こころない女

ぽむ

桜色に(脚本)

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〇桜並木
  こんにちは。
  僕は日本に来てもう20年になります。
  日本人の彼女と結婚して、
  外国語講師として、
  日本にやって来ました。
我「今日は、 いつも思っていたことを 話したくて、ここに来たのです。 「こころ」についてのお話です」
  こころない女。
  
  彼女は、はなはだしく日本的でした。
  
  長い艷やかな黒髪と、
  折れそうに細い腕。
  物ごとに遠慮がなく、
  うっかりしていて、
  裏がなく素直であり、
  なんとなく生きてる。
  
  無垢なこどものようでした。
我「僕が日本に来たときに思ったのは、」
我「日本人は、中心に『無』の文化を持っていて、どんな新しいことも矛盾なく受け入れ、やがて日本化するように思えるのです。」
我「仏教思想が強いようにも思うのですが、 「無常・無我・無私」」
我「無常とは、諸行無常。 すべてのことは、移ろいゆく。 水の流れのように。 常に正しいものはなく、 常に栄えるものもない。」
我「無我とは、仏教の諸法無我。 すべての事象は 現象として現れているだけで、 それ自体の不変的な本質は存在せず実体がない。」
我「無私とは、私心を捨てた献身の心。 自分の利益を顧みないで、 他者または物事のために 自己の力を尽す心がけのこと。」
我「あらゆる、ものごとを 無限に包容し抱擁する。 それは日本人だから、 というより 彼女のこころだったのだろう。」
  彼女は病に侵されていて、
  余命幾ばくもないことを
  知っていたのに、
  すごく落ち着いていて、
  笑顔で微笑むのです。
  そう彼女は、
  真偽や正誤を
  論理的に判断するよりも、
  真偽も正誤もなく
  無意識に全てを受け入れる方を
  選んだのでしょう。
我「僕も彼女のように、なりたくて、 利己心というものを捨て、 こころを無にしてみようと 思ったのです。」
  そうしたらワタシも
  この景色に
  染まるのことができるのでしょうか。
  
  こころなしか、桜色に。。

コメント

  • ネガティブなイメージを想起させるタイトルから、、細やかな言葉の調べを経て、、タイトルの意味を知り深く自省するに至りました。とても深い内容にもかかわらず、エゴの感じられない文章に感じ入ってしまいました。

  • 何て詩的で哲学的な作品……( ´ ▽ ` )
    「こころ」というものは複雑なものですよね。
    個人的にタイトルと出てくるキャラクターから、夏目漱石を連想しました…。

  • 空っぽの器を何もないと受け取るか、これからなんでも入れることができると見るか、受け取る側によって意味が違うから「無」は善悪で判断できない概念ですね。桜の花は日本人の心の「無」をひとときだけ「夢」に変えてくれる儚い魅力がありますね。

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