地縛霊を成仏させる100の方法

澤井 軽野

8月のメリークリスマス(脚本)

地縛霊を成仏させる100の方法

澤井 軽野

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〇停車した車内
  俺には姉がいた
  ⋯らしい
相木 木業(そうぎ もくぎょう)「道が悪いのぅ」
相木 樹逗(そうぎ じゅず)「酔っちゃうよ~」
  らしい、というのは
  一年前までその存在を知らなかったからで
相木 泉子(そうぎ せんこ)「もう着くから」
  知った時には、半分しか血の繋がっていない姉は
  ──すでに亡くなっていたからである
相木 木業(そうぎ もくぎょう)「経介、静かだな」
相木 経介(そうぎ きょうすけ)「⋯」
相木 経介(そうぎ きょうすけ)「⋯ぎぼぢわ"り"ぃ"」

〇田園風景
相木 泉子(そうぎ せんこ)「もう着くから我慢してーっ」

〇平屋の一戸建て
相木 経介(そうぎ きょうすけ)「ボロっ」
相木 経介(そうぎ きょうすけ)「名家と聞いたが⋯?」
相木 経介(そうぎ きょうすけ)「ホントに住めるのかよ」
相木 泉子(そうぎ せんこ)「車降りた途端元気になっちゃって」
相木 木業(そうぎ もくぎょう)「こう見えて結構広いんだぞ」
相木 樹逗(そうぎ じゅず)「やったー!ボロ家だ!」
相木 木業(そうぎ もくぎょう)「だから言うほどボロくないって⋯」
  姉は生前
  婆さんと二人でこの家に住んでたらしい
相木 経介(そうぎ きょうすけ)「⋯正直、気味悪いんだよな」

〇広い玄関
相木 樹逗(そうぎ じゅず)「アハハ、カビ臭ーい」
  姉が亡くなり、後に婆さんも亡くなり
  この家は親父が相続する事になり
  俺達は一家で引っ越して来たのだ
相木 経介(そうぎ きょうすけ)「⋯」

〇古民家の居間
相木 樹逗(そうぎ じゅず)「湿っぽーい」
相木 経介(そうぎ きょうすけ)(悪寒が⋯)

〇広い畳部屋
相木 木業(そうぎ もくぎょう)「一休みしよう」
相木 経介(そうぎ きょうすけ)「う!?」
相木 木業(そうぎ もくぎょう)「どした?」
相木 経介(そうぎ きょうすけ)「寒気が⋯」
相木 泉子(そうぎ せんこ)「車酔い治ってなかった?」
相木 経介(そうぎ きょうすけ)「違う!」
相木 経介(そうぎ きょうすけ)「何か嫌な気配が⋯!」
相木 樹逗(そうぎ じゅず)「気配?」
相木 樹逗(そうぎ じゅず)「動物かな!?」
相木 経介(そうぎ きょうすけ)「いや」
相木 経介(そうぎ きょうすけ)「もっと⋯何か妙な⋯!」
???「あの~」
???「それ、私かも⋯」
相木 経介(そうぎ きょうすけ)「は!?」
幽子(ゆうこ)「⋯エヘヘ」
「ギャーーッ!」
相木 木業(そうぎ もくぎょう)「⋯?」
相木 木業(そうぎ もくぎょう)「幽子⋯?」
幽子(ゆうこ)「⋯久しぶり、父さん」
相木 経介(そうぎ きょうすけ)「は!?」

〇平屋の一戸建て
相木 経介(そうぎ きょうすけ)「はぁぁぁあ!?」

〇広い畳部屋
幽子(ゆうこ)「⋯というわけで」
幽子(ゆうこ)「死んじゃって気付いたらここにいたんだ」
幽子(ゆうこ)「ゴメンね、まだ居て」
相木 木業(そうぎ もくぎょう)「⋯いや、嬉しいよ」
相木 木業(そうぎ もくぎょう)「またお前に会えるなんて」
相木 泉子(そうぎ せんこ)「ええ」
相木 泉子(そうぎ せんこ)「生前はお会いできなかったけど」
相木 泉子(そうぎ せんこ)「お目にかかれて嬉しいわ」
相木 樹逗(そうぎ じゅず)「居ちゃったものはしょーがないよねっ!」
幽子(ゆうこ)「あはは、恐縮です⋯」
相木 経介(そうぎ きょうすけ)(ヤバいヤバいヤバい)
相木 経介(そうぎ きょうすけ)(何みんな怪奇現象と談笑してんだよ⋯!)
幽子(ゆうこ)「父さんの新しい奥さんと」
幽子(ゆうこ)「妹ちゃん⋯になるのかな?」
相木 樹逗(そうぎ じゅず)「だよねだよね」
相木 樹逗(そうぎ じゅず)「もしかしなくても、私のお姉ちゃんだよねっ」
相木 経介(そうぎ きょうすけ)(残留思念だ!磁気異常だ!)
幽子(ゆうこ)「で、そっちのキミは⋯」
相木 経介(そうぎ きょうすけ)「ヒッ」
相木 経介(そうぎ きょうすけ)「こっち見んなぁ!」
相木 経介(そうぎ きょうすけ)「亡霊!悪霊!物の怪めッ!」
相木 泉子(そうぎ せんこ)「経介、何て事を」
相木 樹逗(そうぎ じゅず)「黙れバカ兄!」
相木 樹逗(そうぎ じゅず)「お前も霊にしてやろうか!?」
相木 木業(そうぎ もくぎょう)「でもこれ、どういう状態⋯?」
幽子(ゆうこ)「ん~、家から出れないから⋯」
幽子(ゆうこ)「地縛霊、かな」
相木 樹逗(そうぎ じゅず)「じゃあずっとここに居てくれるんだね!」
相木 経介(そうぎ きょうすけ)「じ、冗談じゃない」
相木 経介(そうぎ きょうすけ)「こんな家居られるか!」

〇平屋の一戸建て

〇田園風景
相木 経介(そうぎ きょうすけ)「ハァハァ」
相木 経介(そうぎ きょうすけ)「悪寒が消えない⋯!」
幽子(ゆうこ)「バァ」
相木 経介(そうぎ きょうすけ)「うわー!?」
相木 経介(そうぎ きょうすけ)「ついて来てる!?」
相木 経介(そうぎ きょうすけ)「地縛霊じゃないのかよ」
幽子(ゆうこ)「地縛霊なんだけど」
幽子(ゆうこ)「あの家に属する物になら憑いていけるみたい」
幽子(ゆうこ)「いや~大発見だよ」
相木 経介(そうぎ きょうすけ)「憑いてくんなぁぁ」

〇ボロい駄菓子屋(看板無し)
相木 経介(そうぎ きょうすけ)「ハァハァ」
幽子(ゆうこ)「随分走ったねぇ~」
相木 経介(そうぎ きょうすけ)(悪寒が止まらねぇ⋯)
相木 経介(そうぎ きょうすけ)(頼む、どこか行ってくれッ⋯!)
幽子(ゆうこ)「外には出られたけど」
幽子(ゆうこ)「やっぱキミからは離れられないみたい」
幽子(ゆうこ)「家を出るチャンスと思ったのに」
幽子(ゆうこ)「あ~残念」
相木 経介(そうぎ きょうすけ)(ホント残念だよっ)
幽子(ゆうこ)「あ!和菓子屋さん!」
幽子(ゆうこ)「ここのお饅頭、ずっと食べたかったんだ!」
相木 経介(そうぎ きょうすけ)「おい、それどこから⋯」
幽子(ゆうこ)「あ~ん」
相木 経介(そうぎ きょうすけ)「おい、何食ってんだ」
幽子(ゆうこ)「お」
幽子(ゆうこ)「おいしぃ~!」
幽子(ゆうこ)「ハッ」
幽子(ゆうこ)「ちょっと成仏しかけた」
相木 経介(そうぎ きょうすけ)「そのまましとけや!」

〇黒
  姉は父と先妻の子で
  後妻の子である俺達とは半分しか血が繋がっていない
  元々身分違いだった父は
  先妻の母
  つまり姉の祖母に追い出され
  先妻と幼い姉と別れた
  先妻はそれから数年で亡くなった
  父は姉を引き取る申し出をしたが、姉は
姉「ここでお婆ちゃんと暮らす」
  姉は生れつき身体が弱く
  空気の綺麗な田舎でないと体調を崩す恐れもあったため
  親父は姉を引き取るのを断念した⋯らしい

〇田舎のバス停
幽子(ゆうこ)「爽やかぁぁあ!」
幽子(ゆうこ)「ハッ」
幽子(ゆうこ)「危ない危ない」
相木 経介(そうぎ きょうすけ)(何で地縛霊と2人乗りして)
相木 経介(そうぎ きょうすけ)(饅頭とラムネおごってんだ俺は)
幽子(ゆうこ)「ゴメンね、お金出してもらって」
幽子(ゆうこ)「でも不思議だね~」
幽子(ゆうこ)「初めて会っても、やっぱ他人じゃない感じがするね」
相木 経介(そうぎ きょうすけ)「⋯そっすか」
  姉の存在と、亡くなったという報せを同時に聞かされた時
幽子(ゆうこ)「お、大分慣れてきた?」
相木 経介(そうぎ きょうすけ)「慣れてはないけど呆れたというか⋯」
  正直俺は
  『面倒だから、生前会わずに済んでよかった』
  ──と思った

〇田園風景
幽子(ゆうこ)「この風を切る感じ、久しぶりだなぁ~」
相木 経介(そうぎ きょうすけ)(婆さんも親父も)
相木 経介(そうぎ きょうすけ)(勝手すぎるだろと思う⋯けど)
  姉の存在を面倒事のようにしか思えなかった俺も
  同罪なのだと、思う
幽子(ゆうこ)「⋯」
幽子(ゆうこ)「あのね」
幽子(ゆうこ)「私、あの家気に入ってるんだ」
相木 経介(そうぎ きょうすけ)「⋯だろうよ」
相木 経介(そうぎ きょうすけ)「地縛霊になるくらいだしな」
幽子(ゆうこ)「やっぱり私には、母さんと暮らした家だしさ」
幽子(ゆうこ)「あ、母さんていうのは君達のお母さんじゃなくて、私の母ね」
相木 経介(そうぎ きょうすけ)「ああ」
幽子(ゆうこ)「お婆ちゃんと暮らしたかったのも本当なんだ」
幽子(ゆうこ)「⋯だから父さんの事、悪く思わないでほしいな」
相木 経介(そうぎ きょうすけ)「⋯」
相木 経介(そうぎ きょうすけ)「俺が口出す事じゃないし」
相木 経介(そうぎ きょうすけ)「あんたがいいなら俺も別に⋯」
幽子(ゆうこ)「さすが私の弟!優しいじゃん~」
幽子(ゆうこ)「⋯っと」
幽子(ゆうこ)「ごめん、急に姉風吹かせちゃった」
相木 経介(そうぎ きょうすけ)「⋯」
相木 経介(そうぎ きょうすけ)(⋯やっぱ生前会わなくて良かった)
相木 経介(そうぎ きょうすけ)(どんな顔すればいいかわかんねぇ⋯!)

〇平屋の一戸建て

〇広い畳部屋
相木 木業(そうぎ もくぎょう)「おぉ、戻ったか!」
相木 木業(そうぎ もくぎょう)「心配したぞ」
幽子(ゆうこ)「ゴメンね、急に飛び出しちゃって」
相木 樹逗(そうぎ じゅず)「幽ちゃんはいいんだよ~」
相木 樹逗(そうぎ じゅず)「バカ兄!幽ちゃんを連れてくな!」
相木 樹逗(そうぎ じゅず)「出てくなら一人で出てけ」
相木 経介(そうぎ きょうすけ)「コイツが勝手に憑いてきたんだが!?」
幽子(ゆうこ)「アハハ、仲いいねぇ~」
相木 泉子(そうぎ せんこ)「貴方達も大分打ち解けたみたいね」
相木 経介(そうぎ きょうすけ)「いや、そ⋯」
幽子(ゆうこ)「ハイっ」
相木 経介(そうぎ きょうすけ)(⋯多分悪いモノじゃないのは、まぁわかった)
相木 経介(そうぎ きょうすけ)(でも、悪寒がやべーんだよ)
相木 経介(そうぎ きょうすけ)(正直、恐怖感は消えそうにない⋯)
幽子(ゆうこ)「⋯」

〇広い畳部屋
父「経介、ちょっと」

〇古民家の居間
相木 経介(そうぎ きょうすけ)「⋯何?」
相木 木業(そうぎ もくぎょう)「その⋯」
相木 木業(そうぎ もくぎょう)「⋯すまん」
相木 経介(そうぎ きょうすけ)「⋯何がだよ」
相木 経介(そうぎ きょうすけ)「謝る事があるとしたら」
相木 経介(そうぎ きょうすけ)「俺にじゃないんじゃねぇの?」
相木 木業(そうぎ もくぎょう)「⋯」
相木 樹逗(そうぎ じゅず)「ちょっと来てー!」

〇広い畳部屋
相木 木業(そうぎ もくぎょう)「どうした!?」
相木 樹逗(そうぎ じゅず)「ようこそ幽ちゃんステージへ」
相木 樹逗(そうぎ じゅず)「幽ちゃん、どうぞ!」

〇広い畳部屋
幽子(ゆうこ)「聴いてください」
幽子(ゆうこ)「『天国へはまだ早い』」
  恋もまだ知らないけれど
  私の天国見つけたいの
  南無妙法蓮華経~
相木 経介(そうぎ きょうすけ)「何だその歌!?」
相木 経介(そうぎ きょうすけ)(こりゃ成仏なんてする気配ゼロだな⋯)

〇平屋の一戸建て

〇古風な和室(小物無し)
幽子(ゆうこ)「経介くん、ちょっと」
相木 経介(そうぎ きょうすけ)「その出方やめろ」
幽子(ゆうこ)「相談したい事が」
相木 経介(そうぎ きょうすけ)「⋯?」
幽子(ゆうこ)「私、成仏できないんだけど」
相木 経介(そうぎ きょうすけ)「見りゃわかる」
幽子(ゆうこ)「このままずっと地上に残ってると」
幽子(ゆうこ)「⋯本当に悪霊になっちゃう気がするんだ」
相木 経介(そうぎ きょうすけ)「な⋯!?」
幽子(ゆうこ)「だから早く成仏できるように」
幽子(ゆうこ)「手伝ってほしいの」
相木 経介(そうぎ きょうすけ)「て、手伝うったって」
相木 経介(そうぎ きょうすけ)「何すりゃいいんだ⋯?」
相木 経介(そうぎ きょうすけ)「坊さんにでも来てもらった方がいいんじゃ」
幽子(ゆうこ)「お葬式も四十九日もしてもらったけど」
幽子(ゆうこ)「ダメだったから」
相木 経介(そうぎ きょうすけ)「坊さんでも無理なのに」
相木 経介(そうぎ きょうすけ)「俺に出来る事なんかあるのか⋯?」
幽子(ゆうこ)「わかんない⋯」
幽子(ゆうこ)「でも、キミなら」
幽子(ゆうこ)「何か見つけてくれそうな気がして⋯」
相木 経介(そうぎ きょうすけ)「⋯」
相木 経介(そうぎ きょうすけ)「地縛霊って」
相木 経介(そうぎ きょうすけ)「未練があるからなるんだよな⋯?」
幽子(ゆうこ)「多分⋯」
相木 経介(そうぎ きょうすけ)「なら、何かやり残した事とか」
相木 経介(そうぎ きょうすけ)「やりたい事とか無いのかよ?」
幽子(ゆうこ)「んー⋯」
幽子(ゆうこ)「あ!」
幽子(ゆうこ)「いや~でもなぁ~」
相木 経介(そうぎ きょうすけ)「何だ!?何でも言ってみろ」
相木 経介(そうぎ きょうすけ)「出来る限りの事はしてやる」
幽子(ゆうこ)「⋯じゃあ」
幽子(ゆうこ)「クリスマスがしたいっ!」
相木 経介(そうぎ きょうすけ)「⋯あの」
相木 経介(そうぎ きょうすけ)「今、真夏⋯」
幽子(ゆうこ)「何でもって言った~!」
相木 経介(そうぎ きょうすけ)「いやいやいや」
相木 経介(そうぎ きょうすけ)「そんな明後日の方向から来ると思わんだろ!?」
幽子(ゆうこ)「でも冬まで待つわけにもいかないでしょ」
幽子(ゆうこ)「あ、ケーキ屋さんあと20分で閉店だよ~」
相木 経介(そうぎ きょうすけ)「しかも今日やんの!?」
幽子(ゆうこ)「ホラ急がないと」

〇平屋の一戸建て
相木 経介(そうぎ きょうすけ)「クッソォォ」

〇クリスマス仕様の畳部屋
相木 経介(そうぎ きょうすけ)「ハァハァ」
幽子(ゆうこ)「というわけで」
幽子(ゆうこ)「ちょっと早いクリスマスやりま~す」
相木 泉子(そうぎ せんこ)「ちょっと⋯かな?」
相木 樹逗(そうぎ じゅず)「すごい!さすが幽ちゃん!天才!」
幽子(ゆうこ)「お婆ちゃん仏教だからやった事なくてさ~」
相木 経介(そうぎ きょうすけ)「今どき仏教徒でもクリスマスくらいやるだろ⋯」
幽子(ゆうこ)「では」
幽子(ゆうこ)「メリークリスマス!」
「イェーイ」

〇クリスマス仕様の畳部屋

〇クリスマス仕様の畳部屋
幽子(ゆうこ)「楽しかったー!」
相木 経介(そうぎ きょうすけ)「なあ、これ」
幽子(ゆうこ)「⋯」
相木 経介(そうぎ きょうすけ)「貰った事ないんだろ?」
相木 経介(そうぎ きょうすけ)「クリスマスプレゼント」
幽子(ゆうこ)「⋯私に?」
相木 経介(そうぎ きょうすけ)「あんたが好きな物なんて」
相木 経介(そうぎ きょうすけ)「一つしか知らないから」
相木 経介(そうぎ きょうすけ)「無理言ってクリスマスの包みにしてもらった」
相木 経介(そうぎ きょうすけ)「メリークリスマス」
相木 経介(そうぎ きょうすけ)「⋯姉ちゃん」
幽子(ゆうこ)「⋯初めて、姉ちゃんて呼んでくれたね」
相木 経介(そうぎ きょうすけ)「おい、何か身体がぼんやりしてるぞ」
幽子(ゆうこ)「もう逝けるみたい」
幽子(ゆうこ)「⋯私」
幽子(ゆうこ)「キミにお姉ちゃんて呼んで欲しかったんだね」
相木 樹逗(そうぎ じゅず)「幽ちゃん、行っちゃうの!?」
相木 樹逗(そうぎ じゅず)「嫌だ!」
相木 樹逗(そうぎ じゅず)「ずっと居てくれるって言ったじゃん!」
幽子(ゆうこ)「⋯」
相木 経介(そうぎ きょうすけ)「やめろ」
相木 経介(そうぎ きょうすけ)「ここはあいつにとって良くない場所なんだ」
相木 経介(そうぎ きょうすけ)「逝かせてやれ」
相木 樹逗(そうぎ じゅず)「止めてよバカ兄」
幽子(ゆうこ)「ごめんね」
相木 経介(そうぎ きょうすけ)(クソッ)
相木 経介(そうぎ きょうすけ)(何で)
相木 経介(そうぎ きょうすけ)(何で今さら消えるんだよ!)
幽子(ゆうこ)「そうだよね」
幽子(ゆうこ)「私ももっと早く消えようとしたんだけど⋯」
相木 経介(そうぎ きょうすけ)「⋯え?」
相木 経介(そうぎ きょうすけ)「⋯まさか」

〇ボロい駄菓子屋(看板無し)
相木 経介(そうぎ きょうすけ)(どこか行ってくれッ)
幽子(ゆうこ)「家を出るチャンスだと──」

〇田園風景
相木 経介(そうぎ きょうすけ)(親父も勝手すぎるだろ)
幽子(ゆうこ)「父さんの事、悪く思わないで──」

〇広い畳部屋
相木 経介(そうぎ きょうすけ)(恐怖感は消えそうにない⋯)

〇クリスマス仕様の畳部屋
相木 経介(そうぎ きょうすけ)「⋯全部聞こえてたのか!?」
幽子(ゆうこ)「ゴメンね」
相木 木業(そうぎ もくぎょう)「幽子」
相木 樹逗(そうぎ じゅず)「幽ちゃん」
幽子(ゆうこ)「家族⋯」
幽子(ゆうこ)「これが家族って事なんだね」
幽子(ゆうこ)「最期に会えてよかった」
幽子(ゆうこ)「さよなら⋯」

〇平屋の一戸建て
相木 経介(そうぎ きょうすけ)「姉ちゃぁぁあん!」

〇クリスマス仕様の畳部屋
相木 経介(そうぎ きょうすけ)「⋯」
幽子(ゆうこ)「天井裏見えた!」
相木 経介(そうぎ きょうすけ)「何降りて来てんだぁぁ」
幽子(ゆうこ)「いい感じ!」
幽子(ゆうこ)「こうやって家族っぽい事をあと100回くらいやれば」
幽子(ゆうこ)「本当に逝けそう!」
相木 樹逗(そうぎ じゅず)「幽ちゃん!」
相木 経介(そうぎ きょうすけ)「め」

〇平屋の一戸建て
相木 経介(そうぎ きょうすけ)「面倒見切れるかーっ!」

〇平屋の一戸建て
相木 経介(そうぎ きょうすけ)「押すぞ」
幽子(ゆうこ)「早く早く」
  3
  2
  1
幽子(ゆうこ)「屋根見えた!」
  半分他人で半分姉で
  そもそも生きてすらいない
  俺達の手でいつか消さなければならない
  この姉に対する感情を何と呼ぶのか
  俺はまだ知らない
相木 経介(そうぎ きょうすけ)「⋯姉ちゃん透けてるぞ」

コメント

  • 見事な傑作ですね!
    色々 教えていただきたいものです!
    テンプレを通しながら、十分 ヒューマンに泣かせるドラマを作るって!難しいことをいとも簡単にやってらっしゃるのは、すごいですね🤔

  • 3本目、読了!……コメント欄見てたら、笑いよりも今後の切なさが…🫠
    幽子の明るさに、経介のモノローグがすごく良かったんですが………ダメだ、切ない🫠🫠

    気温上がってきた今の時期に読んでるせいか、蝉・蜩の効果音がしっくりきてます🌻

  • 素敵なお話ですねー!!!!!✨
    心がぽかぽかと温まりました✨😊
    家族っぽいことを100回やれば・・・というのが、幽子も生前身体が弱かったから、色々やりたいことたくさんやり残したんだろうなぁ・・・と、想像させられました✨

    今後家族っぽいことをやるたびに行動範囲が広がって、やれることも増えていくんでしょうが、その度に別れが近づいていくのが切ないですね( ; ; )
    素敵なお話です!!✨

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