エピローグ(脚本)
〇学校の昇降口
四月六日、火曜日。
それは進級を果たした、始業式。
何度も繰り返した悪夢のような出来事は昨日を乗り越えてもなお、脱したという実感があまり湧かなかった。
でも学校が始まってしまうと、そういう夢のような幻の空間が恋しく・・・・・・なるわけでないが縁遠いようで。
田沼隼人「お、おはようございます、二階堂先輩」
二階堂玲央「あ、隼人。はよーっす。あーあ、春休みも終わって始まっちゃうなぁ」
二階堂玲央「早いよな、もっと謳歌したかったのに」
田沼隼人「あはは・・・・・・」
悪意はない、にはわかっている。さすがにこの発言には苦笑いを浮かべるのが限界で。
先輩も含めて、僕以外は何度も同じ日を繰り返したなんて記憶は持ち合わせてはいないのだろう。
貴重な体験をした、と言えば聞こえはいいが・・・・・・もう二度と、あの摩訶不思議な出来事には自ら志願したいとは思わない。
でも少しだけ、前に進む勇気を貰ったことは否定したくはない、かな。
二階堂玲央「隼人、今日の放課後は予定あったりするか? ちょいと遠いがショッピングモール内に新しくカフェが出来たらしくて気になって」
田沼隼人「だ、大丈夫です。お供、しますね」
二階堂玲央「ははは、お供って」
二階堂玲央「おっし。んじゃ、放課後にまたな」
田沼隼人「はいっ・・・・・・!」
にこやかに手を振る先輩を見送る。
そして、ふと捻くれた神様に問い掛ける。
田沼隼人(僕は、田沼隼人という人間は彼の隣に相応しい人間になれましたか)
・・・・・・と。
その回答はきっと── 。
Fin