に上がったのは紺色の髪を持つ新人ソロアイドル"姫森むつみ"。
  でぶつかり合った決勝ステージは、それこそ本物のダイヤモンドのような輝きだったと、人々は口を揃えて語る。

〇学校の部室
はるか「もはや伝説、いやそれ以上!」
はるか「毎日見るのはファンとしては当然で・・・」
ゆづき「わかってるわかってる。 中学の頃から何回も聴いてるよ」
ゆづき「それに、私も二人のファンなんだから」
はるか「もー、じゃあ一緒にステージ見たっていいじゃん」
ゆづき「毎日毎日同じ映像は流石に飽きちゃうよ・・・」
  ゆづきはそう言いながら、持っていたリモコンでチャンネルを変え始めた。
はるか「あ、”Sparking Carats”!」
ゆづき「最近CRESCENTがカバーCD出したらしいからねー。 CMもすごいや・・・」

〇月夜
  《CRESCENT、カバーアルバム販売中》

〇学校の部室
はるか「事務所所属アイドルか・・・」
はるか「今一番ダイヤモンドアイドルに近いって言われてるらしいし・・・いいなあ・・・」
ゆづき「ま、私たちみたいに『アイドル研究部』なんて適当な看板立てて部室占領してるだけのやつらなんかには、到底かなわない夢だけどね」
  入学して早々に、二人が『アイドル研究部』なんて ちんけ な部活を立ち上げたのには理由がある。

〇会見場
  アイドルの頂点を決める伝説の大会「ダイヤモンドアイドルフェス」・・・通称ダイヤフェスの復活宣言。

〇コンサート会場
  1年前にこの復活宣言が発表されてからというものの、
  少女たちはフェスで優勝し、ダイヤモンドのように輝く「ダイヤモンドアイドル」を目指し次々とアイドルチームを結成していた。

〇学校の部室
  そんな「第二次アイドル黄金時代」と呼ばれた現代のアイドルたちのライブ映像を、学校で堂々と楽しんでやる・・・
  ・・・というのが二人の魂胆であった。
ゆづき「まあ元々自分がアイドルをやるつもりでこの部活を立ち上げたわけじゃないけどさ」
ゆづき「でも毎日いろんな場所でCRESCENT、CRESCENTって引っ張りだこな所を見ると、ちょっと憧れちゃうよねえ・・・」
はるか「んー・・・」
  はるかの耳にはゆづきの声がいまいち届いていないようだった。
  CRESCENTの三人がミステリアスに微笑んでいる画面をじっと見つめ続けている。
はるか「アイドル・・・かなわない夢か・・・」
  こっそり持ち込んでいたポテチを開けるゆづきの横で、はるかが小さくぶつぶつ呟いた
はるか「そんなの・・・本当にあるのかなあ・・・」
ゆづき「え、どうしたの急に」
はるか「かなわない夢なんて、ないと思うんだよ」
はるか「うち、アイドルやりたい」
ゆづき「・・・え?」
ゆづき「やいやいやいや、いきなり無理だよ、 何、どうしちゃったの?」

〇白

〇明るいリビング
  多くの子供が一度は華やかな職業に憧れるように、はるかもかつてアイドルに憧れた少女の一人だった。
  時折流れるテレビの中のアイドルに夢中になって、夕飯を食べ損ねるのは日常茶飯事だった。
  彼女の母親はそんな娘を見て、ある日ライブに連れて行くことにした。

〇コンサート会場
  それはDIAmond解散から数年たち、久しぶりに開催された華神リカのソロライブだった。
  リカのステージは圧倒的だった。
  スポットライトを浴びて輝く彼女の姿は、幼いはるかの脳みそに強烈に焼きついた。
  キラキラの衣装、まばゆい笑顔、夢を与える絶対的存在────

〇学校の部室
はるか「小さい頃からずっと思ってた。 うちもステージで輝きたいって」
はるか「DIAmondやCRESCENTみたいに、夢を与えられるアイドルになりたいって──」

〇空
「──うちは本気だよ、ゆづき」

〇学校の部室
  はるかの目はまっすぐだった。
  こうなったらはるかはひかない。
  しばらくの沈黙の後、ゆづきはため息をつきながら椅子に沈んだ。
ゆづき「・・・・はぁあ、わかった、わかったよ。 やってみな」
はるか「・・・え、それってやってもいいってこと?」
ゆづき「なによ、あんたが言い出したんでしょ・・・」
はるか「そうだけど・・・」
ゆづき「はるかのやりたいって気持ちは伝わった」
ゆづき「それに、あんたがアイドルやりたいって思ってたのも、昔からずっと気づいていたしね」
  ゆづきははるかの手を取った。
  にっこりと微笑んで、言葉を続ける。
ゆづき「いいんじゃない? 高校生アイドル! どうせやるなら本気でやっといで」
はるか「うん・・・・・・うん! うち、やる!」
はるか「それで、きっと日本一輝いてみせるから!!︎」
  はるかは待ちきれない、といった様子で椅子から立ち上がって、扉に手をかけた。
はるか「じゃあ早速一緒にやってくれる人、探してくる!!」
  はるかは廊下へ飛び出した。
  どきどきとした心臓の鼓動が、全身を駆け巡るのが聞こえる。
  ここから夢が始まるんだ──

〇空
  はるかは廊下を走りながら、窓の外を見た。
  夕日が自分の背中を押してくれているように、キラキラと輝いているのが見えた。

次のエピソード:第2章 桜色の予感

成分キーワード

ページTOPへ