チャプター5(脚本)
〇山並み
・・・・・・・・・
・・・・・・ガマイラーは原発を破壊した後、南下。
道中にある街を破壊した後、日向灘へと姿を消した。
ガマイラーの通った後、夏の九州に広がっていたのは一面の銀世界・・・
そして、ヤツの冷凍ガスによって凍死した無数の人々と、原発の停止・破壊による広範囲の停電であった。
〇総合病院
────松田大付属中央総合病院。
〇病室
パイ・リン「はい、ダーリン♡あーん♡」
金子ススム「よしてくれ、今そんな気分じゃない・・・」
パイ・リン「うう・・・」
川先「映画やアニメと違い、銃弾が人体に与える影響というのは甚大だ。一発撃たれただけでも死ぬ事がある」
川先「ここまで回復できたのは奇跡と言っていいだろう」
金子ススム「小さい頃から、身体の丈夫さだけは取り柄ですから・・・」
金子ススム「・・・・でも、素直には喜べません」
川先「ううむ・・・」
〇風
コメンテーター「そもそも宝満電力がしっかりしとったらこんな事にはなってへんねん!!」
コメンテーター「今回の騒動の責任はぜーんぶ宝満電力にあると言っても間違いないわ!!アホンダラ!!」
評論家「そもそも原発なんて作るからいけないんですよ」
評論家「あの怪獣・・・ガマイラーでしたっけ? あれは原発に引き寄せられたって噂もありますし」
評論家「たかが電気のために怪獣まで呼び出して迷惑をかける・・・呆れるしかありませんね」
コメンテーター「おうゴラァ宝満電力!!世間はお前を許さんからなぁ!!」
コメンテーター「末代まで落とし前つけさせたるから覚悟せえや!!」
〇渋谷駅前
ナレーション「街の人達は・・・」
市民「テロリストに攻撃されたなんて言われてますけど、それだってやられるような事してたんじゃないですか?」
市民「やっぱ原発って怖いじゃないですか、学校でも原発はいけないって聞きますし・・・」
市民「ちゃんとしてない宝満電力が100%悪い!! テロリストに襲われたとしても、それだけの業重ねてきたのは誰だってな」
市民「撃たれたっていう社長の息子、入院してるんでしょ?大変な人なんていくらでもいるのに、どの面下げて助かろうとしてんだか・・・」
市民「ちょっと・・・そういうのよくわかんないです」
市民「パンケーキの方が大事・・・ふふっw」
〇病室
パイ・リン「何よこれ!?全部テロリストのせいなのになんでダーリンを悪者にするわけ!?」
パイ・リン「日本人では不倫と転売ヤーとテロリストは極刑じゃなかったの!?このぉっ!!!!」
金子ススム「こらこらやめろリン!!テレビに当たったってしょうがないだろ!?」
金子ススム「それに不倫と転売ヤーが極刑なのはあくまで世間が許さないってだけで・・・」
川先「・・・本邦ではそれだけで死刑も同然だと思うがね」
金子ススム「それは・・・・・・」
川先「実情は置いておいて、今世間は君や宝満電力そのものを悪者にしようと動いている」
川先「何せ、怪獣という未曾有の危機が相手だからね。誰かをスケープゴートにして安心したいんだろ」
金子ススム「・・・さっきヒカルさんから聞きました。どうやら、政府はウチを解体する方向に動いているみたいです」
金子ススム「株価も暴落・・・・まあ、ウチはもう本邦で原発事故を起こした電力会社です。 俺や父さんが死ぬか殺されるまでやるでしょうよ」
パイ・リン「でも・・・壊された原発から放射能は出てないじゃない!!」
金子ススム「関係ないさ。理屈や事実がどうあろうと、優先されるのは世間様の憂さ晴らしさ」
金子ススム「どの道、今の俺は世間からしたら”何が何でも殺さなきゃならない外道”なんだよ」
パイ・リン「そんな・・・」
川先「そして・・・金子くんが自殺した所で、 ガマイラーは倒されない」
川先「根本的な問題が残ったまま、生贄だけが捧げられる、と・・・」
金子ススム「・・・・・・」
川先「・・・所で、そのヒカルさんは何処へ行ったのだね?朝から姿が見えんが・・・」
金子ススム「ああ、なんでも”秘密兵器を取りに行く”とか言ってましたよ」
パイ・リン「秘密兵器?」
〇田舎町の通り(看板あり)
〇走行する車内
ショウマ「加納鉄鋼?」
ヒカル「かつてカノウテックって名前で、日本の家電業界を引率してた大企業さ。お前も名前だけなら聞いた事あるだろ」
ショウマ「ああ、たしか農地に使う巨大な乾燥機作ってたっていう・・・ でも、あの企業は・・・」
ヒカル「知っての通り、グループの会長の不倫騒動がきっかけで一気に評判が悪化」
ヒカル「震災の後だった、ってのもあったんだろう。そのまま転がり落ちるように倒産まで追い込まれた」
ヒカル「世間では”どれだけ栄華を誇ろうと悪は必ず滅ぼされる”みたいな教訓話にされてるが・・・」
ヒカル「実際は、一時の憂さ晴らしのために日本は貴重な海外シェアを持った企業とその技術ノウハウを失ったって話しさ」
ヒカル「その、農地用の巨大乾燥機だってお嬢の方から先に出ちゃったしな」
ヒカル「そして今から向う加納鉄鋼は、そんなカノウテックの兵どもが夢の跡・・・」
ヒカル「いわば、カノウテック残党みたいなもんさ」
〇ボロい倉庫
ヒカル「ついたぞ、ここが加納鉄鋼さ」
ショウマ「見たところよくある町工場って感じですけど・・・」
ショウマ「本当にここに秘密兵器なんて あるんですか?」
ショウマ「あったとしても、 そう簡単に貸してくれるかどうか・・・」
ヒカル「まあ任せろって」
〇古い倉庫の中
ダイチ「節電のお願い!?んなもん無視だ無視!!納期に間に合わん!!」
ダイチ「同調圧力程度で仕事減らされるなんざたまったもんじゃねえ!!そもそも俺達市民よりSDなんちゃらが大事な国なんざ・・・」
ヒカル「この町工場も変わらないな・・・」
ヒカル「そしてお前は、親父さんの跡をついで工場長ってわけだ」
ダイチ「ヒカル!!」
ヒカル「久しぶりだな、ダイチ」
ダイチ「ははっ!!同窓会以来じゃないか!!」
ショウマ「お知り合い・・・なんですか?」
ヒカル「なに、昔ちょっとな」
ダイチ「・・・で、何の用もなしにここに来たんじゃないだろ?」
ダイチ「それにお前がアポ無しだなんて、随分と困ってるようじゃねーか?」
ヒカル「ははっ、お前にゃかなわんな」
ヒカル「・・・てか自分の勤め先から怪獣が出りゃ困らんわけないだろ」
ショウマ「あはは・・・」
ダイチ「で、その怪獣絡みのお悩みに、俺はどう答えればいいんだ?」
ヒカル「へへっ、なあに・・・」
〇花火倉庫
〇古い倉庫の中
ヒカル「ちょっと”でかいパーティー”があってな、それで・・・」
ヒカル「・・・”怪獣のステーキ”を作りたいんだよ」