第一話 魔法少女活動(脚本)
〇見晴らしのいい公園
ここ、大安町(たいあんちょう)は、どこにでもある郊外ののどかな町。
もともと平和なこの町を、さらに平和にせんと日々戦っているのが──
一人のいたいけな少女であることを、知る者は少なかった!
〇お嬢様学校
私立大安学園初等部──
〇教室
天羽春乃「美佳ちゃん、沙弥ちゃん」
天羽春乃「ほんとはヒミツなんだけど、二人は大切な親友だから、友情の証で打ち明けるね」
天羽春乃「みんなには内緒だよ」
天羽春乃「あたしって、実はなんと! 魔法少女だったのでしたー♪」
「・・・・・・・・・」
天羽春乃「あたしって、『天使の魔法少女ハルノ』だったんだよ。すごいでしょ☆」
天羽春乃「天使さまが、ほんとに仲のいいお友達だったら、打ち明けてもいいって言ってくれたの」
紗弥(さや)「魔法が使えるなら、「二階建てのお菓子の家に住む」ていう夢も叶うんじゃない、春乃ちゃん?」
天羽春乃「う~ん、自分が楽しいだけの魔法って、あまりうまくいかないんだよね」
美佳(みか)「魔法なんてあるわけないんだから、魔法少女なんているわけないでしょ」
美佳(みか)「日曜日の朝にやってる、小さい子むけのアニメの話じゃない」
美佳(みか)「もう五年生になったのに幼稚すぎない?」
天羽春乃「でも美佳ちゃん、魔法少女は実在するっていう説もあるらしいよ」
美佳(みか)「それって都市伝説でしょ」
美佳(みか)「トイレの花子さんとかといっしょで」
紗弥(さや)「でも美佳は、サンタクロースのことは信じてるんでしょ?」
美佳(みか)「信じてるって、そういう意味じゃないから」
天羽春乃(う~ん、意外と信じてくれないもんなんだな~)
〇綺麗な一戸建て
天羽家(あもうけ)──
天羽春乃「たっだいま~♪」
〇飾りの多い玄関
天羽春乃「て、まだお母さんも帰ってないや」
〇可愛い部屋
天羽春乃「ただいま、ラックちゃん」
天羽春乃「プッ、また寝てる」
天羽春乃「お着替えっと」
天羽春乃「あたしが魔法少女になって、もう半年かぁ・・・」
天羽春乃(まだ四年生だったんだよね)
天羽春乃(新番組のアニメ『天使の魔法少女ララミット』にすごく感動して──)
〇街中の公園
星野メグミ「マジカル・リリカル・トランス・フォー!」
〇キラキラ
シャララーーーンッ☆☆
ララミット「生活まわりの困ったを魔法でズバッと解決!」
ララミット「暮らしの安心を守る、天使の魔法少女ララミット!」
〇街中の公園
ケット「ララミット! これで一件落着ぽよ」
ララミット「うん、みんなを笑顔にできてよかったね☆」
〇シックなリビング
天羽春乃「ああ!! 感動で涙が止まらない!」
天羽春乃「魔法少女に大切なのは愛の力なんだね!」
天羽春乃「あたしもララミットみたいな魔法少女になる! ならねば!!」
天羽春乃「困った人を助けて、みんなを笑顔にするんだ!」
〇可愛い部屋
天羽春乃(それで、一生懸命にお願いのお祈りをしてたら・・・)
〇可愛い部屋
天羽春乃「おや?」
天羽春乃「なんだか、キレイな緑のウネウネが・・・」
天使「春乃よ、あなたの祈りを聞き届けました」
天羽春乃「わ! びっくりした!!」
天使「わたくしは天界からの使い。すなわち天使です」
天使「あなたに魔法の力を授けましょう」
天使「魔法少女となって、困った人を助けるのです」
天羽春乃「金髪の天使さま、ありがとう!」
天羽春乃「でもあたし、ララミットみたいな立派な魔法少女になれるかなぁ・・・」
天使「『天使の魔法少女ララミット』は、魔法少女を少女たちの憧れにするためのプロモーション用として、天界で企画した作品です」
天羽春乃「え、そうなんだ!」
天使「魔法少女のあるべき姿を誠実に描いてますから、おおいに観賞なさい」
天使「娯楽作ゆえのご都合主義はいなめませんが・・・」
天羽春乃「は~い!」
天羽春乃「よ~し、今日からあたしは魔法少女ハルノだ!!」
天使「それから、あなたを手助けするお守り役もつけましょう。精霊猫のラックです」
ラック「よう、嬢ちゃん。よろしくな」
天羽春乃「ラックちゃん、よろしくね!」
〇可愛い部屋
天羽春乃(・・・てことがあったんだっけ)
天羽春乃「なつかしいなぁ」
ラック「帰ったのか、春乃。 それでどうだった?」
天羽春乃「う~ん、美佳ちゃんはぜんぜん信じてくれなかったよ。たぶん沙弥ちゃんも」
天羽春乃「口裂け女といっしょだって。あれ、人面犬だったかな?」
ラック「しかたあるまい。彼女たちの反応は当然だ」
ラック「たとえ一般の人間が魔法少女と出会っても、すぐにその記憶は失われてしまう仕組みになってるからな」
ラック「だから魔法少女はいつまでも絵空事。だが無用な騒ぎにならずにすむから、おれたちにとってはその方が都合がいい」
ラック「それより、今日も町内のパトロールに行くんだろ?」
天羽春乃「うん、もちろん」
〇川沿いの原っぱ
子供「う~ん、どうしよう・・・」
子供「この川は深いから網もとどかないし・・・」
〇川沿いの道
天羽春乃「ララ、ララ、ララ、ララ、ララミット~♪」
天羽春乃「・・・あっ!」
天羽春乃「困ってる人、はっけーん!!」
天羽春乃「マジカル・リリカル・トランス・フォー! 可愛いコスチュームにチェーンジ!!」
天羽春乃「・・・は、できないんだよね」
ラック「いいから、はよ行け」
〇川沿いの原っぱ
天羽春乃「みんなの笑顔があたしのおやつ! 可憐にカワイク! 天使の魔法少女ハルノ!!」
子供「え、だれ?」
子供「変な子だな?」
天羽春乃「ここはまかせて!!」
春乃は、何もない宙から魔法のステッキを取り出す。
天羽春乃「パーリル マクテク パーナパルト♡」
天羽春乃「川に落としちゃった物よ! 持ち主のところへもどれーー!!」
川面から、オモチャがバシャッと浮かびあがってくる。
子供「ロボ2号が勝手に帰還してきた!!」
「すげーーっ!!」
だがオモチャの近くにあった無関係の廃棄物まで引き上げてしまい──
天羽春乃「やっ!! ヘビ!!」
〇店の入口
〇ケーキ屋
店長「う~ん、お客さんが来ないわねえ」
店長「味には自信があるのに。このままじゃ、お店がつぶれちゃうわ」
店長「でも広告を出すとお金がかかるし・・・」
天羽春乃「わーい、ケーキ屋さんだぁ!」
店長「あ、いらっしゃい」
天羽春乃「この世に困り事がある限り! 元気はつらつ! 魔法少女ハルノ!!」
店長「どうしたの、あなた?」
天羽春乃「う~ん、このセリフもいまいちっぽい」
登場時の名乗り口上は、いまだ定まっていなかったのだ!
天羽春乃「店長さん、おすすめのケーキは何ですか?」
店長「え? そこのフルーツデコレーションかしら」
天羽春乃「パーリル マクテク ポーナパルト♡ 自分でお店の宣伝をしちゃえー!」
店長「あなた、うちのケーキに何を・・・」
ケーキ怪人「おれはキング・オブ・スイーツだ!!」
店長「ひいっ!! あたしのケーキが主張しはじめた!!」
ケーキ怪人「おれ様の魅力を世間に知らしめてやる!!」
〇街中の道路
ケーキ怪人「おれは〈パティスリーモリモト〉のフルーツデコだーっ!!」
「え!? なにこれ!?」
ケーキ怪人「そこの通りがかりのオシャレ女子!! おれを味見しろーっ!!」
「は、はい!!」
「モグモグ・・・」
「おいしい~♡」
ケーキ怪人「メルシーボクー!!」
天羽春乃「常連さんがふえたね。よかったね♪」
〇商店街
天羽春乃「うーん、今日も大活躍だったなあ♪」
天羽春乃「もしかしてあたしって、魔法が上達してきてる?」
天羽春乃「そろそろ、もっと大きな〝困り事〟に挑戦してもいい頃かも・・・」
天羽春乃「ババーンと解決したりして♪」
ラック「いや、春乃はまだまだヒヨッ子だ」
ラック「町内活動が身の丈に合ってる」
天羽春乃「え~~」
〇町の電気屋
天羽春乃「だったら、ご町内で何か大事件が起こらないかな?」
ラック「こののどかな大安町で、そんなことあると思うか?」
天羽春乃「それもそうだね」
アナウンサー「ここで最新のニュースをお伝えします」
店内に展示してあるテレビから、ニュースを伝える音声が漏れ聞こえてくる。
アナウンサー「今月15日の昼頃、大安町のデパート内で行方がわからなくなった五歳の女の子について──」
アナウンサー「捜索を行っている大安警察署は、〈連続幼児失踪事件〉との関連性を示唆しました」
アナウンサー「この一連の事件は、その状況の奇怪さから〝現代の神隠し〟と噂され──」
アナウンサー「すでに十人を超える幼い子供たちが不可解な失踪を遂げています」
〇黒
つづく
次回予告
第二話 連続幼児失踪事件
またみてね!
一体このあとどんな展開になるのか気になりますっ!魔法少女の腕の見せ所ですね✨
魔法少女って女の子にとっては王道の設定ですね。読んでいてワクワクします!失踪事件の報道でストーリーが動き始めて、これからの展開が楽しみになります。ヒヨッコ魔法少女の今後の活躍に期待です!
子どもの頃、私も魔法少女ならぬ魔法使いに憧れてほうきにまたがっていました。そんな記憶をたどりながら、純粋に楽しく読ませて頂きました。