一億つ子

ふゆ

第一話「一億人の長男て」(脚本)

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〇男の子の一人部屋
  zzz
  ・・・
信長子「嘘だろ!?」
秀吉江「お兄ちゃん、遅刻しちゃうよお?」
信長子「起きなかったら、お前の寝顔を・・・」
信長子「皺から毛穴まで全部描いてやるからなあ!」
信長子「うおお」
信長子「ダメだ」
秀吉江(そりゃね)
秀吉江「仕方ないな〜、お兄ちゃん」
秀吉江「おにいちゃあん、起きて♡」
  zzz
秀吉江「・・・」
信長子「死んじゃう!」
秀吉江「遅刻するよりマシでしょう?」
信長子「真面目がすぎる」
信長子「やば」
秀吉江「信、クローゼットへ」
母「ごめんねー バカ息子まだ起きてなかった」
母「ひとりっ子だから、つい甘やかしちゃって」
母「燈ちゃんがお嫁さんに来てくれたらいいのに」
燈「い、いえ、そんな」
母「バカ息子 母さん、会社行くからね」
燈「・・・」
燈「起きてー」
燈「もー、服脱ぎっぱなし」
燈「フ、フンドシ!?」

〇地球
  説明しよう
  俺には(親の知らない)一億人の兄弟がいる
  昔、不妊で悩んでいたうちの母に
  なぜか目をつけた科学者が
博士「一回の受精で、報われる精子は一、ニ個」
博士「数億個のほとんどは淘汰される」
博士「受け止める側の受精卵を増やしてみたらどうだろう!」
博士「あーどんな子が生まれるか、めっちゃ楽しみ」
「さっすが博士!」
「少子化社会の救世主!」
  国が秘密裏に巨額の金を投資し
  体外受精の名目でうちの母に近づき
  父の精子たちを
  クローン培養された母の卵子たちに
  受精させ
  受精させ
  受精させ
  俺は一億つ子の長男になったのである

〇荒れた公園
  やい、妹たち
  勝手に部屋入るなっつったろ💢
  これ誤魔化すの大変だったんだからな!
信長子「それ、秀の・・・」
  え
信長子「顔赤くして、力一杯握りしめて、うわあ」
  え、あ、ごめん!
秀吉江「大丈夫。それエプロンだから」
  なんだ。エプロンか・・・
  いやいや、なんで!?
秀吉江「秀吉といえばフンドシで泥まみれでしょ?」
信長子「マジメ!さすが秀吉の先祖返り!」
  どこ先祖返りさせてんだよ・・・
  先祖返り──は
  
  一億つ子で普通に起きる現象だ
  だって、数えたことはあるだろうか
  あなたの先祖の数だ

〇宇宙ステーション
  10代遡って約2000人
  20代前で約200万人
  30代遡るとなんと10億人!
  ご先祖に豊臣秀吉がいたって
  
  おかしくはない

〇シックなバー
  しかも秀は
  
  伝説の花魁の先祖返りでもある
  言わばハイブリッド先祖返り
秀吉江「泥に塗れてもおもてなししまあす♡」
「秀ちゃーん!」

〇荒れた公園
  さっさと施設に戻れよ
  門限、結構厳しいんだろ?
  全国にある兄妹たちが住む特別居住区
  
  管理は結構厳しいと聞く
  それでもちょくちょく会いに来てくれる
  ずっと兄弟なんていないと思ってたから
  
  なんていうか
  気恥ずかしい
  何それ
信長子「一億つ子ネット」
秀吉江「私たち、皆の代表できてるの」
信長子「たよりない長男様に喝を入れるために」
  ぐっ
秀吉江「お兄ちゃんは、 私たち(一億人)のお手本なんだからね♡」
  いや、俺、前から言ってるけど
  
  そんな器じゃ──
秀吉江「あ、あれ、向こうに燈ちゃんがいる?」
信長子「本当だ。・・・一瞬にいるの、男?」
  ・・・!
  燈!
燈「わあ、いきなり何!」
  なんで駿といるんだ?
燈「え、なんでって・・・」
  ・・・おい駿、どういうつもりだ
駿「やあ、兄さん」
駿「声かけちゃった」
  駿は一億つ子の一人──弟だ
駿「この娘、すっごくいい香りするんだよねえ」
  香り?そりゃお前
  自分にない免疫システムを持つ女子は
  
  いい匂いがするもんなんだよ
駿「へえ」
駿「じゃ、兄さんも燈ちゃんから いい匂いしてるってこと?」
  ・・・!
  駿、ズバ抜けて優秀な弟
  うちの親、こんなに優秀でイケメンが
  
  我が子の可能性があったんだよなあ・・・
燈「駿くん、老人ホームのボランティアに 付き合ってくれるんだって」
  燈、放課後にボランティアなんてしてたのか
燈「うん、将来福祉の仕事したいの」
燈「じゃあね」
駿「またね。兄さん」
駿「僕と勝負しない方がいいの、分かるよね?」
  ・・・

〇教会の控室
職員「皆さん、〇〇ホームに、 新しくきたボランティアの子たちです!」
信長子「ちょっと! なんで急にボランティア!?」
  俺は、一億子の長男として
  この高齢化社会に貢献する!
  兄としての姿、見ててくれ!
秀吉江「急ねえ」
職員「じゃあ、燈ちゃんと駿くんは配膳サポートね」
  あ!俺もそっちやるっす!
駿クラスタ「張り切ってるねえ」
「・・・」
信長子「把握」
秀吉江「同じく」
  分かってくれたか!

〇田舎の病院の病室
  職員の手伝い
職員「身体介助は職員がやるから、お掃除をお願いね」
燈「はい」
駿「ふふ」
駿「シーツ交換も含めて全て終わってます」
職員「うそ!」
職員「本当だ。いつの間に・・・!」
駿「寝ているご婦人が気付かぬうちに交換する」
駿「簡単なことです」
職員「駿くんも、燈ちゃんも、ほんとありがとね」
  ・・・

〇教会の控室
  話し相手
秀吉江「ええと、大河ドラマ見てますか?」
  秀、聞こえてないみたいだ
秀吉江「大河ドラマ見てますか?」
入居者「・・・・・・」
秀吉江「きゃ」
入居者「うへへ」
信長子「こんのジジイ・・・秀の尻を」
信長子「触るなら ○してしまえ クソジ──」
  おいそれ絶対ここで言っちゃ駄目なやつ!
信長子「くっそお、この怒りを」
信長子「ネームにぶつけるしかないい」
  信長子は、織田信長の先祖返りで
  かなり短気で攻撃的な奴だが
信長子「きたきたきた熱い展開ぃ」
  熱血少年漫画家の先祖返りでもあるので
  その闘争本能を創作にぶつけるので、
  
  あまり害はない
信長子「おおお、○ねええ!」
  と思うことにしている
入居者「はははっ、面白い姉ちゃんたちだな」
  ・・・・・・

〇中庭
信長子「ちょっと、なにこんなとこでサボってんの」
  あれ
  うわ、ごめん休憩終わってたか
信長子「大丈夫かよ」
  うん・・・
  なんかさ
  俺だけ誰にも褒められないよね?
信長子「あー・・・」
信長子「頑張ってるけど」
信長子「存在感ないからかな?」
信長子「あ、そ、そんな顔するほどショック?」
信長子「えっとさ」
信長子「私が兄貴って呼ぶの、あんただけなんだぜ」
  信・・・
信長子「それは、多分・・・他の兄弟の順番が はっきりしないせい?」
信長子「そっか それだけで兄貴って呼んでたんだな私」
  え、ただの独り言?
  励ます流れじゃないの!?
信長子「つか、いい加減戻らないと」
  おいぃ
信長子「あははっ」
信長子「嫌になったら、いつでも頭変わってやるよ」
信長子「なんてったって、信長の先祖返りだし」
  ・・・
信長子「だから肩の力、抜くんだぜ!」
  ありがとな
  お前って、結構いい奴だよな
信長子「な、なんだよ。急に。ばーか」
信長子「ん?」
信長子「大変! 利用者が、立ち入り禁止地域に向かってる!」
信長子「そっちは立ち入り禁止ですよー!」
信長子「聞こえてないみたい・・・」
  行こう!
信長子「うん!」
信長子「え、駿クラスタ・・・!?」
信長子「どいて!」
  一億つ子は一枚岩ではない
  俺が長男なことに不満がある奴らもいる
  中でも駿の遺伝子と近い『駿クラスタ』
  外国人の先祖返りの『外国人クラスタ』
  『駿の方が長男に相応しい』という奴らだ
信長子「今は兄弟喧嘩してる場合じゃないでしょ!」
駿クラスタ「一億つ子ネットで見ただけだから よく分かんないけど」
駿クラスタ「兄さん、責任者でしょ?」
良男(ケビン)「トラブルあったら困るよね?」
  ・・・!
信長子「てめえらああ」
信長子「うおお!窮地の展開キタコレー!」
  今だけは真っ直ぐにぶつけて欲しかった!
  多対ニか・・・
信長子「あ」
信長子「そっち行っちゃダメえ!」
駿クラスタ「あははっ」
駿クラスタ「僕が一人でも兄さん勝てないよね」
  それどころじゃないのに
  ・・・ふざけんなよ
信長子「兄貴?」
  俺は

俺「俺は」

〇男の子の一人部屋
  ずっと一人っ子だったから
  きょうだいが一億人もいるって知って
  嬉しかったんだ
  だから

〇魔界

〇黒

〇黒背景

〇中庭
「え」
俺「俺の兄弟が・・・!」
俺「人の道から外れるなんて許さない!」
駿クラスタ「いや、外れてんのどっち・・・」
駿クラスタ「おごるふっ!?」
俺「隅で反省してろ!」

〇keep out
俺「そっちは立ち入り禁止ですよ」
利用者「はい?」
俺「そっちは立ち入り禁止ですよ!」
利用者「ああ、そうなの。ありがとねえ」

〇中庭
信長子「・・・」
信長子「さ」
信長子「・・・さすが兄貴!」

〇通学路
  帰り道
  俺は一体・・・
  化け物だったのか・・・?
秀吉江「えー?」
秀吉江「お兄ちゃんも先祖返りクラスタだった ってことじゃない?」
  ・・・先祖返り?何の
信長子「異世界人?」
  俺の先祖に!
秀吉江「お兄ちゃん、個性なかったから良かったね」
  ・・・
  そうか、ちょっとは俺、
  
  兄ちゃんらしくなれたかな?
信長子「うん、一ミリくらい」
  ・・・
  ていうかさ
  信長と秀吉って時代同じだよな
  両方の子供産んでる女って
  ビッチだよね!
  やーい、ビッチビッチ、ビッチクラスタ!
信長子「ふざけんな」
信長子「今の台詞、三下キャラに言わせるからな!」
  ・・・三下て──ん?
燈「次は、災害救助ボランティアに行くんだ」
駿「付き合うよ」
  ・・・
  災害救助に行くぞ
「えー!」
  いつか絶対真の兄貴に
  なってみせるから
  待っててくれよ!
  きょうだい!

コメント

  • 数字の暴力に笑いますが、それだけで終わらないワクワクする設定が良かったです!

    無限に等しい血の繋がりをもつ者達、間違いなく全員は覚えられないですね笑

  • 精子一億匹への着眼にも、そこからのこのトンデモ物語の構築にも、全く恐れ入りっぱなしです!オンリーワンの作品ですね!
    信長も秀吉も漫画家もいるという、この主人公の家系図、見てみたくなりますねww

  • 兄弟一億人とはかなり思い切ったトンデモ! 毎話、新キャラを登場させてもお釣りが出そうですね^^
    兄妹の数が多いからこその、先祖返り設定も面白かったです。たしかに何十代も遡れば、自分も戦国大名とちょっぴり関係あるかもしれない! さらに遡れば原始時代には王族だったのかも…笑

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