不思議なノート

ぽむ

エピソード5(脚本)

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〇インターネットカフェ
  カタカタカタカタ
ショウヘイ(よし、原稿も送ったし。 ふう、疲れた・・・)
  僕はしがない貧乏小説家。
  (という名の何でも屋)
  
  コンデジカメラ片手に、
  写真を撮って取材して
  コラムや記事を書いて、
  なんとか飯を食っている。
  
  でも近頃、仕事が減った。
ショウヘイ(アパートは風呂なし、本当に寝るために帰るだけ。 ここはシャワーも使えて、ネットも使えて、ドリンクも飲み放題。)
ショウヘイ(でも、いつまでお金もつかな 日々暮らすのでやっとだし)
  実家はすぐそばにあるけど、
  家族や周囲の煩わしさに、独り暮らしを始め、もう五年。
  今の暮らしも、だいぶ慣れた。
  もう作家なんかやめて、
  実家の店を継ぎなさいと、
  言われるのが嫌で。
  ワガママなのかもしれない。
  でも自由でいたいから。
  そんな僕にも、好きな人はいる。
ミーナ「はい、オマタセシマシタ〜 スパイシーカレーです〜」
  彼女はミーナ。
  アイドルを目指している。
  
  勝手に僕が好きなだけ、だけどね。
ショウヘイ「ありがとう。 最近は調子どう?」
ミーナ「バッチリですぅ〜」
ミーナ「(小声)コソッ こちら、次公演のフライヤーです。また、来てくださいね♡」
  彼女は、このネットカフェで働きながら、掛け持ちでアイドル活動をしている。
  ひそかなファン。
ミーナ「それでは〜」
ショウヘイ(お金もなくなるし、 もうライブにも、行けなくなる 会えなくなるのは、辛いな…)

〇公園のベンチ
ショウヘイ「わかりました。 失礼します・・・」
  ピッ
ショウヘイ「どうしよう… また仕事が減ったし、 今のアパートも追い出されそう…」
ショウヘイ(実家に戻るのも嫌だし、今の生活も続けられない。 もう何もしたくない・・・)
ショウヘイ(ワガママなのかもしれない。 でも、もう疲れたし、消えちゃおうかな… お腹も空いた・・・)
店主「あら、そこのアナタ。 ちょっと試食していかない?」
ショウヘイ「えっ、誰?」
店主「こっちよ〜」

〇奇妙な屋台
店主「さぁ、そこ座って。 オナカ空いてそうなカオ、 してるんだもの。」
ショウヘイ「でもお金持ってないですし・・・」
店主「いいのよ〜 出世払いにしておくから〜」
ショウヘイ「出世払い… じゃあ遠慮なく」
  ズズ〜
ショウヘイ「うまっ。なにこれ!」
店主「あらそう〜 よかったわ〜 秘伝のタレよ〜」
ナオト「こんばんわ〜」
店主「あら、いらっしゃい。 アナタもどうぞ」
ナオト「美味しい〜!!! いつもありがとう、おじちゃん」
店主「おじちゃんはやめて〜 せめて、お兄さんにして〜」
ショウヘイ(こんな夜中に、 あんな小さな子が・・・)
ミーナ「ナオトごめーん。 また遅くなっちゃった」
ナオト「いいよ、姉ちゃん、」
ショウヘイ「えっ、姉ちゃん?」
ナオト「そうだよ、ウチの姉ちゃん。 可愛いでしょ。アイドルなんだ。」
ミーナ「こら生意気を言ってえ〜 私達、両親がいなくて、二人姉弟で、 働いてると、どうしても遅くなって」
ショウヘイ「知らなかった・・・ 僕はショウヘイ。しがない物書きです。 よかったら、 僕に手伝えることがあったら 言ってください」
ミーナ「あら、いつも来てくれる、お客様ね。 お兄さんの知り合いだったの?」
店主「ええまぁ。 でしたら、ナオトくんを預かってもらうのは、どうでしょうねぇ。 彼なら大事にしてくれると思いますよ」
ショウヘイ「えっ、僕が?」
ミーナ「お兄さんがそう言うなら、大丈夫よねぇ。 部屋が余ってるから、 弟と一緒に家でお留守番してくれると嬉しいわ」
店主「そうそう、お仕事にも困ってたみたいで、そうしなさいよ〜 困ったらまた 相談に乗ってあげるからぁ〜」
ショウヘイ(なんでそのこと、知ってるの? それになんで、そんなに親切なの? ちょっと、このひと怖い…)
ショウヘイ「・・・いい話すぎるけど。 でも住む家にも困ってる、 今の僕には断れないね」
ナオト「やったぁ~ じゃあお兄ちゃん 一緒にゲームしよ〜」
ミーナ「ダメよ、もう寝るんだから。 えーと、早速ですけど 一緒に来ますか?ご案内します。」
ミーナ「いろいろお話して決めなきゃ」
ショウヘイ「スミマセン。 では失礼します。」
ミーナ「じゃねー お兄さんありがとうー」
店主「・・・」
店主「さて。 材料をもっと集めなきゃ」

〇シックなリビング
ショウヘイ(うわぁ、立派な家)
  彼女たちは早くに両親をなくして、
  ご両親の親友だという事務所の社長さんが親代わりに。
  両親の遺産は弁護士等、
  管財人を通じて、支払いをしているらしい。
  特にお金に特に困っているわけではなさそうだか、バイトをしているようだ。
  彼女なりに、気を使っているのだろう。
  お金を使うのも、管財人に了承を得なければいけないようだし。
ミーナ「・・・で、秘密は作らない。 ちゃんと話し合う。 ウチのルールはそれくらいかしら。」
ミーナ「履歴書ありがとう」
ショウヘイ「ええ、まあいちいち紹介が面倒で、いつもデジタルで持ってますから」
ナオト「眠いから 僕もう寝るね・・・おやすみなさい」
ミーナ「おやすみ〜」
ミーナ「えーと、あとシッター料は、お支払いするわ。家賃もタダでいいし」
ショウヘイ「そんな悪いですよ じゃあ、せめて家事手伝いさせてください、独りぐらしだし、僕は得意ですよ。」
ミーナ「ありがとう。お手伝いさんが来て、 家事をしてくれるから、大丈夫よ。 そちらの部屋はアナタの部屋にして使っていいわ。」
ミーナ「ここは24時間セキュリティだし、マネジャーさんも同じ階に住んでるから、何かあったら、これで連絡して。」
ミーナ「じゃあ、ワタシも寝ます、おやすみなさい」
  パタン
ショウヘイ(なんか・・・大丈夫かな。 それに、本当に、いいのかな僕で。)
ショウヘイ「・・・寝よ」

〇テレビスタジオ
ミーナ「ありがとうございました〜」
  パチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチ
司会「可愛らしいわねぇ〜」
司会「いま人気急上昇のミーナさんでした〜 最近はすごいですねぇ〜」
ミーナ「ありがとうございますぅ〜 ご先輩、お姉様方に比べたら まだまだてすぅ〜」
司会「ワタシの若い頃にそっくりなのお〜 よろしくね〜」
司会「今週のミュージックスポットでした〜」

〇シックなリビング
ナオト「お姉ちゃん出てたね〜 可愛いかったね〜」
ショウヘイ「あぁもう人気者だね〜 僕なんか…」
ショウヘイ(なんだろう・・・ モヤモヤする)
ミーナ「なになに〜見てたのぉ」
ナオト「あーお姉ちゃん、いたんだ」
ミーナ「だって録画だもん〜 バイトも、やめられるくらいになったし、やっとアイドルに専念できるぅよ〜」
ミーナ「ねぇーショウヘイくん。 どうだった?」
ショウヘイ「可愛かったですよ」
ミーナ「もう〜つれないなぁ〜」
ナオト「お兄ちゃんゲームしよー」
ミーナ「ワタシもやるぅ〜 じゃあ勝ったら言う事聞くとかで、勝負しよ〜」
ショウヘイ「はぁ。 (いっつも負けるんだよね・・・)」

〇奇妙な屋台
店主「おや、どうしました〜?」
ショウヘイ「う〜ん、 僕、なんか このままでいいのか・・・って」
ショウヘイ「生活は楽しいし、不満は特にないんですけど・・・」
店主「不満のない不満ですか〜」
ショウヘイ「僕自身のワガママなんでしょうかね・・・ 他の人からしてみれば、羨ましいとかだろうし、恵まれているのは、わかってるんですが」
店主「では、こちらを差し上げましょう〜」
店主「ジャジャーン 不思議ノート〜」
店主「ここにワダカマリを、思ったことを 書きこんでみるのです〜」
ショウヘイ「あぁ・・・まぁそうですね。 いいかもしれませんね。 しばらく僕自身も、 書くことを忘れてましたし。」
ショウヘイ「ありがとう、また来ます」
  タッタッタッ
店主「さて、どうでしょうねぇ。」

〇シックなリビング
  カキカキ
ミーナ「ショウヘイくん」
ショウヘイ「はっ」
  ガサッ
ミーナ「なに隠したの? 隠し事なしってルールだよ?」
ショウヘイ「み、ミーナさん・・・」
  バサッ
ミーナ「ノート? 読ませてもらうよ?」
  僕はミーナもナオトくんも、大好きだ。
  
  でもダメなんだ。
  ミーナに嫉妬してしまうんだ。
  きっと僕の不甲斐なさ・・・
  必要とされていない気がして。
  
  彼女はあんなに頑張ってるのに
  嫉妬するなんて。
  僕は羨ましかったんだ。
  才能があって、お金もあって、可愛くて
  
  僕と違って、何でも持ってて。
ミーナ「なんでも? 私には両親がいないわ。 両親の、家族の思い出がないの。 ずっとナオトと二人きりで生きてきた」
ミーナ「アナタが来てくれて、とても楽しかった。 急にお兄ちゃんが、お父さんが できたみたいなもの、なんだもの」
ミーナ「ずっと、ここにいてほしい。 お願い・・・」
ショウヘイ「…ごめん。 僕、家を継ぐことにしたんだ。 僕のできる責任を果たさないと 自分と向き合えない気がして。」
ショウヘイ「継ぎながらでも、小説は書けるし。 ここにいて、 君の稼ぎを当てにしているなんて、 なんか情けないだろう。」
ミーナ「ショウヘイくん・・・」
  ミーナは、抱きついてきた。
ミーナ「ゲームに勝ったんだから 言う事聞いてもらうもん」
ミーナ「出て行っちゃダメ」
ミーナ「ワタシには、必要だもん」
ショウヘイ「ミーナ・・・」

〇奇妙な屋台
店主「それで・・・結局どうしたのかしら?」
ショウヘイ「恥ずかしいのですが、 実家の和菓子屋を継いで 結婚することになりました。」
ショウヘイ「このノートお返しします。 もう僕には必要ありませんから・・・ 素直に話し合った結果、」
ショウヘイ「彼女はアイドルを続けながら、 女将さんも引き受けてくれたのです」
ミーナ「ナオトも出入りしてるうちに、 和菓子作りに興味を持ったらしく、 職人さんのお手伝いとかしてるんだもの」
店主「あら〜そうなの〜 よかったじゃない。」
ショウヘイ「紹介していただいたおかげです。 ありがとうございました。 いきましょう、ミーナさん」
ミーナ「はい」

〇奇妙な屋台
店主「ほんとうに・・・ これはノートの力なのかしら? ね」
店主「彼自身の意志が、未来を変えたのかもしれませんよ?」
  シュウウウウウウゥゥン
店主「ま、それはそれとして いい素材が、 また手に入りましたねぇ」
店主「さて、店じまい店じまい」

コメント

  • 頭の中のモヤモヤや不満は、書くか話すかして言語化すると整理できるって言いますからね。今回も不思議なアイテムで生活一変かと思ったら、意思の力のほうが強そうな気配で。。。ステキなラストですね!

  • この店主は、いつも心優しく温かくて人として尊敬します。
    心に余裕がありそうなところも尊敬しちゃいます😌
    ショウヘイは自分のことをわがままだと言っているけれど、しっかり家業を継いだし、居候みたいになっている事に対しても不満を抱いていたし、しっかりしていると思いました(^^)
    結婚することになったのもとても喜ばしかったです🥰

  • とても素敵な結末でこちらまで嬉しくなりました。確かに、自分の思いや考えを文字で書き出す作業をすることは、心の奥にあるものまで吐き出せてしまえると思います。迷ったら、ノートを持ち出し書いてみることですね!

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