スーパーセンテナリアンの孫娘

ぽむ

ひぃの回顧録(脚本)

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〇病室のベッド
ひぃばぁば「うう・・・うう・・・。 はっ」
あかり「どうしたの?ひぃばぁば」
ひぃばぁば「うーん。 ちょっと、昔の夢を・・・ 見たようでね・・・」
あかり「昔の夢?」

〇実家の居間
  時は大正。
  お嬢様がマスターと駆け落ちした後、
  書類を預かっていた弁護士さん、後見人としてやってきた。
  その人の話によると、
  私名義に、土地と建物と見舞金?を残してくれた。
  
  そこで故郷の家族を呼び寄せ、洋品店を始める
後見人「では、そのように。 なにかありましたら、お呼びください。 私で良ければ、お力になります。 お嬢様には恩がございますので。」
ひぃ「ありがとう。よろしくお願いします」
  まだ女性の地位が低い時代、
  女ひとりで意見を通すことや、
  お金のやり取りすら、ままならなかった。
  後見人としてくださる方がいなかったら、自身が自由に仕事をすることも叶わなかっただろう。
  そんな閉塞的で不自由な時代。
  婦人参政権が行われるのは、第二次世界大戦後の昭和21年4月10日。
  それまでは、女性が政治に参加することすら、できなかったのだ。
  国を動かしている政治家は
  貴族院の皇族、貴族や、村など選ばれた長の成人男性のみ、そんな時代だった。
弟コウタ「ねえちゃーん。 これはどうするの?」
ひぃ「この型の通りに切っていくのよ。 見てなさい」
弟コウタ「なるほど、やってみる」
ひぃ「コウタは筋がいいわねぇ」

〇レトロ喫茶
ひぃ「いらっしゃいませ。 なにかお探しですか?」
お嬢様「流行りの洋装を探しているの」
ひぃ「でしたら・・・」
  商売は順調だった。
  お嬢様の知り合いのツテもあり
  
  華族様方がこぞって
  仕立ての依頼が来たからだ。
  お店は繁盛し、使用人を何人か雇うまで成長した。

〇シックなバー
ひぃ「ふう」
後見人「お忙しそうですね。 繁盛しているようで、何よりです」
ひぃ「ええ。貴方様のおかげでも、ありますわ。 私一人だけでは、こう上手くはいかなかったでしょう」
ひぃ「気は張っては、いるのですが 女ひとりですと、取引先が厳しくて」
後見人「無理もないです。 しかし、おひぃ様あってのお店で ございますよ。」
ひぃ「いいえ、貴方様は優秀でおられます。 ご家族様が、貴族院出身の方なのでしょう? 平民出の私とは、身分が違いますわ」
後見人「そんなこと。 私は学生の時分、将来に悩んでおりましたところを、貴方様に助けていただいたのです」
ひぃ「私が?貴族のお嬢様じゃなくて?」
後見人「はい」
後見人「あれは、3月のまだ桜が散り急ぐ頃だったでしょうか・・・」

〇桜並木
後見人「もう、どうして良いのか、 わからないのだ・・・」
ひぃ「どうしましたの?」
後見人「私は次男で、二十歳ですから、 この春を過ぎたら徴兵されてしまうのです」
後見人「私の家は貴族なのですが、 お金がありませんから、兵役免除のためのお金が、支払えないのです」
  国民皆兵の時代。
  明治6年(1873)1月、太政官布告により徴兵令が発せられました。
  徴兵令では、男子は満20歳で徴兵検査を受け
  検査合格者の中から抽選で「常備軍」の兵役に
  3年間服さなければならなかった。
  徴兵令は、官庁勤務者、官公立学校生徒、医術等修行中の者、一家の主人、270円の代人料を収めた者を「常備軍」兵役の免除者と
後見人「私はもっと勉強したいのです。 人の役に立つ、勉強を・・・」
後見人「私は、人と戦いたくはない。 ましてや殺し合いなど・・・ なんて言ったら、非国民扱いされてしまいますね」
ひぃ「ワタクシも。人が人と戦うのは嫌いです」
後見人「お嬢さん・・・お名前は?」
ひぃ「ひぃです。 おそらく、柊(ヒイラギ)のヒイからじゃないかと思っています。 魔除けというか ヒリヒリと痛む…でしょうかね。」
後見人「ふふ。 強くて美しい名前ですね」
  そう、それはそれは美しく・・・
  舞い散る桜のように

〇シックなバー
後見人「僕はあの時に肩替りしてくれた 免除金のお陰で、今があるんですよ。 勉強に専念できて、今の仕事もできるのですから」
ひぃ「あぁ、あのときの・・・ あれはお嬢様に相談してたの。 正確に言うと、私の恩人たちのおかげよ」
ひぃ「アナタがとても優秀であったので。 もったいないとお嬢様ともお話しましたもの ワタシにはそんな大金、 動かせませんわ」
後見人「でもそれらの偉い方を 動かしてくれたのは、 やはり貴方様のお力です」
後見人「僕で出来ることは お手伝いいたします」
ひぃ「そう ではありがたくお言葉を 頂いておきますわ」

〇レトロ喫茶
ひぃ「きょうは百貨店で展示会の日ね。 うまくいくといいのだけれど」
ひぃ「成功したら、百貨店内に 念願の、店舗が出せるの。」
  「お嬢様大変です!
  コウタ様が、搬入の荷が崩れて下敷きに」
ひぃ「なんですって!!!」

〇田舎の病院の病室
ひぃ「コウタ、コウタ、 目を開けて!」
後見人「残念ですが、コウタ様は・・・」
ひぃ「コウタ!目をさまして! コウタ!やっと念願のお店が持てるって喜んでいたじゃない!!! コウタ!!!」
ひぃ「二人で・・・ やっと・・・ うう、ううううぅぅ・・・」
後見人「ひぃ様・・・」

〇病室のベッド
あかり「それで、どうなったの?」
ひぃばぁば「弟は、目を覚まさなかった。 その時のことを、 夢で思い出してしまってね 本当に可哀想だったねぇ・・・」
ひぃばぁば「でもその後な・・・」

〇実家の居間
後見人「ひぃさん。 僕と結婚してください。 貴方を一生、支えて生きたい。 お願いします。ハイと言ってください」
ひぃ「少し・・・考えさせてください。 せめて、弟の喪があけるまでは・・・」
後見人「そうですね。 貴方の気持ちも考えず、僕が急ぎすぎました。スミマセン」
後見人「僕は・・・いつまで待ちます。 貴方のそばにいます」

〇桜並木
  また幾年が、過ぎたでしょうか。
  
  仕事に追われ時が過ぎるたびに、
  弟のそばにいられなかったことが悔やまれて、悔やまれて。
  それでも私は
  働き続け、走り続けるしかなかった。弟のためにも。

〇幻想空間
  つづく

次のエピソード:ひぃの回顧録2

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