第一話:美人希望にゃ!(脚本)
〇教会の中
見覚えのない空間。
どうやら教会のようだが、静まり返ったこの場には誰の気配も感じられない。
ステンドグラスから差し込むカラフルな光が幻想的な雰囲気を作り出している。
まるで誰かが意図的にセットアップしたかのような、このシチュエーション。
そう、今にもBGMが流れてきてもおかしくない。
・・・。
・・・・・・。
???「目覚めるのじゃ」
???「・・・目覚めるのじゃ」
猫1「スヤスヤ」
猫2「スヤスヤ」
メリッサ「にゃー・・・ちゃおる・・・」
神さま「こら!起きぬか、アホ猫共!!」
「うにゃ? うにゃ?」
神さま「やっと起きたか」
神さま「お前さんらは猫の一生を終え、 無事人間に転生する事が決まった」
ミント「マ? だったらとびっきりの美人希望にゃ」
メリッサ「ウチはもっかい猫希望~」
神さま「なんじゃとぉ?」
メリッサ「前のご主人がお仕事大変そうだったしね~」
メリッサ「あと彼氏も出来ないわで、 こんなことなら猫に生まれたかったって」
メリッサ「何度もウチの背中で泣く事あったし」
ミント「あー 確かに人間そういうとこあるよね。 私も頭丸ごと咥えられたりしたしー」
ミント「まあちょっと命預けてる信頼感が癖になってたけど」
メリッサ「にゃはは」
神さま「バカを言うな! お前たちは猫として人間に愛され、無事卒業するのじゃ」
神さま「ガチャで言えば人間は 『HLSSUR+』 じゃ!よって拒否権はない」
メリッサ「んー まぁ、そこまでいうならしゃーないね」
ミント「りょーかい」
神さま「うむ。 では早速だがお前らは人間になって試用期間に入ってもらう」
メリッサ「しよー期間?」
ミント「なにそれ聞いてない! 嘘つき!くそじじい!! 爪三本刻むにゃ~?」
神さま「誰がくそジジイじゃ、糞猫め! あまり態度が悪いととびっきりの不幸待遇にしてやるぞ」
ミント「にゃにー! そんなことしたら絶対許さないから!」
ミント「私は良いけどね、メリッサは私を庇って車にはねられて死んだんだからね」
メリッサ「ちょ! やめてよ! 猫を庇って死んだなんて恥ずかしいじゃん・・・」
メリッサ「あれ? ミントも結局死んじゃったの?」
ミント「えへ♪」
メリッサ「犬死じゃん・・・」
ミント「猫だけどねー」
メリッサ「てか、ミントがウチの家まで来て散歩に誘わなければ死ななかったのに!」
メリッサ「あー ご主人、泣いてるだろうにゃー。 ちょっと心配になってきたにゃ」
神さま「その涙こそお前らが愛されて来た証じゃ」
ミント「・・・うん、そうだね。 ・・・・・・ジジイごめんにゃ」
神さま「神様と呼ばんか」
神さま「ではお前らはこれから 一時的に人間になって、本当に人間としてやっていく価値があるのかどうか試される」
「・・・・・・」
神さま「そして見事合格すれば、 お前達は晴れて本当の人間になれるというわけじゃ」
メリッサ「なんかワクワクして来たにゃー!!」
ミント「わっかるー! このワクワクは猫の性だよね~」
ミント「あ~ 人間だ~♪ 死んでから人肌恋しかったんだよにゃー!」
ミント「じゃあさっきも言った通り、私は美人希望にゃ!」
メリッサ「同じくー♪」
神さま「ふぉっほっほ、それは問題ない。 お前たちの魂が美しい事はもう既にわかっとるからのう」
シソ「すやすや」
神さま「ん? まだ寝ておる者がおったのか」
メリッサ「あーもう、とりあえずみんな人間にしちゃってよ」
神さま「そ、そうじゃな。 お前たちは取りあえず同じ家で生活してもらう」
ミント「おおー!! なんかドラマみたいで楽しいにゃー」
メリッサ「いいねー♪」
「ンン! では行くぞい。 キン~ヨノヨルーハ~ヤキニーク、ビールシメーニ~ラメーン!」
〇幻想空間
メリッサ「うわっ! 眩しいにゃ!」
メリッサ「・・・にゃ!?」
ミント「眩し・・・ え? 何これ? なんか急に眠気が・・・・・・」
メリッサ「まぶたが重いにゃ・・・」
「・・・zZZ」
シソ「んにゃ? ここはどこ私はシソ」
神さま「今頃起きたのか! えぇい! お前らは人間に生まれ変わりじゃ! しっかり生きてこい!」
〇明るいリビング
メリッサ「ちゃおる・・・」
メリッサ「ん? ここはどこにゃ」
ミント「うにゃ・・・ おうち?」
メリッサ「あ、起きたー! ねえ、ウチら人間になってるにゃ! ウチはメリッサ! あなたは?」
ミント「私はミントにゃ! よろしくにゃ!」
メリッサ「やっぱりー! 面影あるかもー!」
ミント「えへへ 私美人になってる?かわいい?」
メリッサ「超なってるにゃ! マジ天使にゃ」
ミント「やったー! メリッサも可愛いよー!」
メリッサ「照れるにゃ~」
イチカ「あら、新しい家族の子たち?」
メリッサ「にゃ!?」
ミント「お姉さんはだれ?」
イチカ「はじめまして。 私はイチカ、あなた達のお母さんです」
メリッサ「えー! ママなのー?」
ミント「若いにゃー」
イチカ「ふふ。 若くて綺麗でしょ?」
イチカ「まぁ、お母さんなのは冗談よ」
「にゃ??????」
イチカ「ふふふ。 でも今日から私達家族だし、仲良くしてね?」
メリッサ「うにゃー! なんかよくわからないけど、わかったにゃ!」
ミント「嘘つかれた~ でも面白そうだし、私もそれでいいよー!」
メリッサ「じゃあ改めて自己紹介にゃ! ウチの名前はメリッサ!」
メリッサ「猫だった時に友達だったのがこっちのミントにゃ! 宜しくー」
ミント「私はミント。 メリッサとは隣の家同士だったにゃ。 これから宜しくねー」
イチカ「うん。 宜しく♪ 2人とも元猫ちゃんでハーブの名前でお揃いなのね、可愛い♪」
ミント「えへへ、イチカも猫?」
イチカ「私は犬だったのよ~」
イチカ「ワンワンってね♪」
こうして、人間の女の子になった猫と犬の新たらしい生活が始まった
メリッサとミントは無事人間としてやっていけるのか
〇明るいリビング
その夜、3人は食卓を囲み夕食を取ろうとしていた
イチカ「みんなー ご飯よー」
メリッサ「わーい♪」
ミント「ねぇねぇ、 脂っこいもの食べていいの?」
イチカ「大丈夫よ。 私達人間だからね♪」
ミント「やったー!」
メリッサ「いただきますにゃ」
ミント「いっただきま~す」
メリッサ「うまっ うめーにゃ!口の中が凄く幸せにゃ!」
ミント「うん! 人間最高だにゃ~」
イチカ「ふふ、良かった」
メリッサ「あ、〝ちゃおる〟も欲しいにゃ」
〝ちゃおる〟とは猫の好物だ。
イチカ「ん~。 一応あるんだけど・・・ あんまりオススメはしないわよ?」
メリッサ「なんでー?」
イチカ「だって、それキャットフードでしょ?」
イチカ「味覚も変わってると思うし・・・ 美味しく感じられなくなってると思うわ」
メリッサ「そんなことないよ! 美味しいもん!」
ミント「そうだよー キャットフード美味しいよー」
イチカ「ん~ じゃあ、少しだけね。 はい、2人ともスプーン一杯分よ。 あ~ん」
メリッサ「ありがとにゃ、あーん」
ミント「わーい」
メリッサ「うにゃ・・・」
メリッサ「(この味・・・ 微妙・・・)」
ミント「うっ・・・」
ミント「(なんかまずっ・・・)」
イチカ「どうだった? やっぱりお口に合わない?」
メリッサ「いや、なんか美味しいってわけじゃないけど・・・不思議な感覚にゃ」
ミント「う、うん。 なんだろ? 懐かしいような?」
イチカ「そっか・・・」
イチカ「味も薄いし美味しくはないと思うけど、 やっぱりまだ猫だった頃の感覚が残ってるのかしらね?」
メリッサ「んー、多分そうかもにゃ」
ミント「う、うん。 きっとそうだよー」
イチカ「まぁ、無理に食べる必要もないから少しずつ慣らしていきましょうか?」
「うん!」
ミント「あれ? イチカがぼりぼり食べてるのは何?」
ミントが指さす先にはスナック菓子のようなものがあった
イチカ「あ、これ? ドッグフードよ」
メリッサ「えー! おいしいの?」
イチカ「マヨネーズに一味唐辛子を ちょっと振りかけたものに付けて食べると結構おいしいのよ~?」
ミント「オッサンが イカにそれやってるの見たことあるにゃ」
メリッサ「にゃはは、イチカおっさん」
イチカ「えー? 美味しいのにぃー!」
イチカ「今度あなたたちの〝ちゃおる〟にも何か味つけてみましょうね♪」
「やったー!!」
〇綺麗な部屋
夜も更け、寝床についた3人。
イチカ「遅くなってきたしそろそろ寝ましょうね」
メリッサ「はーい」
イチカ「え? 私の隣で寝たい? 仕方ないわねぇ~ じゃあ私が真ん中ね♪」
ミント「イチカは寂しんぼにゃ」
イチカ「そうよ~? だから可愛い子猫ちゃんたちに囲まれて寝るの!」
「しょうがないにゃ~」
3分後。
イチカ「Zzz・・・ ぱぴぷぺぽ・・・」
メリッサ「イチカ寝るの早いにゃ。 てかなんの寝言にゃ」
・・・。
・・・・・・。
ミント「はぁー でも今日は色々楽しい事あったねー」
メリッサ「だね、ずっと楽しい事ばっかりだといいね」
イチカを間に挟み、手と手を合わせあってニッコリと笑う二人。
神さま「満喫しておるようじゃな」
メリッサ「にゃにゃ!?」
ミント「じじい!」
神さま「神さまと呼ばんか!」
神さま「さて、1日が終わった事じゃし お前たちに忠告をしに来た」
ミント「なんにゃ? つまんない内容だったら不審者が出たって通報するにゃ」
神さま「バカ者、やめんか!」
メリッサ「ミント神さまにはきついにゃ」
神さま「全く・・・ よく聞け、お前らは自由じゃ」
神さま「しかし絶対にやってはいけない事がある」
2人は神様の言葉に耳を傾ける。
神さま「絶対に元の飼い主に会おうなどと考えるな」
ミント「えー なんでー?」
神さま「元の家族に会いたいと願う気持ちはわかるが、それはダメじゃ」
神さま「いいか? もし仮に・・・ もしもの、もーしーもーの話じゃぞ~?」
ミント「うざいにゃ」
神さま「ンンッ・・・!」
神さま「元飼い主の元へ、 自分は死んだ猫だと名乗る知らない人間が現れたらどうじゃ」
メリッサ「少し怖いにゃ・・・」
ミント「確かに・・・」
神さま「そうじゃ。 それにずっと一緒にいられるわけでもない」
神さま「するとまた辛い別れを経験せねばならなくなる」
神さま「お前たちは 今の生活が気に入っているのであろう?」
2人の顔を真っ直ぐ見つめる神様。
メリッサ「ウチは・・・ 今の暮らし好きだにゃ」
ミント「私もー!」
神さま「ならば、このままここで暮らすがよい」
神さま「心配せんでも元飼い主たちは お前たちの事を忘れたりはせんよ」
神様はにっこりと笑い2人の頭を撫でる。
ミント「うん」
メリッサ「わかったにゃ」
神さま「うむ。 ところでもう1匹の猫も同じハウスに飛ばしたんじゃが・・・」
メリッサ「そういえば見てないにゃ」
Zzz
もう1匹の猫の〝シソ〟が布団の隅で寝息を立てていた。
ミント「布団の下にいるにゃ」
メリッサ「ほんとだ。 全然気付かなかったにゃ」
神さま「マイペースな奴じゃな」
神さま「そいつにもさっき話したことを伝えておいてくれ」
神さま「それじゃあワシはそろそろ帰る」
ミント「じ・・・」
ミント「神様ばいばーい」
メリッサ「バイバーイ」
試用期間で人間になった、メリッサとミントの人間生活はまだ始まったばかり。
次回はいよいよ、『シソ』の姿が!
そして新たに転生したきた、あにま☆りんねのキャラクターも登場。
ますます見逃せない、
あにま☆りんねをお楽しみに!
To be continued.
言いたい放題のメリッサとミントの会話、猫が喋ったら本当にこんな感じになりそう。じじい呼ばわりされる神様もいい人でほっこり。昔飼っていた犬もこんな風に輪廻転生してどこかで幸せに暮らしていてくれたらいいな~としんみりしてしまいました。
なんだかとても可愛いお話ですごくほっこりしました🥰
本当のワンコとねこちゃんが一緒に寝ている姿が浮かんできました☺️
このお話を読んでいると、自分の前世は何だったんだろうと、とても気になってきました!