〇噴水広場
兵士ペイ「皆の魔力が──」
兵士ペイ「全然集まってきませーん!!」
クマシロ博士「へ」
魔王シン「博士──」
魔王シン「お主・・・まったく人気ないのう」

〇噴水広場
佐藤「奴らは何やってるんだ？」
佐藤「何か策があるようだが・・・」
佐藤「ま」
佐藤「僕に敵うはずないだろう」

〇噴水広場
魔王シン「博士・・・」
魔王シン「我が代わろう」
クマシロ博士「はい・・・」
魔王シン（バーチャル背景──）
魔王シン（世界、ON！）
魔王シン「──我が名はシン」
魔王シン「魔国の王である」

〇地球
魔王シン「博士の話は、真実なのだ」
魔王シン「我らが戦っている勇者の魔力──それは想像を超えた強さだ」
魔王シン「魔王軍の誰一人、敵わないだろう」
魔王シン「たがそれは──」
魔王シン「たった一人で戦った場合なのだ！」
魔王シン「もし、魔族全員の力を合わせられたら──」
魔王シン「もし、人間全員の力を合わせられたら──」
魔王シン「もし、この世界全員の力を合わせられたら──」
魔王シン「勇者の魔力に、必ず打ち勝てる！」
魔王シン「そう──」
魔王シン「我らの持つ力は、魔力だけではない」
魔王シン「皆、聖典に教えてもらったはずだ」
魔王シン「この世界で最も大切なのは──」

〇立派な洋館
魔剣士マナ「この世界で最も大切なものは『愛』！」
魔剣士マナ「ハーレム王子は、私が打ち破る!!」

〇けもの道
兵士ペイ「僕たち魔王軍は、相手がどんなに強大であろうと立ち向かう！」
魔導士レミ「この世界で最も大切なものは『勇気』！」
「勇者は、我ら二人が必ず打ち破る!!」

〇地球
魔王シン「『愛』と『勇気』、そして──」
「『友情』なのだと!!」

〇噴水広場
「シン様！」
「我らの魔力、たくします！」
人間国王キング「よし！」
人間国王キング「私の魔力も使ってくれ！」
リタ「・・・っ」
リタ「誰が魔族に力など・・・！」

〇巨大な城門
村の子供「シン様だ！」
村の子供「貧しい村に住んでいた僕たちを──」
村の子供「王都で暮らせるようにしてくれた御礼──」
村の子供「今こそしないとね！」
「うん！」

〇市場
カレー屋（飲み物）店主「シン様にはカレー（飲み物）のレシピを──」
カレー屋（飲み物）店主「教えてもらった恩があるからね」
カレー屋（飲み物）店主「大した力じゃないけど・・・」
カレー屋（飲み物）店主「届け！」

〇海
海の神獣リヴァイア「フッ」
海の神獣リヴァイア「シンめ」
海の神獣リヴァイア「相変わらず面白いことをやっておるな」
海の神獣リヴァイア「力を貸すのは友として当然」
海の神獣リヴァイア「他の神獣にも、声をかけるとしよう」

〇幻想2
大魔導士リデルカ「現世は大変そうね」
大魔導士リデルカ「弟子のレミも世話になってるし──」
大魔導士リデルカ「私も力を貸しましょう」

〇ホストクラブ

〇謎の施設の中枢

〇地球

〇噴水広場
兵士ペイ「す、すごい・・・！」
兵士ペイ「世界中から、魔力が集まってきます！」
魔剣士マナ「抗転移魔法──」
魔剣士マナ「生成完了だ！」
クマシロ博士「よし！」
クマシロ博士「作戦最終フェーズに移行！」
兵士ペイ「世界中の全魔力、砲身に収束！」
魔導士レミ「シン、発射準備OKじゃ！」
魔王シン「皆、力を貸してくれてありがとうなのだ！」
魔王シン「『超電磁魔砲』──」
魔王シン「発射!!」

〇噴水広場
佐藤「また無駄な攻撃を──」
佐藤「──速いっ!?」

〇噴水広場
兵士ペイ「勇者に着弾を確認！」
魔王シン「や」
魔王シン「やったのだ！」
兵士ペイ「・・・そんな！」
兵士ペイ「勇者、健在です!!」
魔王シン「何だと!?」
佐藤「驚かせてくれるね～」
佐藤「避けられないなら──」
佐藤「受け止めればいいだけさ！」
魔王シン「なんて奴だっ！」
魔王シン「博士！」
魔王シン「もっと出力を上げられないか？」
クマシロ博士「もうこれ以上は・・・」
クマシロ博士「皆の魔力も残っていません！」
魔王シン「くっ・・・！」
魔王シン「ペイ！」
魔王シン「奴との魔力差は？」
兵士ペイ「完全に互角です!!」
魔導士レミ「そ、そんな・・・」
魔剣士マナ「あと少し・・・」
魔剣士マナ「あと一人分でも魔力があれば・・・」
リタ「・・・！」
リタ「──絶対に」
リタ「絶対に魔族など助けてやるものか！」
魔王シン「──リタよ」
魔王シン「魔族を恨む気持ち、簡単に消せはしないだろう」
魔王シン「だが──」
魔王シン「お主が願っているのは、本当に魔族を滅ぼすことなのか？」
リタ（私が本当に願っているのは──）
リタ（魔族を滅ぼすこと・・・）

〇謁見の間
　　──いや、違う
　　本当の願いは・・・
　　誰もが笑顔になれる世界をつくること

〇噴水広場
魔王シン「その世界には──お主も含まれている」
魔王シン「お主が笑顔でないなら、その願いは叶わないのではないか？」
リタ「私はいい！」
リタ「私は、憎しみを背負って生きていけば・・・！」
魔王シン「それはダメなのだ」
リタ「お前には関係ないだろ！」
魔王シン「関係あるのだ！」
リタ「え」
魔王シン「世界の誰かが笑顔になれないのなら──」
魔王シン「我も心から笑えないのだ」
リタ（そういえば・・・）
リタ（昔、お母様と私も──）

〇謁見の間
　　ねえ、お母様
前人間国王妃「なあに、リタ？」
　　どうして、お母様はいつも笑顔なの？
前人間国王妃「フフフ、それはね」
前人間国王妃「あなたがいつも笑顔だからよ」
　　ええ！
　　私はお母様が笑顔だから、つられてるだけ！
前人間国王妃「じゃあ、最初に笑顔になったのはどっちかしらね」

〇噴水広場
魔王シン「我に任せろ！」
魔王シン「お主も笑顔になれる世界──」
魔王シン「必ずつくってやる!!」
佐藤「フハハハ」
佐藤「お前たちの力はここまでのようだな」
佐藤「僕の体力は無尽蔵」
佐藤「このままこの魔法をしのぎ切れば──」
リタ「──魔王シン」
リタ「私の魔力・・・お前にたくす」
リタ「私の願い、必ず叶えてもらうぞ！」
魔王シン「ああ、もちろんだ！」
魔王シン「我とお主はもう『友達』だ!!」
魔王シン「はああああっ!!」
佐藤「何・・・だとっ！」
佐藤「お、押し切られる!!」
魔王シン「勇者よ」
魔王シン「すまぬが、元の世界へ帰るのだ」

〇地球
魔王シン「この世界の友情は──」
魔王シン「お主の魔力を超えるっ!!」

〇噴水広場
佐藤「友情だと!?」
佐藤「そんなものに僕が負けるわけない!!」
佐藤「僕は勉強もスポーツも──」
佐藤「何でも『できる』人間なんだ！」
佐藤「『できない』奴らがいくら集まっても・・・！」
佐藤「くそおおおお・・・!!」

〇屋上の隅
佐藤「こ、ここは──」
佐藤「元の世界に戻ってきたのか・・・」
佐藤「お、落ちる！」

〇大学の広場
佐藤「何とか、手が引っかかって・・・」
佐藤「けど、力が入らない・・・」
佐藤「だ、誰かー!!」
？？？「おい！」
？？？「なんか聞こえたぞ!?」
佐藤「おーい！」
佐藤「ここだっ!!」
？？？「誰か落ちかかってるぞ！」
？？？「斎藤も引き上げるのを手伝ってくれ!!」

〇屋上の隅
佐藤「た、助かった・・・」
山田「ふ～」
山田「危なかったな」
斎藤「お前、あのまま落ちたら死んでたぞ」
佐藤「ああ」
佐藤「助けてくれて、ありが──」
佐藤「いや」
佐藤「僕は助けてほしいなんて言ってないし！」
「ギャハハハハ」
佐藤「何がおかしい!?」
山田「お前、バカなの？」
山田「素直に御礼を言うこともできないなんて」
佐藤「バカなわけないだろう！」
佐藤「僕は勉強もスポーツも『できる』」
佐藤「お前たちより間違いなくハイスペックだ！」
「はいはい」
斎藤「なんだか昔の自分を見てるようだな」
斎藤「山田もそう思うだろ？」
山田「そうだな」
山田「『愛』も『勇気』も『友情』も知らない──」
山田「昔の自分に」
佐藤「はあ？」
斎藤「こっちの話さ」
山田「それより──」
山田「これから二人で飲みに行く予定だったんだ」
山田「一緒に行こうぜ」
佐藤「何で僕がっ！」
斎藤「いいからいいから」
佐藤「ちょ」
佐藤「引っ張るなよ！」

〇大衆居酒屋

〇施設の男子トイレ
佐藤「こんなに楽しいのは、いつぶりだろう」
佐藤「・・・」
佐藤「助けてくれた御礼・・・今さら言えないな」
佐藤「なんでこんな簡単なことができな──」
佐藤「そうか・・・」
佐藤「僕も──」
佐藤「『できない』奴の一人なのか」

〇教室
　　勉強とスポーツができても──
　　ひたすら傲慢で・・・
　　人の気持ちを推し量れない・・・
　　誰も認めてくれないのは当然か

〇大衆居酒屋
佐藤「斎藤、山田──」
佐藤「えっと・・・その・・・」
佐藤「さっきは助けてくれて──」

〇噴水広場
魔王シン「ふ～」
魔王シン「今回はこれまで以上にギリギリの戦いだったな」
兵士ペイ「そうですね」
兵士ペイ「シン様が世界中から人気者で良かったですよ」
兵士ペイ「ね、博士？」
クマシロ博士「・・・その話はしないで」
魔王シン「コホン」
魔王シン「リタ──」
魔王シン「お主にも助けられた」
リタ「・・・」
魔王シン「魔族も人間も関係ない」
魔王シン「これからは友達として仲良く──」
リタ「気安くするな！」
リタ「誰がお前と友達になるか！」
魔王シン「そうか・・・」
リタ「まあ──」
リタ「友達以上ならいいぞ」
「え」

〇空
「ええーーー!!」

〇巨大な城門

〇上官の部屋
リタ「シン～」
魔王シン「リタ、また来たのか」
リタ「遊びに来てやったぞ」
魔剣士マナ「こら！」
魔剣士マナ「シン様は忙しいのです！」
魔導士レミ「そうじゃ！」
魔導士レミ「リタは人間国で大人しくしとれ！」
リタ「何だとっ！」
魔王シン「やれやれ」
魔王シン「なんで、お主らは仲が悪いのだ？」
クマシロ博士「フフフ」
クマシロ博士「これがハーレムものというやつですな」
魔王シン「何ごとだ!?」
兵士ペイ「辺境の部隊から緊急連絡です！」
兵士ペイ「魔国の外れで、異世界の勇者を発見したとのこと」
兵士ペイ「しかも今回は──」
兵士ペイ「女性のようです！」
クマシロ博士「何だと!?」
魔王シン「また凶悪そうな奴か？」
兵士ペイ「それが──」
兵士ペイ「小さな村で農業をしてるだけらしいです」
魔王シン「ほっ」
魔王シン「今回は楽な戦いになりそうなのだ」
クマシロ博士「いえ」
クマシロ博士「油断してはなりません！」
魔王シン「なぜなのだ？」
クマシロ博士「この聖典を御覧ください」
　　異世界でスローライフしてたら、なぜか最強の魔獣たちに慕われて困っちゃう♥
クマシロ博士「おそらく、強力なモンスターたちを無意識に従える厄介なタイプ」
クマシロ博士「とんでもない戦力の軍団になってるかもしれません」
魔王シン「なんと恐ろしい・・・！」
魔王シン「これより第４勇者を『スローライフ王女』と呼称する！」
魔王シン「総員、対勇者戦闘配備！」
「はっ！」
「はっ！」