エピソード46(脚本)
〇図書館
俺たちは図書館内のテーブルで集めた資料を読むことにした。
テーブルの上にある本は『現代怪異図鑑』や『うわさの都市伝説』など、怪異に関係のありそうな本だ。
俺たちは手分けして、それぞれが持ってきた本に目を通し始める。
〇図書館
由比隼人「はあ~・・・」
由比は読んでいた資料を閉じて、ぺたりと机に頬をつける。
時計を見ると、資料に目を通し始めて2時間ほど経っていたらしい。
茶村和成「どうだ? なにかあったか?」
由比は肩をすくめて、首を横に振る。
スワも小さくため息を吐いて、静かに本を閉じた。
由比隼人「うん・・・トイレの花子さん、口裂け女。 有名な都市伝説が載ってるけど・・・」
諏訪原亨輔「・・・どれもどこかで聞いたことある情報ばかりだな」
茶村和成「だよな・・・俺もだ」
俺たちはぐったりと机にもたれる。
とりあえず目ぼしい本を何冊か借りて家でじっくり読むことに決め、今日は終わりにすることにした。
俺たちはそれぞれ数冊の本を選んだあと、元あった本棚に資料を戻しに行く。
そしてカウンターで手続きを済ませたあと、借りた本を手に図書館をあとにした。
〇中央図書館(看板無し)
自動ドアをくぐったとき、また本を探しているときに感じたあの視線が俺を射抜いた。
茶村和成「・・・・・・」
俺は視線を感じた方向をじっと見る。
誰も見当たらなかったが、すぐに俺を見ていた気配は消えた。
諏訪原亨輔「どうした?」
茶村和成「なんか・・・さっきから視線を感じるんだ。 気のせいだとは思うんだけど、ふたりはなにか感じなかったか?」
由比隼人「いや、俺は別に」
由比の言葉にスワもうなずく。
思い込みだろうとは思ったがどうもなにかが引っかかった。
俺が眉間にシワを寄せていると「あっ!」と由比が声を上げる。
由比隼人「時間やば! はやく行かないと映画に間に合わないって!」
慌てて走り出す由比を追いかけるように、俺とスワも映画館まで急いだ。
〇大きい交差点
映画を見終わり、俺は由比とスワと共に感想を言い合いながら街路を歩く。
評判通りの迫力で、たしかにこれは何度も見る人がいるというのも頷ける映画だった。
俺は電車に乗る由比とスワと別れてバス停へと向かう。
バスが来て、乗り込もうとしたとき、またあの視線を感じた。
茶村和成「・・・・・・」
俺は振り返らずにそのままバスに乗り込んだ。
〇住宅街
ボタンを押して、定期を提示してからすっかり慣れた乗り場で降りる。
人気のまったくない通りを少し歩くとピタリと足を止めた。
バッと後ろを振り返ると、一瞬だけ人影が建物の影に引っ込むのが見える。
茶村和成「・・・・・・」
間違いない。視線の正体はこいつだ。
茶村和成「誰だ? 昼からずっと、俺のことつけてるだろ」
返事はない。
俺はため息をつくと、影が引っ込んだ場所へと歩いていく。
角を曲がってのぞき込むが、そこには誰もいなかった。
茶村和成「・・・・・・」
「こっちだ」
後ろから声が聞こえる。
勢いよく振り向くとそこにはズボンに羽織の不思議な恰好をしたおかっぱ頭の男が立っていた。
同い年くらいに見えるその男は、気の強そうな瞳でじっとこちらを見ている。
茶村和成「・・・・・・」
俺は予想外の姿に驚いて言葉を失った。
誰かに付け回されることをした記憶は一切ない。
不審げな目で見つめ返すと、俺が口を開く前に、男は凛とした声で言った。
???「茶村和成。今からお前を連行する」
突然の発言に俺は困惑の表情を浮かべる。
なんで俺の名前を知っているのか。
なんで連行されないといけないのか。
というかその細い腕で俺を連れ去ることができるのだろうか。
茶村和成「はぁ、いったいなにを・・・」
俺がそう言った瞬間、相手の姿がふっと消えたかと思うと、一瞬のうちに喉元にナイフを突きつけられていた。
茶村和成「!!」
???「おとなしくしていれば、危害は加えない」
突然のことに俺は混乱しっぱなしだったが、頭が働く前に身体が動いた。
俺は素早く相手の腕をつかんでねじり上げる。
???「っ!」
男の手からナイフが落ちる。
俺は落ちたナイフに気を取られている一瞬のうちに、腕をつかんだまま相手の背後に回る。
そして片方の足でナイフを手が届かない位置まで蹴り飛ばすと、ねじり上げている腕を相手の背中に押し付けた。
まだ心臓はバクバクしているが、俺はほっと息をつく。
ここまで技が決まれば普通の人間は抜け出すことはできない。
???「あぁ、そういや武術かじってるんだったな」
鼓動が止まらない俺をよそに、男はのんきな声でつぶやいた。
俺はナイフを突きつけてきた男のありえないスピードを思い出し、思わずねじり上げている手に力を込める。
しかし男はニッと笑うと、俺にねじり上げられている腕をこともなげに動かした。
茶村和成「っわ!?」
その細い身体のどこに秘めていたのかわからないほど強い力で腕を強引に戻すと俺の方を向く。
俺は慌てて手を離し、距離を取ろうとしたが、今度は逆に腕をつかまれ足を払われて地面に押さえつけられた。
冷たいアスファルトの地面が頬に触れる。
そのまま男は俺の両手をまとめて、背中に押さえつけてきた。
茶村和成「ぐ・・・」
抵抗しようとするがビクともしない。
俺は肩越しに自分を押さえつけている男を見上げた。
???「静かにしてな」
男は街灯のまたたきの中、手刀の構えをとった。
茶村和成(やば・・・)
男はそのまま俺に手刀を振り下ろす。
俺はぎゅっと目をつむった。
次の瞬間、俺を押さえつけていたはずの男の身体が、勢いよくふき飛んだ。
彼自身が飛んだのではない。
なにか強い力が男を突き飛ばしたのだ。
俺はなにが起こったのかわからず、とにかく身体を起こして男から逃げようとする。
そんな俺の横に男を吹き飛ばした誰か・・・。
薬師寺が立っていた。
茶村和成「ッ!? 薬師寺!?」
薬師寺廉太郎「遅いから心配したよ。怪我はない?」
茶村和成「あ、ああ・・・」
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