エピソード50(脚本)
〇渋谷のスクランブル交差点
薬師寺にまんまと言いくるめられた気がしなくもないが、あいつの言うことにも一理ある。
俺と薬師寺は怪異と関わっていた女子高生を尾行して、カボチャマスクの怪異が現れるのを待つことにした。
茶村和成(あの子たちを危険にさらすのはあんまりいい気持ちじゃないけど・・・仕方ないな)
俺たちは女子高生たちに見つからないように、こっそりと別れたところに戻った。
人ごみに紛れるようにしながら、少し離れたところから女子高生たちを覗くと、ちょうどこれから移動するところのようだった。
〇渋谷のスクランブル交差点
女子高生2「あのふたり結局なんだったのかなぁ」
女子高生1「ねー。急にどっか行っちゃって。 写真撮りたかったなぁ~」
どうやら俺たちの話をしているようだ。
残念がっているようで少し良心がうずく。
俺と薬師寺は街を練り歩く女子高生たちの少し後ろを気づかれないようについていった。
女子高生たちは街並みを携帯で撮ったり、仮装をしている人に声をかけて話をしたりとハロウィンを満喫しているようだ。
〇渋谷のスクランブル交差点
周りは人であふれかえっていて、見失わないようについていくのは一苦労だった。
しかし、その混雑のおかげで尾行していることにも気づかれてないようだ。
と、女子高生たちは立ち止まって仮装した女性と話を始めた。
それに合わせて俺と薬師寺も、近くの建物の影に隠れて様子をうかがう。
茶村和成(完全に今の俺たちは不審者だよな)
はあ、と俺が苦笑してため息を吐いたとき、突然どこかからバイブ音が聞こえた。
どうやら薬師寺のスマホが鳴っているようだ。
着信画面には八木さんの名前が表示されている。
・・・八木さんは「事件が起こったら連絡する」と言っていた。
もしかしてなにか起きたのだろうか。
カボチャマスクの怪異は薬師寺の存在に気づいて、別のターゲットにのりかえていた可能性もある。
そう考えると俺は少し心配になり、ドキドキしながら薬師寺を見つめた。
薬師寺廉太郎「もしもし~、八木さん、元気~?」
薬師寺廉太郎「・・・うん、・・・うん。わかったよ」
薬師寺はいつものノリのまま八木さんの電話を聞いている。
俺はハラハラしながら薬師寺を見ていた。
薬師寺廉太郎「・・・ひとまずまだなにも起きてないんだね?」
薬師寺廉太郎「そう・・・」
茶村和成「ふぅ・・・」
勘ぐりすぎだったようだ。
俺はひとまず胸をなでおろした。
茶村和成(ってことは、あの女子高生たちをしっかり見張ってないと・・・)
茶村和成(ってそうだ)
十数秒だったが女子高生からふたりとも目を離してしまっていた。
慌てて彼女たちがいた方を見ると、すでにいなくなっていて、女子高生たちが話していた女性だけが見えた。
茶村和成(まずい・・・! 見失う!)
俺は焦って通話している薬師寺を置いて走り出した。
薬師寺廉太郎「あ、ちょ・・・茶村!」
〇渋谷のスクランブル交差点
俺は女子高生たちがさっきまで話していた女性に声をかけた。
茶村和成「すいません、さっきあなたが話してた子ってどっちに行きました!?」
女性「え? あっちの通り曲がってったけど・・・」
茶村和成「すいません、ありがとうございます!」
俺は答えを聞くと、困惑する女性を置いて指さされた通りに向かって走り出した。
その通りは大きな通りと大きな通りをつなぐ裏通りのようで、遠くから見ても人気がないことがわかる。
〇ビルの裏
俺は急いで角を曲がると人気のない裏通りを見渡した。
そこは人であふれかえる表の通りとはまるで別世界のように、暗さと静寂に満ちていて、思わず俺は足をとめる。
目をこらすと遠くの方に、頼りない街灯の光に照らされて、例の女子高生たちの姿が見えた。
俺はほっとして近づこうとしたとき、彼女たちの様子がおかしいことに気づいた。
茶村和成「・・・?」
ふたりともぼーっと立ったまま、一言もしゃべらずに街灯の光の外を見つめている。
俺はイヤな予感がして、女子高生たちに向かって走り出した。
そのとき、女子高生たちが見つめる先から街灯の光の輪にひとりの男が現れた。
茶村和成「ッ!!」
それは、カボチャのマスクに黒マントをまとった男だ。
カボチャ頭の手にはギラリと光るナイフが握られており、女子高生に向け高く振り上げられていた。
その視線の先にいるのは、先ほどカボチャのマスクを手にしていた女子高生だ。
茶村和成「まっ・・・!」
カボチャ頭との距離は開いていて、とても間に合いそうにない。
茶村和成(まずい、間に合わない!)
全力で女子高生に向かって走り出したとき突然、カボチャ頭が奇妙な行動をとり始めた
茶村和成「!?」
カボチャ頭は、空いている左手でナイフを持つ右手を制止するように必死に押さえつけている。
と、ぐっとナイフを自身の胸に抱き寄せたかと思うとその場に投げ捨てた。
そして自身が被っているカボチャのマスクを必死で外そうとしている。
苦しそうなうめき声をあげ、ジタバタともがくカボチャ頭は十分奇妙だったが
なぜか俺は、カボチャ頭の姿に違和感を感じた。
茶村和成(なんだ・・・?)
違和感の正体がつかめずにいると、カボチャ頭の身体がビクッと震える。
脱力した体勢から動かなくなったカボチャ頭を警戒しつつ、ぼーっと立ったままの女子高生に近づく。
- このエピソードを読むには
会員登録/ログインが必要です! - 会員登録する(無料)