メタリアルストーリー

相賀マコト

エピソード44(脚本)

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〇草原
  アイリの家での話し合いから数日経って、ニルたちがメルザムを出発する日がやってきた。
  目指すはメルザムからはるか北にあるハイドン帝国だ。
  ハイドン帝国には世界最大と言われている図書館がある。
  先人の知識が詰まった膨大な書物がそこに集められていて、その全てが厳格な司書に管理されている。
  その図書館でならニルの謎に関する情報が手に入るかもしれないと3人は考えた。
アイリ「ニル、行くわよ」
ニル「うん」
  ニルは長い旅路のために準備した荷物を背にメルザムの門をくぐった。
  門の前には旅に同行する依頼人の姿があった。
  長い道中を徒歩で旅するには限界があるため、3人はちょうど帝国に行く商会の護衛の依頼を受けて、共に向かうことにしたのだ。
マデオ「こんにちは。 改めまして、今回依頼をしたマデオです」
アイリ「こんにちは、私はアイリよ。 こっちは一緒に護衛するニルとエルル」
  アイリに紹介されたニルとエルルは、笑顔で会釈する。
  マデオはにこにこと笑みを浮かべて頷く。
マデオ「実力派でメルザムに知れ渡り、最年少で特級コレクターになったアイリ・バラーシュさん」
マデオ「メルザム一とされるメイザスさんのお孫さんで、特例で中級コレクターになったエルルさん」
マデオ「それに“名滅”と謳われ、突如現れたネームドに勇猛果敢に立ち向かってメルザムを救って特級となったニルさん」
マデオ「メルザムにいて今をときめくこの御三方を知らない者などおりませんよ」
  ひとりひとりに目を合わせて言うマデオに、称賛に慣れていないエルルとニルは照れ笑いを浮かべた。
アイリ「そんなに褒めても依頼料はギルド経由だから安くはならないわよ」
アイリ「でも、道中の護衛は任せて。 これからよろしくね」
マデオ「こんなに頼もしい護衛はないですな。 こちらこそ、よろしくお願いします」
  アイリはマデオに手を差し出し握手する。
  ニルとエルルも、マデオと握手を交わした。
  これから目指すハイドン帝国に行くには、カラカール渓谷の奥にあるカラカール山脈帯を越えなければならない。
  カラカール山脈では、ギアーズだけではなく山賊に襲われる可能性もある。決して簡単な旅路ではない。
  ニルたちは準備を終えたリンド商会の荷台の最後尾に座り、遠くなっていくメルザムの街を見つめた。
エルル「わあ、もうあんなに街が小さく!」
  エルルは楽しげに両手の親指と人差し指を使って背景を切り取るように見ていた
  アイリは太陽の眩しさに目を細める。
アイリ「戻ってくるのはいつになるかしらね」
エルル「うふふ、ずーっと先かもしれないですね」
  エルルはそう言ってから、ニルとアイリに向き直る。
エルル「私、今とってもワクワクしてます。 おふたりとなら、どこまででも行ける気がしています!」
  心底楽しい様子のエルルに、ふたりも笑みを返した。
  メルザムの街が見えなくなったところで、ニルは大きく伸びをする。
  雄大な自然の中、リンド商会の行商隊が風を切って進んでいく。
  今まで進んだ景色とは違ったきらめきに満ちている道のりに、ニルは密かに胸を高鳴らせていた。

〇湖畔
  その夜はラパークの森、ファティマ湖のほとりで夜を過ごすことになった。
  澄み切った湖には、ひときわ眩しい満月が映し出されている。
  行商隊に紛れて話していたニルに、 アイリとエルルは声をかける。
アイリ「ニル、私とエルルは水浴びしてくるから。 誰も覗かないように見張りよろしくね」
ニル「うん。いってらっしゃい」
  ニルは手を振ってふたりを送り出す。
  もっともあのふたりの力を知っている行商人たちが、覗きをするとも思えないけど。

〇湖畔
  森の陰で、アイリとエルルは服を脱ぐ。
  エルルは、アイリの方を向くとキラキラと目を輝かせた。
エルル「えーっ! アイリさんって結構胸おっきいんですね!」
アイリ「・・・そんなことないわよ」
アイリ「っていうか、アンタのほうが・・・」
  アイリはエルルの胸をじっと見つめる。
  エルルの幼い顔とは似ても似つかない、凶器のような2つの起伏がある。
  それを見てから、アイリは自分の胸を見下ろしてすこし虚しい気持ちに襲われた。
  ため息を吐いた刹那、アイリは全身にゾッと悪寒を感じる。

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