怪異探偵薬師寺くん

西野みやこ

エピソード48(脚本)

怪異探偵薬師寺くん

西野みやこ

今すぐ読む

怪異探偵薬師寺くん
この作品をTapNovel形式で読もう!
この作品をTapNovel形式で読もう!

今すぐ読む

〇渋谷のスクランブル交差点
  東京・渋谷。
  普段から混み合っている渋谷の駅前は、ハロウィンの今日、普段とは違う喧噪に包まれていた。
薬師寺廉太郎「茶村~。ほら、あのコスプレすごくない?」
  薬師寺の指さす先には、最近流行っている少年漫画のキャラクターのコスプレをした人が写真を撮っている。
茶村和成「おいおい。遊びに来たんじゃないんだぞ」
  俺ははしゃぐ薬師寺に若干呆れながらあたりを見回した。
  周りは賑わっている・・・、というか、人の波で流されてしまいそうなほどだ。
  そこかしこで仮装している人も仮装していない人も、みんな楽しそうに浮かれてはしゃいでいる。
  俺は初めて経験する人波にめまいを覚えた。
茶村和成(見えるところ全部が人でぎっしり埋まってる)
  しかし薬師寺はこんなときでもなんともないようでけろりとしている。
  俺はため息をつきながらここに来ることになった経緯を思い出していた。

〇高層マンションの一室
  1週間前
薬師寺廉太郎「・・・これは怪異の仕業だねぇ」
  薬師寺は不気味な笑みを浮かべて言う。
  それを見て八木さんは頷(うなず)いた。
八木要「やはりそうか」
薬師寺廉太郎「ひゃひゃっ。 なんだかわかってたみたいだねえ。 てことはなにか心当たりがあるのかな?」
八木要「これを見てくれ」
  そう言うと八木さんは鞄からファイルを取り出し、薬師寺に渡した。
  手渡されたクリアファイルには、色あせた新聞記事と書類が挟んである。
  「同級生殺害 いじめの報復か」という見出しが目に入る。
八木要「これは30年前に起きた事件なんだが・・・」
  八木さんは薬師寺が手にしている資料を指差しながら説明を始めた。
八木要「都内の高校に通っていた3人の学生が、同級生に殺害されたというものだ」
  薬師寺は「ふーん」と軽く相槌を打ち、表情の読めない目で書類を読む。
八木要「3人はナイフで滅多刺しにされたあと顔の皮を剥がされ、カボチャのマスクを被せられていた」
八木要「手口の残虐性から、当時この事件は切り裂きジャックになぞらえて『皮剥ぎジャック事件』と呼ばれたそうだ」
八木要「犯人は3人の同級生A。 他の同級生の証言によると、Aは殺された3人から日常的にいじめを受けていたらしい」
八木要「3人は事件直前のハロウィンの日、接着剤を塗ったマスクをAに被せ、固まってから無理やり剥がすといういじめをやったそうだ」
八木要「マスクは完全に皮膚に張り付いていて、剥がしたとき・・・」
八木要「・・・・・・」
八木要「一緒に顔の皮膚まで剥がれてしまったそうだ」
茶村和成「うわ・・・」
八木要「Aの残虐な殺害方法はこのいじめへの報復だろう」
八木要「そして加害者の男子学生Aは事件直後に自殺している」
茶村和成「・・・・・・」
  いくら殺人犯だとしても、俺は犯人に少し同情してしまった。
薬師寺廉太郎「で、その『皮剥ぎジャック』と今回の事件がなんの関係があるの?」
八木要「あぁ、その話だが、この5年で見つかった死体は、全員がカボチャのマスクをしていて、滅多刺しにされていた」
薬師寺廉太郎「!!」
八木要「マスコミもこのふたつの事件の関連性に気づいて5年前から事件が起きるたびに30年前の事件について報道している」
八木要「警察内部では30年前の模倣犯だとして5年間捜査を続けてきたんだが・・・」
八木要「俺は30年前の『皮剥ぎジャック』がなんらかの理由で怪異化し、人々を襲っているんじゃないかと考えている」
薬師寺廉太郎「そうだねぇ。 話題になった殺人犯は都市伝説化しやすいし、手口から見ても可能性は高いかな」
八木要「本当は数年前からこの事件を0課に回すよう要請していたんだが、」
八木要「手柄を取られまいと犯人捜しに躍起になっていた特別捜査対策室がなかなか事件を手放さなくてな」
薬師寺廉太郎「それで、ハロウィンまで1週間しかない今頃になって俺の手を借りたいってわけ?」
八木要「・・・ああ。 急になって申し訳ないとは思っている」
  薬師寺は甘いココアが入ったマグカップを手にすると、ゆっくりとひとくち飲んだ
  そしてマグカップを置き、唇についたココアを舐め取ってからにっこりと口角を上げる。
薬師寺廉太郎「で、なにをすればいいの?」
  八木さんはそれを聞いて少しほっとしたように頷(うなず)くと、ところどころに印がつけられた地図を取り出した。
八木要「この怪異は知ってのとおりハロウィンにしか現れない上にどこに出るかもわからない」
八木要「だがこれまで5回はすべて都内のハロウィンイベントの最中に現れている。 今年もそうなる可能性が高い」
八木要「薬師寺には事件が発生したときに現場に急行できるよう、今までで一番出現回数の多い渋谷で待機していてほしい」
八木要「警察は出来る限りの厳戒態勢を敷く。 なにか事件が起きたらすぐに連絡する」
薬師寺廉太郎「ふーん・・・」
  ハロウィンしか現れない怪異ということは、その日にしか消すチャンスがないということだ。
  都内という広い範囲の中で1日で怪異を消滅させるためにはこんな手しかないのだろう。
薬師寺廉太郎「わかったよ」
薬師寺廉太郎「・・・でもこれは高くつくよ」
八木要「わかった。 報酬はいつもの口座に振り込んでおく」
薬師寺廉太郎「うーん、それでもいいんだけど・・・」
薬師寺廉太郎「・・・・・・」
薬師寺廉太郎「そういえばぁ、最近東京駅の近くに新しく抹茶パフェ専門店ができたらしいんだよねぇ」
薬師寺廉太郎「でもぉ、あっという間に口コミが広まって開店してから並んでも食べられないくらい大行列らしくてぇ」
薬師寺廉太郎「持ち帰りもあるらしいけどぉ、すぐに完売しちゃうからぁプレミア扱いされてるとかー?」

このエピソードを読むには
会員登録/ログインが必要です!
会員登録する(無料)

すでに登録済みの方はログイン

次のエピソード:エピソード49

成分キーワード

ページTOPへ