バベルの黒猫

NekoiRina

声が出せないお客様(脚本)

バベルの黒猫

NekoiRina

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バベルの黒猫
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〇レトロ喫茶
  喫茶「バベルの黒猫」
  このレトロな喫茶店には今日もまた
  悩み多き客が引き寄せられる
  ちょっぴり不思議な
  喫茶「バベルの黒猫」

〇シックなカフェ
猫衣リナ「いらっしゃいませ!」
  猫衣家の母「リナ」
猫衣リナ「お一人様ですか?」
猫衣リナ「あ、お二人ですね?こんにちは」
子供「・・・」
母親「あの・・・ここに、よく当たる占い師がいるって聞いて」
猫衣リナ「あ〜・・・」
猫衣リナ「・・・では、奥に行きましょうか」
猫衣リナ「ケイちゃん!」
猫衣ケイコ「はーい!」
猫衣リナ「ちょっと店番お願いね」

〇占いの館
猫衣リナ「こちらへどうぞ」
母親「・・・」
猫衣リナ「私が占い師のネコイです」
猫衣リナ「こちらは相棒のタナカ」
タナカ「にゃー」
母親「でかっ!」
猫衣リナ「お名前を伺っても?」
母親「鶴滝直子です」
猫衣リナ「ツルタキナオコさん、ですね。お嬢さんのお名前は?」
子供「・・・」
母親「しゃべらないんです」
猫衣リナ「ご病気ですか?」
母親「いいえ」
母親「外に出たら急に声が出なくなるんです」
母親「家の中なら普通にしゃべるのに・・・」
母親「凛(リン)。ほら、挨拶なさい」
子供「・・・」
母親「どうしてしゃべらないの!周りの気がひきたくてわざとしてるって幼稚園の先生が言ってたわよ!?いい加減にしなさい!」
猫衣リナ「直子さん、落ち着いて!」
猫衣リナ「とりあえず占ってみましょう」

〇魔法陣2
猫衣リナ「占った結果」
猫衣リナ「「世界」逆位置のカードが出ました」
猫衣リナ「このカードには「挫折しやすい心」という意味があります」
猫衣リナ「直子さん。最近、何かに挫折しました?心当たりあります?」
母親「・・・」
猫衣リナ「直子さん?」
母親「私は何も挫折なんかしてないわよ!もういいです!凛、帰るわよ!」
猫衣リナ「え!?ちょっと!」
タナカ「・・・」

〇おしゃれな居間
猫衣リナ「って感じのお客様が来たの、今日」
猫衣ケイコ「へぇ〜、あの子しゃべれないんだ」
  猫衣家の長女「ケイコ」
猫衣リナ「それがね?おうちの中だと普通にしゃべるらしいの」
猫衣ケイコ「どういうこと?」
猫衣リナ「幼稚園に行くと、途端にひとこともしゃべらなくなるって。春に入園してから今まで誰とも話したことないらしいの」
猫衣シュン「誰とも!?それ、ヤバくない?」
猫衣シュン「だってもう6月だよ!?」
  猫衣家の次女「シュン」
猫衣リナ「先月、幼稚園の先生から指摘されて、お母さんも初めて知ったらしいの」
猫衣ケイコ「それ単なる人見知りじゃないの?」
猫衣シュン「もしくは言葉を覚えるのが遅いとか」
猫衣リナ「病院にも行ったらしいんだけど、異常は見られないって言われたみたい」
猫衣ケイコ「じゃあ、極度の恥ずかしがりやとか?」
猫衣リナ「直子さんはね「何かに取り憑かれてる」と思ったみたいで、それで私のところに来たらしいの」
猫衣ケイコ「え〜・・・」
猫衣ケイコ「外に出る時だけ声を奪う妖怪?」
猫衣シュン「意味不明過ぎる」
猫衣ケイコ「じゃあ、人見知りを発動させる妖怪」
猫衣シュン「妖怪からいったん離れようか」
猫衣シュン「タロット占いで出たのは「世界」の逆位置だったんでしょ?」
猫衣リナ「うん。それでね、直子さんに「最近、何かに挫折しました?」って聞いたら急に怒り出して、帰っちゃったの」
猫衣ケイコ「何か心当たりがあるのかな?」
猫衣シュン「とりあえずタナカに聞いてみようか」

〇時計
  猫衣家のアイドル「タナカ」
  タナカは、未来が視える不思議な猫なのだ
タナカ「にゃー」

〇おしゃれな居間
猫衣リナ「タナカ?」
猫衣リナ「凛ちゃんの未来を教えてくれる?」
タナカ「・・・」
タナカ「アイツ、ヤバイ」
猫衣リナ「え?どうして?」
タナカ「ニカゲツゴ、ブチギレ」
猫衣ケイコ「はあ?あの静かな女の子が?」
タナカ「カンシャク、アバレル」
猫衣リナ「凛ちゃんが癇癪を起こして暴れる?」
タナカ「ハハ、シヌ」
猫衣リナ「お母さん?直子さんが死ぬの!?」
「死ぬぅ〜!!?」

〇おしゃれな居間
猫衣リナ「どうしよう!」
猫衣リナ「やっぱ、凛ちゃんは何かに取り憑かれてるのかな?」
猫衣リナ「それで、凛ちゃんに取り憑いている悪霊がぶわぁって暴れて悪さしてうわあってなって直子さんを殺しちゃうのかも!」
猫衣シュン「母、落ち着いて?」
猫衣リナ「ケイちゃん!何とかしてよ!」
猫衣ケイコ「え、私?」
猫衣リナ「ほらぁ、パパがケイちゃんにプレゼントしてくれた法螺貝!あれ悪霊とか退散出来るんでしょう?」
猫衣ケイコ「え〜・・・あれそんなこと出来るの?」
  猫衣家の亡き父
  母以上の変わり者で
  その遺品は摩訶不思議なガラクタばかりだった

〇おしゃれな居間
猫衣ケイコ「母の頼みなら・・・やってみるよ!」
猫衣シュン「いや、あれ普通の法螺貝でしょ」
猫衣ケイコ「人の声を奪う妖怪、許せない!」
猫衣カリナ「妖怪じゃないわよ、それ」
  猫衣家の末っ子「カリナ」
  医者を目指す小学5年生
タナカ「カリナ、マトモ」
猫衣カリナ「4歳の女児」
猫衣カリナ「入園してから二ヶ月間、先生や他の児童と会話無し」
猫衣カリナ「家族とは普通に会話していて、知的な遅れは目立たない。神経診察や身体診察でも異常は見られなかった」
猫衣カリナ「これは」
猫衣カリナ「選択性緘黙かもね」
猫衣リナ「せんたくせいかんもく?」

〇モヤモヤ
猫衣カリナ「選択性緘黙」
猫衣カリナ「普通にしゃべる能力はあるのに、特定の場面や人に対してのみ話せなくなる症状のことよ」
猫衣シュン「そんな病気あるんだ」
猫衣カリナ「凛ちゃんの場合、それが「幼稚園」という場所なんじゃないかしら」
猫衣カリナ「原因は研究中とされているけれど、元々不安になりやすい気質に、心理的・社会的な要因が重なって症状が出るみたい」
猫衣ケイコ「心理的・社会的要因か」
猫衣カリナ「他の子に迷惑をかけるようなものではないから、先生も深刻に捉えないことが多いみたいだけど」
猫衣カリナ「自分の気持ちが相手に伝わらないもどかしさは」
猫衣カリナ「相当なフラストレーションになる」
猫衣リナ「それが2ヶ月後の「凛ちゃんブチギレ母殺害事件」に繋がるのかな」
猫衣カリナ「その可能性は高いでしょうね」

〇幼稚園
猫衣シュン「とりあえず「直子さんが何に挫折したのか調べる」ってことになって、幼稚園に来てみたけど」
猫衣シュン「本当にこの幼稚園なの?」
猫衣ケイコ「うん、あの制服はここで間違いない」
猫衣ケイコ「あ!出て来た!あれが凛ちゃんよ!」

〇幼稚園
幼稚園の先生「凛ちゃん、さようなら!」
子供「・・・」
幼稚園の先生「ったく、今日もひとこともしゃべらない。本当に陰気臭くて感じ悪い子ね!」
子供「・・・」

〇一戸建て
子供「ただいま」
猫衣ケイコ「しゃべった!」
子供「だれ?」
子供「喫茶店のお姉さん?」
猫衣ケイコ「こ!こんにちは!偶然このあたりを歩いてたら凛ちゃんを見かけて!今日はひとり?」
子供「うん」
猫衣シュン「あ、えーっと、お母さんが帰って来るまで、一緒に遊ぶ?」
子供「じゃあ・・・おうち入る?」
猫衣ケイコ「え、いいの?」

〇黒
「な・・・何よ、この部屋・・・」

〇占いの館
猫衣リナ「何度もご足労頂きすみません」
母親「家にまで来るなんて非常識よ!」
猫衣リナ「非常識はどちらですか!」
母親「!!」
猫衣リナ「うちの娘たちが、凛ちゃんのお部屋にお邪魔したそうです」
母親「あの子が部屋に人を?まさか!」
猫衣リナ「そうですね。家には上げてくれたけど、部屋を見せることは頑なに拒否した」
猫衣リナ「それが気になって、娘たちは凛ちゃんの部屋を探したそうです」
母親「・・・!」
猫衣リナ「中々見付からない凛ちゃんの部屋」
猫衣リナ「凛ちゃんの部屋は」

〇地下室
  地下にあった
  そこはまるで牢獄のようだった。と、娘たちが教えてくれました
母親「・・・」
猫衣リナ「貴方が挫折したもの。それは」
猫衣リナ「「子育て」だったんですね」
母親「あ・・・」
母親「あああああ!」

〇おしゃれな居間
猫衣リナ「はあ。無事に2ヶ月過ぎたね」
猫衣シュン「妖怪じゃなくて良かった!」
猫衣ケイコ「法螺貝の出番がなくて良かった!」
猫衣カリナ「なに呑気なこと言ってるのよ」
猫衣カリナ「あの子まだしゃべらないんでしょ?選択性緘黙の治療は時間かかるわよ?」
猫衣シュン「そうなの?」
猫衣カリナ「原因は親のネグレクト。育児放棄。なのにあの子は、そんな母親を守るために、言葉を発しなかったのね」
猫衣シュン「お友達に色々聞かれて、でも余計なことを言うとお母さんが先生に怒られるかもと思って黙ってるうちに」
猫衣リナ「何も話せなくなった」
猫衣カリナ「今はどんな状態?」
猫衣リナ「ご主人が長期の海外出張だったみたいで、あれからすぐに帰って来てくれたらしいよ」
タナカ「チチオヤ、ムセキニン」
猫衣リナ「でもお仕事だよ?家族の為に働いてるんだもの、仕方無いよ」
タナカ「カイガイ、ウソ」
猫衣シュン「え、まじで?」
タナカ「ニホンデ、ウワキ」
猫衣シュン「はあ!?何それ最低!父親も一緒に撃ってやれば良かった!」
猫衣リナ「撃つ?」
猫衣シュン「あ、いやこっちの話」
猫衣シュン「そうそう、直子さんと凛ちゃんはそれぞれ、専門のクリニックで治療してもらってるみたいだよ」
猫衣シュン「もうあの地下の部屋が使われることはない」
猫衣リナ「そっか、良かったあ~」
猫衣ケイコ「・・・」
猫衣リナ「ケイちゃん?」
猫衣ケイコ「あ、ううん!凛ちゃんの可愛い声が、沢山聞けるようになるといいね」
猫衣リナ「それはきっと大丈夫!」
猫衣リナ「だってほら、さっき占ってみると」
猫衣リナ「出たカードは「世界」の正位置!」
猫衣カリナ「「全てが上手くまわりだす」だね」

〇地下室
猫衣ケイコ「間違っても言えない」
猫衣ケイコ「地下の部屋を見てブチ切れたシュンが」
猫衣ケイコ「マシンガンをぶっ放して部屋を滅茶苦茶にした・・・なんて」

〇時計
  猫衣家の次女「シュン」
  趣味はバイオリン
  だが、そのバイオリンは亡き父が改造した
  マシンガン内蔵型なのだ!
猫衣ケイコ「どうしてそんなバカなもの造るのよ!」
猫衣ケイコ「あの子に武器を持たせたらダメー!」
タナカ「シュン、ヤバイ」

〇レトロ喫茶
  喫茶「バベルの黒猫」
  このレトロな喫茶店には今日もまた
  悩み多き客が引き寄せられる
  ちょっぴり不思議な
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コメント

  • 猫衣家の各キャラが、個性が際立っていてそれぞれ魅力的ですね!そして何と言ってもタナカちゃん、ストーリー的にも愛らしさ的にも尊いですね

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