ミツルの守護者

鶴見能真

No.1 NOWEM IDEA(脚本)

ミツルの守護者

鶴見能真

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ミツルの守護者
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〇白
  現代(いま)から十数年前・・・
キース「ミツル!」
ミツル「キース・・・」
キース「俺様は何があってもお前の味方だ。 ”ミツルの守護者”のリーダーとして、他の奴等を導いてやる」
ミツル「うん・・・、ありがとう」
キース「ミツル・・・」
「・・・」
キース「ミツル・・・」
  ・・・ある日、キースは”ミツルの声”が”聞こえなくなった”
キース「何でだよ・・・、勝手に”作って”おいて勝手に”黒歴史”として見捨てるのかよ!?」
キース「・・・」
  ──この時俺は誓った。必ずミツルに復讐すると

〇豪華なリビングダイニング
  3月中旬ある住居
  ──ガシャーン
  窓ガラスが破られる音がする。
ミツル「──何!?」
キース「よー”ミツルー”。久しぶりだなー?」
ミツル「誰よアンタ? てか今”ミツル”って言った?」
キース「そっかー。やっぱり”忘れちまった”んだな」
ミツル「質問に答えなさいよ! 私はアナタなんて知らないわ!?」
キース「あれ、おま、え、おん・・・な? だったか?」
ミツル「は?」
キース「まあいいか。この”魂(ソウル)”、間違い無く”ミツル”だ。間違う筈がねえ」
キース「・・・ん、なんか”半分”足りねえ様な」
ミツル「さっきから何言ってるのよ! 警察呼ぶわよ!?」
キース「・・・まあいいや。取り敢えず」
ミツル「話を聞きなさ──」
キース「──一度くたばれ」
  キースは突如出現させた黄色い小さな槍をミツルに向けて突き刺す
ミツル「きゃー!!」
  ガシッ──!
キース「あん?」
  しかしその槍はミツルに届く事無く受け止められる
キース「誰だ、お前?」
???「そりゃこっちの台詞やで。何やお前さん、人ん家の窓から土足で入りおってからに?」
ミツル「助かったわアナタ、コイツ警察に突き出したいところだけどちょっと気になる事あるから拘束して欲しいのだけど出来るかしら?」
???「なんやようわからんけど、そない言うなら了解や──」
キース「・・・」
???「うっ──!?」
  キースは謎の女に握られた槍を勢いよく引き抜く
キース「そりゃ、刃物握って引き抜かれたら手切れるだろ?」
ミツル「ちょっとアナタ、平気!?」
  軽い切り傷を負う彼女の掌からは血が滴っている
???「平気や。おかしいな、この手袋(グローブ)坊刃加工してはるのに何でや?」
キース「そんな”人間の技術”でどうにか出来る程”霊装”は安くねえぞ。 お前ら”人間”には理解できねえだろうがな」
???「れいそう? 何言うてんねや?」
ミツル「その槍、” gae buidhe(ゲイ・ボー)”?」
キース「そうだ」
???「何やそれ? ゲイの棒で下ネタか?」
ミツル「非常事態だから突っ込まないわよ。 ・・・簡単に言うと、傷付けた傷は二度と治らない”呪いの槍”よ」
???「よく知ってはるな」
ミツル「昔ね、ちょっとそう言うのにハマってた時期があるのよ。 そんなの架空の物だから冗談で言ったのだけど・・・」
キース「残念だがコイツは本物だ。本当はお前をいたぶるのに遣おうと思ってたが、まあ不可抗力だ」
ミツル「・・・アナタ、まだ闘(や)れる?」
???「ただの擦り傷や。かまへんで」
ミツル「そう・・・。なら、私に”身体(ちから)”を貸してくれる?」
???「ええで!」
キース「おいおいミツル、まさか俺様に勝てるつもりか? そいつの身体(ちから)を借りて?」
キース「ん、・・・身体(ちから)を借りる? そもそもソイツ誰だ、俺は知らないぞ」
ミツル?「うちはお前さんを知らへんで」

〇豪華なリビングダイニング
キース「──ハァ、ハァ。中々ヤルじゃねえか”ミツル”?」
ミツル「はぁ、はあ・・・。 こんな事なら普段から鍛えとくんやったな・・・」
  先程まで部屋には3人いたが今は2人になっている。
  1人はキース、もう1人は・・・
キース「こりゃ、分が悪いな・・・」
  キースの足元から魔法陣の様な物が出現し、そこから発せられる光と共に彼は消えてゆく
ミツル?「・・・」
  赤毛の女性はミツルともう1人の二人に分かれる
???「はー、疲れたわー。 てかさっきの何やったんや?」
ミツル「さあね。あっちは私の事知ってたみたいだけど・・・」
???「せやのうて、うちとミツルが合体した奴や」
???「びびったわー、力(ちから)貸せ言うた思ったらいきなり”あんな事”してうちん中入った思うたらミツルと合体してはるんやもん!」
ミツル「合体なんて言うんじゃないわよ子供じゃあるまいし」
ミツル「あれは、なんて言ったかしら? アドヴェニールだかアドベニーレか」
ミツル「まあ詳しいことは後で話すわ。 それよりも・・・」
ミツル「さっきの男、あの言い草だとまた来そうね。 そうと判ってればちゃんと対策してなきゃね」
???「でもどないするつもりなん?」
ミツル「さっきの男は霊装に魔法の様な物を使ってたわ。私はそんな物信じてないけど”そっち方面”に詳しい者を呼びましょう!」
ミツル「それから、・・・気は進まないけどアイツを知ってそうな奴にも心当たりがあるわ」
ミツル「取り敢えずその2人をここに集めましょう」

〇豪華なリビングダイニング
  しばらくして・・・
ミツル「来たわね」
ゼロ「はぁ。どうしてわたしが・・・」
ミツル「残るはアイツね」
???「たっだいまーミツル!」
???「おお、えらいカッコいいニーちゃんやないの」
ゼロ「どうも。・・・えーっとこちらは?」
ミツル「最近”私が作った”新しい守護者(ボディーガード)よ。名前は・・・とりあえず”みどり”とでも呼んでみましょうか?」
ゼロ「なるほど。わたしはゼロ。魔術師であり占い師もしている。彼氏は一般男性だ」
???「なんやニーさんやおもたらネーさんやったんかい」
ミツル「LGBTのGよ、コイツは」
みどり「そか! うちはみどり、よろしゅうな」
ミツル「そんな事より、”アイツは連れて来たの?”」
みどり「おう! 抜かりないで!!」
ミツル「遅いわよ! ”ミツル”!?」
ミツル「何なんだよ一体? えーっと、名前何だっけ姉ちゃん?」
ミツル「一緒でしょ! 私も”ミツル”!」
ミツル「あー、そっか・・・。まあ僕が名前呼ぶ事は無いだろうけど」
みどり「なんやお二人さん名前同じなんか!?」
「そうよ! はい・・・」
みどり「そかそかー。──そいや”ミツル”!」
「──何よ? ・・・はい?」
みどり「はははは! やっぱ二人共返事するんやな!」
「・・・ あなたねぇ」
みどり「ところでミツル?」
「──だから何よ鬱陶しいわね!? ・・・何でしょう?」
みどり「あ、ええっと。女の方のミツルや」
ミツル「・・・」
ミツル「なによ?」
みどり「いや、二人を呼び分けるにはどうすりゃええかとおもてな?」
ミツル「・・・好きにしなさい」
ミツル「・・・はい」
みどり「そか!」
ミツル「それよりミツル!」
ミツル「なんだよミツル? ・・・あ、名前呼ぶ時あったな」
ミツル「アンタ、コイツ知ってる?」
  写真には先程ミツルを襲った黒翼の男が写っている
ミツル「あー、コイツは・・・」
ミツル「──知ってんのね! 誰なのコイツ!?」
ミツル「・・・俺の黒歴史だ」
ミツル「は?」
ミツル「・・・」
  ミツルは詳細を説明する
ミツル「・・・つまり10年以上前に最後のつもりで作った当時全ての守護者の能力の上位互換の能力を持つ最強の守護者って事?」
ミツル「そうだね。最後に作って”零番目”って、・・・思い出すと吐き気がするよ。 ホント、あの頃はどうかしてたよ」
ミツル「で、アンタが”黒歴史”として無かった事にしていつの間にか忘れ去ってたアイツが、どうして私の命を狙っとると?」
ミツル「・・・うん」
ミツル「数年前に夢に出ていつかアナタに復讐するって言ってたのね。 それで”アナタと間違えて半身”の私を狙ったと」
ミツル「たぶん」
ミツル「まあ、そうと判れば・・・どうしましょう? アナタはどうしたい?」
ミツル「まあ、・・・話し合い出来ればしたい、うん」
ミツル「そ。・・・じゃあ次来たら捕らえる方向でいいわね」
ミツル「そっちは、それでいい、の?」
ミツル「私はアイツに何の思い入れも無いもの。私を狙ったケジメは後でつけるつもりだけど、まずはアナタのケジメをつけなさい」
ミツル「まあ、例え姉ちゃんでも、こんな事で迷惑かけたく無いから、ね。説得出来なかったら、また手伝って欲しい」
ミツル「あいよ。任せんしゃい」
ミツル「・・・で、これから何すればいいの?」
ミツル「取り敢えずアイツがいつ現れてもいい様に、場所を変えましょ。 どうせまた暴れるだろうし、ここだと後片付け大変だしね」

〇野外球場
  都内某所
ミツル「──うわー、ひっろいなー」
ミツル「”知り合い”に頼んで入れてもらったわ。 貸切だから人も入って来れんしね」
  外は少々冷えるのでミツルは着替えていた
ミツル「いざという時は”バリアー”も張れるから周囲の被害を考えずに済むわよ」
ミツル「こんな事ならキャッチボールの相手に誰か呼べば良かったなー」
ミツル「あたしがやっちゃるばい?」
ミツル「そうだなー。せっかく貸切なんだし何人か呼んで野球やろうかな?」
ミツル「そんな急に集まるかね?」
ミツル「まあとりあえず、グループチャットに書いとくか。 『オリコープ球場で野球したい。みんな来て』っと」
ミツル「集まるかしら?」
ミツル「今ここにいるのは僕と姉(ねえ)とみどり(グリーン)と、・・・」
ゼロ「・・・という訳で幼少時から周りは家族も友人も女ばかりで」
みどり「それである日ニイさんは男が好きって気付いたんやね!」
ゼロ「ああ、そうだ。近所に女しかおらず偶に結婚した人の旦那とか男性を見ると動悸がする事があったんだ。それで気付いた」
みどり「せやったんやなー。ミツルの事はどう思うんや?」
ゼロ「さっきも言った様に俺には彼がいる。 それにミツルは、タイプじゃないんだ、男も女も」
みどり「なるほどなー!」
ミツル「ゼロもいたわね」
ミツル「ゼロ・・・? まあいい。合わせて4人、──野球は9対9だが多少少なくても出来るだろうから。まあ返信待ちでいいか」
ミツル「そうね。──ところでミツル、ここに来るまでにゼロの話ちゃんと聞いたと?」
ミツル「──いや全然」
ミツル「あんたねぇ、・・・」
ミツル「僕は僕の出来る事をやるよ。魔法とか戦闘とか、餅は餅屋、プロに任せるよ。 出来ない所を補ってもらう為の”守護者”だよ」
ミツル「・・・いざという時自分の身は自分で守らんといけんちゃろうもん?」
  言っても無駄だと思うミツルは言葉を飲み込む
ミツル「・・・うん」

〇野外球場
  数分後
オスカー「来たぞ、ミツル」
ミツル「あ、オースカー! お久しぶりリーン!」
ミツル「──あら、来たのね? オオスカ」
オスカー「オスカーだろ、大須賀みたいに言うんじゃ無え! ふざけんな、ぶっコロすぞテメェ等!?」
ミツル「・・・済まぬ」
ミツル「言い難いのよアンタの名前、いいじゃない本名じゃなくてあたしの付けた名前だし?」
オスカー「・・・もういい、勝手にしろ」
ミツル「これで、何人だっけ? 僕、ミツル、ホモ、新人(いち、に、さんし)」
みどり「でなー、うち最近”作られた”ばかりやさかい、勝手が分からへんのや。せやから色々聞かせてくれへんか?」
ゼロ「私は作られて数年は経つが、こうしてミツルに会うのは初めてだ。 まあ、判る事は答えましょう」
ミツル「・・・でオスカーの5人か」
ミツル「流石に野球は出来ないわね。 出来るとしたら、ノックやキャッチボールくらい?」
オスカー「・・・まだ居るぞ」
「・・・え?」
ハナ「わーい!」
ユキ「ひろーい!」
カイ「暴れるぜー!」
  見るからに三つ子の姉妹の様だ。
ミツル「ろく、なな、はち?」
ミツル「何よ、アレ?」
オスカー「俺の娘(ガキ)だ」
ミツル「え・・・、アンタあんな大きな子供おったと?」
ミツル「・・・」
オスカー「ああ。会った事無かったか?」
ミツル「無いわよ」
ミツル「無いなぁ・・・。いくつだ?」
オスカー「小2だ」
ミツル「──大体7〜8歳ね」
ミツル「7〜8年前・・・。僕が十七〜八の頃か。 確かオスカーが僕の二個上だから・・・」
ミツル「19か20の時の子って事?」
オスカー「そうだな」
「うわー、・・・行き遅れた事にコンプレックス感じるー」
オスカー「気にするな。お前らその気になれば結婚相手”自分で作れる”だろ、”アイツら”や”俺”みたいにまた?」
みどり「さっき来たあのニイちゃんもアンさんの知り合いか?」
ゼロ「いや、私も初めて会う」
「タイミングが中々合わないんだよー」
オスカー「は?」
ミツル「それはそうと、子供なんて連れて来て大丈夫?」
ミツル「そうよ! ってミツル! そもそもあたし達命狙われてるって伝えて無かったじゃない!?」
ミツル「・・・うん、忘れてた」
  かくかくしかじかと、事の経緯をミツルはオスカーに説明する
オスカー「ふーん・・・。 事情は判った」
オスカー「──って、急にどうしやがったミツル共!?」
  青ざめた顔色のミツル2人にオスカーは驚く
ミツル「急に頭痛と吐き気が・・・」
ミツル「あたしも・・・うっぷ」
ミツル「なんだよミツル、悪阻(つわり)か?」
ミツル「・・・うるさいアスペが。空気読め」
ミツル「・・・そういう訳だ。僕たち少し休んで来るからキースが来たら・・・まあ、可能なら捕らえて、聞きたい事あるので」
ミツル「無理なら・・・そうだね。 ”生かして捕らえる”か”生かさず逃さず”にしてくれ。 詳しくは、あっちの2人に聞いといて」
オスカー「・・・ああ判った。また後でな」

〇野外球場
オスカー「あー、気分悪・・・。 ミツルの体調悪くなると俺らまで体調崩すのどうにかなんねぇのかよ?」
みどり「ああ、通りでさっきから気分悪かったんやな・・・。 てっきり天気が急に悪なったせいやと思ったわ」
ゼロ「・・・うっぷ」
ハナ「パパ・・・大丈夫?」
ユキ「お薬買って来ましょうかお父さん?」
カイ「しっかりしろよ親父! うっぷ・・・もらいゲロしちまった」
オスカー「・・・さっきの話をまとめると、 ミツルの”失敗作”が来るからミツルを守れって事か?」
みどり「・・・ミツルはそう言ってたな。 それにしても、こんな状態でミツルを守り切れるんか?」
ゼロ「相手は魔術と礼装を遣う。 判っているのはそれだけだ」
オスカー「・・・おい小僧、お前片手怪我して互角だって言ってたな」
みどり「ひどいわー、わては女の子やでー。 厳密には”ミツルと2人合体”で互角や」
オスカー「合体って・・・きっしょいな」
オスカー「まあいい。なら心配無いな。 その程度ならうちの娘(ガキ)共でも勝てる」
  いつの間にか体調も少し整い皆スッキリした表現になる
みどり「なんやそれー、おもろいなー!」
ゼロ「少し楽になったな、若干辛いが」
オスカー「・・・まあいい。 お前らもう帰っていいぞ、ミツルとガキ共のお守りは俺1人でも十分だ」
みどり「そうはいかへん! こちとら手切られた借りがあるさかいな!」
ゼロ「そうか、それは助かる。 私は外から見守る事にしますよ」
ハナ「パパー、お空が怖いよー」
ユキ「お天道様が不気味ですお父さん」
カイ「どうにかしやがれクソ親父!」
オスカー「なんだ、雨でも来そうか?」
キース「いんや、来たのは俺様だ」

〇白
???「やあ・・・、お帰り」
  キースが行った一度目のミツル襲撃から撤退した直後、彼は”桃色の天使”に出迎えられる
キース「はぁ、はぁ、・・・」
???「少し怪我してるね。何があったの?」
キース「いや。こっちはミツルを殺せればいいだけなんだが、そいつの用心棒が思ったよりやりやがるんだ」
???「”ミツルを殺す“・・・か。 物騒な世の中だね」
キース「このまま続けても、・・・良くて相打ち止まりだからな。 アイツに復讐してやりたいが折角拾った命捨てる程奴に価値無えからな」
???「それは・・・、妙だね。君は僕の守護者の中でも他を凌駕する圧倒的な能力(ちから)を持っているのに」
???「そんな君が良くて相打ちにしかならない相手がこの”地上”に存在するなんて。 それも”人間”なんだろう?」
キース「そうだな。だが奴と対面して気付いたが、アイツ、明らかにお前より格上だ」
???「どう言う事? 人間が僕より格上なの? それともその人は悪魔なの?」
キース「それも違うな。悪魔なら相応の魔力を感じるが奴からは感じられ無い。むしろそいつらを凌駕してやがる」
キース「アイツは恐らく、お前ら”地球の神”とは別次元の奴なんだよ。”アイツから生まれた俺”はともかく」
キース「格が違うんだ。お前らが関与すりゃ、・・・俺達は全滅する」
???「ますます解らないな。でもこのまま野放しにも出来ないよ」
キース「──おい、話聞いてたか!? お前はこの件に関わるな! アイツ自体は無害なんだ、ただ俺が個人的に恨んでるだけなんだよ」
???「僕は”人々を護る者”として脅威を払う責任がある。 でもそうだね、可能ならこっちの勢力に勧誘するのもいいだろう」
キース「ミツルの行動原理は”平和な日常を過ごす事”だ。自分達と無縁な”俺達の戦争”に加担しないだろうぜ」
キース「そもそもそういった脅威から遠ざけて守るのが俺達の使命だからな」
???「”俺達”って?」
キース「・・・」
???「何で言わないの? 僕の前では君達は”本音を話す”しか出来ない筈なのに?」
キース「・・・言っただろ、地球の神(お前)とは格が違うんだ。”俺達の事は他言無用”、ミツルとの契約であり”ミツルの命令は絶対”」
キース「っていう契約だ。お前が”奴隷に必ず真実を告げさせる能力”を持っていても、こればかりは話せねえ」
キース「つっても、そのせいで言いたくねえ事まで言っちまってミツルの事をお前に知られちまったかな」
???「奴隷だなんて人聞き悪いね。その”ミツル”の事を話したって事は、そのミツルは俺達に含まれないって事?」
キース「ミツルはあくまで一般人だ、俺達(他の守護者)には含まれねえ。俺もこんな”契約の穴”今まで知らなかったがな」
キース「恐らくお前に話せたのは、”地球の神如きの手に負えねぇ”っていう”ミツル”か”もっと上”からの警告だと思うぜ」
???「・・・」
キース「それでもお前は、この件に関わるのか?」
???「聞きたいんだけど、それって本当に”真実”?」
キース「いや、憶測だ。 ミツルがお前より格上なのかその上に何かいるのか俺は知らねえ」
キース「ただ”神候補・・・であるお前の能力より、ミツルの契約の方が強力”って事が事実だ」
???「僕より格上だなんて、それこそ父様達やYHWEくらいだよ」
???「あと、ずっと僕の事を地球の神って言ってるけど、厳密には”天使”だからね」
キース「知るかよそんな事、同じ様なもんだろ?」
???「いやいや、神様は主のみだよ、他が自称する事なんて死罪に値するから!」
キース「・・・もういい、わかったよ」
???「ならよし。それで、”敵”の事はどこまで話せるの?」
キース「知ってる事は全て。逆に話せねぇのは主にプライベートな部分だ」
???「なんだ、そんな事か。いいよプライベートなんて。 じゃあ話して」
キース「”敵”の数は知る限り”ミツルを除き”8匹。だがさっきはミツルの所に見た事のねえ奴がいた。そいつとミツルの2人だけだった」
キース「会ってみてミツルは女で”半分何かが”足りなく感じたが、俺が感じたその”違和感”が何なのか判らねえ」
キース「俺がミツルに捨てられ・・・」
  未練がある様に思われたくないので捨てられたとストレートに言いたくないキースは別の言い方を考える
キース「恨み始めて七年は経つか。今の奴の事は何も知らねえな」
???「その子の能力は?」
キース「本人はただの一般人だ。能力と言えば、”自分がこうなりたいと思った自分の別人格を創る”」
キース「”その人格を別の肉体に能力、使命、記憶と共に与える”。俺もその1人だ」
キース「”さらに人格を与えた者を肉体と共に、又は人格のみを己の肉体に戻してその能力を得る”」
キース「名を”神格回帰(アドベニーレ)”だったか”帰魂(アドヴェニーレ)”って呼んでた時期もあったな」
  それからしばらく二人はミツルの対策を話し合う
???「──とにかく、その子を放置する訳にはいかないから、これから接触するよ。 戦わずとも、仲間に引き入れるという手もあるからね」
キース「・・・考え直す気にならないのか?」
???「遅かれ早かれその子の能力(ちから)が本物なら、君と接触した時点で僕で無くても”他の天使3体”の勢力が接触する恐れがある」
???「その時彼らの軍門に降る可能性だってあるからね。早い者勝ちの椅子取りゲームだよ」
キース「・・・もういいや。最後に、成功率は2%だ。それでもやるんだな?」
???「今まで何度も勝ち目の無い戦いに挑んで修羅場を潜って来た。0より低い確率にも打ち勝ってきたんだ、2%もあれば高い方だよ」
キース「そうか(ここまでは想定内だな。上手く行き過ぎて怖えぜ。まるで”世界がお前を中心に動いてる”様だぜ)」
キース「(だがうまい話には裏がある。最後まで気は抜けねえな)」
???「さて、・・・”誰を”向かわせようか」

〇野外球場
キース「──って事で、お前ら如き俺様1人で十分だと思って来たんだが・・・」
キース「うちの”雇い主”がどうしてもって言うんで”2匹”付いてきた訳だ」
レッカ「騎士のレッカだ。 主の命によりこの”鳥人間”のサポートに来た」
フユキ「あたしはフユキちゃん!」
フユキ「”お兄ちゃん”の命令で仕方なく来てあげたわ! 感謝するのね”鳥畜生”! さて、あたしに”ブッコ”されたいのはどいつかしら」
オスカー「なんだ、この”サーカス軍団”は?」
みどり「皆けったいな格好しとんなー」
ゼロ「・・・そうだろうか? よく判らんな」
「お前の格好も”あっち側”だろ」
ゼロ「ああ、なるほど」
カイ「うおお! かっけー、騎士だぞ騎士!」
ユキ「妖精さんだー、可愛いー!」
ハナ「ぎゃーー! おばけー!」
ハナ「ううぅー。パパー・・・こわいよー」
オスカー「──ったく、メソメソすんなうっとうしい!?」
キース「・・・消去法からして、”おばけ”って俺様の事か? にしてもベソかくガキに鬱陶しいって・・・流行りの虐待か?」
ユキ「よしよしハナちゃん。 お姉ちゃんは妹のユキが守ってあげますからね」
カイ「ギャハハハハハ! ハナが鼻(ハナ)垂らしてマジウケる──ギャハハハ!」
ハナ「・・・ズズー!」
オスカー「──っておい! 人の白衣で鼻噛むんじゃねぇ!」
ハナ「──すん! ごめんなさい。お姉ちゃんだから泣かないし、後でお洗濯するから許してー」
オスカー「やめろ! もう洗濯機壊されるの懲り懲りなんだよ!?」
キース「ははは! ”オスカー”、股間に黄ばんだ粘液付けて”ナニヤって”たんだ?」
オスカー「──うっせーぞ鳥野郎! ゴミ臭えんだよ喋るな!」
キース「ああ!?」
  汚れたシャツをオスカーは脱ぎ捨てる
キース「まあいい。俺様の目的はミツル1人だ、他は全員始末しろ、ガキ共も含めてな!!」
レッカ「子供を殺めるのは気が進まないが、・・・貴様のサポートが主の命、仕方が無い」
フユキ「ヤッフー! 人間狩りじゃー!」
オスカー「やっと泣き止んだか。 さて娘(ガキ)共、ここは危ねぇからベンチまで下がってろ」
カイ「ずりーぞオヤジ! 自分達だけ楽しもうだなんて!?」
ユキ「わたしもパパのお手伝いしたいです!」
ハナ「あたしも! お父さんと妹達を守るんだから!」
みどり「おいおい、子供を戦わせるなんて正気か?」
オスカー「言っただろ、うちの娘(ガキ)はお前より強え。だいたい100倍だ」
ゼロ「・・・信じ難いな、ただの少女をあの”魔力”のバケモノと戦わせるなど」
オスカー「何だよバケモノって、ただのサーカス団だろ?」
みどり「魔力って何や?」
カイ「よし! 着替え終わった!」
ユキ「準備完了です!」
ハナ「みんなの役に立つんだから!」
みどり「なんやあの子ら、いつの間に着替えたんや?」
みどり「って、あんさんも着替えてるし!!」

〇野外球場
みどり「なんや、ああ言うんは呪文唱えながら変身する思うとったわ」
オスカー「そこはまだ設定固まって無えんだよ。 さてそれより、誰がどいつの相手をするか?」
みどり「真ん中の奴は譲れんで! 手の借りがあるしな!」
ゼロ「私は外でゆっくり観戦していたいのだが良いか?」
オスカー「・・・好きにしろ。 娘(ガキ)共はどうだ?」
カイ「おれ一番強いヤツー! でもどいつも弱そーだなー」
ユキ「私は妖精さんと遊びたいですー!」
ハナ「わ! 私はえーっと!?」
フユキ「ねーねークソ鳥野郎! 面倒だからアイツらもう消炭にしていい?」
キース「好きにしろ、俺様の目的はあの中にいねぇ」
レッカ「終わったら教えてくれ。 子供の亡骸は見たくない」
フユキ「オッケー!」
  敵のフユキが魔法陣を発生させると上空から隕石の如く巨大な火炎弾が降ってくる
フユキ「くたばれ人間共!」
みどり「あっついなー・・・。って何やあれ!?」
ゼロ「おい、なんてデタラメな”魔力”だこりゃ!? こんなの”序列(ランキング)千位”クラスだぞ!?」
オスカー「”序列”? まあそんな事より」
  オスカーは取り出したコインを上空の炎に向けて投げつける
オスカー「──邪魔すんじゃねぇよ!!」
  コインは天高く到達し炎を全て吸収する
「えーーーーー!?」
みどり「なんや凄いやないか!」
ゼロ「え、いや・・・あり得ないだろ。あんなの一つ存在するだけで我々”魔術士”は淘汰されるぞ」
オスカー「さてと、」
オスカー「カイ、コイツを真上にぶん投げろ」
カイ「おっしゃ任せろ!」
  ──ビュン!
  上空に投げられたコインは吸収した炎を一気に放出し爆発する
カイ「おおー! 綺麗だな、タマヤー!」
オスカー「・・・さて、”くじ引き”で相手は決まった事だし」
オスカー「始めるか」

〇野外球場
フユキ「ちょっとちょっと! こんなの聞いてないんですけどー、何が起きたの!?」
レッカ「まさかこれ程までとは、子供とて油断ならないだろうな。 燃えて来たぞ」
キース「こりゃ、俺等3人じゃ足りねぇかもな。 ・・・考えとかねぇと」
フユキ「わ、私は帰るわよ! こんな所で負けるなんて冗談じゃない!?」
カイ「──待てよ、逃さねぇぜ!」
フユキ「げっ、アンタはさっきの!?」
カイ「にしてもついてねーな、おれ。 ”いちばん弱そう”な奴に当たるなんて、ほんとクジ運最悪だぜ」
フユキ「・・・おいテメェ、今何つった? あたしが”一番弱そう”だと?」
ゼロ「少年、相手は魔法使いだ。 1人で平気か?」
カイ「おれは女子だぞおっさん! おっぱい見せたろかゴルァ!? ひとりで充分だ!!」
ゼロ「・・・また間違えてしまった。 まあだが、男の子なら将来が楽しみだったがな。性的に」
フユキ「このわたしが、あんなニンゲンやクソ鴉より”弱い”だなんて、ふざけんじゃねぇぞニンゲンのガキ風情が!!」
カイ「お! よくわかんねぇがやる気になったみたいだ! 遊んでやるぜブサイク!」
フユキ「あたしはナンバーワン最強美少女”天使”よ!」
レッカ「・・・」
ユキ「よろしくお願いします、お姉さん!」
ハナ「せ、精一杯! 頑張ります!」
レッカ「ああ・・・」
ユキ「ところでお姉さん、私達はどうして戦わなければいけないのでしょうか?」
レッカ「何?」
ハナ「・・・」
レッカ「わたしは主より、”カルマ”のサポートをしてくる様指令を受けた。 あの”黒い男”だ」
キース「・・・」
レッカ「指令を全うする為、妨げとなる者が居れば叩きのめす。女、子供であろうとも、それが我が騎士道であるのだ──」
みどり「おっしゃ! クジ当たったわ、ラッキー!」
オスカー「大人気ねぇな、”小僧”」
みどり「うちは女や! なんぼも言わすなや! それにクジ運やからしょうがないやん?」
キース「・・・見事に分断されちまったな。 やるじゃねぇか、”オスカー”」
オスカー「・・・」
みどり「あんさん呼ばれてるで?」
キース「シカトかてめぇ!?」
オスカー「・・・もしかして俺の事か?」
キース「いい度胸じゃねぇか、お前おれ様に手も足も出なかった事忘れた訳じゃ無えだろうな!?」
みどり「・・・?」
オスカー「・・・何言ってんだ? 全く記憶に無え。 お前誰だ?」

〇野外球場
フユキ「──塵になりやがれ!!」
  炎、光、氷、雷などのあらゆる魔法攻撃をフユキはカイに向け放つ
カイ「ハン! そんなのが当たるかよ!?」
  全ての攻撃を躱し空中にいるフユキに近付く為カイは地面を力強く蹴る
ゼロ「・・・いったいどうなっているんだ、これ程高次元の魔法をしかもあらゆる属性を扱えるとは、こんな化物が存在して良いのか?」
ゼロ「こんな奴が居たら霊力のバランスが崩壊して世界が滅びるぞ」
カイ「うおおおおおおおー!!」
フユキ「──ってか何で人間が当たり前みたいに空飛んで来るのよー!?」
ゼロ「・・・そんな奴相手に圧倒するなんて」
カイ「スーパーヒーローは空飛ぶだろうがー!!」
フユキ「知らないわよそんなのー!!」
カイ「うおー!」
  フユキの展開する防御魔法陣を意に介さず破壊しながらカイは彼女の腹部に渾身の拳を叩き込む
フユキ「──グェッホ!!」
  攻撃を喰らいフユキは地面に落ちる
ゼロ「・・・」
  その光景にゼロは言葉を失う。
ゼロ「私の出番は無かったな」
  ようやく絞り出した台詞はとても無気力な者だ
カイ「いよっしゃー! おれ様一番乗りー! さいきょー! ナンバーワン! 正義は勝ーつ!」

〇野外球場
ハナ「やー!」
  ハナは可愛らしいデザインの巨大なハンマーを振りかぶる
レッカ「ふん!」
  それに対しレッカは鞘に納めたままの剣を構えて受け止める
ハナ「んー!」
レッカ「──!?」
  予想以上の女児の力に押されるレッカは少し力を込めて踏ん張る
  二人の力はお互いに拮抗している様子だ。
ユキ「それー!」
  レッカの背後に回ったユキは彼女に向けて杖を振りかぶる
レッカ「──甘い!?」
  それに気付いたレッカはハナのハンマー攻撃を華麗に受け流し横っ飛びで数メートル離れる
ハナ「おわー!」
ユキ「きゃー!」
「おっとっと!!」
  相手を挟み撃ちにしていた姉妹は標的を見失い攻撃の手を止めようとするが勢い余ってお互いの真横スレスレを空振る形となる
レッカ「──む!?」
  何かを察知したレッカはここにいては危険と判断すると飛び上がり空中に回避るす
  大爆発が発生し煙が晴れるとそこにはグラウンドのほぼ全てを抉る巨大なクレーターが出来ている
ハナ「だだ、大丈夫、ユキ?」
ユキ「はい、なんとか。ハナちゃんは?」
ハナ「う、うん! わたしも大丈夫!」
レッカ「なかなかやるな、少女達よ」
  空に避けていたレッカはクレーターに降り立つ
レッカ「私も少し本気を出すとしよう。 久方振りに楽しめそうだ」
  レッカが剣を抜くと共に周囲に爆炎が広がると彼女は髪と衣装を変化させる
レッカ「騎鬼紅蓮皇舞炎魔大帝(デイブ・オブ・グレート)──。 この姿になるのも久しぶりだ」

〇野外球場
キース「・・・フユキのクソ餓鬼がやられたか」
  自慢の翼で空中に浮かぶキースは抉られた大地へ華麗に降り立つ
キース「しかもあの”赤毛”、こりゃまた街がいくつか滅びるな」
キース「ま、知ったこっちゃ無えけど」
みどり「ひゃー! 向こうの姉さんもさやけど、娘さんもとんでもあらへんなー、あんさん?」
オスカー「おい! いつまで掴んでやがる、降りやがれ!?」
  パワードスーツに身を包み空中に浮かぶオスカーの脚にみどりはしがみ付いている
みどり「硬い事言うなやー。おまえさんらと違ってうち飛べへんもーん」
  タイミングを見計いみどりはオスカーから手を離す
みどり「──いよっと!!」
キース「こりゃ、・・・援軍を呼んだ方がいいか?」
オスカー「──させるか!!」
  キースが携帯端末で何処かへ連絡を取ろうとすると、オスカーがそれを阻止する為に取り出した拳銃で端末を打ち抜く
キース「おい”オスカー”。お前”銃刀法違反”だぞ?」
オスカー「うるせぇよ! お前らはテロリストじゃねぇか!?」
キース「・・・確かに犯した犯罪は」
キース「ありゃ、日本語合ってるか?」
キース「まあいい。俺様は最初にミツルに復讐する為に窓ガラス割って・・・」
キース「あーもう一々説明すんの面倒臭え。 とにかく”器物損壊”に”不法侵入”、”殺人未遂”に”武器の所持”」
キース「”脅迫”・・・もしたっけな?」
みどり「うち、手切られたでー! ”傷害”も追加やー」
キース「おれ様バリバリの悪党だな!」
オスカー「よし──こいつ○(コロ)しても”正当防衛”だな、凶器持ってるし」
  キースに握られた槍をオスカーは指す
キース「やだなー、死にたくねー」
みどり「おいおい、ミツルから生け取り言われたやろー?」
オスカー「──知るか! 俺はアイツの”命”は保証してやるが言いなりになる気は無え!」
みどり「そかそか! うちはミツルに従うつもりやさかい、あんさん手出さんどいてなー」
オスカー「ああ、好きにしろ。 ○(シ)ぬんじゃ無えぞ」
みどり「ほい! 任せとき!」
  みどりは動きやすくする様に上着を脱ぎ捨てる
みどり「さあ、借りを返させてもらうさかいね!」

〇野外球場
  ──デイブ・オブ・グレート
ハナ「暑い・・・」
ユキ「溶けちゃいそうですー」
レッカ「少しやり過ぎたろうか? 力加減というのは難しいものだな・・・」
ハナ「ユキー、冷やしてよー」
ユキ「──そうでした! 暑ければ冷やせば良いのですよね!」
  そう言ってユキは杖を振ると地面から巨大な氷の結晶が出現しレッカの炎と相まって気温はみるみる下がってゆく
ハナ「涼しなったー」
ユキ「うん!」
レッカ「魔道士だったのか!?」
「え?」
レッカ「・・・まあいい。続きを始めるぞ!!」

〇野外球場

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