メタリアルストーリー

相賀マコト

エピソード50(脚本)

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〇草原
  リンド商会とニルたち一行は、途中で小さな町や村に寄って商会の用事をこなしながらさらに北上を続けていた。
  カラカール山脈を越えるときとは違い、ギアーズの出現もない。
  そして一行がティアルモーニを出てから数週間が経った頃、緩やかに続いていた道の遠くに、巨大な壁が現れた。

〇荒野の城壁
エルル「あっ! あれ、もしかして!」
エミリア「ああ、見えてきたな。 あれが帝国領南端の街、アドラだ」
  壁は遠くから見てわかるほど遠大で、その立派な造りからも街の繁栄がうかがえる。
アイリ「へえ、あれが・・・」
  エミリアは何度か帝国へ訪れたことがあったが、他の3人にとっては初めて見る光景だった。
エルル「ああ・・・、私、ついに帝国まで来ちゃったんですね! 今、すっごくワクワクしてますっ!」
  エルルは感激したように頷いている。
  コレクターや行商といった職業を除き、多くのものは街の中で働き一生を終える。
  また、メルザムのように巨大な都市となるとすべてのものが街の中で充足する。
  ゆえに街の外に出る機会がないのだ。
  だからこそ、エルルは山脈を越えて初めて見た巨大な都市に歓喜で震えていた。
エルル「すっごいおっきい・・・! 眼をこらしても端が見えないです!」
  最初は遠くに見えていた壁が近づいてくると、エルルは荷台から身を乗り出す勢いで、じっとアドラの壁を見上げ続けていた。

〇荒野の城壁
  アドラの門は行商隊用口と一般通行口で別れているようで、ニルたちはリンド商会とこの場で別れることになった。
  わざわざ一般通行口付近に止め、ニルたちを送ってくれたリンド商会の面々は、ニコニコと笑みを浮かべている。
アイリ「わざわざありがとう。じゃあ、私たちはここで」
ニル「リンドさん、ありがとうございました」
マデオ「いやいや、こちらこそ! これほど頼もしい護衛はありませんでしたよ」
マデオ「報酬はギルドに預けてありますので、こちらをお渡しになって受け取ってください」
  そう言ってマデオが渡してきたのは、クエスト完了の旨が記載された羊皮紙だ。
  アイリは「たしかに」とそれを受け取り、マデオと握手を交わした。
マデオ「本当に楽しい時を過ごさせていただきました!」
マデオ「みなさんとはぜひまた一緒に旅をしたいですな!」
アイリ「ええ。よい旅を」
マデオ「はい。皆さま方も、道中お気をつけて」
マデオ「・・・って、心配は無用ですかな?」
アイリ「・・・・・・」

〇荒野の城壁
  名残惜しそうに立ち去る行商隊を見送り、ニルたちも一般通行口に並ぶ。
  列は入り口から一列に長く伸び、ふたりの担当者がひとりずつ見ているようだ。
  コレクター以外の者は武器の持ち込みが禁止されているので、その影響もあるのだろう。
  雑談をしながらしばらく並んでいると、ニルの番がやってきた。
門兵「はい、次のかた~」
  門兵はニルをチラリと見てから、手元の紙に視線を下げる。
門兵「名前と職業、それから証明書をどうぞ」
ニル「名前はニル。職業はコレクターです」
  ニルは懐から特級コレクターのブローチを取り出すと、門兵に手渡す。
  門兵は先ほどと同じようにブローチを見てから、ぎょっと目を見開いた。
  それから何度もブローチとニルの顔を見比べてから、じろじろと全身を不審な目で観察する。
  もうひとりの門兵も加わり、ニルをくまなく見てからヒソヒソと会話をしている。
  それからふたりとも呆れたようにため息を吐いて、冷たい眼差しで言い切る。
門兵「いったいどこで盗んだんだ?」
ニル「え?」
  ニルは意味がわからず首を傾(かし)げる。
  その態度をどう思ったか門兵は顔を歪めた。
門兵「どこかで盗んだか、迂闊(うかつ)なコレクターが落としたのを拾ったんじゃないのか?」
ニル「いえ、ギルドでもらったものです。 証明書も俺の名前でありますよ」
門兵「名前なんて文字さえ読めれば偽名を使えるだろう」
  門兵は高圧的な態度でニルに詰め寄る。
  そのやり取りを見ていたアイリとエミリアはニルと門兵の間に、すっと割り込んだ。
  そしてニルと同じ、特級コレクターのブローチを差し出す。
アイリ「アイリ・バラーシュ。コレクターよ。 ニルの身元は私が証明するわ」
エミリア「私も証明しよう。上の者に会わせてくれ。 私のことを知っているだろう」
  門兵は訝(いぶか)しげにふたりを見てから、大きく目を見開き固まった。
門兵「あ、アイリさん・・・!?」
門兵「エ、エミリア=グレイス=ブッシュバウム様!?」
アイリ「・・・・・・」
エミリア「その名は・・・。まあいい」
  エミリアは過去に何度か評議長の護衛として使節団に加わり、帝国に来ていた。

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