ひぃの回顧録2(脚本)
〇病室のベッド
あかり「ひぃばぁば、 また、お話の続きを聞かせてよ。 弟のコウタ叔父さんの話?とか」
ひぃばぁば「そうねぇ。 コウタは筋が良くてねぇ。 ワタシが教えること すぐ覚えるんだよ」
〇実家の居間
弟コウタ「ねえちゃーん。 これはどうするの?」
ひぃ「この型の通りに切っていくのよ。 見てなさい」
ひぃ「ハサミをこうやって当てて まっすぐに切るの」
サー
サー
弟コウタ「なるほど、やってみる!」
サー
サー
ひぃ「コウタは筋がいいわねぇ」
「ウフフフ」
〇桜並木
ひぃ「コウタと二人で、 百貨店にお店を出そうって。 頑張ってきたのに」
弟は、積荷の搬入事故で
亡くなってしまった。
ワタシは悲しみを忘れるように、
さらに仕事に没頭した。
出店は順調で、
百貨店への催事も決まり
準備に追われていた。
私は暇もなく
働き続け、走り続けるしかなかった。
弟のためにも。
ひぃ「お店に戻らなきゃ」
〇アパレルショップ
ひぃ「ようこそ、お越しくださいました。 先日のご注文されたドレスが 出来上がっております」
お客様「ええ、ありがとう。 助かるわ、急だったものだから」
ひぃ「帝国ホテルの新館がオープンするので、 開館式があるそうですね」
お客様「そうなのよ、主人と同伴じゃないとって、招待状が来てしまったものだから」
お客様「それにしても、今年は暑かったわね。 もう明日から9月になりますし 少しは涼しくなるかしら」
ひぃ「そうですね。 軽く羽織れるケープも、 お付けしておきますね」
お客様「ありがとう。 アナタのところのデザインは とてもハイセンスだし素敵で大好きよ。 また寄らせてもらうわね」
ひぃ「ありがとうございます!」
ひぃ(あれは、コウタのデザインなの! コウタ!素敵なデザインって 認めていただいたわよ!)
ひぃ(二人で作ったデザイン帳、 今でも大事にしてるからね)
〇アパレルショップ
ひぃ「さて、そろそろ、 お昼休憩になる頃かしら お直しを仕上げなくちゃ」
スタッフ
「直しは我々がやっておきます、
お昼ご飯を取られたら、
いかがですか」
ひぃ「ありがとう! でしたら、ワタシが皆さんの お昼を買ってまいりますわ!」
ひぃ「美味しい老舗の お弁当屋さんがあるのよ!」
「わかりました、
よろしくお願いいたします」
ひぃ「行ってくるわね!」
タッタッタッ
〇開けた交差点
ゴゴゴ
ひぃ「え?なに?」
ゴゴゴゴゴゴ
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ
ひぃ「キャーッ」
〇荒廃した街
大正12年(1923)
9月1日午前11時58分
関東地方南部を
マグニチュード7.9の
大地震が襲い
死者約9万9千名、
行方不明者約4万3千名、
全壊家屋は約12万8千戸、
焼失家屋は約44万7千戸。
街に甚大な被害をもたらした。
〇病室のベッド
ひぃばぁば「それは怖かったねぇ 立っていられないんだ」
あかり「それで、どうなったの?」
ひぃばぁば「その後な・・・」
〇荒廃した街
助けて・・・
ひぃ「よいしょ!」
幸い瓦礫で隙間ができており
すぐに引っ張り出せた。
お嬢様「あぁ助かったわ」
私は倒壊した建物から
畳と布団を運んで道路脇に置いた。
ひぃ「とりあえず、この畳の上に お座りになって。 助けが来るまで待っていてね」
お嬢様「ありがとう、お名前は?」
ひぃ「「ひぃ」と申します。 あちらの百貨店で洋服を販売しています」
ひぃ「お店に戻らなきゃ。 ごめんなさい、もう行きます」
お嬢様「そう、ありがとう」
タッタッタッ
〇荒廃したショッピングモール
社長!
ひぃ「みんな!無事でしたか!?」
「従業員は皆、
避難してまいりました!
建物は火災に見舞われております!」
ひぃ「なんですって!」
あっ、何処に行かれます!
〇荒廃したデパ地下
ひぃ「お店にコウタのデザイン帳が 置いてあるのよ!」
ひぃ「あった!」
ひぃ「キャッ」
男「危ない!」
ひぃ「ありがとう、照明が落ちてきて 危なかったわ」
男「火の手が回っている! さぁ、早く逃げましょう」
〇病室のベッド
ひぃばぁば「東京駅や横浜の周りも 火事で焼かれてしまって 出したお店も酷い目にあったねぇ」
ひぃばぁば「でもコウタのデザイン帳だけは 取りに行かなきゃって 必死だったねぇ」
あかり「そうなんだ」
ひぃばぁば「・・・」
あかり「ひぃばぁば? 眠くなっちゃったかな?」
〇幻想空間
つづく