堀田探偵シリーズ第二弾『魔法使いと音の無い雨が降る町』

komarinet

第四話 神の雨(脚本)

堀田探偵シリーズ第二弾『魔法使いと音の無い雨が降る町』

komarinet

今すぐ読む

堀田探偵シリーズ第二弾『魔法使いと音の無い雨が降る町』
この作品をTapNovel形式で読もう!
この作品をTapNovel形式で読もう!

今すぐ読む

〇古いアパート
浜 伊織(はま いおり)「ここが佐々木の自宅ね」
初刷 論(はつずり さとし)「町役場からこんなに遠いとは」
浜 伊織(はま いおり)「調査に車は必要よね」
浜 伊織(はま いおり)「どっかの眼鏡が 持って行っちゃったけど」
初刷 論(はつずり さとし)「で、どうする?」
初刷 論(はつずり さとし)「セールスマンのふりして 会ってみる?」
浜 伊織(はま いおり)「やめとく」
浜 伊織(はま いおり)「依頼人の目的は、 「お父さんを探すこと」」
浜 伊織(はま いおり)「警戒されて逃げられたら 依頼達成が難しくなる」
浜 伊織(はま いおり)「まずは佐々木哲司本人の姿を 確認しましょう」
初刷 論(はつずり さとし)「じゃ、張り込みますか」
初刷 論(はつずり さとし)「といってもどこで待ち伏せるか」
浜 伊織(はま いおり)「なんかあそこに 良さそうな場所があるわね」

〇山中の休憩所
初刷 論(はつずり さとし)「何だろ、ここ」
浜 伊織(はま いおり)「野菜の無料販売所かしら」
初刷 論(はつずり さとし)「えっ、金なんて誰がおいてくの?」
浜 伊織(はま いおり)「アンタみたいな人間がいるから 農家の人が困るのよ」
初刷 論(はつずり さとし)「す、すみません」
浜 伊織(はま いおり)「ちょうどいいわ。 ここで張り込みしてみましょう」
初刷 論(はつずり さとし)「客が来たらどうするんだ」
浜 伊織(はま いおり)「野菜選んでるふりよ」
初刷 論(はつずり さとし)「了解」

〇空

〇山中の休憩所
初刷 論(はつずり さとし)「来ないな、佐々木」
初刷 論(はつずり さとし)「もしくはずっと家の中にいるとか?」
浜 伊織(はま いおり)「それはないわね」
浜 伊織(はま いおり)「最初に部屋をサーモグラフィで みたんだけど」
浜 伊織(はま いおり)「人もペットもあの部屋には 居なかった」
初刷 論(はつずり さとし)「でも、もう遅いぜ?」
初刷 論(はつずり さとし)「もう今日は帰ってこないんじゃね?」
初刷 論(はつずり さとし)「実は部屋で死んでたりして」
浜 伊織(はま いおり)「可能性はあるかもね」
初刷 論(はつずり さとし)「いや、冗談だよ」
浜 伊織(はま いおり)「それがそうでもなくてね」

〇飛行機内
浜 伊織(はま いおり)「所長」
堀田 晴臣(ほった はるおみ)「何だい?」
浜 伊織(はま いおり)「佐々木哲司は本当に 長崎にいるのでしょうか」
堀田 晴臣(ほった はるおみ)「どうしてそう思う?」
浜 伊織(はま いおり)「離婚してから20年間も 娘に手紙を出し続けたんですよ」
浜 伊織(はま いおり)「何の理由もなくやめたりします?」
浜 伊織(はま いおり)「きっと佐々木哲司は・・・」
堀田 晴臣(ほった はるおみ)「浜くん」
浜 伊織(はま いおり)「すみません。でも、」
浜 伊織(はま いおり)「決して安くない依頼料を支払って 亡くなってたじゃあまりにも」
堀田 晴臣(ほった はるおみ)「救われない。 確かにそうかもね」
堀田 晴臣(ほった はるおみ)「だけど君もモニター越しに 依頼人を見たはずだ」
堀田 晴臣(ほった はるおみ)「彼女はどうかな」

〇応接スペース
堀田 晴臣(ほった はるおみ)「手紙が中断した理由を気にせず 生きていけそうにみえたかい?」
浜 伊織(はま いおり)「いいえ」
堀田 晴臣(ほった はるおみ)「だろう?」

〇飛行機内
堀田 晴臣(ほった はるおみ)「もし彼女のお父さんが 亡くなってたら悲しいことだ」
堀田 晴臣(ほった はるおみ)「でも、それを知ることで 心が次へ進めることだってあるんだ」
浜 伊織(はま いおり)「そう・・・かもしれませんね」

〇山中の休憩所
浜 伊織(はま いおり)「所長はね、ロン」
浜 伊織(はま いおり)「ただ探偵として 調べるだけじゃなく」
浜 伊織(はま いおり)「依頼人が少しでもいい人生を 送れるように仕事をしているのよ」
初刷 論(はつずり さとし)「そうだったんだ」
浜 伊織(はま いおり)「というわけで」
初刷 論(はつずり さとし)「ん?」

〇古いアパート
浜 伊織(はま いおり)「忍び込もう」
初刷 論(はつずり さとし)「うおい、待てい」
初刷 論(はつずり さとし)「さっきのいい話はどうした」
浜 伊織(はま いおり)「だってもう深夜じゃん」
浜 伊織(はま いおり)「所長は連絡寄越さないし アパートの照明全部屋落ちたし」
浜 伊織(はま いおり)「流石に佐々木は今夜 帰ってこないでしょ」
初刷 論(はつずり さとし)「わかんねぇだろ 夜まで出掛けてるかもだろ」
浜 伊織(はま いおり)「こんなド田舎で夜に何するのよ」
浜 伊織(はま いおり)「少なくとも音無雨町には 居るわけないわ」
浜 伊織(はま いおり)「というわけでレッツゴー」
初刷 論(はつずり さとし)「ああ、もう知らんからな!」

〇アパートの玄関前
浜 伊織(はま いおり)「表札は佐々木。203号室。 間違いないわね」
初刷 論(はつずり さとし)「あんまりガチャガチャやるなよ」
初刷 論(はつずり さとし)「近くの住人に気づかれでもしたら」
浜 伊織(はま いおり)「一撃!」
初刷 論(はつずり さとし)「うわっ、待てって」

〇アパートのダイニング
浜 伊織(はま いおり)「古いアパートね。 歩くと床が軋むわ」
初刷 論(はつずり さとし)「お、おい本当に誰も 居ないんだよな?」
初刷 論(はつずり さとし)「こんなの見つかったら 一気に犯罪者だぞ、俺たち」
浜 伊織(はま いおり)「だから見つからないように やるんじゃない」
初刷 論(はつずり さとし)「おい! びっくりするだろ!」
浜 伊織(はま いおり)「スマホライトで照らすだけよ」
浜 伊織(はま いおり)「暗いと見えないでしょ」
浜 伊織(はま いおり)「あ、ロン。 手袋つけなさいよ」
初刷 論(はつずり さとし)「わかった」
浜 伊織(はま いおり)(机の上に埃がこんなに?)
浜 伊織(はま いおり)(佐々木はテーブルを 使わないのかしら)
浜 伊織(はま いおり)(冷蔵庫も見てみよう)
浜 伊織(はま いおり)「あ、これ」
初刷 論(はつずり さとし)「いい匂い」
浜 伊織(はま いおり)「花びらをオイルづけにしてある」
初刷 論(はつずり さとし)「佐々木はベジタリアン?」
浜 伊織(はま いおり)「んなわきゃないでしょ」
浜 伊織(はま いおり)「この花びら、見覚えない?」
初刷 論(はつずり さとし)「あ、依頼人の!」
浜 伊織(はま いおり)「手紙にあった花びらね」
浜 伊織(はま いおり)「ハーバリウムにしてたんだわ」
初刷 論(はつずり さとし)「ハーバ?」
浜 伊織(はま いおり)「気にしないで」
初刷 論(はつずり さとし)「つーか、この冷蔵庫。 何にも入ってないのな」
初刷 論(はつずり さとし)「佐々木って生活力ないのかな?」
初刷 論(はつずり さとし)「なんか親近感わくなぁ」
浜 伊織(はま いおり)(流しも汚れてない)
浜 伊織(はま いおり)(佐々木の生活している場所は ここではない?)
浜 伊織(はま いおり)「隣行きましょ」

〇古いアパートの部屋
浜 伊織(はま いおり)(全然散らかってない)
浜 伊織(はま いおり)(ゴミ箱も空)
初刷 論(はつずり さとし)「歴史の本がすげーあるね」
初刷 論(はつずり さとし)「佐々木哲司は歴史学者って 泉さん言ってたもんな」
初刷 論(はつずり さとし)「もう本人で間違いないんじゃね?」
浜 伊織(はま いおり)(歴史書に混ざって 建築や農業の本もある)
浜 伊織(はま いおり)(プログラミングの本?)
浜 伊織(はま いおり)(佐々木はこの町で何を?)
初刷 論(はつずり さとし)「誰か帰ってきたみたいだぞ!」
浜 伊織(はま いおり)「マズい! 逃げるわよ!」

〇アパートのダイニング

〇古いアパートの部屋
浜 伊織(はま いおり)(ブレーカー落としておいて 正解だった!)
浜 伊織(はま いおり)(これで一旦玄関に戻るはず)
???「誰かいるのか?」
浜 伊織(はま いおり)(嘘でしょ! ブレーカー上げに戻りなさいよっ!)
初刷 論(はつずり さとし)「開いた! 伊織!」
浜 伊織(はま いおり)「ええ!」

〇アパートのベランダ
初刷 論(はつずり さとし)「行くぞ、飛び降りるしかねぇ」
浜 伊織(はま いおり)「くっ!」

〇古いアパート
初刷 論(はつずり さとし)「はあ、はあ。急げ!」

〇田んぼ
初刷 論(はつずり さとし)「はあ、はあ」
浜 伊織(はま いおり)「はあっ、はあっ」
初刷 論(はつずり さとし)「旅館までもうすぐ ここまでくれば」

〇田んぼ
浜 伊織(はま いおり)「嘘でしょ、雨!?」
初刷 論(はつずり さとし)「いつから降ってた?」
浜 伊織(はま いおり)「わからない。でもこれは・・・」
浜 伊織(はま いおり)「なんかヤバい気がするっ!」
???「あんたたちっ! 何、ぼうっとしてるの!」

〇屋敷の門
旅館の先代女将「早く中に入りなさい!」
旅館の先代女将「急いで!」
「は、はいっ!」

〇旅館の受付
旅館の女将「あらまあ、お二人とも どうなさいました?」
初刷 論(はつずり さとし)「いや、なんて言うか」
浜 伊織(はま いおり)「あまりにも唐突な現象過ぎて」
旅館の先代女将「音無雨(おとなめ)だよ」
旅館の女将「あっ、先代」
旅館の先代女将「尚美ちゃん。 ちょっと奥の間借りるよ」
旅館の女将「え、ええ。構いません」
旅館の先代女将「ちょいとそこの二人」
「はっ、はい!」
旅館の先代女将「しばらくこの町にいる つもりなんだろ?」
旅館の先代女将「だったらついといで」
旅館の先代女将「あんた達が見たものが何か 教えてあげるよ」
初刷 論(はつずり さとし)「は、はあ」
初刷 論(はつずり さとし)「ど、どうする?」
浜 伊織(はま いおり)「行くしかないでしょ」
旅館の先代女将「早くおいで! とって食ったりしないよ!」
「はいっ!」

〇広い和室
旅館の先代女将「さて」
旅館の先代女将「お嬢ちゃんたちがどうして この町に来たのか」
旅館の先代女将「そんな事は言わなくていいさ」
旅館の先代女将「旅館ってのは 色んな人間が泊まるからね」
旅館の先代女将「ただ長く居るなら”あれ”について 知っている必要がある」
浜 伊織(はま いおり)「雨のことですね」
旅館の先代女将「そう。あの雨は”音無雨(おとなめ)” 町の名の由来でもある」
初刷 論(はつずり さとし)「音がしないのは どうしてですか?」
旅館の先代女将「簡単な理屈さ」
旅館の先代女将「あの雨は神様が降らせている ものだからね」

〇山間の集落
旅館の先代女将「今よりずっと昔 この地域は干ばつ地帯だった」
初刷 論(はつずり さとし)「干ばつ?」
旅館の先代女将「平たく言えば水不足さね」

〇古びた神社
旅館の先代女将「そこで、当時の人間は 土地の神様にお願いしたのさ」
旅館の先代女将「神様は言ったそうだよ」
旅館の先代女将「『恵みの雨を授けよう』 ただし──供物を捧げよ、とね」
浜 伊織(はま いおり)「人柱ですか」
旅館の先代女将「察しがいいねぇ。その通りさ」

〇田舎道
旅館の先代女将「『雨が欲しい日には供物を捧げよ』」
旅館の先代女将「『引き換えに雨を授けよう』ってね」
浜 伊織(はま いおり)「本当に雨は降ってたの?」
旅館の先代女将「供物を捧げた翌日、 音もなく田畑が潤った」
旅館の先代女将「だから当時の人間は 音の無い雨が降ったと思ったそうだよ」
初刷 論(はつずり さとし)「じゃ、じゃあ実際は 誰も雨を見たことがない?」
旅館の先代女将「ああ、そうさ──何故なら」

〇黒
旅館の先代女将「『音無雨を見た者を供物とする』」
旅館の先代女将「そう神様が言ったからさ」

〇広い和室
旅館の先代女将「音無雨を 見に行った人間が帰らない」
旅館の先代女将「そんな事が何度もあったのさ」
旅館の先代女将「だからね、お客様がた」
旅館の先代女将「音の無い雨が降るときは "絶対に外に出てはいけない"」
旅館の先代女将「これだけは覚えとくんだよ」
初刷 論(はつずり さとし)「行っちゃった」
浜 伊織(はま いおり)「先代女将から話聞いてたら 所長行かなくてよかったんじゃ?」
初刷 論(はつずり さとし)「まあでも自分で調べないと 納得しないんじゃね?」
浜 伊織(はま いおり)「確かに」
浜 伊織(はま いおり)「にしても遅いわね 定時連絡の時間はとっくに──」
旅館の女将「お客様、大変です!」
旅館の女将「お客様宛に病院からお電話が!」
初刷 論(はつずり さとし)「病院!?」
旅館の女将「フロントにお電話が 繋がっております」
浜 伊織(はま いおり)「すぐ行きます!」
初刷 論(はつずり さとし)「あっ、待てよ!」

〇旅館の受付
浜 伊織(はま いおり)「はい、わかりました」
浜 伊織(はま いおり)「ロン、出掛けるわよ!」
初刷 論(はつずり さとし)「どうした!?」
浜 伊織(はま いおり)「所長が交通事故で 県立病院に搬送された」
浜 伊織(はま いおり)「意識不明だって」
初刷 論(はつずり さとし)「事故って、どこで?」
浜 伊織(はま いおり)「この町内に入ったところだそうよ」
初刷 論(はつずり さとし)「なんてこった」
初刷 論(はつずり さとし)「でも県立病院って確か かなり遠かったはずだぜ?」
旅館の女将「今の時間、バスは終わってますよ」
旅館の女将「心配でしょうけど 明日にされてはどうですか?」
旅館の女将「タクシーも結構 断られちゃうんですよね」
浜 伊織(はま いおり)「そんなのやってみないと わかりませんよね」
浜 伊織(はま いおり)「電話帳あります? 片っ端からかけますから」
初刷 論(はつずり さとし)「お、俺も手伝うよ!」
浜 伊織(はま いおり)「手伝わない 選択肢があるとでも?」
旅館の女将「はい、電話帳。 これでいいかしら」
浜 伊織(はま いおり)「ありがとうございます、女将さん ほら行くわよ!」
初刷 論(はつずり さとし)「引っ張るなって!」

〇屋敷の門
浜 伊織(はま いおり)「はい・・・はい、そうですか」

〇旅館の和室
浜 伊織(はま いおり)「このクソタクシー会社どもがぁ!」
浜 伊織(はま いおり)「勤労意欲をどこへ置いてきたぁ!」
初刷 論(はつずり さとし)「落ち着け。 多分理由はそこじゃない」
浜 伊織(はま いおり)「どういう事よ?」
初刷 論(はつずり さとし)「多分タクシー会社は『この町』 だから来たくないんじゃないか」
初刷 論(はつずり さとし)「変ないわくがある町に 夜来たい人いないだろ?」
初刷 論(はつずり さとし)「地元の人ならなおさらな」
浜 伊織(はま いおり)「・・・」
初刷 論(はつずり さとし)「どうした?」
浜 伊織(はま いおり)「ロンの癖に冴えてるなと思って」
初刷 論(はつずり さとし)「癖には余計だよ」
浜 伊織(はま いおり)「でもそういうことなら──」

〇屋敷の門
浜 伊織(はま いおり)「歩く!」
初刷 論(はつずり さとし)「おい、嘘だろ!」
初刷 論(はつずり さとし)「あいつ所長のことになると 周り見えなくなるからな」
初刷 論(はつずり さとし)「待てよ! 俺も行くから!」

次のエピソード:第五話 副町長

コメント

  • いおりん、かっこいい…

  • 相変わらず絶え間なく緊張の続く展開😅
    堀田所長、無事で‼️

  • とりあえず意識不明でよかった(よかった?)

    また出歩いたら雨にエンカウントしそうなもんですが…
    なんとか所長の元に無傷で辿り着いてほしいところ…

コメントをもっと見る(6件)

成分キーワード

ページTOPへ