さて、今回のテーマは…(脚本)
〇高層マンションの一室
タプ野 ベル夫「・・」
???「ベル夫さーん」
???「準備出来たわよ」
タプ野 ベル夫「あ、ああ・・」
タプ野 ミナ「じゃじゃーん」
タプ野 ベル夫「ミナ・・今回はまた一段とすごいね・・」
タプ野 ミナ「頑張ったもん」
タプ野 ミナ「ベル夫さんが出したテーマ」
タプ野 ミナ「『トンデモ華族』を達成するためにね」
タプ野 ミナ「どう!? 明治初期の、海外の上流階級に思いを馳せる様をうまく表現出来てると思わない!?」
タプ野 ミナ「こだわりは、全体を黒で統一して・・」
タプ野 ベル夫「ミナ・・」
タプ野 ベル夫「もう終わりにしよう」
タプ野 ミナ「えっ」
タプ野 ミナ「どういうこと?」
タプ野 ベル夫「このコンテストみたいなやり取りをさ」
タプ野 ミナ「な、なんでよ」
タプ野 ミナ「あ、もしかして私が嫌々やっていると思ってる?」
タプ野 ミナ「そりゃ最初は驚いたけど、私もやっているうちにどんどん楽しくなって・・」
タプ野 ベル夫「君の為なんだ・・」
タプ野 ベル夫「分かってくれ」
タプ野 ミナ「・・私の事が嫌いになったんなら、そう言ってよ」
タプ野 ベル夫「ミナ!違う、そんなんじゃ・・」
タプ野 ミナ「そういう事でしょ」
タプ野 ミナ「私のテーマの表現が拙くなったから!?」
タプ野 ミナ「いつも楽しそうに審査していたのは演技だったのね!?」
タプ野 ベル夫「誤解だっ、俺はただ・・」
タプ野 ミナ「もう知らないっ」
タプ野 ベル夫「違うんだ」
タプ野 ベル夫「俺は君に・・」
〇繁華な通り
タプ野 ミナ「ベル夫さん・・・ひどいよ」
〇高層マンションの一室
タプ野 ベル夫「・・」
タプ野 ベル夫「ミナって、いつもその服着てるよね?」
タプ野 ミナ「えっ!?」
タプ野 ミナ「たしかにそうかも」
タプ野 ベル夫「その服ってあれだよね!!俺たちが初──」
タプ野 ミナ「私あんまりこだわりないから」
タプ野 ミナ「ついつい楽なの選んじゃってるかも」
タプ野 ベル夫「・・」
タプ野 ベル夫「あ、そうだ」
タプ野 ベル夫「俺がテーマ出すから、それにあったコンセプトでコーディネートしてみるってのは?」
タプ野 ミナ「えー、なにそれぇ」
タプ野 ミナ「でも、ちょっと面白そうかも」
タプ野 ベル夫「決まり!じゃあ最初のテーマは・・」
タプ野 ベル夫「『秘密』で!!」
タプ野 ミナ「何それ!!難しすぎっ!!」
タプ野 ベル夫「好きに解釈してくれていいから」
タプ野 ミナ「うーん、やってみるね!!」
〇繁華な通り
タプ野 ミナ「あの頃、あんなに楽しそうだったのに」
タプ野 ミナ「そういえば、最近表情が暗かったかも・・」
タプ野 ミナ(やっぱり私が上手く表現できなくなって愛想つかされてるのかな)
タプ野 ミナ「ん?」
おばちゃん「なんだか凄い格好ねぇ」
おばちゃん「ゴスロリってやつかしら?」
タプ野 ミナ(ヤバ!!よく考えたらトンデモ華族の格好のまま飛び出してきちゃってた!!)
タプ野 ミナ(は、恥ずかしいぃ)
タプ野 ミナ(とりあえず人の少ない所に移動しよ)
おじいさん「めんこい女子じゃのぅ」
少年「なんかパーティーでもあるのかな?」
わらやま「ほー、まるで華族みたいな格好だな」
タプ野 ミナ「ちょっと待って」
タプ野 ミナ「今、私以上に変な格好の人いなかった?」
タプ野 ミナ「まるで地蔵みたいな・・」
タプ野 ミナ(あの人はなんであんな格好を?)
タプ野 ミナ「・・・」
〇繁華な通り
「あ、あの!?」
わらやま「ん?」
わらやま「さっきすれ違った姉ちゃんじゃねぇか」
タプ野 ミナ「と、突然話しかけてすみません」
タプ野 ミナ「あ、あなたは」
タプ野 ミナ「どうしてそんな地蔵の格好で街を歩いているんですか?」
タプ野 ミナ「何かのイベントとかコンテストですか?」
わらやま「何だ何だ矢継ぎ早に」
タプ野 ミナ「ごめんなさい私ったら!急にこんな事聞いちゃって・・」
タプ野 ミナ「ごめんなさい、何でもないです。ではさようなら!!」
わらやま「待ちな・・」
わらやま(てっきりお仲間かと思ったが違うみてぇだな)
わらやま「アンタ訳ありのようだな」
わらやま「俺でよかったら話聞くぜ」
わらやま「ちょっとそこの立ち飲み屋入ろうや」
〇立ち飲み屋
タプ野 ミナ(勢いでついてきたはいいけど)
タプ野 ミナ(こんな格好の2人が揃ってるから、さっきから笑われてる・・)
タプ野 ミナ(でも・・)
タプ野 ミナ(この人は全く動じていない・・)
わらやま「自己紹介がまだだったな 俺はわらやま。あんたは?」
タプ野 ミナ「わ、私はミナといいます」
わらやま「ミナ、俺がなんでこんな地蔵みたいな格好をしているか聞いてきたな」
わらやま「結論から言うと好きでやってんだわ まぁ、趣味だわな」
タプ野 ミナ「しゅ、趣味ですか」
わらやま「ああ、でも別に地蔵だけじゃないぜ」
〇ヨーロッパの街並み
わらやま「時には探偵みたいな格好もするし」
〇劇場の舞台
わらやま「近藤勇みたいな格好だってする」
〇立ち飲み屋
わらやま「要は好きな格好をして過ごしてるってだけだな」
タプ野 ミナ(好きな格好・・)
わらやま「ミナ、アンタも奇天烈な格好して歩いてたから俺と同類だと思ったんだが」
わらやま「事情・・話してみなよ」
タプ野 ミナ「実は・・」
〇立ち飲み屋
タプ野 ミナ「・・というわけで」
わらやま「なるほどな、テーマを決めてファッションを用意する・・ねぇ」
わらやま「まぁ、面白そうだけどよ」
タプ野 ミナ「そうなんです、面白いんですよ!」
タプ野 ミナ「どうやったらテーマを表現しきれるかって事を考えてるだけでも楽しいし」
タプ野 ミナ「服飾の細部の刺繍とかもこだわり出すと止まらなくて」
わらやま「おうおう、わかったわかった。落ち着け」
わらやま「多分だがよ、アンタの旦那は」
わらやま「ミナ、お前さんが、『自分でファッションを決める』って事から」
わらやま「どんどん遠ざかっていってることを危惧したんじゃねぇかな」
タプ野 ミナ「えっ!?でも元々は・・」
わらやま「そりゃ最初はファッション自体に興味を持ってもらうために始めた事だろうがよ」
わらやま「旦那としてはそれはあくまでキッカケのつもりだったんだよ」
タプ野 ミナ「・・」
わらやま「ミナ、旦那はお前さんから」
わらやま「どんどんと『自分』ってのを奪っていってる」
わらやま「そう思ったんじゃないか」
タプ野 ミナ「たしかにそうかもしれません」
タプ野 ミナ「私、ベル夫さんの言葉も聞かずに飛び出してきてしまいましたし・・」
タプ野 ミナ「それに今思えば・・」
〇高層マンションの一室
タプ野 ベル夫「ミナ!!それは!?」
タプ野 ミナ「テーマは『渋谷』でしょ」
タプ野 ミナ「渋谷といえば『バスケットボールストリート』」
タプ野 ミナ「そこから着想を得て作ったの」
タプ野 ベル夫「へぇ、意外な所に着目したね、面白い・・。 すごく似合っ──」
タプ野 ミナ「次は?」
タプ野 ベル夫「へっ!?」
タプ野 ミナ「次のテーマよ!! 次はどんなやつ!?」
タプ野 ベル夫「あ、ああ、そうだな」
タプ野 ベル夫「次は『キュンとする服』ってのはどう?」
タプ野 ミナ「OK!!面白そう!! 早速考えるね!!」
〇高層マンションの一室
タプ野 ミナ(キュンとする服ってなると、ただ可愛いだけではダメ)
タプ野 ミナ(この服も悪くはないと思うけど、パンチが弱い)
タプ野 ミナ(ギャップなり、ストーリーなりを演出する必要がある)
タプ野 ベル夫「ミナ・・」
タプ野 ミナ(ピアスとか小物を上手く取り入れるってのはどうだろ!?)
タプ野 ベル夫「ミナ!!」
タプ野 ミナ「ん?呼んだ?」
タプ野 ベル夫「・・・」
タプ野 ミナ「ああ、次のテーマの服ね、もっと良い案が浮かびそうなの、楽しみに待ってて!!」
タプ野 ミナ「あ、ちょっとアイデアをメモしてくる」
タプ野 ベル夫「ミナ・・」
〇立ち飲み屋
タプ野 ミナ「ずっとテーマの事ばっかり考えて」
タプ野 ミナ「とにかく次のテーマを早く知ろうとしたり、上の空だったりしたかも」
わらやま「・・これはあくまで俺の意見だがよ」
わらやま「ファッションってのは自分を表現するもの」
わらやま「人生を豊かにするものだと思ってる」
わらやま「もっと自由でいいと思うし」
わらやま「きっと今のミナならそれを体現できるはずだ」
タプ野 ミナ「わらやまさん・・」
わらやま「こんなとこで俺なんかと話してないで」
わらやま「帰って旦那と話す事、あんだろ!?」
タプ野 ミナ「・・ええ」
タプ野 ミナ「仰る通りです!!私、行ってきます!!」
わらやま(頑張れよ)
〇黒
タプ野 ミナ「私が本当に着たい服」
タプ野 ミナ「それは」
〇高層マンションの一室
タプ野 ベル夫「・・・」
タプ野 ベル夫「ミナか・・」
タプ野 ベル夫「さっきは俺も悪かったよ、急に辞めるなんて言って」
タプ野 ベル夫「だから、考えたんだ。やっぱり続けようって。テーマは『ワンシ──」
「ベル夫さん」
タプ野 ベル夫「ミナ、その格好は!?」
タプ野 ミナ「そう、これはコンテストが始まる前によく着ていた服」
タプ野 ミナ「あなたとの初デートで買った」
タプ野 ミナ「思い出の服・・」
タプ野 ベル夫「ミナ・・覚えててくれたのか・・」
タプ野 ミナ「だったのに、ごめんなさい、私ったら」
タプ野 ミナ「すっかり、その事も忘れて惰性で服を着てた」
タプ野 ミナ「ベル夫さんはそんな私に、ファッションへの関心を思い出してもらうようコンテストを始めたのに」
タプ野 ミナ「今度はそのテーマの事ばっかり考えてしまって」
タプ野 ミナ「大事な事を忘れてしまっていたわ」
タプ野 ミナ「ごめんなさい」
タプ野 ベル夫「いいんだミナ、俺だって直接そう言えばいいだけだったのに」
タプ野 ベル夫「随分回りくどい事をしてしまった」
タプ野 ミナ「ううん」
タプ野 ミナ「でもね、本当にテーマにあわせた服を考えるのは楽しかったのよ」
タプ野 ミナ「だから、今度からは」
タプ野 ミナ「自分の気持ちに・・」
タプ野 ミナ「自分がこうありたいという心に素直に従って」
タプ野 ミナ「服を・・着るわ」
タプ野 ベル夫「ミナ・・」
タプ野 ミナ「ベル夫さん・・」
〇タワーマンション
〇高層マンションの一室
5年後・・・。
あの日、わらやまさんと出会った日から、私達夫婦の関係は大きく改善した。
子宝にも恵まれ、体型は変わったりしたけど、それでもその中で好きな服を着て日々を楽しく過ごしている。
あの日以来、わらやまさんは街で見ていない。
今も地蔵だったり探偵だったり、好きな服を着て過ごしているのかは分からない。
もし、わらやまさんに会えたら伝えたい。
あなたは私の手本だったと。
あなたのおかげで上手くいったと。
あなたは私にとっての神様──。
助言神だと。
創作ってどこに向かうんだろうなぁ…とか考えていた自分にぐさぐさ刺さる作品でした!
すごく真剣に読んでたのにソイヤのくだりで
本当に台無しで、本当に最高でした😂✨
このシリーズ大好きです!
読めてよかったです、助言神🙌✨✨
コンテストと普段の作品に、特に違いはないです。元々考えてた案やネタをコンテストのテーマに合わせるだけなので。意識するのは字数制限だけですね。
BOTは話の裏側の意味までは読みきれてないようですね、AIには裏の意味とかメタファーまでは読み取れないのかな笑
㊗️ランキング1位おめでとうございます❣️🎉😆👏👏👏👏👏これからも応援させて頂きますっ❣️😭