〇小さい会議室
北澤瑛士「じゃ、今日は早速ネット番組にも出てみよう！」
大野菜々美「ヤッター！」
松山紫苑「え？ ネット!?」
松山紫苑「あの、それって誰でも見られるサイトということですよね」
北澤瑛士「勿論！」
松山紫苑「あの・・・それはちょっと」
北澤瑛士「なんで？」
松山紫苑「・・・えっと」
大野菜々美「アイドルしてるの、友達に見られたら恥ずかしい？」
松山紫苑「いや、そうじゃないです」
大野菜々美「じゃあ何？」
北澤瑛士「ライブの宣伝にもなる。 アイドルならこれはマストだ」
松山紫苑「・・・・・・」
大野菜々美「なに？」
松山紫苑「あ、いや・・・別の方法は？」
大野菜々美「紫苑のせいで、折角のライブが中途半端になったら怒るよ？」
松山紫苑「う・・・で、出ます！」
北澤瑛士「じゃあ、堅くならないで良いから。 普段友達と話してるみたいにね」
大野菜々美「アイドルームチャンネルをご覧のみなさま、こーんにっちはぁ！」
　　そのとき、廊下の方で怒鳴り声が聞こえる。
北澤瑛士「ん？ 何だ？」
松山百合江「ちょっと失礼！」
松山紫苑「お、お母さん」
北澤瑛士「お母さま？」
松山百合江「紫苑！ お母さん何も聞いてないよ？」
松山紫苑「あの、いや、これは・・・」
松山紫苑「・・・ごめんなさい」
大野菜々美「何？ 何も悪いことしてないよ」
松山百合江「部外者は黙ってて」
大野菜々美「は？ 偉そうなババア！」
松山百合江「頭悪そうな女！」
松山百合江「こんなバカみたいな格好させて・・・うちの子は見世物じゃないんですよ？」
北澤瑛士「いや、えっと、あの・・・すいません」
大野菜々美「だから、なんで謝るの！」
松山百合江「紫苑、帰るわよ。 さっさと着替えて来なさい」
松山紫苑「・・・いや」
松山百合江「なに？」
大野菜々美「嫌だって！」
松山百合江「まさか、うちの子がそんなこと・・・」
松山紫苑「いや・・・嫌ですっ!!」
松山百合江「はあああ？ あんたが上手いこと言ってうちの娘たぶらかしたのね！」
北澤瑛士「いや、そんな・・・」
松山百合江「じゃあ、そっちの貴女が引きずり込んだの？」
大野菜々美「まさか！」
松山紫苑「ちがう！ 自分でなったの。 自分でここに来たの」
松山百合江「えっ？」
松山百合江「貴女、ずっと『大きくなったら、お父さんみたいな弁護士になって、お父さんの事務所継ぎたい』って言ってたじゃない？」
松山百合江「相談も無しにどうして？」
松山紫苑「・・・・・・」
大野菜々美「こんな理解無さそうな人に、相談なんて出来る訳ないじゃんね」
松山百合江「ちょっと、貴女よくそんなことズケズケ言えるわね」
松山百合江「アイドルになりたいとか夢物語言うくらいですもの、どうせ大した大学も行ってないおバカさんなんでしょ？」
大野菜々美「中卒ですが、なにか？」
松山百合江「まぁ！ 今時高校も出ていないの？」
松山紫苑「菜々美さんを悪く言わないで！」
松山百合江「こんな子と仲良くしてると、悪影響しか無いわ、帰りましょう」
松山紫苑「お願い、もうちょっとやらせて！」
松山百合江「大事な時期なのに」
大野菜々美「菜々美、勉強のことはよくわからなけど・・・勉強はいつでも出来る！」
大野菜々美「でもアイドルは今しかないの！」
大野菜々美「親に言われるがままに育って、自分の意思もあんまりなかった紫苑が、やっと自分からやりたいって言ってるの」
大野菜々美「それ尊重してあげるのが本当の親でしょ!? 子供にエゴ押し付けんな！」